提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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清霜と武蔵
戦艦になりたい少女のお話


35話 叶わぬ夢を追い求む

私!戦艦になりたいんです!!!

 

執務室に入るなり清霜は言った。

 

「戦艦に?なんでまた」

 

「強くてかっこいいからです!!!武蔵さんのようになりたいんです!」

 

 

「だとよ、武蔵ィ」

 

「ん?ああ… 清霜…駆逐艦は戦艦にはなれない」

 

「なんでですか!?水上空母が軽空母になることもあるじゃないですか!戦艦が航空戦艦になることもあるじゃないですか!」

 

「それは… 開発での関係とかでな…」

 

「ならなれてもおかしくない訳ですよね?」

 

「そもそも運用の目的等が違う。駆逐艦に大型の主砲が載せられんだろう? 」

 

「それでも…もしかしたらもあるかもしれないじゃないですか!」

 

まあ…実際不可能だろう。

戦艦が駆逐艦のサイズでの小回りと速さを持ち、駆逐艦サイズなのに装備と威力は戦艦… 戦況は恐らく変わるだろうが無理だろう。

戦艦だからこそ積める装備がある。

駆逐艦だからこそ出来る戦法がある。

駆逐艦には駆逐艦の強みがある、雷撃戦では戦艦すら沈める可能性の強さすら持っているのに。

 

 

 

 

 

 

 

彼女は日々努力していた。

持てない装備を持とうとしてみたり…

戦艦と同じ訓練メニューを行おうとしたり…

最初は皆可愛いものだと思っていたが、その内に狂気すら感じるようになったと言う。

 

「清霜…」

「提督…今日も頑張ります!努力すればきっと!」

 

誰も止められなかった。それが彼女の支えだと言わんばかりの努力だったからだ。しかし、演習や遠征でも戦艦の様な戦いをしようとする。

 

俺の作戦を無視してだ…。

他の艦を庇う。後ろから砲撃する、魚雷を使わない、装備出来ない艤装を持ち出す…。

 

結果として隊列はボロボロ、負わなくていい破損を負った艦娘もいた…

 

「清霜… そろそろやめないか」

やめてください…止めないでください。

 

「何でですか? 次は上手くいきますから!」

 

「清霜ッ…!!いい加減にしろっ!!!!」

武蔵だった。

 

「いいか!お前はな…」

やめてください!聞きたくない!!

 

 

「戦艦にはなれない!駆逐艦は戦艦には絶対になれない!」

聞きたくない!!!!

 

「お前の努力は知っている!だが無理なものは無理だ!見ろ!今日の作戦を…お前は味方を危険に晒したんだぞ!!」

 

「やめてください!何で…何で!否定するんですか!」

 

「話を聞け…」

「嫌です!! 皆…嫌いです!!!」

 

清霜は執務室から飛び出しそのまま帰ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「私のせいだ…」

武蔵は自分を責めた。もっと配慮するべきだったと。

言葉を選ぶべきだったと…。

 

「お前に落ち度はない…止められなかった俺に責任がある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

清霜はいつも隠れて訓練する場所に居た。

 

 

何で誰も分かってくれないんだろう…。

いや、分かってるのは自分だ…でも認めたくなかった…。

 

 

「隣…座るぞ」

提督だった…。

 

「何しにきたんですか?笑いにきたんですか?!怒りに来たんですか!?」

 

「違う」

 

「なら何ですか!!」

 

「お前にはお前の良さがある…」

 

何それ?意味がわからない…。

「私は戦艦になりたいんです!」

 

「今のままでも強いじゃないか…攻撃を避ける速さ 小回りの効く旋回性能、強力な魚雷に対空戦術…潜水艦が敵の時なんか…」

 

「何ですかそれ!だから諦めろっていうんですか!? …提督はいいですよね!椅子に座って「こう動け!」って言うだけなんですから…そんなアナタに私の気持ちなんか分かるわけない…分かる訳ないのよ!!」

 

 

「………」

 

言ってしまった…最低な事を。

なのに言葉が止まらなかった。

 

「何とか言いなさいよ… アンタに…何が」 ぽろぽろ

 

 

