提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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356話 正義の名の下に ⑨ エピローグ…

「さようなら…」

「せめて…あなた達の傷になってくれるように……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

影……神通は自分に能力を使った。

 

 

全てを忘れて…いや…消去した彼女は…

 

「………あ、あれ…わ、私はいったい…」

 

本当に全てまっさらになってしまった。

 

 

 

 

 

 

彼女は見てしまった。

彼を洗脳しようとした時に彼女を弾き飛ばした艦娘を…。

 

ほんの少し前まで自分の配下に居た筈の者達は、例えその身が滅びようとも彼を守り抜いた。

 

 

自分の境遇と同じ艦娘だった者達が…だ。

確かに洗脳して賛同させた筈だが、同じ境遇だった筈なのだ。

 

 

なのに…彼を守ろうとする。

それを見た瞬間に彼女の正義()にヒビが入ってしまったのだ。

 

 

 

 

苦渋の決断だったのだろう。

 

正義を貫きたい気持ち

声をかけられて嬉しい気持ち

自分の正義が通らない悔しさ

 

 

 

 

 

 

 

「…皆さん?どうしましたか?」

「傷だらけじゃないですか!!大丈夫なんですか!?」

 

あてふたと慌てる神通。

何も知らないなら当然だ…。

 

 

「大丈夫…」

彼や彼女達は神通を優しく保護した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は金剛達に支えられながら…横たわる彼女達の近くにやって来る。

 

「…ありがとう……ごめんな……遅くなって…」

 

 

 

「…加賀達……ゆっくり休んで…また会いに来てくれるかな」

彼は涙を流しながら問いかけた。

 

「……ええ、きっと来るわ」

「あなたのことが大好きなんだから…きっとね」

 

「…その時は…その時は……きっと…」

 

 

 

.いつから艦隊に同じ艦娘は居ないと思っていたのか…。

他の鎮守府を見てなのか…そう思い込んでしまっていたのかは分からない。

でも…俺が彼女達を悲しませたのは事実だ。

もう…彼女達は居ない。

償う事ができない。

 

 

 

 

だから俺は…神通にも言ったように……

きっとこの世界を幸せにしてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベッドで仰向けに寝る彼。

鎮守府は再建中なので仮の宿舎であるが……。

彼は割と骨折しまくっているので安静にしなければならない訳で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

「………」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

「…ねえ?」

 

『何ですか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で普通に居るの?」

 

『幽霊ですから』

 

 

 

 

3人は何故か普通に浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

「いやいやいや!!」

 

 

 

 

『な、何ですの!?』

幽熊野が彼のテンションに驚いた。

 

 

「ほら!この流れってさ!?アレじゃん?!」

「悲しみ乗り越えて頑張る的な感じじゃん?」

 

『……提督?』

 

「ん?」

 

『あなたをあの神通の洗脳から守ったのは……?』

 

「え?」

「…俺の転生者能力とかじゃ?」

 

『私達が守ったんですが?』

『あなたにそんな能力はありませんわ?』

『ごめんね?なんか……』

 

 

そう…彼女達は神通から彼を守った。

「ということは……」

 

 

 

『私達はあの時から…ここに居るという事ですね』

 

 

 

 

 

「それもアレじゃない?!最後の力を振り絞って…とかでなくて?!」

 

『最後の力どころか…すこぶる元気で身軽ですわぁー!』

ケラケラ笑う幽熊野。

 

『身軽にきまってるよー!そりゃ幽体だしねぇ〜!』

腹を抱えて笑う幽鈴谷。

 

『はい〜幽霊ジョーク』

幽加賀の掛け声と共に決めポーズをする3人。

 

 

「…………うそん」

 

 

『でも……』

『あなたに会えて良かった』

 

触れたその手は…少しひんやりしていた……。

 

 

 

『たくさんひどい事してごめんね…』

『その…殴ったり……ゴニヨゴニョ』

 

 

 

 

