提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「担架ッ!!急いで!!」
「手術準備できてる!?輸血準備!!!」
桜の到着に合わせて緊急手術が行われる。
弾は抜けていたが、出血が酷い。
「桜ッ!大丈夫か!!」
「閣下!お下がり下さいッ!私達がきっと助けますから!!」
到着した救が彼女に声を掛けようとするが、看護師に止められてしまう。
「救ちゃん…」
「大ちゃん……」
「姉貴も俺も大丈夫だよ」
将大も治療の為に医務室へと入っていった。
「閣下!!こちらへ!!」
と、オペ中の筈の医師に呼ばれる。
不思議に思いながら着いて行くと桜がそこに居た。
「……救」
「桜?大丈夫なのか?」
「………怒りに流されるな」
「何を言って…」
「いや…お前は…誰だ!?」
「奴は………に居る」
「でも…間違えると…………に…」
ドサリと倒れた。
ように見えた。
ピー…と言う音だけが手術室に木霊していた。
「……桜?」
「電気ショックの用意ッ!!」
「…閣下!!何故ここに…!!」
「……え?」
わからない。
何が起きているかわからない。
一つ分かったのは…桜が死んだ事。
「姉貴ッ!!姉貴……」
「ばかやろぉ…何で逃げなかったんだよ……」
崩れ落ちる将大と舞鶴メンバー。
手術室前は地獄とも言いたい光景が広がっていた。
「姉貴……すまねえ…俺が弱いばかりに」
「俺こそ…何もできなくて…ごめん」
「………覚悟はしていたけど……キツいな」
「…霧島1人に……2人が…」
「いや…違う…アレは榛名でした!!」
と、舞鶴の比叡が叫んだ。
いや、アレは霧島だったろ?と言う声に涙ながらに言い返した。
「いいえ!私が姉妹艦を見間違うはずがありません!アレは榛名です!」
「…私は…金剛お姉様を感じたのだけれど……」
呉の霧島が意見を出した。
「……どういう……事なんだ」
「…どちらにしても……姉貴をしっかり弔ってやってくれ…救ちゃん」
「大ちゃんは?」
「…実家に報告しなきゃいけないから…」
「……変な気は起こすなよ」
「………ああ」
その次の日に将大は死んだ。
厳密に言うと戦死した。
舞鶴と呉の全力を以ってして、ブインに向かって行った。
「…大ちゃん!戻れ!!命令だッ!!」
「聞けない」
「何で!!」
「家族を殺されるなんて…耐えられるもんか」
「でも…このままじゃ!!」
「分かってる!!…でも…俺は行く!!」
「せめて俺が行くまで待機をッ!!」
「…救ちゃん」
「あの時、俺も姉貴も負けるなんて思ってなかった」
「海から俺達を何かが掴んだんだ」
「深海棲艦か?!」
「いいや…違う」
「なんというか…得体の知れない何か…」
「……辛くて冷たい何か」
「大ちゃん…?」
「…青葉に記録を頼んである。もしもの時は…頼んだ」
ブツッと通信が切れた。
「通信…切れました」
大淀が首を横に振る。
「繋ぎ直せッ!!」
しかし、何度呼びかけても繋がることはなかった。
「おいッ!!」
「クソッ!!」
そこから半日もしない間に呉の青葉が泣きながら記録を持参した。
そこに映って居たのは…
黒い何かが皆を絡めとるところだった。
「す、すみません…私も必死だったので……」
『キャハハハ!!沈めッ!沈めッ!!』
『深い水底から…暗い空に墜ちろッ!!』
不思議なのは誰1人として抵抗出来ていないのだ。
なされるがままに撃たれ、食い破られ…爆破され…
とてもじゃないが直視できなかった。
「くっ…長門……大丈夫か…」
「あぁ…」
「主砲は…?」
「ダメ…だな……」
「攻撃方法は…ないか」
「いや…大きいのがある…」
「…………俺も一緒なら許可する」
「……優しいんだな?」
「……君と一緒なら……な」
「やめろ…」
思わず画面に齧り付くように…声を上げた。
将大がやろうとしていること…
長門は…艤装と残弾を爆発させようとしているのだ。
将大が画面の向こうの彼……つまり、青葉の方に向かって言った。
「救ちゃん…ごめん」
「やっぱ許せなかった」
「青葉…頼んだよ」
「いやっ!提督!!私も!私もッ!!」
「ダメだ!!!お前は…お前には重要な役を任せたんだ!!」
「…うぐっ……提督…ッ」
キリシマの方を見据える呉大和と将大。
『……何?』
呉長門は一気に距離を詰めてキリシマに掴みかかる。
「…キリシマ…いや!ハルナッ!!」
「…姉貴の借り…返させてもらうぜ」
『…まさか……貴様ッ!!ヤメロ!!やめろおおお!!』
暴れるハルナ…を大和は離さない。
ズドン!
