提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「提督…ありがとう」
「いきなり何を…」
逃げて…生き延びてと言う彼女。
「まだ私を知らない提督…どうか…
彼女は思い出す。
彼女は艦隊に加入した最後の艦娘。
『大鯨…よろしくな?』
老齢の彼はベッドからそう言った。
隣には年老いた女性が数名居た。
『改二で…龍鳳か…改めてよろしくな』
年老いた彼は言った。
もう起き上がる事すら出来ないらしい。
隣に居た女性は1人になっていた。
そして…貴方はすぐに逝ってしまった。
『…良い人生だった……皆…ありがとう…』
『心から…愛……して……る」
満足そうな顔で逝った。
最愛の人と逝った。
どうして私がここに居るのかー
出会ってから過ごす時間が短すぎたのだ。
老齢すぎる彼は…もう立てないくらいになり…私と一緒に戦場に立つ事はなかった。
皆さんみたいに何十年も一緒には居られなかったから…。
それでもあなたを好きになってしまったから…
この指輪は…彼の遺品から見つかった…私宛てへのプレゼント。
贈り主がこの世に居ない…1番欲しかった贈り物…。
ごめんなさい…
ごめんなさい…
「まだ…戦うぞ…ここからは俺も一緒だ!龍鳳」
提督が肩に手を置いて話しかけて来た。
「何で…?何で逃げないの?戦力差もこんなにあるのに?!」
行ってよ!
私に構わず…今回は何があっても…あなたを守るから!私は…!!
「お前は俺の艦娘なんだろう?」
「なら…いつでも隣に居る」
『龍鳳…すまんな…』
『例え…死んでも…心はずっと…いつでも隣に居る…待っててくれ…また…会いに来るから』
彼の最後の言葉…。
「…提督…」
「どんな時でも俺はお前を置いて行かない」
彼は言い切った。
「また来いって言っておいて…置いて行ったくせに…!私を…私達を置いて死んだくせにい!」
「ずっとそばに居てくれるって言ったのに!私は…私は!」
約束だったから。
生まれ変わったら会いに来てくれ…と言う…。
また会いに来てくれと言う約束を果たした時には…
あなたは…
待っててくれと言った…。
退役して天寿を提督と共に全う金剛さん達を見送って…
ずっと待った。
皆が退役しようと、戦おうと…
また会いにくる…の一言を信じてずっと待った。
何年経とうと
何十年経とうと…
私は待ち続けた。
途中に何度も退役と解体を考えた。
でも出来なかった。
次に死ぬ時は…あなたを守ってと決めて居たから。
それでも…私は待ち続けた。
野盗や深海棲艦と戦って…
時代の移り変わりを感じながら…ぼろぼろになる鎮守府を見つめながらずっと…ずーっと待っていた。
120年は長かった。
「120年もずーっと待たせて…」
「今更優しい言葉で…私を喜ばさないでよ!」
「あなたの時代に…早く帰らないと…バカな艦娘のままで居させてよ!」
「すまん…龍鳳」
なら…と彼は私の指から遺品を取り外して言った。
「え?」
「今、ここで誓おう」
「俺は…ずっとそばに居る」
「何があろうと…この命の限り…君のそばに居る」
硝煙の匂いと爆発音の中で…その声は
その声だけはハッキリと聞こえた…。
「……」
「提督…ずっと一緒に戦ってくれるの?」
涙も溢れて止まらない。
その言葉をずっと聞きたかった…
「もちろん…」
こんごう達には見えた。
龍鳳に重なる白と赤の和服に身を包んだ名も知らない艦娘の姿が。
「待ってたのは俺もだろうさ…。行くぞ…
「……提督…気付いて……」
「俺は提督だぞ?分かるさ」
そう、彼女は加賀と共に還った赤城だった。
仲間を救う為に
共に死を選び海に還った彼女は
約束を果たしてまた戻ってきた。
だが…遅すぎた…。
その彼女は…体が朽ち果てるで待ち続けた。
叶わない筈の私の夢…
あなたの為に戦うと言う夢。
今こそッ!!
「提督ッ!!指示を頂戴ッ!!」
「おう!!」
『フン!今更誓った所で…お前は、練度も足りない経験も足りないひよっこだろう!!』
「確かに私は…提督の下では数年と戦ってないわ…」
「でも…120年は…どの先輩達よりも長い年月よ!」
そう、彼女は彼の死後から120年は戦い続けたのだ。
彼の没年は謎であるが、少なくとも他の艦娘よりも数十年戦い続けた。
今や彼女は…誰にも追いつけない所に居る。
軽い…体が…軽い!
