提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「…仕方ないんだ……」
「こうするのが…1番なんだ…」
「おはよう…提督。ごはんできてるよ?」
彼女の優しい声で目を覚ます。
というか…いい加減に起こされるのはやめないと……。
「へえ…コレ全部明石が?すごいな」
目の前には…肉じゃがに味噌汁にサバの塩焼きとごはん。
どれも見た目も完璧な料理が…。
「うん…………この機械でね!!」
明石は饒舌に話す。
「…この箱みたいなので?」
「見て見て!この機械!材料ドーン!で全部お任せ!」
「炊飯やパン焼きから煮物から揚げ物までぜーーんぶお任せッ!お手入れも簡単な仕様です!!」
「家庭で料理が苦手な人でも…プロも顔負けの料理が……」
「…ごめんなさい……」
自分で言ってて悲しくなった。
私は…料理ができない。
頑張ってみたけど…到底難しかった。
だから得意な機械に頼ったんだけど…
それは…自分の手ではこのレベルは出来ないことを更に証明した結果になった。
「と、とりあえず食べよう?」
と、2人での朝食が始まった。
確かに美味しい。
でも…昨日たべたオムライスのような…何かが足りない。
「美味しいよ」
「……ありがとう」
美味しいよの一言が嬉しい筈なのに
…少し惨めになった。
提督と街へ出かける。
手?恥ずかしくて繋げないよう…。
ここはとある街の修理工場。
前を通ったら…「あ!明石に提督さん!」と声をかけられた。
「「あ……」」
明石とその子が対面する。
明石と明石。
といっても彼女は退役した「あかし」である。
髪は黒く染め上げられており、ぱっと見明石だと分かる人は居ないだろう。
彼女も救が退役後に斡旋した娘の1人だ。
『…戦いの手入れはもう……』
と、泣いていた彼女は今や自動車の修理工だ。
「…あ、明石よね?」
と、明石が驚いた表情…ではなく
「久しぶりだねえ!!」
と再会を喜んだ。
以前から交流のある明石達だったのだ。
「で?あかしは今は何やってるの?」
「これバラしてるんだよ」
と、大型の何かしらの何かを指差す。
へぇ……と見てると明石が言う。
「って!コレは1人じゃ無理だよ!最低でもあと…ー–〜くらいまでは2〜3人でしないと!」
確かに言われてみればそうだろう…か?
「あはは!大丈夫だってー!」
なんてヘラヘラしてるあかし。
明石は心配そうに見つめる。
そんな明石に俺は声をかけた。
「少し手伝うか?」
明石は顔を輝かせて、あかしはいやいやいや!と顔を横に振る。
「デート中でしょ!?ダメだって!!」
そんな遠慮するあかしに俺は言う。
「明石は君の力になりたいんだよ」
「……服汚れるよ?」
「平気」
そう言って明石は上着を脱いで腕捲りをしてあかしを手伝う。
いつもの明石の姿だ。
カチャカチャと的確にバラして行く。
「あ…コレ…」
明石がいつも通り、夕張に外した部品を渡すように差し出してきた。
「ほい、受け取った」
「え!?」
明石が外した部品を受け取った。
手が汚れた。
「あっ…ごめんなさい…!!」
明石の手は油に塗れていた。
しまった!!
夕張も居ないんだ!私…いつものくせで!!
