提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「無事で良かった」
と彼は私たちの頭を撫でた。
「……え?」
「…何でそんな言葉なんですか?」
違う…
違うのに!
「何でもっと責めないんですか!?」
こんな言葉じゃないのに!
「怪我させたんだよ?提督」
「ひどいこともたくさん言ったんだよ?」
「なのに何で私の心配してるの?」
「何でって……」
「そんなの君が好きだからに決まってんだろ」
「何で…」
「?あんなこと言われたくらいで嫌いになるか!」
「まあ…少しは傷つくけど…」
「それでも愛してる事に変わりはないよ」
「…嘘よ」
「本当さ…」
「なら何でわたしの写真部が……」
「皆でワイワイやる方が楽しいぞ」
「一緒に悩む事も…謝る事も笑う事もできる」
「逆に…すまなかった」
「え?」
「お前がそんな自己嫌悪に陥ってたり…考えていた事を考えずに居た…」
「すまなかった…」
「…わたしが勝手にヤキモチ妬いて…爆発的しただけ…カメラ…」
「私の魂を守ってくれて…ありがとう…」
「ごめんなさい…提督…」
「仲直り…できるか?」
彼は微笑んで言う。
「なら…抱き締めてよ…」
「濡れたら…風邪ひくよ?」
「……あなたも濡れてるなら…一緒に風邪くらいひく」
「そうか……なら」
と、彼は私を抱き締めた。
「無事だったか?心配したんだぞ」
「……う……ぅあっ……ごめんなさい…ごめんなさいい!!」
青葉は彼の胸の中でひたすらに泣いて謝った。
彼はずっとうんうんと頷いて…俺もごめんなと謝った。
「…秋雲もありがとう」
と、私も一緒に抱きしめてくれた。
ごめんなさい…
バカばかりやる私を…見捨てずに居てくれて
秋雲に嫉妬して…何も見ずに…
魂すら投げ出してごめんなさい…
「青葉は…俺の事嫌いか?」
「……愛してます…ぐずっ…」
「秋雲も…衣笠もみんな大好き…」
帰ってから皆に謝った。
無論、俺も怪我したくせに飛び出してって…と怒られた。
でも…2人で怒られるなら…3人で怒られるなら…
ううん…
これからはちゃんと考えるよ。
目を腫らした彼女とのデートは次の日から始まった。
昨日の夜はカメラにひたすら謝りながら丁寧に磨き上げた。
そのカメラを首から下げて歩く。
「ほーーー!!!ここが提督オススメのレストランですね!?」
「ここで何人もの女性を…オトしたんですね!?」
「言い方よ」
「全く…」
「えへへ…」
「まあ…その話が事実なら…」
「?」
「君もその1人になる訳だ…」
「………あ…」
と、顔を真っ赤にする青葉。
「………はぃ…」
彼女はそう呟いた。
んでんで
秋雲ともやって来た超大型デパート。
家電コーナーのカメラコーナーへ。
相変わらず…高い…ッ!!
特にレンズは沼に陥りやすいッ!
青葉が今までに見たことがないくらいの目の輝きを見せる。
「ほぁあ…」
「新しいカメラ?」
「い、いえ!カメラは魂のコレがありますので!」
「投げたじゃん」
「…うっ……」
「……まあ…意地悪だったかな?」
「……アレだ…レンズを一つ与えよう……」
「ほえ!?!?」
「…選ぶが良いz「ならこれで!!!」
クッソ食い気味に言った青葉が指した先には……
明日からもやし生活かな…。
雷か鳳翔に養ってもらお……嘘だけど。
「うへへ…コレでもっと良いネタが……」
「……」
「コホン…良い写真が撮れます」
「あ、漁師のおっちゃん!」
「おー!2人とも!」
「ん?どしたの?困り事?」
「実は……」
ふむ、結婚式の筈が?
カメラマンが急な熱でぶっ倒れた!?(棒)
このままじゃ思い出が!?
「…青葉に任せてくれませんか?」
「「「え?」」」
て、提督!?
