提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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胸糞注意















349話 正義の名の下に ② 痛みを知れ

 

「居ない!?どこ!?ねえ!返事なさい!」

 

ガヤガヤと声が背中に聞こえる。

店内を見渡しても誰も居ない、声も聞こえない。

 

加賀達の声だけが響いた。

 

 

それから必死に周囲を探し回った。

それでも彼は見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「え………」」

瞬く間に広まったその知らせは皆を絶望の底に叩き落とした。

 

麗や幸も動揺を隠せない。

 

なにより…艦娘達には、より一層の動揺があった。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()

いや…

今も…自分達の仲間であるから

 

 

 

「…衣笠と神通は確認できたの…そして熊野…」

当時の西波島には同名の艦娘が居るのも珍しくはなかった。

スペアと呼ばれる者達だった。

 

 

 

彼女達は決して忘れていた訳ではない、その鎮守府の闇の側面を。

だが、思い出さないようにしていたのも事実である。

 

その影は今、私達に覆いかぶさろうとしている。

 

 

 

「……」

西波島の熊野は黙って俯いていた。

 

「きっと大丈夫…」

「少しでも情報を集めて……早く提督を取り戻そう?」

鈴谷が優しく彼女に声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキンと頭が痛む。

銃弾は目尻を掠ったらしく服は血に染まっていた。

 

 

「……ここは?」

 

 

「お?気付いた?悪辣提督さん」

目の前に居るのは…確か、熊野……だったか。

 

 

「まさか悪名の高い西波島こ提督さんが…こんな優男だったとは」

 

「そんな事より!君達は!一体!?廃棄って……」

 

「復讐に取り憑かれた奴等ですわ」

ケラケラと片腕のない艦娘は言う。

 

「ねぇ?可哀想でしょ?」

グッと俺の首に手をかける彼女。

ケラケラと笑ってはあるが、目が本当には笑ってない。

深く深く暗い目だった。

 

 

 

 

「もう普通に恋愛する事もできない」

「ほら?この無い左腕じゃあ…愛する人の指輪をつける事も叶いませんわ?」

 

「戦う事も…もちろん」

 

「わかる?」

 

 

 

 

 

「役に立たない、ただの人間と同じ…いや!それ以下ってことよ!!」

 

 

 

 

 

 

「お前達があの時に無茶な指令を出さなければ!」

 

「補給もちゃんとさせてくれれば!」

「撤退させてくれれば!!!」

 

 

「何人もの仲間を見送らなくて!見捨てなくて済んだのに!」

 

 

 

言葉は次第にキツくなり、彼女の残された右腕は拳となって俺に何度も突き刺さる。

 

 

「それもこれも…お前達提督という無能のクズどものせいだ!!」

 

 

さあ言え…!

俺達は悪くないと!いつもの言葉を!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すまない……」

男は力無く言った。

 

「今から…取り戻せるものはあるか…俺に出来る事はあるか」と言った。

 

 

 

 

 

 

 

ピシリ…と頭の中で何か音がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なら………お前で遊ばせてもらうわ?」

「あなたをもーっと苦痛の表情で埋めてあげる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……ぅあ……」

 

 

「ほらほら?その程度でへばってたら…ね?まだまだ艦娘はたくさん居るんだからね?」

 

 

 

 

「あなたも沢山…艦娘を犯して楽しんだんでしょ?」

「なら…嫌と言う程に…今度は私達が……ね?」

 

 

 

 

彼女達は思い思いに彼をおもちゃにした。殴る蹴る者も居れば、犯す者も居る。

 

 

 

 

 

 

男は抵抗しなかった。

時々見せる悲しげな顔が嗜虐心と苛立ちを強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな折に…

 

「………」

彼の懐から何かが落ちた。小さな箱だった。

 

「うん?何だこの箱……」

 

彼女達がその箱に注目する中で、震えながら彼が箱に手を伸ばした。

そして、ゆっくりと自分の方へ手繰り寄せるように力なく引きずる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その手をとある艦娘がぐしゃりと踏みつけた。

