提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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本日2話目の投稿です!!


323話 羽黒と1日夫婦 ②

くううっ…

なんて強さ……

 

徒手格闘じゃ限界が…

 

 

 

軽巡棲姫…遠い…

 

 

 

 

 

「はぁぁあ!!」

 

『弱い…』

 

「きゃぁあ!!」

近付くことすらかなわない。

どうすれば?

どうすれば良い?!

 

 

うるるっと涙が滲んだ。

 

『羽黒さん!?支援部隊…出ますから!耐えてくださいッ!!』

大谷から通信が入る。

内心ホッとした。

 

 

 

 

『…泣き虫か?…おや?仲間でも来るのか?』

『……そこで震えていろ?此奴が死ぬのも、仲間が死ぬのも…仕方ない事だから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私1人じゃあ…仕方ないですよね。

だって…弱いですから…。

なんとか凌いで…増援を待って…戦うべきなんですよね…。

 

私は姉さん達とは違う…。

 

 

『……羽黒?』

 

妙高姉さん…?

もう…私1人じゃあ…

 

『羽黒の考えてる事は…わかるわ…』

『だから…甘ったれるなッ!!!』

 

 

でも…!でも!

私は…足が震えて…これ以上は…

 

『私達の言った言葉…思い出しなさい』

 

姉さんはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだ…

そうなんだ。

 

 

 

 

 

姉さん達程に自信も愛嬌も強さも無い。

 

提督はいつも頭を撫でてくれる。

応えたい。

 

出てきても震えて何もできない…こんな自分が嫌だ。

 

 

 

 

 

 

大切なものを奪われて壊されて…

ダメだったって…自分に力が無かったから無理だった…って…

 

そんなの…納得できるもんか!!!

 

 

 

私が言ったんだろう?

私だけを見てって!!!

 

 

なら…逃げるな!!諦めるな!私ッ!!

 

 

 

 

やられて…少し煤けたマフラーが目に映った。

 

覚悟は決まった。

 

 

 

「私が…!私が…ッ!!あの人を助けるんだァァ!!」

 

「私の…大切な人を…返せ…返せえええええええ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ない筈の…武器が現れた。

妖精さんがニコリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!皆さん!妙高さん!応援に……

 

と言う大淀に足柄がニコリと笑いながら言う。

 

「…何言ってんのよ…あの子は大丈夫よ」

 

 

「だって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女を誰よりも知る彼女達は…

誰よりも知る彼女達だからこそ言う。

 

 

 

 

 

「「「あの子が1番強いんだから」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

那智はフッと笑い言う。

「ただ一歩足りないだけ」

 

足柄はモニターを見つめながら言う。

「スイッチの入ったあの子は…凄いわよ?」

 

妙高は足柄の肩に手を置いて堂々と言う。

「妙高型の…誇り高い…武勲艦なんですから」

 

.

 

彼女達の目は…見送りの時の心配な目では無かった。

そう、それは恋愛に関して。

 

戦闘は…守ることは…あの子が1番なんだから…と。

自信を持った目で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわぁぁああああッ!!」

 

羽黒は駆ける。

守りたい人目指して。

 

 

 

そして思い出す。

暖かな姉妹の姿を…。

 

 

『一歩を踏み出しなさい?』

 

『恋なら…私達に叫びなさい?力を貸すわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…戦いなら…1番護りたいあの人に叫びなさい?』

 

 

『きっとあなたを押してくれるから』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は…ぎゅっと左手を握って叫んだ。

あの時みたいに…もう一度!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督…ッ!!提督ううう!!!」

 

「私に…力を…!あなたを…守りたいものを守る力を貸してくださぁぁぁあああい!!!!」

 

 

 

 

その声に…彼は応えた。

 

 

「羽黒おおおお!!!」

 

 

左手が…光った。

背中に何かを感じた。

 

 

 

 

行けって聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒 改

 

 

 

 

 

 

 

 

一歩踏み出した。

 

 

 

 

足りないッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

なら!

もう一歩!!自分から前へッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒 改ニ 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「返してもらいます!私の大好きな提督さんを…」

 

 

 

『フン!小娘1人…捻り潰してやる!!』

 

 

「舐めるなよ…お前はその小娘に倒されるんだからな…」

 

 

『……ナッ!?』

 

 

 

 

 

 

奴が来る!

無数のル級やロ級を薙ぎ倒しながら単身でコッチに向かってくる!!

 

 

 

「あなたは許さないッ!!大切な人を傷付けて…許さないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

『チィィ!!!』

棲姫は救を放り投げた。

そして羽黒向いて砲撃を始める。

 

 

 

 

「あたる…もんかぁ!!!」

羽黒は躱す。

全てを躱す!!

 

 

 

『ならば…コレな…グァア!?!?』

 

突如爆発する棲姫の砲身。

 

 

『マサカ…まさか!?コイツ…()()()()()()()()()()()()()()と言うのか!?』

 

 

『まだ砲身は……グゥウウウ!!?』

 

しかし、棲姫の砲身から弾が出ることは無かった。

砲撃しようとする全ての砲身に寸分違わず撃ち込んだのだ。

 

 

 

『クソッ!逃げ…ギャアア!!』

逃げようとする棲姫の背に砲撃が命中する。

 

「逃がしません…!絶対に!逃がさないッ!!」

 

 

棲姫はゾクリとした。

以前見た狼…奴以上の何かを感じた。

勝負は決した、私は奴には敵わないと体の奥から伝わってくる。

 

 

 

 

 

だが…

『なら…死ぬとてタダでは死なん!!コイツを…殺して……

 

棲姫は後ろに浮かぶ救を殴り飛ばした。

 

「ガッ…ハッ」

海面から掬い上げられ飛ばされる救。

 

そして…トドメを刺そうと…殺そうとした。

 

 

 

 

 

それを見た羽黒は…ついにキレた。

 

 

 

「させるかぁぁああああッッ!守るんだ!!私が…守るんだぁぁあ!!」

 

 

 

羽黒 改ニ 怒りの超過高揚状態(オーバードライブ)

 

 

自分が傷つく事よりも

負けて死ぬことよりも

あなたを失う事の方が…きっと…いや、絶対に辛いから!!

