提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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311話 あの空の向こう側 ⑤ 全ての始まりの場所

「………う…ん…」

ベッドに寝かされる救。

 

 

疲れてたのかな…と心配する面々。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢を見た。

 

暗い…暗い…

彼方の世界の明けるはずの空は…深い海の底に…。

止めどなく流れ込む幾多の怨嗟はさらに海を染める。

 

そして光を求めて動き始める。

更なる夜明けを…空の向こうを目指して…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「目が覚めた!提督…ごめんね」

皆が集まってくる。

長く夢見た…一瞬とは言え、永遠に続くような地獄を味わった。

 

「…・…」

 

「だ、ダーリン?」

 

 

ペタペタと桜や金剛の顔を触る救。

 

 

これが夢か現実かがわからない。

夢でない事を祈りながら触る。

 

「どうしたのデース?」

ニコッと彼女が笑った。

ずっと求め続けていた…ものだった。

 

 

「………」

ぽろぽろ…と…彼の顔が歪む。

 

「……ッ!……うぅっ」

 

彼は声にならない声をあげて泣いた。

 

 

びっくりしながら、不思議そうに彼を見つめる彼女達。

 

 

無理もない、彼の軌跡は誰も知らないのだから…

 

 

 

 

彼女と桜信濃を除いて…。

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官様ッ!!!」

桜赤城が知らせを聞いて飛んできて、号泣しながら彼に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…のを周りは理解出来なかった。

ブインのキリシマの帰り際に見せた複雑そうな表情もそうだが…1時間前に一緒に居たはずの桜赤城が、まるで会えなかった人に久しぶりに会ったかのように振る舞うからだ。

 

 

「指揮官様…お1人で……たったお1人で…私達の為に……為にッ」

「さぞ辛かったでしょう?さぞ苦しかったでしょう?」

 

「お側に居られず…申し訳ありません…」

 

 

 

 

何を言ってるかは分からないが、あの気丈な桜赤城が…ギャアギャアと泣き喚いてるのは普通じゃない…ってのだけは分かる。

 

 

「どうしたのだ?桜赤城よ…」

 

「そうだよ、提督も…桜赤城も何かあったの?」

 

 

 

 

 

 

「それは妾から説明しよう」

と、桜信濃が割って入る。

「…麗殿は何かを感じていたはずだが…」

 

皆が麗の方を見る。

 

「わ…わかんない。でも、救君がとっても無理してるのは分かった」

「不安で…怖くて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜信濃は彼に起こった事を説明する。

 

 

彼の中だけに存在する…

決して誰にも知られる事のない…彼だけの戦いを。

 

正直ゾッとした。

普通なら耐えられるはずはない。

 

だが彼は耐えた。

皆への愛だけで耐え抜いた。

 

 

きっと気が狂いそうだったろう。

正気でいられなかっただろう。

諦めたかっただろう。

逃げ出したかっただろう。

幾度も幾度も皆の死を叩きつけられて…それでも彼は…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン…」

 

「あなた…」

 

「「提督」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

救がポツリと言った。

 

 

「……人を殺した」

幾度となく殺した。

命令を下した。

 

 

彼は明確な殺意を持って幸を何度も殺害し、迫り来る追手も、同じく…。

愛故に憎しみが深いのは彼の短所ともなる。

それが可能性の世界とは言え、皆に苦しい思いをさせてしまった…と

 

 

 

 

 

 

「提督?いいんじゃないかな」

時雨が言う。

 

「え?」

彼は驚いて聞き返した。

 

「提督だって感情があるんだから…。完璧な聖人なんて居ないよ。

僕達だって…提督に何かあったら同じ事しちゃうよ」

 

 

「確かに…指揮官は周りが思う以上に私達を愛してくれてますからね」

「それが強さであり…一気にキレちゃう脆さであるのよね」

吹雪が…。

 

 

「だから…僕達がそうならない為に頑張るんだ。僕達の為に…ありがとう。」

 

 

「お前達……」

 

「良いじゃん、弱さだって脆さだって危なさだって、理解して受け入れてやれば良いんだよ」

 

「そしたら…もっと前に進めるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にしても…桜赤城って、そんなに強かったんだねえ」