ああっ!提督の手が…
「ごめんなさい!提督!?提督の手が汚れ「だから何だ?」
「だから汚れてしま「だからどうなる?」
えっ!?えっ!?と焦る明石達に
「俺も…手伝うよ」
と言い、カチャカチャと一緒に作業する。
「…提督…」
不安そうに彼の方を見る…。
「楽しいな!こう言うの」
例え服が汚れようと、顔に汚れが付いても…彼は彼女に笑顔を向けるのをやめなかった。
「…提督…汚れましたよ?」
「君とお揃いだから平気さ」
「こら!そこ!…イチャコラするなー!」
いつの日だったか…
桜ベルファストが私達の汚れた手を取ってくれた。
提督はいつでも私のこの手を引いてくれる。
例え手が、手袋が汚れても…。
そして、今日はついに全身がオイルに塗れた。
なのに彼はケラケラと笑って居る。
「…そう言う人…だもんね」
『オイルかけた飯が美味い?本当?なら食べるよ?』
『あ?制服が汚れた?別に…制服が綺麗だから偉いわけじゃ無いだろう?』
『椅子に踏ん反り返って座って出来たズボンのシワより…君達と一緒に居てできたシワや傷の方が…俺は立派だと思うね』
そう言ってくれた事を思い出した。
ある程度の作業が終わってひと段落した。
何だろう…この感じ…
あかしは業者に連絡するとかで離席した。
「汚れましたねえ…すみません…提督…」
彼は言う。
「あん?見ろよこの服…綺麗すぎるだろ?」
「だから丁度…汚したいと思ってた所だ」
「なら…コレを見たら思い出すんだよ」
「あー…明石と車いじったな…って」
「使い古して…洗濯しまくって薄まったころには君と別の思い出ができてるんだって」
「………」
そう言ってくれるから好きなんだ。
いや…その言葉だけではないけれども…。
ここまで寄り添ってくれる人は…人生の中で何人見つけられるだろうか?
きっと…
「私はもう!機械いじり嫌です!一緒にサボってください!」
って言ったら…「よしわかった!休もう!俺も執務嫌だ!」
って…間宮とかに連れて行ってくれるんだろうなあ…。
だからこそ…
そんな人だと分かるからこそ…頑張れるんだよ…ね。
「…提督?」
「ん?」
「えいっ」
私は…彼の顔にオイルをつけた。
「はぁぁん!?」
「えへへ…」
「このっ!」
彼も負けじと…私にオイルをつけた。
「ええ!?女の子にそう言うことします!?」
「上司にそう言うことする奴が言うかなぁ!?」
「あ!そう言う時だけ上司振るんですか!?」
「そーだもん!副元帥なんだもん!偉いんだもん!!」
顔を寄せ合って言い合う。
そして笑う。
「もー…提督くらいですよ?こんなに…汚れて…」
「汚した奴が…言うなよ」
そっと私は…彼にキスをする。
「ここでぇ?」
「私らしいじゃないですか……ね?」
仕方ないなあ…と彼もしてくれる。
そして…
「なら……コレ…」
彼は手をクリーナーで拭いてからソレを取り出した。
「ここでですかぁ!?」
「君らしい…んだろう?」
「…プッ……そうですね」
「受け取ってくれるかな?」
「…はい、謹んで…喜んでお受けします」
そっと左手の薬指に…はまる指輪。
「…コレが……指輪……綺麗…えへへ」
「…汚れても綺麗にします!絶対に外しません」
「…何もかもが…傷も汚れも…ぜーんぶが…思い出になりますから」
「料理も苦手で…馬鹿な私ですけど……いいんですか?」
「料理が…とか、片付けが…とか関係ないよ。俺は君が大好きだから」
その言葉にグッときてしまった。
ダメだ…言葉が止まらない!
「大好きです!愛しています!
「ありがとうございます!提督!」
「愛しています!」
「あなただけを…ずっと…ずっと!!愛してます!」
「俺も愛してるさ!」
私は彼に飛び込む。
汚れてもいいって言ってくれたしね?
思いきり抱き着いて…キスして……
「コホン……お取込み中…ごめんね?」
「あ、あかし…」
「人の働く工場でプロポーズとかイチャコラしないでもらえるかしら?………羨ましいから」
あぁ…
そうか…
わかった…。
あの料理になくて…
機械にあって…提督のオムライスにもあったもの…
…思い…とか…愛情なんだ。
「これじゃあ…レストランとかは無理かなあ?」
と言う提督に私は言った。
「…夕飯は私が作るよ!」
「…明石?」
「もう一度…作らせて!」
私は帰宅後にキッチンに向かった。
完璧に作るから美味しい…だけじゃないんだ。
料理は愛情…
うん…そうなんだ。
その人を思ってやるから…美味しいんだ。
例え綺麗に野菜が切れなくても
例え…分量通りにうまくいかなくても…
私は……私の手で作ったご飯を愛する人に食べて欲しい!!
