提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
金剛の拳が救に向かう。
呆けた救に向かう拳…。
その金剛を殴り抜いた者が居た。
「ガッ…ぐぁっ…ガッ」
地面をバウンドしながら転がる金剛。
「立ちなさい!指揮官ッ!!」
「何諦めてんのッ!?」
俺の背中から声が聞こえた。
誰も居ないはずの俺の背中から…
「…諦めないでよ!指揮官ッ!!」
桜赤城…蒼オークランド達だった。
「でも…俺は…皆を忘れて…俺がしっかりしていれば………」
「どれだけ辛かろうと…」
「それでもあなたは進まなくちゃいけないんです!」
「諦めて歩みを止めることの方が彼女達が報われないッ!彼女達が紡いだ命を無駄にするなッ」
「今目の前に居るあの子達を救う方が…今のあなたには必要な事で…そこに眠る彼女達の望んだ事でしょう!!」
「……」
ふらふらと立ち上がる救。
そうだ…そうなんだ。
土佐…いや、加賀をそっと地面に寝かせて彼女達に会い見える。
「…あなた達の……愛はその程度?」
彼の正面に立っていた彼女は叫んだ。
彼は全てを失った訳ではない。
桜赤城は声高らかに笑う。
「本当に無様ですわ?あなた方」
笑う彼女に近づく者が居た。
「私の事…忘れないでよね?」
「誰だか知らないけど…お前もこっち側に!!」
蒼オークランドの頭と桜赤城の頭を掴む影神通。
「ぅ…ぅあああああッ!!」
「オークランド!!桜赤城ッ!!」
叫ぶ救。
「やめろ!!やめろおおおお」
「「効く訳ないでしょう?」」
蒼オークランドが影神通を蹴り飛ばす。
「ガッ!?…な、何でッ!?」
そこに桜赤城が艦爆を叩き込む!
「ぐわぁあ!な、なななぜ!?」
2人はニタリと笑う。
そして言う…声高らかに大きく!
皆に届くようにッ!!
「愛の強さが違うんです」
くるりと振り返って金剛達に語りかけた桜赤城。
「前々から思ってましたけど…あなた方の
「…死しても思い続ける…素晴らしいことだと思いますが…悪堕ちしてその相手を殺める存在になるって…本末転倒じゃありません?」
「光と闇のエンドレスループ……」
一瞬ギリッと桜赤城が歯を食いしばったように見えた。
「…何があっても離れない…だとか、生まれ変わっても愛してますだとか…脳に砂糖が詰まってそうな発言をなさってたくせに………。これでもこの赤城…あなた方の事を少し…ほんのすこぉぉおしだけ認めていたのですけれど……
悪女は笑いながら言う。
あなた方の愛は所詮…所詮その程度だったのですねえ〜?」
「安心なさい?指揮官様は…この桜赤城が一生をかけて幸せにしてみせますから…」
無反応の艦娘達…。
「「この…大馬鹿者共がぁあ!!!!」」
「指揮官様へのッ!…あなた方の愛が本物だと言うのなら…その程度に負けるんじゃないわよッ!!」
桜赤城と蒼オークランドが吠える。
発せられる彼女の怒号。
ビリビリと空気が震える。
この彼女達の怒りは本物だ。
かつてない程に彼女は怒っていた。
認めていたからこそ、大切に思っていたからこそ、一緒に乗り越えて来たからこそ…彼女は本気で心の底から怒っている。
『うるせええええ!』
飛びかかる雷、飛龍、天龍
「邪魔よ…」
桜赤城が右手を薙ぎ払う動作をする。
幾重もの艦爆が彼女達を薙ぎ払った。
ズドドドドオオオオン!!!