 

「………っ…あ」

 

 

彼は踏まれながらでもその包みを胸の前に抱いて踏まれようとも蹴られようとも守り抜いた。

その姿はあまりにも弱々すぎて、彼女達の嗜虐心を削いだ。

 

 

 

「……チッ……興醒めだね。今日は寝るわ」

 

ぞろぞろと彼女達が引き上げる。

だが、熊野だけはそうしなかった。

そしてその後も彼をひたすらに嬲り続けた。

 

「ほら?ね?どう?」

 

「ぅ…やめ……」

 

「ね?子供ができるか心配?………」

「それよりさ?その箱は何?」

 

「これは…」

必死にそれを守る彼からその包みを奪い取った。

そしてその包みをビリビリに破いて……

 

 

「どんなクソで最低な秘密が––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金剛へ

いつも支えてくれてありがとう。

愛してる

 

 

 

 

 

のカードが添えられた、ぐちゃぐちゃになったチョコレートと共にあった。

 

熊野には何か理解できなかった。

 

 

 

「ど、どう言うこと?コレは」

彼の襟を掴んで声を荒げる!!

 

「何よッ!!コレはッ!?」

 

 

 

「…ホワイト……デーのお返し…だが?皆への」

 

「………」

 

「何でそんなに必死に守るんですの…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツの為に…一生懸命作ったものだったから…だ」

 

 

 

 

 

 

 

提督は悪い奴と思っている。

私自身、無茶な出撃と補給断絶や入渠を許されない状態でこうなった。

季節のイベントなど知らない。

そんなものは遠の昔に忘れ去ってしまった。

私達には代わりも居て……

 

何人もの同じような艦娘達が死の海域を彷徨っていた時に

あのお方に出会った。

 

あのお方も同じような境遇だった。

だから手を差し伸べてくれた。

 

「そう…あなた達も…私と一緒なのね?」

「なら来なさい?私達は負けないわ…きっと私達にとっての理想郷を作ってみせる…から」

 

 

そこに集う艦娘達から如何に人間が悪かを聞いた。

涙も吐き気も止まらない程の悪……

 

深海棲艦よりも強大な敵は人間じゃないか…と。

 

 

 

 

 

 

 

とある感情が芽生えた。

 

 

 

 

何で(人間)何かのために戦うのだろう?

 

私達の方が強くて優れてるはずなのに…と。

 

何故…あんな悪が私達を遣うのだろう?と。

 

私達は答えを出した。

違う…愚かな奴等は知らないんだ、自らが如何に矮小かを…

 

ならば……

 

私達が導いてやらねば……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人は悪だ。

でもこの目の前の提督はどうだ?

 

今までに捕らえた奴は口から「殺してやる!」だとか「仲間がお前らを殺す!」とか言ってた。

 

でもこの人は……心配するような目で私達を見る。

そして…このチョコレート………。

 

 

 

わからない!

わからなくて…わからなくて

乱暴にチョコレートを奪い取ってさらに激しく犯した。

首を絞めて、気絶しかけたら殴って!

全てを吐きつけるようにひたすらに…!!

 

 

 

赦しを乞いなさい

後悔なさい

本性を見せない

その汚らしい本性を!

ほら

ほら!

ほらァ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……泣いてる…のか?」

 

ポン…と頭に手が置かれた。

 

 

 

 

 

 

 

私はその手を弾き飛ばして思い切り殴りつけた。

「汚らしい手で触れないでくださいましッ!!」

 

 

 

 

 

「き、今日のところはコレくらいにしときますわ…死なないように…ご飯だけは食べておきなさい」

 

「…ぅ……チョコだけでも…返し……

 

と、手を伸ばす彼を弾き飛ばして部屋を出る。

 

 

 

 

 

 

 

 

何故か彼の顔が頭から離れなくなった。

 

 

 

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