ズドン!!
例え撃たれようとも…雑魚に齧り付かれようとも…
そして…
「すまんね…長門」
「フッ…嫁冥利に尽きるぞ?」
「「愛してる」」
ドカァァァアン!!
青葉が吹き飛ばされるほどの爆発が起こった。
「あ……ぁあ……」
その後は
はあはあと言う恐らく呉青葉の息遣いと、彼女を逃がそうとする誰かの声が最後に聞こえて、画面は暗転した。
「……終わり…です」
言葉が出なかった。
あの2人ですら…勝てない相手…。
「お願いです…私を解体してください…」
呉青葉がグスッと泣きながら解体を懇願する。
ぼうっと画面を見た。
真っ暗な画面がそこにある。
その時
「…信濃を探せ」
「深い…1番深い…お前の辿った道に答えはある」
「今のは…?」
「…?提督?どうしました?」
「いや!今の映像…」
「………記録は切れてますよ?」
「…さあ……どうする?まもちゃん」
「…将大先輩も死んだよ」
「……ッ!?」
いつの間にか執務室に幸が居た。
「……ね?どうする?」
「お前ッ!ふざけるな!」
「俺はお前の所になんか行かない!」
「僕は君の事…よく分かってるし、君は僕の気持ちがわかるはずなのに…」
「……絶望が足りないのかな」
縛られた3人が後ろから連れてこられた。
「……ッ!!」
その言葉が悪魔の囁きのように聞こえた
「……救君」
「………聞いちゃダメ」
「そうヨー…ダーリン」
「私達は…大丈夫だから」
「麗…!金剛ッ!!鳳翔っ!!」
嫌な予感がした。
「うるさいなあ…今は僕達が喋ってるんだから…あ…そうか…うん、そうしよう」
パン
乾いた音が聞こえた。
ドサリと音を立てて
3人が頭から血を流して
倒れた。
麗…ちゃん?
「おい!麗ちゃん…!…麗ッ!!!」
「金剛ッ!!!鳳翔ォォォ!!」
彼の悲
痛な叫びは…
彼女に届くこと
は無かった。
どしゃりと崩れ落ち
た彼女
の手が…笑顔が彼に向けられることは2度と無かっ
た。
「……嘘ッ…」
錯乱する大淀達。
悲鳴をあげて叫ぶ呉青葉。
「大丈夫…ちゃんと…僕達が迎えるから」
「き…貴様ッ…何を…」
「さあ……仕上げよう?」
幸はニタリと笑う。
「……ころすッ!!!」
「貴様だけは…ブッ殺すッ!!」
バキン
何かが俺の中で砕けた。
「うわぁぁああッ!殺してやるッ!!貴様を絶対にいい!!」
怒り。
それはカラダの底の底の底の底の底の深いトコロから…
俺は…奴に飛びついて居た。
『幸様!!』
と…キリシマが俺を睨んでいた…が
「いいんだよ
「……魂の救済を……あの向こうへ…」
ナニヲ言ってるかワカラナイケド…
ぐっと力を込めた。
待ってるよ…
ゴキリ…
気付いたら幸を殺していた。
満足そうに笑いを浮かべて死んでいる幸。
周りは…同じように憎しみに満ちた表情で…。
ハルナ…?に襲い掛かって居た。
爆発音が聞こえる。
敵が攻めてきたラシイ…
なにカヲ忘れテいる気がする。
何だろう
「……ん!」
「……き…ん!」
「指揮官ッ!指揮官!!!」
血溜まりの中に俺は居た。
無数に積み上げられた敵味方の死体の中に俺は居た。
慟哭と怨嗟の声が聞こえる中に俺は居た。