提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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324話 羽黒と1日夫婦 ③ 2日目

「はっ!?今何時…!?」

「え!!も、もう夜中!?!?」

 

羽黒が目覚めた時、時刻は夜中の2時になっていた。

相当な力を使った結果、彼女は入渠中も健診中も眠ったままだった。

 

 

 

隣を見たけど…誰も居なかった。

医務室の中を見渡しても……

 

あの人との時間が終わってしまった。

寒い思いも痛い思いもさせてしまった…

その上…私は……

 

 

 

 

「……う…し、仕方ないですよね…」

ぽろぽろと泣けてきた。

 

 

 

 

 

 

うん…私がもっと強かったら良かったんだ。

でも、彼が無事だから…コレでいいんだ。

きっとあの人も寝てるだろう…姉さん達も……。邪魔しちゃいけないから…今日はこのまま…医務室で…「起きた?羽黒」

 

妙高だった。

「妙高姉さん…ごめんなさい…起こした?」

 

「そのまま寝てしまうの?」

 

「う……だってもう…終わったから…」

 

「何が?」

 

「夫婦の日も…提督も寝てるだろうし…」

「あの人を…酷い目に遭わせてしまったし…」

 

 

「頑張った」

 

「え?」

 

「頑張った…可愛い妹よ!何か願いはあるかな?」

ひょこっと足柄が妙高のの隣に出てきた。

 

「そうだ…単身で敵を討ち取って、提督を守り切った…勲章モノだ」

那智も出てきた。

 

「那智姉さんまで…私にそんな資格…」

 

バチコン!と那智にデコピンされた。

「はう!?」  

 

 

 

 

「うう…願い……願い…」

 

 

 

 

 

「も、もう少し…あの人との時間が欲しかったな…って…思います…」

 

 

「ふむ…!願い確かに聞いた!」

 

「え?!?え!?」

 

「頑張った妹!可愛い妹の願い…それは叶うだろう!いや!叶わせる」

 

 

 

 

 

「な?提督」

そう呼ばれた先には提督が居た。

 

 

「え!?提督?!いつから?」

 

「提督はずーっとあなたの隣に居たわよ?片時も離れずね?今はタイミング悪く、飲み物取りに行ってたみたいだけど…」

 

 

 

「ね?提督?羽黒のかわい〜〜いお願いは叶うかしら?」

 

 

 

救は険しい顔をする…ダメですよね…?

 

「皆から言われた」

 

「…ッ!ごめn「たった1人で…あんなに素晴らしい功績を残したのに…私達は何もできず…ハイ終わりはダメだと」

 

 

「え?」

 

 

 

 

「明日の羽黒の仕事は皆が引き受けるそうだ。だから…もう1日…休めとの事だ」

 

 

「羽黒…明日も1日一緒に居てもいいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!いいんですか?」

 

 

フフ…と皆が笑う。

じわじわと何かが込み上げてくる。

嬉しくて…嬉しくて…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…おはようございます!提督!」

 

「おはよう…羽黒」

 

 

 

 

前代未聞の2日目–––

それは周りからの羽黒への武勲とも言えるもの。

 

「羽黒にもう1日あげてください」

そう艦娘達は俺に嘆願した。

 

俺から言っても良かった。

果てて眠る彼女を見ながら思った。

必死で戦って…眠る彼女。

暫く目を覚さない彼女。

 

響の時とは違い、楽しむ余裕が無かった。

そんな彼女にもう1日くらい…と。

 

だが…そうはいかない。

 

何故なら守ることは彼女の役割だから。

2人の時間や思いを犠牲にしなければならない時がある。

戦争の不条理さにどれだけ正論で正面から挑んでも勝ち目はない。

 

 

 

そんな俺に彼女達が言ったのだ。

「素晴らしい功績だと思いませんか?街の被害を最小限に抑えてあなたを守り切りました」

 

彼女達は信じていた。

数名は実は救援に向かってはいたが、決して羽黒が負けることはないと。

 

「林さんとの戦いの時…羽黒ちゃんが1番に叫んだんだよね。提督ー!いけええ!って」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女が目の前に居る。

 

 

 

2日目…と、今までにない事は彼女に大きな喜びを与えたらしい。

 

「えへへ……夢じゃない…んですね。提督さんが居てくれるの」

 

「夢…かもよ?」

と、意地悪をしてみる。

 

羽黒が少し困った顔…から変わって笑顔で言う。

「なら……その……えと…確かめないと…ですね?」

 