「あ、青葉ちゃん…写真撮れるのかい!?」
「え、ええ…」
「今の彼女なら…きっと後悔させない仕事をしますよ」
ファインダー越しに2人を覗く。
幸せそうな2人。
パシャリ…。
あ…今の顔…
そう思った時には指が動いてた。
「みなさぁん!笑ってー!!」」
その声に皆が笑顔をこちらに向けてくれる。
その角度も…瞬間も逃さなかった。
「写真は現像してお渡ししますね」
「楽しみに待ってます」
「ありがとうございます」
「提督とのデートの時間が短くなりましたよ」
「まあまあ…きっと青葉にとっても良い思い出になるよ」
「…そうですかねえ?」
「おう、絶対じゃよ…」
「うわ!じいさんだ!」
そして鎮守府へ帰り…
「へえ…よく撮れてる」
「当たり前です!私が撮ったんですから!」
「なら…ベストを選んで行こう」
と、新郎新婦に渡すアルバムへの写真を選ぶ。
秋雲や大淀さんも一緒に…。
「あ!これブレてるね」
とか
「この表情いいね!」
とか言ってみたり…。
そして…
翌日に渡しに行った。
「あの!結婚式おめでとうございます!」
と、新郎新婦へとアルバムを渡す。
両方のご両親も見るようでワクワクしながらアルバムをめくった。
途端に両親の表情が固まった。
青葉は怯えた表情になる。
「……」
震える青葉に俺は
「大丈夫…」と言った。
不安そうに俺を見る彼女だが、その理由はすぐに解ることになる。
ご両親達が泣き始めたからだ。
自分達の子供の晴れ姿…
ポロッと溢れた「良い写真だ」の言葉。
特に…青葉がこっちを見てください!と言った時の写真が特に良いらしく…
滅多に笑わない父がこんな良い表情をしている…と。
いつも笑っている母があんなに泣いている…と。
見つめ合っていた2人が自然に笑顔でこっちを見ている…と。
その瞬間が思い出されて仕方がないらしい。
新郎新婦も、つられて嬉し泣きする。
「ありがとう…青葉ちゃん」
「こんなに素敵なアルバム…写真をありがとう」
そう
ありがとう…。
仲間でもなく、好きな人からでもない…
でも…初めて言われた言葉。
自分の好きな魂の写真を通して伝えられた言葉。
それが彼女に今までにない感情と経験として突き刺さる。
「あ…青葉ちゃん?」
おやっさんが驚いた表情で青葉を見る。
「・…う…あれ?おかしいな」
「何でこんなに私も涙が……?」
青葉は自然と泣いていた。
嬉しくて…誇らしくて、気恥ずかしくて。
な?言っただろ?と提督は笑います。
「お前の写真が誰かを幸せにしたんだ」
「少なくともあの6人は幸せなんだぞ?」
「そしてそれを見る俺も…」
「凄いぞ?7人も幸せにした!更にはこの報告を受ける秋雲と大淀もそうおもうはずたから…9人!」
「そして…今お前が抱いてる感情が…幸福感なら…10人」
「お前はそれだけの人を幸せにしたんだ」
その言葉を噛み締めながら皆を見る。
「はい」
そう言う事なんだ…と青葉は頷く。
ジャーナリズムは誰かを笑顔に、幸せにする為に…
その意味が分かった青葉だった。
「提督…ありがとうございます」
「やったのは君さ」
「…でも…ですよ…」
「青葉」
「はい?」
「カメラ貸して?」
「はい!撮りたいものでもありましたか?」
「うん、ずっと撮りたかったものがあるんだ」
「へえ…何ですか?」
「これを君に」
「提督…ッ!?」
「え?あ?え!?」
差し出されたものはキララと輝いて…
「……ッ!…ッ!よ、喜んで…」
待ちに待った瞬間が来たのだ。
恐る恐る出した左手にあなたの愛の証が刻まれました。
嬉しくて嬉しくて涙する私に…
「……」
「…するよ?」
と、彼は問いかけます。
「はい…」
と、私は目を閉じます。
誓いのキスは涙の味がしました。
「愛してるよ…青葉」
「はい!私も…愛してます!」
パシャリ…
カメラ越しに彼が笑いました。
「この表情がずっと撮りたかった」
撮ることに慣れて撮られることに慣れてないので…恥ずかしい…
「もー!提督ー!?」
「青葉♪ご機嫌だね」
「ん?まあね♪」
「良い顔してるよ本当」
「ありがとう、秋雲」
ニコニコしながら雑誌作りに励む2人。
秋雲は見たのだ。
彼女が嬉しそうに泣きながら左手を愛おしそうに持つ姿を…
愛してますと言ってるのが分かりそうな写真を……
「青葉ァァァア!!!!おまッ…また人の写真を売り捌いてるらしいなぁぁあ!?!?」
「ゲッ!?」
「あ、青葉!?」
「は、欲しい機材があったから…」
「どうりで最近機材が増えたわけだ…」
「待てコルァァダァァア」
「ひいいいいい!!!」
始まる追いかけっこ。
でもその表情は………うん、変わらず楽しそうな鬼の顔だ。
青葉は青葉だった!!
総投稿ではこれが300話。
青葉にもってかれたよ!
え?300話の話?
用意はしてますよ!?
珍しく2人続けてのケッコン話…
お付き合い頂き、ありがとうございました!
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
感想などお待ちしてます!ぜひ!