提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
御蔵 幸
彼女の目指した理想郷は空の向こう側には無かった。
焦がれた俺の居た世界も…そうとは言えなかった。
軍所属の彼女であるが…
一連の行動に関しては、クーデターが起きている訳でもなく
例え夢の中の話としても現実ではない為に起こり得て居ない。
また、彼女が深海棲艦との深い繋がりを証明出来るものはない。
俺が前例であるように…。
故に彼女はお咎め無し…と言うか、審議すらしようがなかった。
あの不思議な体験は夢だったのか…
そもそも…
あの出来事自体が、どこかの可能性の先ではないかと思う今日。
鎮守府は…
そして、彼女はまた俺達の敵となるのかー?
バタァン!!!!!!
「やっほー!まもく〜ん♡来たよー……って!!麗!?何で君が居るのさ!?」
「そりゃ…奥さんだもん!居るよ!!」
「君の鎮守府は!?」
「リシュリュー達に留守番をお願いしてるよ」
「何でだよー!ちゃんと仕事しないと!!」
「あ、あなたに言われたくないよ!!」
「僕はダーリン君と甘いひと時をすごすんだよー!あぁー!!まも君の甘ーいひとときがぁあ!!」
「……賑やかだなあ…」
「お邪魔します」
「閣下の周りはいつもああなのですか?」
ブインの金剛達が言う。
「ん?ああ…いいものだろう?」
「…まあ…残念なことに…」
「これからは君達もあの中に入る訳だ」
「…ッ」
ブインのメンバーは目を潤ませた。
「…さぞ辛かったろう。悔しかったろう。無念だったろう」
「だが…道のりはどうであったにしろ、今はここに辿り着いた」
「君達の言う楽園には程遠いかも知れないが…見て欲しい、あの子達の笑顔を」
「…ちと偉そうだけど…許して欲しい」
「海軍…副元帥として…」
「ブイン提督…御蔵 幸…以下艦娘達」
「世界を跨いでも尚、その強い絆で結ばれた君達に…敬意を」
「俺は…ここに居る皆は知っている…君達がどれほどに凄い存在かを…」
「だから…」
「友として…戦友として…言わせて欲しい」
「よく頑張った…。よく耐えた。よく泣いた。……だからその分!これからは楽しくなるし、幸せになれる」
彼は一人一人に語りかけて頭を撫でた。
変な言葉だった。
とてつもなく…めちゃくちゃで…突飛で…
でも暖かかった。
「マモ君!好き♡好きい♡愛してる〜嬉しいよおー!もっと褒めて!もっと愛して〜♡」
金剛以外で目を♡にしてる奴は初めて見たぞ?
「ちょっと!わたしの旦那さんだよ!離れてよお」
「僕の旦那様になるんだよー!」
「ダメ!私の親にも挨拶してるんだからね!」
「はーー!?…へーーん!ぼ、僕のお父さんだって…!マモ君のこと…認めてるもん!!」
「「は?!」」
その場に居た全員から発せられた声。
「初耳ですよ!?」
「やり合ったんでしょ?お父さんに勝ったんでしょ!?なら大丈夫!認められてるよ!」
お父さん…とは…………うーーーん…。
「それにね?私はその娘だよ?そう簡単に諦める性格じゃないよ」
「…何年振りかな?あの子のあんなにはしゃぐ姿は…」
「戻って来られた」
「あの子達が…皆が…私の手を引いてくれた…」
金剛が幸の手を握って言う。
「辛いことだらけだったんだと思いマース…でも…でも、それでも変わらなかったものが1つありマース」
「……なに?」
「あなたが…あなたの艦娘に愛されていた事…デース」
「彼女達はあなたの思いを叶えました。ええ、それが例え結果として理想とは異なるものとしても…。愛する人の為なら…私達は命でも懸けます」
鳳翔が彼女の肩に手を置き優しく喋りかけた。
「あなたが迷いそうだから…手を引くんデース」
「…もう少しだけ待ってみて下サーイ。きっと彼女達はあなたの元に帰ってきますカラ」
時間にしては全然経っていなかった。
白昼夢…というやつか?
あの子達が見せた優しい夢だったのか…?
それは分からない。
でも…結果として俺も…迅鯨も…皆も救われた気がする。
「会いたい…よぉ…」
「皆に…また会いたいよお……」
「数日お世話になりました……ありがとうまも君…」
「……麗…も…その……ありがと…」
この数日で彼女なりに考えを噛み締めたらしい。
それを聞いてとても嬉しそうにする麗。
「……ッ!!うん!うん!!私達…友達に…なれる?」
「…あそこまでぶつかってくれる人はて友達じゃないよ……」
「え…」
「もっと深い…親友になりたい」
「…!!うん!なろう!なる!」
抱き合う2人を見ながら数名に指示を出す。
彼女を送る為だ。
「その必要はないですよ」
その声…声の方に振り向く。
大本営からの手伝いか?と彼等は思う。
だが、たった1人だけ違うと思う人が居る。
「あ………ぁ」
幾年を越えただろうか?その想いは。
いかほどに積もっただろうか?その想いは。
足が自然と海に向かう。
濡れてしまおうが構わない。
震える体を無視して必死で泳いだ。
手を伸ばして伸ばした。
確かめたくて…触れたくて。
逆光で顔が見えない。
私は涙と海水で口の中がしょっぱい。
「ったく…風邪ひきますよ?」
ぐいっと引き上げてくれてやっと顔が見えた。
「寂しかったな…提督」
涙でぐしゃった顔の皆が居た。
「ぁああああああ!!!うわぁぁああん」
彼女は飛び込んだ。
彼女に出来る最大限の力で彼女達にしがみついた。
彼女達が優しく…強く受け止める。
「ごめんね!ごめんねえええ」
「…よく生きていてくれた…それだけで…それだけでいいんだ」
曰く、語り掛けてきた人が居たらしい。
アンタ達を待つ人がいるさね。
ボーッとしてないで早く行きな!
慌てる私達に彼女は言ったんだ。
真っ直ぐ行きな!何があっても真っ直ぐにね!
って…
「あと…」
「あと?」
「自慢の子供達に伝えて欲しい」
「 『あたしゃ…いつでも…いつまでも思って祈ってるからね』と」
それを聞いて俺たちは泣いた。
嬉しくて…皆で泣いた。
「…さて、今日も頑張るさね。ん?なんだい?」
「親に捨てられたのかい?」
「ならもう安心しな!今日からここがアンタの家さね」
「ここ?ここは…優心の家さ……え?名前が微妙?!」
「この名前はねえ……優しい…優しい心を持った子に…という名前なんだよ!」」
「ねえ?まも君?」
「ん?なあに?」
「好き…です。褒めてくれたあの時から…」
「…だから…もう間違わない。…僕もあなたを支えられる人になりたいな」
「皆とならそれが出来ると思うんだ」
「ありがとう。俺も…新しい君を見てくよ」
「…麗にも負けないからね!たっくさんアピールしまくるからね!」
「支えるって言ってくれたんだから……責任とってね?」
「こらー!幸ー!ズルイデース!!そこは私のポジション!」
「譲れませんし、譲りません」
「私の場所ー!救君ー!痛いよー慰めてー」
不思議な体験は…新しい仲間を増やして、鎮守府をさらに賑やかにした。
はい、10パートの長編でした。
僕っ子キャラは1人くらい増えてもええかなあ…と。
とあるキャラに うん?と思ったかもしれませんね。
そーいうことです。
色々と後に繋がる場面もでてきたかも……しれませんね。
すこしでもお楽しみ頂けたなら幸いです。
感想などお待ちしてます!!