ん…と羽黒が目を閉じて合図する。

ちゅっ…と唇同士が触れる朝の挨拶。

 

 

でも…羽黒の心は少し曇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

街に行く船から降りて…すぐのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…羽黒?」

 

 

「はい!」

 

「あの時…俺に叫んでくれて…ありがとう」

 

「……え?」

 

「林との時だよ。提督ー!いけえー!って」

 

「あ!ぁあ……はぅう……あ、あの時は…必死で…本当に必死で…」

 

「君の力が…何だろう…俺に入ってきた感じかな?とにかく…たくさん力をもらったよ」

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

彼が頭を下げた。

何故だか…何故だか分からないが涙が溢れてきた。

 

 

「ち、違います」

「お礼を言わなくちゃいけないのは…私なんです」

 

 

「?」

 

「私を見捨てないでいてくれて…ありがとうございます」

「こんな私を…」

 

「…私ッ!提督を無傷で守りきれなかったんです!最初も提督とのデートに浮かれてて…提督に庇われて…」

 

「早く提督を助けなきゃって時にも…勝てないって足が震えて…大淀さんの救援の通信が来た時…一瞬安心しちゃったんです!納得しちゃったんです!!無理だから皆を待とう…って!!」

 

 

「でも…助けに来てくれたじゃないか…」

 

「でも!!あなたに温かい力を貸してもらったから…勝てたんです」

「それなのに!黒いのに飲まれてしまって……」

 

「迷惑ばかりかけて!!今日だって!!あんなになって眠ってた私が悪いのにッ!!…グスッ…」

 

 

 

「私は…喜んだんです…姉に…皆に褒められて…あなたとこうやって居られることが…こんな…こんな私がッ–––––––

 

 

 

 

 

 

 

私は彼に抱き締められていた。

 

 

「え…あの…提督…離してください…私にそんな資格…「ある」

 

「ないで「あるッ!!」

 

「離さない…俺は絶対に離さない」

「君に嫌われようと、突き飛ばされようと離さない」

 

「………ッ!?」

 

 

「羽黒が頑張ってくれなきゃ…俺は死んでた」

「お前が…自分を削って戦ってくれなきゃ俺はここに居ない」

 

 

 

 

 

 

「だからごめん……辛い思いをさせて…。そしてありがとう…俺を…助けてくれて」

 

 

「その後も…温めるようにそばにいてくれて…ありがとう」

「君が目を覚さなかったらって…不安だった…。起きてくれて…変わらず俺のそばにいてくれてありがとう…」

 

 

 

「…ズルイ…」

「そんな事言われたらぁ…ぅぅ…ぅあ…うわぁぁぁあ」

 

「ごぢらこそ…私に一歩を踏み出す後押しを……温かい力を貸してくらてありがとうございますぅぐぅ」

 

 

力一杯抱き締めあった。

 

「離したくないです!離れたくないです!見捨てないでください!必要としてくださいぃぃ」

 

「離さないよ、離れないよ」

「見捨てなんかしない…君が居ないとダメだ」

 

 

「もっと…もっとください…あなたの温もりをください」」

 

 

生きてるから

あなたの温もりも優しさも感じるから。

 

 

だからめいいっぱい抱き締めあって…キスした。

 

「好きです」

「大好きです」

「愛してますッ!!」

 

 

「もっと抱き締めてください!撫でてください」

「私を見てください!私を…私を…」

 

ただひたすら彼を求めた。

ずっと胸にしまってた不安とか…思いを全部ぶつけるように。

 

 

 

ずっと…ずっと離さなかった。

 

 

ずっと…そうだったんだ。

私はこの温もりを…手放せない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣き腫らした2人が落ち着いた昼下がりに…2人はやっとはなれた。

 

 

 

 

 

 

「マフラー…少し焦げたな…」

「新しいの…買う?」

 

ううん…と彼女は首を横に振った。

「…あなたがくれたものですから…大切にしたいんです」

 

「この温もりは…幸せなんです…それに…あなたの匂いがするから…抱き締められてるみたいで……えへへ」

 

「ああ…俺に貸してくれてたから…」

彼女はマフラーに埋もれてえへへと笑う。

そして

「でも今は…あなたが居るから…」と抱きついて埋もれてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランチ…行きませんか?」

 

「うん、行こうか」

 

 

と、歩き出す俺に彼女が言う。

「…手繋いでくれないんですか?」

「言ったじゃないですか……私だけを見てください…って……」

 

