提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
『…ごめんなさいね…後を任せて…』
『大丈夫ですよ。ゆっくり休んでください、金剛さん…また生まれ変わったら…会いましょう』
安らかな顔で眠りについた家族…。
悲しみに暮れる葬式は…一瞬だった。
『**さん…あなたも退役するのですか?』
問いかけられた彼女もうんと頷いた。
ある日の事だった。
大淀さんから私に一通の手紙を渡された。
手紙…?
そこには…こう書かれていた。
龍鳳
君に直接愛してるとの言葉と共にこの指輪を贈らない事を許してほしい。
君が来てくれて…恐らく君が最後の加入艦娘になるだろうが…それだけが心残りだ。
またきっと生まれ変わってでも会いに行くから…
その時を楽しみに待ってくれ。
短い文章だったが…優しみに溢れた文章だった。
恐らく死ぬ間際…震える文字で必死に伝えようとした愛してるの言葉…。
手紙をくしゃりと握って泣いた。
もうそこにあなたは居ないんだと言う現実が私の肩を抱く。
『…てい…とぐぅぅ!!』
今になって止めどなく溢れる涙。
『うわぁぁ!!置いてかないでくださいよおおお』
抑えても抑えても…それは止まらなくて…
不思議な感情はいつしか恋心に変わっていたから…。
愛されたかった。
なのにそれは…もう……
言葉も…思いも…呪いとなる。
だから決めた…
待ち続ける…と!!
提督さん……昔に会ったそのまま姿で…また笑いかけてくれた。
ふふ…
赤城だった頃と足すと…200年くらいになるのかな?
「龍鳳ッ!!」
彼が背中に掴まる。
こんなにも軽いのね…。
「提督!?」
「一緒に行くぞ龍鳳!ぶちかませ!」
「はい!!」
龍鳳は加速する。
その右手にありったけの力を込めてー。
「ありがとう…提督」
風の音に掻き消された声は…
ぎゅっと彼女を掴む手が強くなった気がした。
『やめろおおお!!』
「「くらえええええええ」」
彼女達の
『グッ…こんな…こんな…100年以上掛けて回復したのに…』
「…お互い様よ…」
「私も…待ったもの」
悪態を吐きながら灰となる棲姫。
「……終わった」
ホッと胸を撫で下ろす面々。
救は龍鳳に言う。
「俺のやり残した事、君の叶えたかった願い」
「……え?」
龍鳳達は首を傾げた。
「どういう…?」
将来の救は叶えたかった。
つまり…やり残したこと…。
彼の艦隊最後の加入者に指輪を渡す事…。
それは練度が足らず…いや、彼がその時まで生きられなかったのが理由である。
生涯…彼女だけに渡せなかったその指輪。
彼はそれを渡したかったのだ。
そして…
彼女の叶えたかった願い。
彼に愛される事…彼と共に戦場に立つ事…。
人とは儚くも短い命…。
その灯火は既に消えかけており、夢を叶えるには遅すぎたのだ。
それは時を超えて…
思いも超えて呼び起こした出来事。
結果として、その契りは過去の救が交わす事になった。
しかし、彼女は…彼女には…
それだけで十分だった。
それだけで120年が報われたのだ。
「この思い出で…私は報われました…。」
ぽろぽろと彼女は泣きながら言う。
「…龍鳳…?」
120年と言う時は…
本当に長くて一瞬で…
今のこの時は、一瞬で…尊く長い…。
彼女は叶えた。
その身が朽ち果てようとも…思いを捧げた相手へ…
その人生を捧げて待ち続けた…。
ありがとう…
私に…また来いと言ってくれて…
ありがとう…
約束を果たして…会いに来てくれて…
ありがとう…
一緒に戦ってくれて…
ありがとう…
愛してくれて…
愛しています…。
チュッ…と彼女は彼女の愛を伝えて…
-
…消えた。
悠久とも言える時間を彼女は守ってきた。
彼の生きた証とも呼べる鎮守府を…
彼女だけが覚えていた…。
彼と言う提督の存在を…。
役目を終えた艦娘は穏やかな顔で還った。
また彼と出会う日まで。
その身が朽ち果てようともずっと待ち続けた龍鳳。