ピリピリと空気が摩擦する。
『うああ…!三笠ぁぁあ!!!』
「…悲しいぞ…金剛…。我はお主こそ…と思っていたのだが…莫迦後輩ッ!!先輩として…お主に道を示してやろう」
…作戦三笠は叫んだ。
「安全装置…解除…」
「目標…………目前の深海化艦娘…及び…影神通」
「一度はやってみたかったんだ…お前達と…」
桜加賀がポキポキと指を鳴らす。
「根性入れ直してやる…」
蒼ポートランドが言う。
ビシッと指差して全員が言う。
「知るがいい影神通とやら!」
「貴様が敵に回したKAN-SENと戦姫の強さを」
「貴様らの言う正義に裂くことが出来ない絆というものを…」
「見せてやろう!神崎 救指揮官ッ!!!」
「お主が紡いで来た絆の強さを!!」
「裏切り者ォッ!!」
「ふッ……」
榛名の繰り出す蹴りに対抗する戦艦加賀。
「いつものキレが無いんじゃないのか?榛名」
天龍の刀を受け止めて肘打ちを喰らわせる桜霧島。
「…いつもより遅いぞ?」
「…ぶっ殺すッ!!」
「マイネリーベを悲しませる子は…許さない」
「早く元に戻らないと…本当に許さない」
「……知るかっ!!」
「沈めええええ!!」
蒼オイゲンに対する電、雷。
「やっぱり…できないのです」
「桜綾波は……睦月ちゃん達と戦いたくないのです」
「お前達なんか知らない」
「明石さんー!お願いだにゃあ…元に…元に戻って欲しいにゃあ!!」
「武蔵…!!そんなのでは…メイドは務まりませんよ?!」
「…知らない!そんな事どうでもいい!」
彼女達は知っている。
どれだけ艦娘が1人の提督の心の拠り所かを…。
1人、この世界にやってきた彼をずっと支え続けて来た彼女達の大きさを。
彼女達は知っている。
彼がどれだけ自分達を愛して、必要としてくれているかを。
彼女達は知っている。
本当なら1番戦いたくない相手だということを。
彼女達は知っている。
アイツらがこんな所で終わる奴等じゃあないと言う事を。
だから正面から向き合うんだ。
だから戦うんだ。
良きライバルと明日を一緒に歩むために!!
「目を…覚ませええ!!駆逐艦同盟の名が!…偉大な長門名前が泣くぞぉおおおおおお!!!」
桜アークロイヤル、蒼ヒッパーが長門を攻める。
「……グッ!?」
「お前達の誇りは…そんなもの!?」
桜ビスマルクが、桜ティルピッツが。
「お前達が飲まれれば!!」
「指揮官を守ったあの者達の気持ちはどうなる!?」
「忘れてたじゃないか!!!」
誰かが叫んだ。
「控えだとか!コピーだとか!!予備だとか!!」
「ごみみたいな扱いしか人間は…しないじゃないか!!」
「…そうだ」
「それは我らも同じく背負わなくてはならない業だろう」
「だからこそ!もう二度とそんな思いをする者を生み出さない為に!!今せねばならぬ事があるッ!!」
彼女達の正面から彼女達に向き合おうとする。
「………金剛…」
彼は彼女に話しかける。
「黙れ…人間は悪だッ!!お前は死ぬべきなんだッ!!」
その拳を受け止めて左頬に拳を叩き込む桜赤城。
「いい加減に目を覚ましなさいッ!!」
「その手の…その左手のその証は…ッ!!!」
「お飾りじゃないでしょうっ!?」
更に蹴りを見舞う桜赤城に金剛のボディーブローが腹に突き刺さる。
「うるさいッ!うるさいうるさいうるさいうるさい」
「ガハッ……」
「はぁぁぁああッ!!」
赤が急降下の踵落としを金剛の頭にぶち込んで––––
「見えてるんデース…!!」
それを受け止めて…
「なッ……ぅわぁぁあ!?」
ぶん回して桜赤城に投げつける金剛。
「「ガッ……」」
「さ、さすがは…ウチのNo1…」
桜赤城も蒼オークランド…赤もトップクラスの戦力である。
それを2人同時に相手しても引けを取らないどころか、圧倒的な力を見せつける金剛。
ヨロヨロと立ち上がろうとする彼女達の前に…
「……?何のつもりデース?」
「指揮官様…?」
2人の前に彼が立っていた。
「金剛…戻ってこい」
「はぁ!?何を言って…」
奴がこちらに向いて歩んでくる。
な、なんだこいつは…?
頬を引っ叩いてみたけど退かなかった。
口から血を流しながらでも、こちらを見て離さない…
「お前達人間は嘘を吐くッ!!」
殴った。
きっと骨も折れただろう。
なのに奴は…私に抱きついてきた。
「俺は…もう…離さないから!!」
「お前達を…誰1人として離さないから!!」
しがみつく男を何度も殴る。
なのに
なのに何でこいつは離さない?
何でこうも心がざわつく?
「みんなごめん…ごめん!!」
「俺はダメな提督だ!お前達を何よりも大切にすると言ったのに…!忘れてのうのうと提督して…あんなに悲しんでるアイツらを…助けることも出来ずに……あぁ!!俺は最低野郎だ!!」
「でも……アイツらが命懸けで繋いでくれた俺だから」
「俺は……今度こそお前達を守りたいッ!!」
「だから戻ってきてくれ」
「俺に力を貸してくれ!!!」
「………ッ!!!」
何かむず痒い…熱いものを感じた。
奴を突き飛ばした。
のに…
奴の後ろから…
さっき吹き飛ばした2人が出てきた。
「そうだよ」
蒼オークランドが
「いい加減に…負けずに」
桜赤城が
吠えた。
「「帰ってこいやぁぁあああッ!!」」
2人の拳が金剛に突き刺さった。
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