提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「で?」
迫り来るバーサーカーからなんとか逃げ切ったので彼女達に尋ねてみた。
「私達はメンタルキューブから生まれるのですよ?指揮官様が生み出してくれたのなら…それは指揮官との子…と言うことですよ?」
「その理論なら君達は全員俺の子と言うことになるぞ?」
「…………」
「おい、その『あ…それもアリかも…』みたいな目をするな」
「まあ…酔った指揮官様と建造を致しましたから…」
「2人で建造したのならそう言ってもいいのでは?」
「え?建造って建造だよね?建造(意味深)じゃないよね?」
「うふふ」
「ああん!話が通じないッ!」
「おとおさま?どうしましたか?」
「どこか怪我しましたか?大丈夫ですか?」
ウルウルした目で見上げてくる彼女に「…………いや、大丈夫だよ。ありがとう」と、彼はフッと笑うと天城ちゃんの頭を撫でた。
「……えへへ」
「立派になっておとおさまもあかぎちゃんもみんな守ります!」
その言葉に俺は一瞬目を見開いた。
彼女は純粋なのだ。
いや…気付いていても…それを止められないのだ。止めたくないのだ。
何故なら彼女は小さくとも…桜天城だから。
桜天城は祈り願ったのだろう。
俺の武運長久を…。
どれほどの思いが篭れば…というのは分からないが、彼女の思いはリトル天城ちゃんとして現界した。
だから天城ちゃんはわかっている。
自分が指揮官を愛している事も、皆が同じな事も…
俺が皆を愛している事も…。
桜天城はその意外な結果に驚き、喜んだのだろう。
まるで…2人の………我が子ができたのではないか?と。
だから2人は自然と親子という体裁をとったのだろう。
いや…それがいいと純粋に思ったのだろう。
この子を見つめながら頭を撫でる。
今迄、想像なんかした事なかったけど、子供が居たらこんな感じなのかなあ…と思った。
前の世界でも何度も考えた将来。
結婚して…子供を授かって…家建てて…
普通に、ただ普通に働いて暮らして子供を見守って……歳食って死んで行くと思ってた。
子供の名前をどうしようとか、男の子ならキャッチボールをしたいとか、色々考えていた。
今の生活は…本当に幸せな非現実で……
仮想現実だとか、夢の中だとかじゃなくて…
この世界でもいつか現実にできそうな夢が目の前にあって……。
「おとぉさま?」
あまぎちゃんが少し不安そうに彼を見上げました。
彼は慈しむような表情でその子を見つめていました。
ええ、えぇ、分かっています。
お遊び…だってことは。
通じ合う2人が決めた…ほんの少しの悪戯…。
なのに…
指揮官様はその子を抱き上げて抱き締めたのです。
「ふぇ?お、おとおさま?」
「……ッ!」
桜天城は思わず息を呑んだ。
ただ、抱き締めただけだ。
なのに、なのに、この光景を見るだけでどうしてこんなに…心が喜んで涙が溢れそうになるのか?
桜天城にはそれがわからなかった。
「おとおさま?えへへ…」
幸せそうなあまぎちゃん。
そして……呆気にとられる私の側に来て…
その子と一緒に私をも抱き締めたのです。
「おとおさま?」
「あなた様…?」
彼は何も言わずに…ただ、ただ…優しく愛おしそうに私達を抱き締めてくれたのでした。
「…桜天城?」
「はい」
彼はポツリと言いました。
「……こういうのもアリかもな」
「…お優しいのですね?」
「ええ、ええ、確かにこの子は…キューブ建造で生まれた子です」
「酔い潰れた指揮官様と一緒に建造して…来てくれた子…。でも私には運命のように感じました。運命であると同時に…未来を感じたのです」
「未来?」
「指揮官様はいつか…きっとこの海の平和を取り戻すでしょう。私達が戦場に必要なくなる時です。…今は戦う事に存在意義を感じるところがありますが…その先でもきっと…そうやってあなたは私達にその意味をくれるのだろう……って」
彼女は笑って言う。
いつものお淑やかな彼女のようでなく…1人のただの女の子のように…。
「だから少し…ほんの少しだけからかってみたかったの…………嘘。かまって欲しかったのよ。桜天城として…1人の女として…ね」
「はい、そうなんです」
「いいよ」
「「え?」」
「君達が…それを望むなら…幸せと言ってくれるなら」
「俺は今のままでも…幸せかな」