 

確かに…と皆が頷く。

 

 

「普段サボってるの?」

 

「はあっ!?!?し、指揮官様!?そんなことありませんからね!?」

 

「…必死だったのよ……今じゃ考えられないけれども…国や世界の軍隊と戦うってのは…」

「それに……よくわからないけれど、あの憎しみは尋常じゃないわ…深海化すれば力が増すってのは本当みたいね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……人の深海化…

艦娘の深海化…

 

幸の存在…

 

俺を救いたい…

 

もし…あの未来と関係があるのなら…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

にしても…深い…場所…ねえ

 

 

 

 

 

深いと言うなら

マリアナ海溝付近だと思っていた。

だが、周辺を散策しても何も発見出来なかった。

 

 

 

 

 

「深いってのがよくわからないですね」

と、桜ベルファストが言う。

 

 

「海の深さではないのかも知れませんね…」

 

「と言うと…?」

 

 

 

 

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俺にとっての深い場所…

 

 

 

 

 

そして…皆にとっても………

きっと奴等にとっても…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ……」

 

 

「何か分かりましたか?」

 

「いや…うーんでも…」

 

 

 

 

「…なんか繋がった気はする!今すぐ、大本営の大淀と繋いでくれっ!」

 

 

 

 

 

 

 

気にした事は無かったが…

 

 

 

俺のルーツとも言える場所があった。

大本営の大淀に確認をとった。

 

「お久しぶりです!ご機嫌いかがですか?」

 

「色々大変だよ」なんて話しながら、本題に入る。

 

「あー…俺が最初にイカダで居たのはどこだった…?」

 

 

 

 

『おや、初めてそう言う話題に触れますね?…えと…あれ?知りませんでしたか?ええとですね…』

 

 

 

 

彼女は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行くの?」

 

「麗ちゃん…」

 

彼は今からソコへ出撃するらしい。

未だにさっきまで談笑してた人が私達にとって敵なんて信じられない。

 

でも…世界をめちゃくちゃにするなら…

どうにかしなくてはならない…。

 

 

 

「何だかね?不安なんだ…。救君がもう帰ってこない気がして」

 

これはなんだか感じる胸騒ぎなんだ。

 

 

「………」

 

「どこにも行かない…よね?」

 

 

 

 

 

 

「行かないとも」

「俺はずっと皆の隣に居るよ」

 

 

 

戦場に生きる者にとっての命は明日とも知れない。

だが、心ではいつだって隣に居る。

覚悟もしている。

 

でも…

 

 

 

 

 

それは…君達を幸せにしてからなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も行く」

 

 

「は!?何言って…「言ったでしょう!?私は…あなたのお嫁さんなの!」

「大好きな旦那さんを待つだけじゃないの!」

 

「私達だって…あなたを守れるんだよ」

 

 

麗には何か確信があった。

このまま見送ったら…もう2度と会えない気がする…という。

だから、是が非でも付いて行くと決めていた。

 

 

「…閣下……麗提督の我儘を聞いてもらえませんか」

 

「猛武蔵……」

 

 

 

「……わかった」

 

無茶はしない事を条件にOKを出した。

それはお互い様だろう?と言われた…ぐぬぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり…に来たな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『鉄底海峡ですよ』

 

 

『アイアンボトムサウンドです』

 

『そのど真ん中からコチラに来るようにあなたは居たのですよ』

 

通信越しに大本営の大淀は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイアンボトムサウンド…」

 

 

「え?」

 

「アイアンボトムサウンドだ」

 

 

 

 

 

 

彼が殺されてこの世界に来た時

最初の深海棲艦が発見された時

海の怨念が湧き出て戦った時

 

 

 

 

 

全てはここから始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…来たね?まもちゃん」

「……お邪魔虫も居るみたいだけど…」

 

 

 

「……未だに幸ちゃんの目的が分からない」

「君の正体も…何もかもが」

 

 

 

「だから言ったでしょ?僕は大好きな君を救いたいんだ。そして僕を救いたい…僕の艦娘達も…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼はにこやかに言った。

 

 

 

「僕は未来の君なんだ」

 

 

 

 





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