彼女は守り抜いた。
誇りも…過去も…未来も。
「…ありがとう…龍鳳」
後ろから見た彼は小さく震えていた…。
「り、龍鳳さん……」
「消えた…んですか?」
「…還ったのさ……」
彼はそう言った。
金剛達は何もなくなった虚空を見つめた。
『ユー達……グッジョブデース…』
『龍鳳も……ありがとう』
誰かの声が…いや、私たちに力を貸してくれた偉大な艦娘の声が聞こえた。
いろんな事で頭が追いつかない。
それでも分かるのは…
彼が愛されていた事。
それは世界なのか…艦娘なのか…分からないけれども…
「あ……帰られるのですか?」
見れば俺の体は淡く光っていた。
《お爺ちゃん!帰っちゃうの?》
モニター越しに澪は言った。
彼は…ああ、そうだと言って…
「後輩達!」
「よく戦った…!」
と、敬礼して言った。
澪を含めて見ながら答える。
「先の英雄とご一緒に戦えた事を…誇りに思います!!」
彼女達はビシッと敬礼をした。
「最初のご無礼をお許しくださいッ」
「怒ってないよ」
「きっと…もうお会いする事は無いと思いますが…あなたと…そして、私が受け継いだ名前の偉大な艦娘の方と共に戦えた事…とても…嬉しく……」
何故だろう…涙が出るのは?
「お爺ちゃん……凄かったよ…」
彼女も…ポツリと言った…。
彼が愛された理由がわかった気がする…。
「…あら?人ですね…」
帰りのこんごう達は人影を見つける。
「あの!あなた達!この島には誰も居ませんよ!?」
「…あぁ…かん娘の方…ですね。お疲れ様です」
「もちろん知ってますよ?」
「では…?」
「…お墓参りですよ」
彼女達はニコリと笑っていった。
《あー…そいつらは…身内だ》
と、澪が言った。
「私達のずーっとお爺ちゃんの」
「………」
気が付いたら部屋にいて…桜信濃が隣に居た。
「…指揮官…此度の…旅はどうであった?」
「…桜信濃…」
「…どこへ行こうと…汝の在り方は変わらぬのだな…」
「……もちろんさ」
「ふむ……であったら…急ぐと良い」
「?」
「汝を待つ人は…泣きながら汝を待っている」
急ぎ、言われた場所へと走る。
まさか、まさかと思いながら…。
「……」
「全く!いつもいつも!すぐ消えるッ!!どーしてダーリンはすぐどこかに飛ばされるデス!?」
待っていたのは涙目で怒る金剛だった。
「…ごめん」
彼女は…夢現の中でこんごうと繋がった。
つまり…
彼女の残りの最後を知ったのだ。
「…でも不思議と今回は私もわかったデース」
「……私なら…龍鳳のように…その期間は…耐えられないデース」
「会えるのは…何年後か………会いたいな」
「…他の娘の名前を出すのはノーだけど……うん」
「居ますが…」
「はっ!?」
「え?!え!?」
「「えええええ!?!?!?」」
「なななななんで!?」
「…さあ?また会えますようにと思ったら…」
本人も状況が飲み込めてないのか…あたふたしている。
「……あ」
救が声を上げる。
「ダーリン…?」
「指輪…か?」
彼女が着けた指輪…。
彼の死後に自分で着けた指輪。
贈り主の居ない指輪は何の効果もない。
だが…
あの時彼は渡した。
誓いの言葉と共に…
なら…それは歴とした意味を持つものに変わる。
故に引き裂かれない…運命を曲げてでも彼女は会いに来た。
目の前のあなたは本物なんだ…
私の待ち続けた人なんだ!!
「提督…やっと会えた…」
「やっと抱きしめてもらえる…」
彼女は顔をぐしゃぐしゃにして飛び込んだ。
こんなに嬉しい事があるだろうか。
いや…ない。
彼女はずっと彼の名前を呼びながらずっと彼から離れなかった。
とあるクリスマスの不思議な出来事。
行っても誰も信じなさそうな出来事…。
愛する者をずっと待ち続けた者と
愛する者の為に戻ってきた者の…儚いお話。
はい、
龍鳳との切ないお話でした。
いかがでしたか?
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