「愛の形にも色々あるから…。あまぎちゃんにしろ、桜天城にしろ…愛する事には…そこに差はないんだ」
あの…とあまぎちゃんが震えたように言う。
「おとおさまって呼んでもいいんですか?」
「あなた様……どうか…」
「2人の愛の結晶なんだろう?」
冗談とか、からかいとか……ほんの些細な悪戯心からの始まりだった。
でも…蓋を開ければのめり込んでいたのは私達だった。
伴侶としての愛、家族としての愛…。
慈しむように向けられたその全てが…何より嬉しい。
「……なら…コレを君に贈らなきゃなあ」
差し出されたのは小さな小箱。
その10cm四方も無さそうな小箱の中に私の全てとも言える愛が入っている。
開かれた隙間から覗いたそれは…今まで見たどんな景色よりも綺麗で……
「受け取ってくれるかな?」
わぁあ…キレー…とあまぎちゃんは目をキラキラさせている。
「はい!喜んで…この桜天城、お受け致します」
「あの!?あ、あなた様!?」
「ん?」
近付いてくる救を彼女は赤くなりながら止める。
「あ、あ、あのあの…その…う、嬉しいのですが…この子が見てるので…その…は、恥ずかしい…んですが…」
そのあまぎちゃんは顔を手で覆い、指の隙間からガン見してるけどね?
「……」
(´・ω・`)みたいな顔をする救。
「も、もう…ずるいですよ」
「でも…ひとつだけ確認させてください」
「ん?」
「同情だとか…義務感だとか…流されて…ではないんですよね?」
私が…私達が1番恐れているのはそれだ。
もし…そんな気もないのに…そうさせていたなら……
彼は…
「俺の全てを賭けて…愛してる事を誓う」
「何があっても君を離さない。何があっても君達を離さない」
その言葉と共に…指にリングが通った。
そして…
唇が触れた。
今度は私から飛びついた。
桜赤城に見られたらはしたないって言われるかな?
でもいいの。
好きな人の…愛する人の前でくらい…ね?
「わたしもー!」
と、あまぎちゃんも飛びついた。
あぁ…幸せ…だなあ…。
「………」
「出にくい雰囲気ですね」
「……リトル赤城ちゃんも居るので呼べば…家族に……」
「リトルベルちゃんも!!」
「桜赤城さん?桜ベルファストさん!?」
「え!えぇ!聞いてますとも」
「あなたこそ…正気は取り戻しまして?」
「榛名はいつでも正気です」
「
「はい?」
「お?」
「私のどこがバーサーカーですか?」
「愛する人を襲うところ」
「アレはダーリンさんから…やってきたんですよ?」
「そのダーリンさんの姿をしたお前がな!」
「凄かったぞ!?榛名から『おい!榛名やめろ!マジで洒落になんねえ!』…って。そんで『ダーリンさん?優しくしますから!ね?ね?』って指揮官から聞こえてきたらさあ……」
「……でも私はやっぱり…ダーリンさんからして欲しいです」
「襲った後で言うなよ……」
「貴様はただでさえ…相当に愛されてるんだからな…?」
「え?」
「貴様が都度都度持って行く夜食も…奴はどれだけ腹がいっぱいだろうと食べる。幸せそうな顔をして…な」
「前に…榛名の奴は行き過ぎてないか?と聞いても…愛されてるし、愛してるから…って……思わずため息が出たぞ」
苦い顔で桜加賀が言う。
「ま、微笑んで祝ってやるのも…愛…かもな」
「……ダーリンさん…」
「…なら榛名は待ちます!はい!榛名は大丈夫です!」
「いい会話なのですが…前半が物騒すぎて……」
そして…
「ふふ…桜天城姉様……。良かった」
この場の誰よりも、温かな眼差しを向けるのは桜赤城。
彼女のことを思えば…自ずとそう言った言葉が溢れてくる。
「まあ…1番はこの桜赤城ですけどね」
本音も溢れてくる。
そんなメンバーを「うわあ…」的な感じで大淀は見ていながら、執務を放り投げて逃げた提督に鉄槌を下すべく歩みを進めていた。
「……ごめんなさい…」
「私……大淀といちゃいちゃ2時間コースですね」
「え?…そ、それh「あー…提督が戻らない間の執務つかれましたー…職務放棄のパワハラの……なのにご褒美もないのですか?」
「あ…はい…かしこまりました」
少し甘めな…感じで…
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
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