提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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344話 大淀と1日夫婦 ②

『貴様らの体たらくが原因だろ?なら…土下座して許しを乞え』

 

『そんな…提督…私達は………』

 

 

 

 

 

『…ッ……。すみませんでした…』

 

『なんで守ってくれないの!?しっかりしてよ!』

『それがアンタらの役目だろ!?逃げるなよ』

 

 

 

私達が、私が悪いんだ。

もっと頑張らなきゃ…私が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハッと気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか寝て居たらしい。

アレだけ泣きじゃくっておいて寝てしまうとは情け無い。

 

 

提督は!?

嫌気が差していなくなっていたら!?

これが夢が覚めた時なら!?

 

 

 

 

 

 

 

私のその思いは直ぐに消え去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

寒さを感じないから。

むしろ温かい。

 

 

 

 

 

 

 

顔が触れているのは…彼の胸だった。

彼の心音と彼の匂いと…温かさ…。

 

 

 

 

 

「……起きた?」

 

見上げると彼が私を覗き込んでニコリと笑った。

 

「………ですか?」

 

「ん?」

 

「ずっと…そうやって居てくれてたのですか?」

 

「……まあね」

 

「何故ですか?」

我ながら酷い質問だ…。

–––君が寂しくないように––––

答えなんか決まってるのに…でも私はその答えが欲しくてそう尋ねたのだ。

 

 

 

 

「そりゃ…ねぇ?」

 

「…ッ!?」

予想してた答えと違っていた。

 

「…私が寂しくないようにとかでは?」

ドクンドクンと私の心音が馬鹿みたいに大きく聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなのは当たり前すぎるよ」

いつだって側にいるよ…と、彼はサラリと言った。

 

「毎日隣で仕事をしても…触れないとこの温もりには気付かないものだね。冬でも…寒く無くてさ…ずーっと引っ付いていたよ」

 

「俺が…君を離さないから…君も俺を離すな。君が悪魔にうなされるなら…俺が手を引く。俺が悪魔に囚われたなら…君が手を引いてくれ」

 

そう言って彼は少しだけ抱き締める力を強くした。

私もそれに応えるように抱き締め返した。

 

「さあ…準備して出かけるか」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

「おやおやー提督さんー!今日もデートかい?」

笑いながら何人もの人達が俺のところにやってくる。

一種の名物らしい…何故だ?

 

 

 

大淀…彼女がギュッと…俺の袖を掴んだ。

その表情は強張って…少し震えていた。

 

「大淀?」

大淀は以前に戦果が悪いことを住民の前で土下座させられた事があると言っていた。

彼らの不平不満を怒号として浴びせられ、ただただ謝るしかできなかった…と。

 

 

 

 

「あらー!別嬪さんじゃねー!」

「次はこの子を泣かすのかいー?」

 

「あなたも艦娘さんだよね?いつもありがとう」

「お姉さん達のお陰で今日も平和だぜー」

 

 

そんな言葉の中で…とある人物がやって来て言葉が発された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた…あの時の大淀さんよね?……ごめんね、あの時は」

そう1人の女性が言った。

 

「あなた達が命懸けで戦ってくれてるのに…あんな酷い言葉を言って」

「本当にごめんなさい」

そう言って頭を下げた。

 

 

 

 

「……ッ!?」

大淀は戸惑った。

それに合わせて何人も何人もそうやって頭を下げたのだ。

 

「どうかしてた…なんて言葉じゃ片付けられないけど……必死に戦ってくれるあなた達を見て、自分達がいかにバカなことを言ってたかがわかったの。許してくれなんて言えないけど…伝えさせて欲しいの。ごめんなさい」

 

 

 

「あの…わ、私は」

 

彼女は一度として彼等を恨んだことはない。

いつだって皆の為に頑張った。

自分が弱いから悪いと思ってた。

辛かったけど耐えた。

 

 

例えどれだけ努力が認められなくても–––

例え理解されなくても–––

この戦いが終われば…いつかそんな日が来ると信じて–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽろっ…と何かが頬に伝った。

彼女はそれが何かわからない。

戸惑いの中で必死に涙を拭った。言葉を出さなきゃ…と。

 

 

「わ、私こそ…ずっと引きずって…しっかりしなきゃって…あの時は……でも今も…あなた方を怖がって……ごめんなさい…」

 

大淀も頭を下げる。

そんな必要ない!と彼女に駆け寄るその女性。

 

ありがとう––

ごめんなさい–––

 

 

