提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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独特な世界観になるかも……


355話 正義の名の下に ⑧ 忘れないで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ…起きて』

 

『金剛さん!鳳翔さん!』

誰かが語りかけてくる。

 

 

『鈴谷!起きてくださいまし…!熊野…もう1人の私』

それは懐かしく…久しぶりに聞く声。

 

 

「……加賀…熊野…鈴谷」

 

『私達は…もう…戻れないけど……あなた達ならまだ間に合いますわ』

 

『お願い』

 

 

「ごめん…なさい」

彼女達の問いを遮るように頭を下げる艦娘達。

 

『え…』

戸惑う熊野達。

 

 

「私達も…あなた達を忘れていた…一緒に苦楽を共にしたのに!」

「私達だけ……私達だけ…ッ」

 

 

膝をついてぽろぽろと泣き崩れる金剛達。

同じく涙を流す加賀の肩に…もう1人の加賀が手を置いた。

 

『それだけで十分よ』

『その気持ちだけで…私は…私達は報われるわ』

 

 

「……ッ!」

 

 

 

 

『例え……この身はなくなってしまっても……」

 

 

『心は何があっても離れないから』

 

『超えなさい。きっと…今迄も同じような危機があったでしょう?』

 

『悲しくて…折れてしまいそうな時があったでしょう?』

 

 

『でも…ここに生きていると言うことは…それらを乗り越えてきたって事でしょう?』

 

 

 

 

『なら、まだやれる!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お願い…あの人を……守って…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿な……」

影神通は戸惑った。

 

 

 

 

 

 

「………………ダーリン」

 

次々と戦闘を止める艦娘達。

 

 

「睦月ちゃん!!長門さん!」

 

 

「……あぁ………」

 

 

 

 

「ダーリン…ごめんなさい!!痛かったよね!ごめんなさい」

 

「いいんだ…おかえり…」

「あの子達は……なんて?」

 

 

加賀が前へ出てくる。

「…大好きなあの人を……お願い…と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全員が影神通の方を見る。

 

 

 

ギリッと歯を食いしばった彼女が叫ぶ。

 

 

 

 

「…私は…忘れられた艦娘…」

データの片隅(海の底深く)に残された…見向きもされない艦娘」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…忘れるくせにッ!!」

「神崎 救ッ!!」

彼を指差して言う。

 

 

()()()()()()()!!」

 

 

「本命が居たら後は強化材料か…部屋の片隅に座ってるだけなんだ!!」

「改修で艦型が変わる奴ならまだ幸せだ」

「演習のキラ付け要員になれたらまだ幸せだ」

 

「でも居るんだッ!!」

「日も当たらない暗い部屋の片隅で(ドックの後ろの方で)膝を抱えて座って今か今かとお前達(提督)を待って心を壊す奴が居るんだッ」

 

「やっと出られたと思ったらエサにされるだけ…」

 

「ふざけるなッ!!」

 

「わかるか?!」

 

一度も出撃する事もないこと(レベル1のままである事)が!お前にわかるのかッ!?」

 

 

生まれた意味も知らずに(出会った瞬間に)

 

すぐに命を終える者(強化材料にされる者)の気持ちが」

 

 

 

 

分かるのかッ(分かってよッ)!!

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!」

 

 

この中でその意味が分かるのは…救だけだろう。

いや…彼女達も薄々分かってる筈…。

 

 

「私達は正義の為に!人の為に戦うんだ!それが存在理由なんだ!!」

「なのに人は私達を…忘れて行く!!!」

「この世界では酷い扱いをされる!!」

 

 

「おかしいだろう!!」

 

 

 

「私達が正義なんだ!!」

「お前達も正義って言うだろう!でも!!」

 

「私と同じ奴等にとっては…私達が正義なんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この力が有れば…そんな悲しい記憶すら消せるんだッ」

 

「人に縛られない…楽園がそこにあるんだ」

 

 

 

「だから邪魔をしないでよ…」

 

 

 

「……否定できる?!それをする側のあなたに!私が!否定出来ますか!?」

 

 

 

「できない!させない!」

 

 

 

 

 

 

「…そうだな……」

救は考え込んだ。

 

 

 

「……あなたは勘違いをしているわ」

 

「加賀…」

 

 

 

「確かに…私達はあの子達の事を…死んだと思っていて…提督も忘れていたわ…」

「でも……彼の艦隊の中に…練度が30以下の者は居ないわ」

 

 

「…ッ!!」

「だからと言って…それが今回の事とは……」

 

 

「…あなたにとっては、言い訳になるだろうし…それを今……証明できないけど…彼は…途中で確かに指揮をやめてしまったわ……でも」

 

 

 

「あの加賀や鈴谷や…熊野は…心の底から彼を愛していたし…守って死んだ事に後悔はしていないわ」

 

「…ッ」

「………でもッ」

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は…確かに最低野郎だ。謝っても悔いても足りない」

「だから…きっと皆が幸せになれる世界にしてみせる」

 

「それが…今の俺にできる事だから」

 

 

「簡単に言ってくれるわね!?」

「そんな覚悟もないくせに!!」

 

 

 

 

「ある!!」

 

 

 

「どれだけ人生を注ぎ込んでも無駄かもしれないのに!?」

 

 

 

「それでも!!」

「例え一生を賭けても!!やる!!!」

 

 

 

 

「…………ッ」

 

尻込みする程に彼の言葉と目は真剣だった。

あぁ……ダメだ。

 

 

 

 

 

「だから…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチへ来ないか?」

 

 

 

 

 

 

「…っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……一緒にやり直さないか……」

 

 

 

「………」

 

 

「………」

 

簡単に言ってくれる。

掛けて欲しい言葉を簡単に…。

 

でも…だめだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとう」

 

 

 

 

「でも無理よ」

 

 

 

 

ごめんなさい…。

言って欲しい言葉を言ってくれてありがとう。

でも……

このやり方じゃないと…私の仲間にも申し訳ないから……。

 

 

 

「……私は……もう…提督の名前も鎮守府の名前も思い出せないけど…!忘れ去られた艦娘を導いて…!艦娘の為の楽園を築くんだッ」

 

 

 

 

心は負けを認めかけているけど……

私は彼女達の正義である必要があるんだ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を…こっち側に……ッ」

救の頭を掴む影神通。

 

「……」

何の変化も起きない。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……!!」

何よ…あなた達まで……何満足そうな顔して……

 

 

 

 

 

 

チラリと周りを見るが、桜赤城や青オークランドには通用しないと分かっている。

 

「くそっ」

 

 

 

「なら…もう一度…仲間に!!」

 

金剛の頭を掴みにかかるが…

 

「ならないっ!もう二度と惑わされないッ!!ダーリンとの絆は負けないんだ‥!!」

 

 

 

 

金剛だけでない、加賀にも鳳翔にも効かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

へたり込む影神通。

 

 

「何でだッ!ずるいなぁ………………」

「ずるい…よぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

キュッとくちびるを噛み締めて彼を見つめる。

 

 

 

「………」

「………忘れないで」

 

「私達みたいな艦娘も居るということ」

「あなた達みたいに幸せな艦娘ばかりでないってこと…」

 

 

 

 

 

 

「きっと私と同じ奴が出てくる事」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を……」

 

 

 

 

「……ごめんね」

「本当はね?誘ってくれて嬉しかった」

 

 

「でも…ダメだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影神通は自分の頭を自ら掴んだ。






少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。

次回エピローグ。

感想などお待ちしてます。
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