それだけを考えて私は苦手なキッチンに向かう。
「…ッ!!」
指を切った。 だから何だ!
火傷した…だからどうした!!
少しでも美味しく
あなたの笑顔の為に
あなたから聞きたい
笑顔で「美味しい」の一言を聞きたい
ただ…その為に!!
「提督…お待たせ」
お盆に乗せたご飯を彼の前に置く。
「ん?ご飯」
「うお、いい匂いだ…」
メニューは朝と同じにした。
崩れかけのジャガイモの肉じゃがと…焦げかけたサバと…。
朝のが星3だとしたら…星1すら貰えないレベル。
涙目だけど…私は出した。
堂々と…自信を持って…レが私なの…本当の私を見て!!
「いただきます」
魚はコゲでジャリと言っていた。
それでも、彼は黙って食べている。
そして箸を置いて彼は言った。
「明石?」
「うん?」
ドキドキする…ダメなのかなあ……
愛情はたっぷり込めたんだけどなあ
「最高に美味しい」
「…ッ」
ダメだ。
「そ、そう?機械の方が上手く作れるよ?」
私は…何でこんなこと…言っちゃうのか!!
「機会はすごいよ?確かに」
「でも…あの料理には無い…君の一生懸命さが…あれ以上の愛情がこの料理には入ってるよ」
「見た目悪いのに?」
「…」
彼は言った。
「覚えてないか?」
「綺麗な服だから偉いわけじゃ無い」
「……ッ!」
「例え…油に塗れても…戦場の傷も…普段の何気ない汚れも…含めて偉いと思うんだ」
「なぜなら…そこには君達との思い出があるから」
「…見た目が綺麗な料理が最高に美味しいわけではないよ」
「例え少し焦げていようとも…野菜がうまく切れてなくても…」
「……ッ…ッ!」
ジワリじわりと目の前が熱くなる。
「君が一生懸命に俺のことを考えて作ってくれる料理の方が素晴らしいに決まっている」
「高級レストランの料理よりも…俺は君の…この愛情たっぷりのご飯が食べたいね」
「手を切っても…火傷しても頑張って作ってくれたこの料理に敵うものなんかあるもんか」
「……でも…」
「馬鹿にする奴なんか居るものか!居たら…いや!俺が馬鹿になんてさせない」
「…卑怯だよお」
「そんな言葉…掛けられたら…嬉しくて……泣けて来るよう」
グスッ…と涙が止まらない。
初めて…ではないけれども
機会いじり以外で認められた…。
ううん…彼はそんなのすら求めてないだろう…私が勝手にそう思ってるだけだろう。
でもて嬉しかった。
とてつもなく…この上なく嬉しかった。
美味しい…
その一言が…こんなにも人を幸せにするなんて…。
思わず嬉しくて彼に飛びついた。
「いつも…あなたは欲しい言葉をかけてくれる…」
「ありがとう…提督」
「大好き…」
「……明石?さすがに離れないとご飯が……」
「今日はこのまま離れない」
明石はずっと離れなかったとか…。
「おーい、明石ー、夕張ー!昼どうする?」
「あ!提督!いらっしゃい!」
「ほら…明石…来たよ?」
「提督!あ、あの…お昼はお弁当作ってきたから…一緒に食べよ?」
おずおずと弁当箱を二つ出す明石。
「お、本当!?やった!食べる食べる」
「実は…私も!」
夕張も二つ…明石はズルーイ!と言いながらも笑顔で言う。
「おかず交換しながら食べよー!」
少し…工廠が賑やかになったとか…。
あまーーめの
どうでしょう?え?足りない?
三越…金剛の財布…
財布新調してしまったんだよねえ…くぅ…