「…あ〜。たくさん犯されたしなあ…」

 

 

 

 

「あ?」 布団から

「お?」 壁から

「あん?」 天井から

「聞き捨てなりませんね」 床から

「屋上…いこうか…」 ドアから

「坊さん呼んできます」 絵の後ろから

「……幽霊…成仏……できるだけ苦しく……検索…」 いきなり現れるように

「龍驤さんお札貸してください」 龍驤を引っ張ってきながら

 

 

『で、でもあの時は自我がなかったわけで…!!』

 

「でも覚えてるんだよね?」

「良かった?」

彼は意地悪に聞いた。

 

 

『とても良かったです』

恍惚そうな表情で答える幽鈴谷。

 

 

「…シッ……シッシッ!」

 

「榛名さんがアップを始めましたね」

 

「おぉー…拳が見えない?!」

 

 

 

その中でそろ〜りと逃げ出す影が…。

一番最初に反応して布団から出てきた金剛だ。

それを見て幽鈴谷がポツリと言う。

 

 

『金剛さんは提督をボコボコにしてましたよね?』

 

「あっ………」

 

「いや、あの、えーと…あの時は操られてたから!!ノーカン!」

 

『なら私達もノーカンですよね?』

 

「うぐっ……」

 

汗をダラダラ流す金剛の肩に鳳翔が手を置く。

「金剛さん…」

 

「ほ、鳳翔……」

 

彼女はニコリと微笑んで言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「4人纏めてお仕置きです」

 

 

 

 

 

 

怒らせてはならないお艦…いや、嫁艦。

 

「誰かッ!記憶消して!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『『『あ"ぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"」』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳳翔サン…ぱねぇよ…幽体を素手であんな……ヒッ!見るな電!」

 

「マジか…あんな……うわ…次の作品のネタにしよ…」

 

「…どうせカメラで撮っても写らないんでしょ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆がバタバタと病室?から出て行く。

 

彼女の正義…かぁ…と思う。

今迄もたくさんの正義とやりあってきた…。

 

己の野望の為

世界を変える為

己を認めてもらう為

全てを取り戻す為……

 

 

 

ただ…

確かに今回の正義は…この鎮守府に大きな傷を残していった。

 

 

彼にとっては、救えたのに救えなかった仲間や神通の事が今も心に刺さっている。

 

 

『…提督』

幽加賀だった。

 

『……全てを救える人なんか居ません』

 

『あなたのその小さな両の手の届く範囲でしか、その足で行ける距離の事でないと……不可能です』

 

『その為に私達が居ますが…それでもこの広い世界を全てカバーしきることなんかできっこありません』

『もし、そのつもりなら…凄く傲慢です』

 

『だからあの子に言ったみたいに…この世界を少しずつ…少しずつ幸せにしていきませんか』

 

『例え最初は小さくとも…いつか大輪の花になりますから』

 

『そしてその時は……あの子にも見せてあげましょう』

彼女達はニコリと笑う。

 

 

 

ああ…と頷く。

「一緒に…歩んでくれるか?」

 

『ええもちろん』

 

『足はないけどね!』

 

『はい!幽霊ジョーク〜』

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしもし?Tさん居る?…そう、寺生まれの」

救がどこかに電話するところで3人は焦る。

 

『マジでそれはシャレになんない!!』

 

 

 

 

 

 

鎮守府は少しずつ…日常を取り戻して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……神通のあの力……」

「何より神通はあの世界の事…ゲームの中の事を知っている……」

「これが…俺には引っかかる…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





もし、ドックの後ろの方で忘れ去られてる子が居たら思い出してあげてください。
彼女達も確かにそこに存在していたんです。

何も言わずに黙って強化素材にされようと、退役解体されようと…
何体目の彼女達だろうと………

そんなお話でした。

割とダークなお話…お付き合い頂きありがとうございました。
最後はほんの少しの救いでした。
一番救われないのは…首謀者でしたが………?




少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです。



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