提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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310話 あの空の向こう側 ④ 世界を焼き尽くす程の…

「……ん!」

 

 

「……き…ん!」

 

 

 

 

 

「指揮官ッ!指揮官!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血溜まりの中に俺は居た。

 

無数に積み上げられた敵味方の死体の中に俺は居た。

 

 

 

慟哭と怨嗟の声が聞こえる中に俺は居た。

 

 

 

髪の一部と目が変色した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様…アイツを倒せば…深海棲艦はもう…二度と!!」

 

彼は手を挙げ…標的に向かって振り下ろした。

「…殲滅……殺せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人類は海を取り戻した!!英雄の誕生だぁー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やはりね…個人が武力を持つなんてはあり得んのだ」

「君達はね…強すぎたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で私らが終わらなくちゃいけないの!?」

「ねえ!提督…答えてよ…」

 

「撃ちたくないよぉ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜がやられた!!クソッ!!ぶっ殺してやるッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で私達…こんなに頑張ったのに……なんで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様?桜赤城のお側を離れないでくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……生まれ変わったら…平和な世で会いましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?

ここは…

 

真っ暗な世界に俺は居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっと誰かが俺を抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着くが良い…指揮官」

「汝が怒りは当然だが…落ち着くが「落ち着いてられるかッ!!麗が!麗が!!皆が殺されたッ!!」

 

桜信濃の声を弾き飛ばして彼は激昂する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着くのだ!汝の道は…まだ!!」

 

 

「……!!」

 

 

 

「これが汝の求めた結果か!?」

 

「何を…」

 

頭の中は…轟々と燃え上がる炎が…。

各地から聞こえる悲鳴。

何故かコチラを向いて攻撃してくる人間。

 

「何だよ…コレは…この結果は…」

 

 

 

 

「否…汝の道は…まだ」

 

 

 

 

 

そうだ!信濃…桜信濃ッ!!

俺はお前に会うように…!!

 

 

「時間がない…妾もここに渡れたのは奇跡…」

 

「……と言う事は夢?」

 

「……夢ではない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「汝の至るやも知れぬ未来…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此処はまだ…3人が攫われる少し前…。汝はあのハルナ達にこの世界に引き摺り込まれた」

 

 

「……此処は夢…有り得る…起こり得るかも知れない可能性の世界」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら目覚めたらいいんだろ!?早く目覚めないと…麗達が!!」

 

「…そう言う簡単な話ではない」

「言ったであろう?可能性と」

 

「ここも、現実ではある…ある意味ではあるが…。同じように辿れば…今と同じ場所に辿り着く」

 

 

 

「因果が巡れば…桜殿は凶弾に倒れ…将大殿も……麗殿や金剛達も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜信濃?」

 

「早く目覚めを…汝は………ーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ」

 

「お逃げください!ここは…この桜赤城が命に替えてもお守りー

 

 

 

 

 

 

ぐわん…と景色が変わる。

 

 

 

 

目の前には麗と幸と…何故かニヤリと笑うキリシマ達が居た。

 

 

 

 

 

2週目…ってやつか?

 

 

 

 

結果として…まず、やはり桜が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は2度…皆を失い、幸を殺した。

 

 

 

俺は悲しみの果てに深海棲艦を皆殺しにした。

敵を全滅させた。

 

でも…結局、世界が敵になった。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ…指揮官様と一緒なら…何が敵でも怖くは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……つまり今のこの状況は…夢と考えよう。

だが…これは起こりうる未来だと桜信濃は言った。

 

 

つまり、何か手を打たないと…確実に桜を始め皆が死ぬ。

 

 

しかし不可解なのは…何故俺に幸は殺されたのか…?

しかも皆を巻き添えにして…

()()()()()()()()()()()()()…のように!

 

 

その後の目的がある筈なんだ…

 

 

キリシマにコンゴウと呼びかけていた事…

艦娘が抵抗できない程の黒い何か…

 

まるで…あの時の海の怨念………

 

 

まさか…?

いや…だとしても幸は普通の人のはず…。

 

謎しかない…。

 

そして…奴の居所…深い海の…なんだったか…

 

 

 

ヒントは…桜信濃。

夢渡りのお陰で俺は今の状況に立って居られる。

 

 

もう一つは……

俺の辿った道…だったか

 

 

……道に奴が居るのか?