その言葉が交わされて…

大淀は涙を流して、周りの人々も同じように涙を流す。

頭を撫で、抱き合いながら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんね

いつも…ありがとう…。

その言葉が大淀を撃った。

 

彼女は流した涙の理由が分かった。

嬉しいんだ。

認められた…んだ…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大淀の仕事は決してではないが日の目を見ることは少ない。

だが、作戦要領も何もかも一緒に考えてアレコレ意見交換し、時に全てを任せて…一生懸命に頑張ってくれた彼女。

決して傷が消えるわけではない。

だが、新しくスタートすることはできる。

 

今…彼女の肩に乗っかる何かが落ちて行くのが見えた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼女と街を歩く。

途中でクレープを買い食いした。

「ん…おぃひぃです」

と、なかなか見られなであろう一面を見たり…

 

「わぁ…綺麗な砂浜…少し寒いですけど」

 

「提督!あのお店見ませんか?来てください!一緒に見ましょう!」

 

彼女から手を引いてくれたり…と、楽しい時間はあっという間に過ぎ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に帰って2人で一息つく。

ベッドに腰掛ける俺の目の前に彼女が立つ。

 

 

「今日はありがとうございました。提督のおかげで…本当に私達の全てが変わって行きますね」

 

街での出来事だろう。

楽しいデートも良かったが、彼女が少しでも楽になったならそれ以上に良いことはない。

だが、それは俺のおかげではない。

 

「そうか?俺どうこうってより、君達の努力の結晶じゃないかな」

 

「……いえ…やっぱりあなたのお陰ですよ」

 

 

 

 

なぜなら…あなたが居てくれたから今の私達があるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛してます」

「ずっと…あなたに着いて行きます。何があろうと…どんな道だろうと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも一つだけ…言わせてください」

 

そう大淀は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「きっとあなたが神崎 救じゃない誰かでも…あのまま…記憶のないままの出会いでも……きっと私はあなたを好きになっていた」

 

 

そう言って大淀は飛びついてきて涙混じりにキスをした。

押し倒されるように重なった。

 

 

 

大淀は思い返していた。

彼がきっと…例えば神崎 救でない別のAさんであろうと、彼の生き方に惹かれただろう。

あのまま記憶の戻らない状態だったとしても…きっと彼を好きになっている…と。

 

でも…だからこそ…あなたが神崎 救だから……この上なく愛することを止められないのだ…と。

 

 

 

 

 

震える唇が離れて、彼女はぽろぽろと熱いものを零しながら笑顔を向ける。

「私と出会ってくれて…ありがとうございます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大淀?」

 

「はい」

 

「その…まだ、傷は深いよな」

 

 

 

 

 

 

「はい……」

 

「なら…その…アレだ。それ以上の傷を…だな……ええと…それ以上で覆うことはできないかなって思って…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…上書きしてくれるんですか?」

 

 

「…ん、お前に…酷い事…するぞ?」

 

「……ッ」

 

「……お前は俺のものだって」

 

「……私なんかでいいんですか…」

 

「君が良い」

 

「私…なかなか重いですよ?その初めて…を捧げる訳ですから?」

「もっとヤキモチも妬きますよ?離れませんよ?」

 

 

「余裕さ…」

 

「なら……奪ってください。嫌な過去も…思い出も全部!あなただけって…あなたしか居ないって私に刻み込んでください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう…大淀」

 

「…お、おはようございます。……痛いですね…想像よりも」

彼女は意地悪な表情で彼に言う。

 

「ご、ごめん…」

申し訳なさそうに言う彼に彼女は微笑みながら返す。

 

 

「でも、こんなに心地いい痛みってあるんですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝食を終えて2人で執務室へと向かう。

 

 

「ま、待ってください提督…!何だか…うまく歩けなくて…」

 

「大丈夫か?無理させてごめんな…」

 

「…こんな経験は初めてです」

 

おぼつかない足取りの大淀の手を引いて執務室へと向かう。

 

 

 

それからというもの、執務関係で2人で街へ行っても大淀は明るく振る舞えるようになった。

些細なきっかけかも知れないが、きっと前に進めるのだ。

 

 

「お、大淀ちゃん!いらっしゃい!今日もデートかい?!」

 

「はい!提督とデートです!」

 

「こ、こら大淀ぉ?!」

 

「ふふッ…。いいじゃないですか♪」

少し明るくなった彼女が笑いながら俺の手を握った。





大淀の重さが20上がった!
デレ度はこれ以上上がらない!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしてます!





仕事がアホみたいにハードモードに突入したので…更新が遅れ気味になります…orz
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