提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
朝…
工事の音で若干寝不足だけど…まあ、皆が喜ぶならそれでいい。
今日は早めに切り上げてゆっくり風呂に入ろう…なんて思いながら執務室に行くと、蒼朝日達が上機嫌で話しかけてきた。
「指揮官クン!ありがとう〜!素敵なお風呂が出来てたわ♡」
満面の笑みで彼女はそう言った。本当に無邪気な感じで可愛らしい。
彼女達の喜ぶ顔が見られるなら、多少の寝不足だってどうってことはない。
「へぇ…見てみたいなあ…行ってみるか」
「今は赤城さん達が入渠してますよ?覗きたいんですか?」
光の反射で眼眼鏡の奥まで見えない大淀が言い放った。
その言葉で俺は思い留まった。というのも、以前点検を兼ねて状態確認に行った時に赤城と遭遇………ん?事故なんだ!あれは事故だったんた!そんな目で見ないで!?
そ、そうだ…赤城に『よかったらお風呂…1人で寂しいので付き合ってください』と言われてホイホイと了解したんだ。
入渠時間42時間だったんだよ。
「て、ていとくうううううう!うわぁあああああ!!」
と、大谷が高速修復剤ぶち込んでくれなかったら………
「……やめとこう」
「その方が(あなたのためにも)いいわよ〜」
そんなこんなで気にはなりながらも日々の業務に追われて…終わって…
気分的に早く風呂に入りたかったので間宮にそれを伝えて部屋に帰る。
風呂ッ!!
それは…1日の癒しの場!!
誰にも邪魔されない…俺だけの聖域…!
いざ!行かん!極楽…!!
ガチャリ…
「………〜〜♪」
「「「いらっしゃい」」」
「間違えました」
バタン
裸だ。
目の前に裸が居た。
待て、落ち着け、これは夢だ。
もしかしたら…何かと間違いかもしれない。
確認…うん、俺の部屋の風呂だな。確認ヨシ!
ガチャリ
「「「逃げないでよー!提督ぅ〜」」
バタン!
待て待て…まだ慌てなくて良い…。
欲求不満なのかな?俺は。寝不足って怖えな…
三度目の正直でドアノブに手をかけて………やめた。
そろり…と部屋の窓から外を見る……
嘘やん?
鎮守府…の建物広なってるやん?
え?この壁…こんなに出てたっけ?
え?何?湯気?
まさか…
おい、妖精さんや?
設計図を見せておくれ?
ん?
守秘義務?
あんなに大々的にやってて?
「金平糖でどうかな?」
「ん?賄賂?いやいや…日頃から頑張ってくれる君達への…感謝の印だよ…」
妖精さんはため息を吐くふりをしながらニヤリと笑ってそれを受け取る。
「…まあ…こんぺいとうをたべるのにむちゅうでせっけいずにめがいかないかもしれない…」
「話が早くて助かるよ…」
「てーとく…おぬしもわるよのお〜」
「いえいえ…お代官様程ではぁ」
「…ってみなくても…そとのけしきがじじつそのものだけどね」
「様式美だから…」
「……やりやがった」
「部屋を…風呂を大拡張して…俺の私室の風呂まで繋げやがった!!」
「そりゃあ…あんだけデカい音する訳だ!!アッハッハァァア!!」
「なぜぎもんにおもわない?」
「ハッハーー!昨日の俺を殴りてえ!!」
まあ待て…逆に考えるんだ。
ハーレムだぞ?向こうさんは見ても触っても良いよ?状態な訳で…
ってことは俺は悪くない!正義だ!!
まあ…誰を見ても触っても……「私は!?!?」ってなって収拾がつかなくなるのは確実なんだけど
ガチャ!とドアが開く。
引き摺り込まれる俺。
「ダーリン♡お風呂でも一緒ー!」
「司令官!お背中流しますよ?」
「…ここは譲れないわ……」
パラダイスはここにあったんだ……。
んで
「蒼朝日。目的は達成された?」
「両手に華を侍らせてそのセリフはどうかと思うけど…うん。良い熱さよ〜」
熱い風呂に入りながら蒼朝日は恍惚の表情を見せた。
「へえ…熱い風呂に入りたかったんだ」
誰かが俺たちの言葉に反応した。
「そうよ〜」
「熱いお風呂なら…加賀さんと入れば良いのに」
「え?」
「あら?加賀チャンは熱いのが好きなの?」
「…熱いのが好きというより……ええと」
加賀……というより、加賀達は答えるのにしどろもどろになっていた。
??という表情の蒼朝日に赤城がコソリと言った。
「加賀さんが温泉に入ると…温度が上がるのよ?」
「「「「えっ」」」」
朝日を含めて数名から驚きの声が上がった。
「ほ、ほんとなの?」
「え、ええ…本当よ」
「あぁー!!だから加賀さんは1人で入ってるの?」
「……そうよ」
どうやら加賀は湯船には1人で入ってるらしい。
「ああ…一緒に寝る時もすぐ暖かくなったな…」
俺も似たような感想をならべた。
「「「「「ん?」」」」」
墓穴を掘ったらしかった。
逃げようとしたが遅かった。両脇を固められた。
「なんでまた……?」
蒼朝日は不思議そうに彼女達を見つめた。
「………」
「ああ……」
瑞鶴は納得したようだ。俺も何となくわかった。
「……やきとり」
瑞鶴がボソリと言った。
「き」くらいで加賀達が一瞬で瑞鶴を並んだ。
「「「「やるの?