 

 

 

 

 

 

 

止められるのか?俺は…

 

 

いや…繰り返しても俺は辿り着く!絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なかなかに我慢強い方だと思っていたが…

 

やはり繰り返しは…キツい。

 

やり直そうとして…変えようとして…も、またここにやってきてしまう。

 

 

 

 

 

 

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も

ここに立った。

 

 

 

 

ある時は鎮守府ごと麗達が吹き飛ばされた。

 

ある時は俺を庇った金剛が死んだ。

 

ある時は大ちゃんが桜の死に方をした。

 

ある時は…鳳翔が俺を魚雷から守って…

ある時は…

 

ある時は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…大切な人がさまざまな死に方をするのに耐えられる奴は居ないだろう。

 

自分自身も壊れそうになるんだ…。

 

だから思う筈なんだ

 

 

 

 

 

もう…"受け入れよう"って…

 

その時から歯車は…その道が正しい道だと言わんばかりに動き始めるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体感で何日…何回かわからない…

その度にニヤケ面を強めるキリシマ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度目かの、ある日

 

 

気分を変える為にトイレに行こうとした時だった…。

 

 

「救…君?」

麗が話しかけてきた。

思えば久しぶりに会話をする気がする。

 

感極まって彼女に抱き着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……無理しないで」

 

「え?」

思わず彼女を見た。

 

 

 

 

 

 

 

「…もう無理しないでいいんだよ」

そう、麗が言った。

 

「何で……」

俺しか知らない筈の事なのに。

 

「わかるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって私は…あなたのお嫁さんなんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何となくなんだけど…何かわかる、と彼女は言った。

私達の為にあなたが苦しむのを見たく無いんだ…って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから言ったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…今無理しないでいつするんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

俺は笑いながら言った。

 

 

彼女は涙を流す。

何故だかわからないけれども…溢れて止まらないの…と。

 

彼女は理解してる訳ではない。

でも…それでも彼女は麗だった。

俺が愛してやまない里仲 麗だった。

 

 

彼女にありがとうと言う。

窓から金剛達が見えた…。

 

 

ああ…俺の愛した皆。

 

彼女達を守れるのなら…どんな地獄でも突き進もう?

 

 

 

 

 

…ありがとう…力を貰ったよ。

 

諦めるもんか…

 

 

 

 

 

何度繰り返そうと諦めなかった。

 

救える命も分かってきた。

 

 

壊れそうな心だけど…

あの笑顔の為に…俺はもがいた。

 

 

 

 

 

 

 

徐々にキリシマのニヤケ面が崩れて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある時だった。

 

 

 

ついに…皆を死なせない道を見つけた。

 

 

 

その回のキリシマは露骨に嫌悪した顔を俺に向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴール目前で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ…何で助けてくれなかったの?」

 

「…ダーリン…何で生きてるの?」

 

 

 

 

 

 

深海化したであろう彼女達が俺の肩に手を置いた。

 

 

「置いて行かないで」

 

「一緒に居てくれるって言ったじゃないですか」

 

 

 

 

 

 

背中からそう聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の後ろには…幾百、幾千の「死」が続いている。

助けられなかった可能性の彼女達が…

俺は…その死を否定するように動いた。

 

 

 

「…ごめん」

「助けられなくてごめん」

 

「…ならここに居てよ」

 

「それは出来ない」

 

「何で!?愛してるって言ってくれたのに!?」

「お前のせいで死んだのに!?」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

俺はそれを置いて行く。

 

 

 

 

 

嘘吐きだとか

ろくでなしだとか

クソッタレだとか、死んでしまえだとか…色々と聴こえてくる。

それでも俺は歩みをやめなかった。

 

 

 

 

 

 

その中で…

 

「……頑張ってね」

 

かき消されそうな…寂しそうな声が俺の背中を押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺の勝ちだ」

 

 

 

 

 

グワッ…と

目の前が晴れて…あの景色に戻った。

 

男の目つきは…変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な!

馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な

あり得ないッ!!

あり得ない!!

 

例え

邪魔(桜信濃)が介入しようと…

内なる何か(奴の先輩)が語りかけようと…

 

あの因果の渦から戻ってこられる筈が無いッ!!

 

 

 

 

正解のルートなんか無い。

心を折って…その運命に流されるのが普通なのだ。

なのに!

なのに…この男はそれらに逆らって掻き分けて這い出て来た。

99.99999%…なんかじゃない!

100%を…99.99999999…%に無理矢理して、0に限りなく近い1を持って来やがった!!