「ごめんごめん」

と、2人で手を繋いで歩き出す。

 

きっと泣き腫らした酷い顔だろう。

でもいいんです。

これは私達2人だけの…ものだから。

 

 

ほんの少し私より早い歩幅に合わせて歩く。

私がそうしたいから。

きっと言ったらこの人はゆっくり合わせてくれるだろう。

でもいいんです。私が…そうしたいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……前に座らないの?」

 

「あの…隣から離れたくなくて…ダメですか?」

ランチの時も羽黒は俺の隣から離れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランチ後は恋人繋ぎでの腕組みだった。

信号で立ち止まる度に羽黒は頭をコテンと預けてくる。

チラッと見ると…こちらを見上げてニコリと笑う。

 

 

 

 

 

いや本当お前誰?ってくらいの変わりよう。

一歩踏み出すどころか…ジェットパックで地平線の彼方まで飛んで一歩!って言われた気分。

ここまでの甘え方はなかなか居ない。

 

 

 

 

 

「…あ」

 

「あの!えと…パフェ一緒に食べませんか!?」

 

「食べ過ぎは良くないって怒られない?」

 

「き、今日はいい子卒業です!」

「というか、カツとかお酒よりは……いいかと…」

「妙高姉さんも……たまに………」

 

「あ、ソレ聞かなかった方がいいやつだな」

 

 

2人でパフェを食べる。

「甘くて…おいひぃです」

 

「俺のも食べてみる?」

と、あーーんってしてくれました。えへへ…嬉しいなあ

……え?!わ、わわ私もですか!?

はぅ……どうぞ…………間接キス……って!もうキスは何回もしてますよね…

 

 

 

 

「まだ帰るまでに時間ありますか?なら…えと…プリクラってのを撮りたい…です」

 

 

「最近のはアレなんですね?大きいのもあるんですね?」

 

「みたいだね!なんか新鮮だな。羽黒がプリクラって」

 

「部屋に…机に飾りたくて…ひな祭りとは違う…2人だけの思い出が欲しいんです。あ!もちろん!このマフラーも思い出ですよ!?夏でも身につけたいくらいですけど…なかなか難しいので…」

 

「写真とかプリクラみたら、辛くても…寂しくても乗り越えられる気がするんです…いつでもあなたを感じられそうで」

 

 

 

 

 

パシャリと写真を撮りながら…

俺はそうだ…と言う。

 

 

「そばに居るからさ」

 

「え?」

 

「いつでも…部屋の鍵開けとくからさ、寂しかったら…辛かったらおいでよ」

 

羽黒が「え…」とこちらを向く。

パシャリとその瞬間も撮られる。

 

「良いんですか?」

 

「…うん。そんな時には…寄り添っていたいよ」

 

「…ッ!あ、ありがとうございます」

「〜ッ!!」と羽黒は飛び込んで来る。

 

胸に顔を埋めた羽黒が俺を見上げて…背伸びして…

ありがとうございます…ってキスする。

 

パシャリ…と音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

彼女は自分の机の上のプリクラを写真たてに入れている。

それを見てニヤニヤしてる。

 

「…あら?良い顔ね。羽黒」

 

「姉さん……えへへ」

 

「…いい意味で少し変わったわね」

 

「そ、そうかな?」

 

「少なくとも…あなたは一歩以上踏み出せたのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その裏のプリクラ撮るくらいにはね…」

 

 

 

「え…妙高姉さん………?」

 

一見普通の写真たて。

数枚のプリクラ写真か入っている…が

 

 

「……?」

足柄がその写真たてを外して裏を見ると……

 

 

「「んなッ!?」」

 

「き、キキキキスぅうう!?」

「羽黒ぉ!?きっさまぁぁ!?」

 

 

「なんでバレたの!?」

 

「そりゃ…たまにバラして見てたら…ニヤニヤしてたらバレるわよ……」

 

 

 

「どれも良い顔してるけど…何これ!超大事にされてる感あるし!もー!!」

 

「私も今からちゅーして貰いに行くッ!!」

と、足柄が行こうとするのを止める羽黒。

 

 

笑う姉妹。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?羽黒?どうした?」

 

 

「えと…あ、あなた♡」

ぎゅっと引っ付いてくる羽黒。

 

「愛してます♡」

 

 

 

大人しい子が少し積極的になったようだ…。




おめでとう…
羽黒もデレ期突入デース

バンホーテンに砂糖をぶち込むイメージです。はい。



心の奥に甘いものを感じてもらえたなら幸いです。

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