「ヒッ…」
いつもの瑞鶴ならやり返してるが今日は腰を抜かしたらしい。
一瞬見た加賀表情は深海棲姫すら失禁するレベルだった。
と言うか早く風呂に入りたい。冬にタオル一枚はキツイ、倫理的にも精神衛生的にもキツイ。
「さあ…冷えてもいけないしねる一緒に入りましょ?…特に瑞鶴?」
瑞鶴は加賀達の入る湯船に囚われた。
みるみる赤くなる瑞鶴。だが逃げられない!!
「て、ていとく…さん」の声を華麗にスルーして仕方なく風呂に入る。
え?何故かって?
見てみろよ…俺の部屋の風呂の壁…ねえもん……風呂同士が繋がってんだもん…諦めるしかねえよ……俺の風呂も瑞鶴も……
「指揮官クンも気に入ってくれた?」
「ん…まあ…無茶するよね」
「うふふ…。慣れってね…そんなものよ?」
「私達にとっては、アレが日常だったもの。似たような別の世界でも…恋しくなるわ」
「それに…あなたも経験したことないでしょ?だから…指揮官クンにも私達と同じものを味わって…共有してみたかったの。…それにこのお風呂なら…一緒に入られるしね?片時も離れたくない…ってのもあるのよ?」
ほう…と、周りを見渡してみる。
皆がニコニコとこちらを見ている…。
ありがとう。なんて思いながら一人一人を見ようとしたが…
ガシッと腕を掴む龍田や迅鯨。
「…だめよ?よそ見ばかりしちゃうと……目を潰さなきゃ…」
キラリと銀色に光る何かが見えた。
お風呂では武装は解除しましょうね?
その後のこと?
どれだけ時間をずらしても…何故か皆が風呂にいるんだよなあ…なんでだろ?
「……どぉ?指揮官クン。広いお風呂にポツンと2人きり…ってのは」
「珍しく2人だねえ…」
「指揮官クン?」
「うん?」
「……なんでもないわ」
「方法が見つかれば……行くよ」
「え?」
「他の…パールベイの仲間達だろう?」
そう…ここにいるブルースフィアのメンバーは全員ではない。
ブルースフィアからの離反組と一部の戦姫が居るだけなのだ。
表向きには奪ったテーテュアス号が見つからない…となっているだろうが、まだ仲間は残されている。
今回の温泉…風呂の一件の根幹にもそれがあったのだろう。
私達の世界の事も忘れないで…と言うメッセージ…。
それは薄々感じていた。
もちろん…アズールレーンの世界も同じだ…。
「…約束する。絶対皆も無事に迎え入れる」
その言葉に彼女は一瞬めを輝かせた。
しかし…
「そう上手く行くかしら?」
期待と不安が入り混じった返答。
俺達はブルースフィアから見れば…所謂裏切り者なのだ。
仮に向こうの世界に行っても…俺達が脅威と判断されたら…蒼ハウや蒼キングジョージ達も危険にさらされる。
「……誓う」
「この指輪に誓って……絶対に君を悲しませる結末にしない」
「戦えない…私に?」
「関係ないよ」
「…こんな場所で……ロマンのかけらもないのね?」
「そうか……断るのか…」
しょんぼりしながら指輪を片そうとすると、蒼朝日は焦った表情で言う。
「い、いいいるわ!?それは絶対に貰うわ?!」
歪な形ではあるが…
愛してるの言葉と共に指輪を渡して口づけを交わした。
風呂だけどね?
「絶対に皆と笑顔で…ここに集まろう」
「ええ…期待してるわ?指揮官クン……いえ?あなた?」
そう言って俺にもたれかかってこちらを見上げる彼女。
顔が熱いのは…風呂のせいだけじゃないはずだ。
瑞鶴は立派な湯で七面鳥になったよ!