「俺はな…」

 

と提督が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただの一発の砲弾すら撃てない」

 

 

 

 

 

 

「魚雷も、副砲も撃てない。艦載機を飛ばすこともできない。それどころか海の上じゃあ…立つこともできないし、お前達のパンチ1発ですら即病院送りだろう」

 

 

 

 

 

 

 

「俺も何にもなれないんだ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ」

 

 

 

 

 

「俺は作戦を立てて、戦場へ行くお前らを見送り…祈り、帰りを待つことしかできない」

 

「一緒に戦場に行けたら!一緒に武装で戦えたら!!!守ってやれたら!!!!ずっとそう思う しかし俺は一発の弾丸すら受け止めることも出来ない…どう努力しても弱い人間のままなんだ…何が提督だ、司令官だ!と思う…」

 

「それがどれだけ悔しいか…お前達が帰ってこなかったら…俺の作戦が間違っていたら…毎日毎日そう思って怖くて仕方ないんだ…命を賭けてお前達と歩むとお前達に言ったのに戦場で命を賭けることが俺にはできない…」

 

 

 

 

「…提督」

 

 

 

 

私が初めてみた…提督の涙だった。

 

 

 

「提督…」

 

「すまんな…話を聞きに来たのに俺の話になってしまった…皆心配してるから、早く戻るようにな」

 

 

提督は私に謝るとトボトボと寂しそうに歩いて行った。

その背中は今にも崩れそうなほど弱々しかった。

 

私は…何もできなかった。

 

 

 

提督は私たちを支えてくれる。どんな時でも何があっても。

真摯に正面から…。

 

 

 

 

でも提督の事を誰が支えるのだろう?

 

私たちのはずなのに……。

 

提督はいつ泣いた?

いつ弱音を吐いた?

その弱音を…誰が聞くのか?

 

 

「提督だって同じだったんだ………いや、それ以上に…。ダメよ…私 このままじゃ!!!だめ!」

 

私は提督を追いかけた!待って!待って!!

 

提督も苦しんでたんだ!自分の為にだけじゃなく!私達の為に…。

 

「提督っ!ごめんなさい…ごめんなさい」

提督に追いつき、前に出て頭を下げた。

私は何と言う愚かな事を言ったのか…何故あんなことを…。

 

ごめんなさい!と精一杯謝った。

 

 

提督は儚い笑顔で言った。

 

「清霜…俺に出来るのはな

お前達を誰1人として欠ける事なくこの鎮守府に帰還させるための作戦を考える事だけなんだ」

 

「それでお前達がまた明日笑って過ごせるなら、俺は喜んでそれに取り組もうと決めたんだ」

 

「だから、だから…それを何においても俺の仕事をやり遂げるんだ」

 

 

 

 

 

 

2人で泣いた。

私の前で泣く提督と提督の前でなく私。

2人でどれだけだろうか…とにかく泣いた。

 

 

 

提督…私が間違っていたよ。

私は…駆逐艦として戦艦が羨むような駆逐艦になるよ。

だから見ていて!私が証明するから!!

提督の作戦がうまくいくってことを…あなたが私を認めてくれるように…。

 

 

 

「む…武蔵さん」

 

「清霜か!?私が強くい「負けません!私!」

 

「戦艦にも負けない!引けを取らない!そんな駆逐艦になります!なってみせますからッ!!」

 

 

 

「…そうか、何があったかは聞くまい… ふふっ私も負けないさ!一緒に頑張ろう!」

 

わしゃわしゃと武蔵さんが私の頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

ぼーっとベンチに座る俺は…。

 

「ダーリン?どーしたノー?」

「あなた?大丈夫?」

金剛と鳳翔だった…ほんとにいいタイミングで来てくれる。

 

色々あってな…と答えた。

 

 

抱きしめられた…。

2人とも撫でてくれた。

「ありがとう…」

すごく心地よかった…12月も近いのに寒くなかった。

 

 




いかがだったでしょうか?

自分の苦しみも 実は他の人も同じように、もしくはそれ以上に抱えるものだったり…的なお話しでした


楽しんでもるえたなら幸いです(๑╹ω╹๑ )
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