提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
ハートフルレスな胸糞注意は継続
貫かれた土佐。
その後ろに立つ影神通。
「…影神通?!」
「チッ……このッ!!」
振り払う土佐。
無言で追撃する影神通。
「裏切る…ノカ!?」
「………」
影神通も俺の神通に関係してる……のか?
さすがは土佐…か?
手負いながらも影神通に対して対等に渡り合っている。
「……!!」
「…クッ……くらエ!!」
そして…
「…!!」
影神通がニヤリとした気がした。
影
「なっ!?」
待て…今のはなんだ!?
まるで…
「………」
「やっぱり……」
「ダメですょお?土佐さぁん…」
「じ、影神通…?」
救が問いかける。
「……ガフッ…」
血を吐く土佐。
「
背筋が凍るような声だった。
「き、貴様…やはり……貴様は!」
「土佐が誰かと会話?じ、影神通?お前はどっちの味方なんだ?土佐を裏切るのか?俺の味方なのか?一体……」
「裏切る?」
「いつから私が土佐の駒だと思ってたのですか?」
「逆です」
「あの女が私の駒なんですよ?」
「な…に……」
「さてさて…提督さん?西波島の艦娘共も憎しみに染まりつつあります」
「貴様…いつから…」
「あら…今はあなたとは話してないんですが……まあいいです。初めからですよ?」
「あなたのその能力をわざと受けたんです」
「あなたが…何かを躊躇うのをキッカケに私が戻るように…ね?」
「そもそも、あなたをこう引き摺り込んだのも私ですけどね」
「あの戦艦棲姫を差し向けたのも…ね」
「見てください!グズグズに壊しまくる彼女達を!!」
「この世を統べるに相応しい…私の艦隊の出来上がりという訳です」
肩で息をする土佐。
「…あなたもいい加減いいですよ?ニセモノの土佐さん?」
「愛する提督さんと………熊野のように2人まとめて……」
何故だろう?
頭のモヤが晴れてゆく。
何故私は…コイツを守ろうとしているのか?
ずっと私ニ話しかケル奴ガ居る…
姿が見えないソレは…懐かしい…声をしていた。
『…**さん!**さん!』
また、私ノ中で誰かガ話しかケテクる。
『…あなたは…熊野……』
『…ごめんなさい…私は…ここまでのようですわ…』
熊野は力無い顔で私に話しかけた。
『…何を言って…あなたが裏切ったんでしょう?!』
そうダ…熊野ハ私を……いや、違う…
違う
『……ごめんなさい』
『でもね…?私は…………あなたを……』
熊野は言う。
『あなたは………』
俺がお前達の提督だ
一緒に頑張ろう
改造…!
近代化改修!!
思い出してッ!!
あぁ…
死際の彼女に…運命は残酷にも真実を思い出させる。
「……ッうっ!!」
影鈴谷が土佐と影神通の間に入り身を挺して手刀を受け止める。
土佐は俺の前に立ち、背中で更に攻撃を受ける。
優しく俺を抱きしめるように…。
熊野の姿がフラッシュバックして…
重なるように膝をつく土佐。
ギリギリ…と血を吐きながらこちらをニコリと見る影鈴谷。
「…無事?」
「がは…ッ…………ぶ、ぶじかしら…」
血を吐きながら
血塗られた手を俺の頬に添える。
その顔すら…重なる…。
「…何でお前…影鈴谷に…土佐まで………俺を…!?」
「神通に裏切られたからか?!」
「一体何で…!!」
わかんねえ
わかんねえよ
敵の筈の熊野が実は味方で
その敵の土佐が俺を守って…
「そりゃ……思い出した……から……だよね」
「だい…す…き…な……さぁー…てーと…
影鈴谷はガクリと動かなくなる…
「何だよッ!?何を…何を!?」
「……鈴谷…すまない…」
「何だよ!お前も俺の艦隊の…スペアとか言う………」
土佐は悲しそうな顔をした。
「思い出して…」
「私も…鈴谷も熊野と同じ…あなたの艦娘…なんですよ……」
「何を言って……」
「土佐は居ないし…今居るのは誰もが本物のはずー……
その目は…悲しみに満ちた…けれども忘れていた何かを思い出した…確かな慈しみの目。
自慢の子たち
ええ…そう…
土佐…
いや…まさか…
イレギュラー…?
違う
俺がイレギュラーなんだ…
俺の艦隊のメンバー…が……?