だから…何があっても…どうなっても!!

己の限界を超えて…艤装が悲鳴をあげようとも!

お前が…その人を傷つけるのを許さないッ!!

傷つけさせてしまった私を許せないッ!!

 

 

 

絶対に守り切る!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぐ…ろ?」

羽黒のオーラは赤黒くバチバチと音を立てていた。

 

 

 

 

「あの子…」

妙高は表情を歪めた。

 

しかし…那智だけは一切変えなかった。

「……清濁併せて受け入れる事も大切なんだ」

「…飲まれるな…お前なら大丈夫だ…羽黒」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒は辿り着いた。立ったのだ。彼の前に。

奴が出す手よりも速く割って入り、棲姫の腹に蹴りをぶち込んだ!!

 

 

 

ドッ…

バキバキバキと腹から音が聞こえた。

 

『グッ…ギャ…ああぁぁぁああああ!!』

 

 

飛ばされながらドンと聞こえた。

あの小娘が砲撃したのだろう。

回避に専念––––––

 

 

いや

 

 

 

あり得ない

 

 

 

 

 

なぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ほら言ったでしょ?飲まれかけてるけど…もうああなった羽黒は…負けないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

羽黒の拳が棲姫に突き刺さる。

 

 

 

 

 

何故奴は…着弾よりも速く私を殴り抜けた!?!?

 

さらに後方に加速した棲姫…

 

 

 

『…デタラメだ!あり得ないッ!!あり得–––

 

そこに…放たれた砲撃が命中する!!

 

『くそ!くそおおおお!!!!』

 

 

ドガァァアン!!と言う音と共体がボロボロになって行く棲姫。

 

それでも羽黒は攻撃をやめなかった。

何度も何度も何度も何度も何度も打ち付けた。

それは棲姫は消え去った後も海面に撃ち続けられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの瓦礫になんとか登った救。

救には彼女の背しか見えなかった。

怒りを爆発させて力に換えた彼女。

 

行き過ぎた怒りは身を焦がす。

その行く果ては…深海の如き深い闇…。

 

 

 

「…うっ……ぐうっ…」

彼女はうめきながら海面を撃ち続けている。

 

 

「羽黒……?」

 

「ぐううううっ!!」

 

 

 

 

 

 

羽黒が更に苦しみ出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「羽黒さんが!!足柄さん!」

その様子を見つめる大淀が慌てて彼女達に呼びかける。

だが、彼女達は涼しい表情を変えなかった。

 

 

 

 

 

 

それは信じてるから。

大切な妹を…そして

 

 

その手を引く彼のことを。

 

 

 

「…大丈夫、大淀」

 

「でも!!」

 

「素敵な旦那さんが居るんですから…きっと届きます」

 

 

 

 

 

「ぐぅぅううあ–––––––––––あ…

背中に冷たい…でも暖かい感触が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれ?ここは………?

あ…提督さん?

 

 

え?帰ってこい?

 

えと…私…?

あ……はい

 

そうですね…

 

悔しくて…腹が立って…自分でもびっくりするくらいの…怒りでした。

 

…ダメですね…私…

燃やしすぎました…。

 

もう…心は……深く深く…

 

でも…あなたを守れてよか–––––––

 

 

あ………

 

 

 

 

 

 

キス…

 

 

 

 

 

 

 

 

指輪が…光っ…

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…眠った姫は…王子様の……で目覚めるって言うじゃない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………て…提督?」

気がつくと私は…後ろから提督に抱き締められていました。

 

寒い冬の海で…凍えながらでもずっと提督は私に抱きついて私の名前を呼んでくれていた。

 

 

私を深い闇から引き上げてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…無事でよかった…」

羽黒は泣きながら振り向いて彼を抱き締めた。

己のボロボロの体より、闇堕ちしかけた事より…

あなたが無事でいてくれた事だけが全てだから

 

 

 

 

 

「提督ッ!?寒いのに!何で!何で!?」

 

「君を放ってなんか…行けない」

「ありがとう……羽黒…ありがとう…ッ」

「助けてくれて…戻ってきてくれて…」

 

 

 

「……もう…提督…」

 

「…寒いから…早く陸に行こう…」

 

「はい…」

羽黒は少し煤けたマフラーを彼にかけた。

ありがとう…と、彼は言った。

 

「でも……」

と、彼女は彼に更に引っ付いた。

少しでも…暖かいですから…と。

 

 

 

 

「…愛してます」

「あなたを…誰より何より愛しています。あなたが背中を押してくれたから…頑張れたんです。あなたが…引っ張ってくれたから…戻って来れたんです」

 

「あなたを守ることができて…良かった」

 

 

 

 

と、羽黒は彼の唇に自分の唇を重ねた。

姉達に力を借りる事なく、自ら一歩進めて…。

 

 

「…寒いですよね…でも…迎えが来るまで…寒いから、もう少し…このままで…居ますね」

と、羽黒は彼を抱き締めて…

「口も…寒いので」

とキスをして頬を寄せる。

 

 

 

 

 

 

「…よく頑張ったわね」

姉達は誇らしい妹を優しく迎えた。

 

 

 

「…今日だけよ?そんなアツアツなのは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




投稿の遅れ…とは?
いや、遅れますよ?遅れますとも…



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