提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「右ッ!!」
桜赤城と猛武蔵が連携を取る。
流石は歴戦の空母か…
戦闘指揮のレベルが高い。
「おう!!」
『『お姉様!本命の艦爆!左からきます!!』』
「…ッ!!」
見切られた!?
武蔵の砲撃に気を逸らさせ、私の艦爆をぶち込む作戦なのに…!
『『ええ!さすがキリシマ!』』
『『お姉様…』』
『『早く…妹達を……会いたい…この手で抱き締めたいの』』
「バーーニング…ラァブ!!」
「発艦します!!」
『無駄よ…』
悉くを迎え撃つショウカク。
「ひえーー…向こうのコンゴウじゃないけど2人居るみたいデース」
『……勘違いしてない?あのこは1人よ?』
「なっ…」
「…あの子は…ずーーっとコンゴウよ?」
『『違うッ!!妹達は私の中に居る!!体を無くしただけだ!!あの空の向こうなら…きっと…きっと!!」
初めから霧島でも榛名でも比叡でもなかった。
金剛ただ1人だったのだ。
『お姉様…必ず…暁の…水平線……に…』
霧島を深海棲艦との戦いで亡くし
『お姉様…必ず…生き延びて下さい…比叡は…ここで奴等を食い止めます』
『…行かせるもんか!!お姉様の元へ行かせるもんかぁぁあ!!』
比叡は世界政府軍との撤退戦で自分を庇い命を落とした。
『オ、おねエサマ…ドウカ…楽にして下サイ…せめて…大好きな…お姉様の手で……』
榛名はこの世界に来てから、深海化が進行して…この世界の艦娘に大破まで追いやられた。
僅かな理性で金剛に雷撃処分を懇願し、泣き叫びながら金剛は彼女を眠りにつかせた。
妹を失った悲しみに耐えきれず…壊れた心は
虚像の妹を生み出した。
「………」
『…私達も限界みたい』
「2人ともお!もう戦わなくて……いいんだ………よ?」
それを言いに来た彼女が見たものは…
「桜赤城ッ!!」
「金剛!鳳翔ッ!!」
彼が私の名を呼ぶ。
私達と対峙するコンゴウやショウカクはもう…深海化がかなり進行している。
「2人とも…ごめんなさい…私のせいで…」
幸が泣きながら彼女達に話しかける。
だが、彼女の声はもう…2人には届かなかった。
「うう…ッ…2人共…」
ショウカク達2人がこちらに来た。
そして救と麗目掛けて殴りかかる。
「……2人共…?」
「させないデース!!」
「くっ…この!!」
金剛と猛武蔵がそれを受け止める。
彼女達は深海化しても尚、主人を…残されたたった1人の家族を守ろうとしていた。
楽園に行きたい。
皆に会いたい…
それ以上に…彼女達は
幸の寂しい顔をもう見たくなかったから。
『『ガァァァァア!!』』
「もういいんだよ!2人共!お願い!止まって!!ね?!皆でここでやり直そう?」
「ダメデース!もう届きません!!!」
「…麗ッ…逃げろ!!」
「そんな……」
長く、憎しみに支配されてきた…壊れた彼女達はもう元に戻ることはない。
『…ユキヲ……』
『……カゾクを…』
「…ショウカク…コンゴウ、ヒエイ、ハルナ、キリシマ?来なさい」
『『?』』
2人が声の方を見る。
そこには…桜赤城が泰然と立っていた。
「姿が変わろうとも…己の主を守ろうとする、その姿勢に敬意を表するわ。さすが…大戦を生き残った艦娘ね…。……だから
「あなた達が見せてくれた…未来…鎮守府最強を見せてあげる」
「…行くわよ!猛武蔵!金剛!鳳翔さん!!」
「「「おう!!」」」
『『………』』
「無論…あなた達5人じゃあ…妹達の魂を背負って居ようとも私には敵わないわ?」
だから…
「だから…生まれ変わって…5人でまた来なさい…相手してあげるわ」
桜赤城は知っている。
可能性の未来を見た彼女は…失う悲しみを誰よりも知っている。
だから…
彼女はコンゴウを否定しない。
もし、自分が桜天城や桜加賀を喪ったら…きっと同じになるだろうから。
だから…全力で彼女達に敬意を払って迎え撃つのだ。
「…さぁて…ショーカク!sleepする時間デース」
「…眠って気持ちよく目覚めて…帰ってきてください」
『……』
4人が構える。
「せめて…泡沫の時でも…安らかに」
放たれた光は彼女達へと降り注いだ。
生まれ変わって…
またおいで
愛する家族は待ってるから……
まるで慈しむように
まるで労うように
まるで旧知の仲のように
優しい雨は彼女達に降り注ぐ
『…ありがとう』
と、聞こえた気がした。
倒れ込む2人に幸が走り寄る。
彼女達は光に変わりながら…
幸に話しかけた。
『ごめんね…幸ちゃん…叶えられなかった…』
「いいの!ね?やり直そう?ここなら!ここなら…」
『ここの人は…あなたを認めてくれるのね?…あなたを…皆を…』
うんうんと泣きながら頷く幸。
『それを見届けられないけど…』
『きっと…』
彼女達は言う。
『……また生まれ変わっても…あなたと一緒に戦いたい…から……』
きっと会いに来るから。
ありがとう…
1人にして…ごめんね…
彼女達は光に変わる。
掴めども掴めども
時を共にした彼女達は手から擦り抜けて行く。
もう戦わなくていいんだよ
この一言を言うのが別れの手前だなんて
たった一言を言うのに何年もかかって…
まだたくさん伝えたいことは有った。
まだたくさん聞きたいことは有った。
私なんかより…
あなた達が…本当の英雄なのに
ごめんね
私が…僕がもっとちゃんとできてたら
君達を振り回さなくて良い人だったら…こんなことには…
ねえ?
恨み言の一つでも言ってくれたらいいのに
無能な指揮官と詰ってくれたら気が楽なのに
私は…
その時…
その光がぐにゃりと曲がった。
「…ッ!?」
「……何?これ?」
救、迅鯨、麗、幸、金剛、鳳翔はその捩れた光に飲まれてしまった。