「もっと…もっとッ!!」
龍鳳 改
決して至ることのない筈の高み。
でも…今なら届く
「負けるかぁぁぁああッ!!」
龍鳳 改二
「私は…!あなたの為に戦うんだ!!」
私は護衛艦…こんごう…。
目の前で…かつて世界最強の鎮守府と呼ばれたらしい提督が…艦娘と共に戦っている。
こんごう…
かつての艦の名前…金剛。
何だろうか…この思いは…?
ワクワクするような…
何を守りたかったのか?
少し平和になった海?
『…それが提督デース』
誰…?
『私は…金剛…デース!あなたの先輩?になりマース』
『ダーリンはやっぱり不思議な人デース』
『…どんな時でも私達の為に…』
『あなたは…行かないのデス?』
かん娘…
時代と共に変わり行く姿は…
彼女達の在り方も変えた。
でも
変わらないものがある。
脈々と受け継がれた…守るという思い。
平和な海を
暁の水平線に…勝利を刻む事を
彼女達は止まらない。
ーあの人が生きた証ー…
ー守った海ー…
『ー…ご…う』
『こんごう』
あの人の声…
『金剛!』
『愛し…てるぞ…金剛…生まれ変わって…も…』
『……ダー…リン……ご一緒できて……幸せ…』
これはあの人の最期の記憶?
それが目の前のあの人と…あなたの未来の記憶?
私は…こんごう
あの名前を継いだ…
金剛さん…
『なあに?』
––––力を貸してくださいッ!!
『おぉうけい!!』
私は…
金剛だッ!!
「提督さん!!」
「こんごー…?」
この艤装じゃない…
私は…!
こんごうの艤装が変わって行く。
いや…戻って行く。
「私は……英国帰りの帰国子女…金剛型 1番艦ッ!!金剛!!」
誰かが力を貸してくれているような…温かい気持ち。
「時を超えても…その想いは不滅です!」
「私も…その誇り…お守りしますッ!!」
救には見えた。
彼女の後ろでピースしてる金剛が。
「金剛型4番艦…霧島…私も…」
「…妙高型1番艦…!!妙高」
「高雄型4番艦!鳥海!私だって!!」
「ヘーイ!提督…指示をくださいッ!!」
「チェック1..2…いつでもどうぞ!」
あなたの為に戦えるのが…
一緒に戦えるのがこんなにも幸せだなんて…
龍鳳 改ニ 丙 超高揚状態
「私は負けない…あなたに負けないッ!!」
「全攻撃隊!発艦ッ!!!!」
「援護しますッ!!」
「お姉様ッ!!角度調整…右3度!!」
「鳥海と妙高は…対空用意ッ!!」
「「はい!」」
「了解ッ!!」
「ヘーイ!龍鳳!絶対に制空権を取らせますッ」
「やりましょう!!」
「はい!!」
『コノ…負けるかッ』
「対空射撃始めッ!!」
棲姫の発艦を撃ち落としにかかる2人。
『クソッ…この…ー
ドゴォン!!
金剛の砲撃が見事に命中する。
『小賢しいッ!!あの厄介な提督の指揮を…ー…あの眼鏡は…!?」
「いけえええ!霧島ッ!!そのまま打ち込めえええ!!」
霧島は飛んだ。
背中に提督を背負って飛んだ。
そしてそのまま固く握った拳をぶち込んだ。
バキィッ!!
『ガッ…ー」
「……制空権制圧完了です!!」
龍鳳が叫んだ。
「一気に畳み掛けるぞ!!」
『させるかぁぁあ!!!』
棲姫が龍鳳に殴りかかる。
それを受け止める龍鳳。
「…こんなの…!こんなの!!待ちに待った120年に比べたら…痛くもないわよッ!!」
バキィッ!!!
龍鳳はそのまま棲姫を殴り飛ばした。
孤独に辛い事は…殴られる事よりも痛い!!
それ以上に…
あなたを忘れてしまう方が怖かったから!!
「えええええい!!」
龍鳳はそのまま艦爆で爆撃して行く。
ズドドドドドン!!
『グッ…クソッ…!!』
逃げようとする棲姫。
が
「着弾観測射撃…こんごう型4人一斉射!!」
「攻撃隊…爆撃します!!!」
『クソッ!くそおおおおおおおお』