 

 

 

 

 

 

 

「退きなさい…?」

 

 

「……桜赤城…?」

 

 

 

 

 

 

 

「…遅くなりました」

突如と現れた桜赤城に救は戸惑う。

 

 

 

 

 

 

「何で…お前がここに?」

キリシマは狼狽した。

努めて平静を装ったが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜信濃は考えた。

いかに彼の味方を増やすか。

 

言葉を使って伝えた。

1番古くから居てどの運命でも最後まで生き残る桜赤城に…。

 

 

何周しても…何度も何度も

紙に書こうが何だろうが伝えた。

 

 

理解してもすぐにループして真っ新になる彼女に…

彼女の魂に刻み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理解し難い内容だった。

桜信濃様は…夢渡りで気をやられたのかと正直思った。

 

でも何故か…指揮官様が、重い何かを背負っている気がして仕方ないの。さっき会ったはずのあのお方が…今にも崩れそうな程に…。

 

 

 

 

そして彼女は桜信濃に言った。

「お見せなさい!全てを…」

 

「…汝の心が焼き切れるやも知れぬぞ?」

 

「…指揮官様がそれで救われるなら!お役に立てるなら!…」

それに…と彼女は続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この身も心も全て…!指揮官様に捧げています!世界を敵に回して焼き尽くす覚悟も!何もかも!」

,

 

 

 

 

 

ならば…と桜信濃は桜赤城に今まで見た彼の全てを頭の中に叩き込んだ。

 

 

 

 

「ぐっ……ギッ…ガァァ!!!」

のたうち回る桜赤城。

その一瞬は、確かに存在した歴史なのだ。その全てを彼女は見ている。

 

ボロボロと涙を流す桜赤城。

それは苦しさからでは無い。

 

 

「指揮官様…ッ…ああ!そんな苦しみを……」

 

 

 

 

「……指揮官様ノ…かカカカカ悲しみに比べたら…こんなの!子守唄程度ですッ!!」

 

 

 

そう、桜赤城はこの中で…唯一記録を見た者になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『幸様…』

 

「何だい?霧島?」

 

『……今日のところは…予定があるので帰りましょう…』

 

キリシマの異様な焦りに幸は行動を起こすのをやめた。

 

 

 

 

まだ大丈夫だ!!

私達の位置がわからない限り…まだまだ奴等を…幸様の目的の為に導く事はできる!!

 

 

 

 

彼等は何もせずに初めて帰った。

 

 

 

 

 

 

 

近海域までの見送りの最後に

桜赤城は言った。

 

 

 

 

 

 

 

「例えどんな崇高な目的があろうとも…かかっていようとも……私は絶対にあなた方を許さないッ」

 

ピクリ…とキリシマが反応する。

 

「何千と気付かなかっ「黙れ小娘…貴様はッ!やってはならないことをやったのよ!覚悟なさい…!貴様が小物と罵った人間に貴様は負けたのよッ!!」

 

 

「何か勘違いしてないかな?えーと…桜赤城君だっけ?」

「僕達はね?救いたいんだ…彼を…そして自分達を」

「次のステージに行く為に必要な事なんだけど…凄いな閣下殿は…」

 

「今日は諦めるけど…次は……ね」

 

 

 

「……いいわ…」

「…一航戦の誇り……いえ、私達の誇りにかけて…全力で叩き潰しますわ」

 

 

「…へえ…よく吠え「既に世界を敵に回す覚悟も、焼き尽くす覚悟も出来てるのよッ!!貴様ら如き…に言われなくてもッ」

 

 

彼女の言う覚悟とは嘘では無いし、その場の勢いでもない。

 

実際に繰り返された未来の中で桜赤城は最後まで戦い続けた。

ある時は深海棲艦の軍勢を、

ある時は迫り来る世界の軍勢を相手に後の歴史に名を刻む程に鬼神の如き戦果を残した。

 

 

 

 

 

「いっそのこと…ここで……」

 

 

桜赤城の周囲に札が浮かぶ。

 

 

 

 

 

「………やめとこう」

 

「然るべき段階を経て我々は天国…理想郷へと到達するのだから」

 

 

「まもちゃんに伝えてくれ」

 

 

「深い…深い場所で待つ…とね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近海域まで見送った桜赤城を迎えた後…執務室に戻ろうとして俺の意識はプツンと途切れた。

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ?!?」

 




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