まさか
「まさか……」
その言葉に彼女は頷く–––
「お前は…」
「お前は」
「…加…………賀……?」
彼はその名前を呼んだ。
その問いに彼女はニコリと笑った–––––
彼は今までに無い衝撃を受ける。
心と頭を撃ち抜かれたような…大爆発が起こったような…残酷な…
彼は一つの結論………
いや
あまりにも残酷な真実に到達した。
それは決してスペアなんかではない。
ドロップや建造で出会った2体目の艦娘。
基本的には強化合成で力となるが……それはゲームの中だけではない。
彼女は…加賀 改
救の育成途中の加賀であった。
彼は全てを終えてこの世界に来た訳では無い。
つまり…彼の艦隊にはもう1人の艦娘達が残されていたのだ。
もう1人の熊野に…加賀…
それが
彼女が彼女でなくなったあの日…
戦艦棲姫と戦った彼女。
皆を逃すためにただ1人戦場に残った彼女。
傷ついた彼女に待てど暮らせど救援は来なかった。
波と共に押し寄せる恐怖。絶望感は私を支配した。
助からない傷だというのは分かっている。
でも…生きたかった。
だから…私は目の前の死にかけの深海棲艦…戦艦棲姫に食らいついた。
吐き気を催す味がする。
でも
生きたかった
生きて誰かにもう一度会いたかった。
誰かも思い出せないけど…会いたかった。
必死に食らいついて食らいついた。
小さく悲鳴をあげる彼女を無視してひたすらに。
その結果がこの姿…
本来、戦艦としての設計を想定されていた艦としての運命のイタズラか……?
戦艦加賀としての側面…
戦艦棲姫を取り込んだ事で彼女はその一部を我が物とした。
そこに神通が関わってくる…。
そして、土佐の魂を取り込んだと思い込んで…土佐と名乗る事になる。
「熊野…こめんなさい……あなたにも…辛い…ことばかり……」
もう1人の熊野の亡骸にも手を添えるもう1人の加賀。
その顔は…憎しみに満ちたものでなく、あの優しい加賀の顔だった。
「…ずっと……ずっと…思い出せなかった」
「あなたに…もう一度会う事だけを心の支えに……してたの」
「でも…結果…私はあなたを傷つけてしまったわ」
「本当はこんなこと望んでない……弱さに漬け込まれて負けた私が悪いの」
「いい!喋るな!」
「一緒に態勢を立て直し………「ううん…言わせて……伝えさせてッ!」
詰襟を握る彼女が涙ながらに言う。
もうダメだってわかってるから…
「提督…私は加賀」
「ああ!お前は加賀だッ!スペアなんかじゃ無い!」
「えぇ……もう1人居ようと……私はスペアなんかじゃない」
「私だって…西波島の加賀なの」
「…やっと言える……」
「…名前を呼んでくれて………愛してくれてありがとう」
「私も………愛してるわ」
「あ…あああぁぁぁあ!!!!!」
何で!!
何で何で何で何で何で!
どうして俺はそこに気付かなかった!?
何で考えなかった!?
熊野もッ!鈴谷も
加賀も!!みんな!!俺の大事な…大事な…!!
触れる手が力を失いながらストン…と地面に落ちる。
「ダメだ!加賀ッ!加賀ァッ!!」
泣かないで…愛しいあなた。
たくさん傷つけてごめんなさい。
…スペアなんかじゃないって言ってくれて…ありがとう………それだけで充分なの。
救は2人を背負おうとする。
ダメだ!
嫌だ!
ありがとう…
やっぱりあなたは私を救ってくれる…のね…
だからね…私は……今こそ皆を助けるわ。
「……提督さん?」
「1人よ?何ができるの?」
「忘れたあなたには救えない」
「死んだ彼女達も…今の仲間すら!」
「せめて…愛する者の手で死になさい?」
金剛の拳が救に向かって放たれる。
「……くそっ……俺は…俺は」
あまりに多くの情報や出来事について行けない。
「…こんごぉ………」
力無く呟く救。
「……って!…りん」
「逃げてッ!ダーリン!!」
その声が届いたのか…
すんでのところで自我を取り戻す金剛。
「金剛…ッお前…!!」
「うぐ……待って今こんn「はい残念」
金剛の頭に触れる影神通。
「うぁぁあああッ!!」
「いやー!危なかった!こんなに強いなんて…ねえ?でも無駄。何回でも何回でも絶望に突き落としてあげるよ!」
叫び声を上げた後、また虚な目に戻る金剛。
そして…また金剛は拳を繰り出す。
「私達を忘れるような…そんな人間にッ!!」
金剛の言葉では無いのはわかる。でも…
忘れていた俺は…それを否定する言葉が見つからない。
「……そう…だよなあ…」
「立ちなさいッ!!指揮官様ッ!」
ゲーム上同じキャラが居るのは普通なのですが…
そんな感じのお話。