提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
ほのぼの!日常回ッ!!
「私と踊ってくれませんか?」
「司令官!一緒に探し物をしてくれませんか?」
「敷波。あぁ、いいよ?…して、探し物とは何かな?」
「えーとですね。大切な…何かなんです!」
彼女は港に居た。
ビシッと敬礼をして言う。
「この度こちらに転属になりました!敷波です!よろしくお願いします」
と、眠れない夜の散歩の時に言われたのが懐かしい。
出会った瞬間は幽霊だーー!!ってマジでビックリして死ぬかと思ったけど…。
敷波は良くやってくれている。
何でも以前の鎮守府ではエースだったとか…本当か?
「しかし…探し物ねぇ…」
「勲章とか?」
「思い出の写真とか?」
「探し物……探し物…大切な……うーーん…何だろう」
「あれ?司令官どうしましたか?」
「おお、吹雪」
「あ!吹雪さんー!!」
「いやな?今、探し物を考えていてな」
「探し物…?」
「そうなんです!凄く大切な大切なものなんです」
「何だか珍しいですね?具体的…には?」
「それがよくわからなくて…な」
「……女へのプレゼントとかじゃないですよね?」
「違うよ」
「では、資料室に行ってみてはどうですか?何かヒントがあるかも知れませんよ?」
「おお…確かに!何か進むかも知れないな!」
「よろしければ私も行きましょうか?1人より2人の方が色々と探しやすいかも知れませんよ?」
「むっ!吹雪さんヒドイー!私だって自分の探し物なんですから頑張りますよー!!」
「ははは。ありがとう吹雪。でも大丈夫だ。行き詰まったら助けを呼ぶよ」
「……そうですか」
「おお、おはよう。桜明石、桜不知火」
「おはようございます!」
「おはようだにゃ。どうしたんだにゃ?1人でニヤニヤして…。何か良いことがあったのかにゃ?」
「あ…指揮官さま……おはよう…ございます」
「ん?毎日が幸せだぞ?今から資料室に行くんだが……」
「お2人も来られますか?」
「資料室?何か調べ物かにゃ?」
「あぁ…ちょっとな」
「桜明石はお店の仕入れで忙しいから行けないにゃあー」
「あらら…それは残念ですね…」
「私も…準備がありますから……頑張ってくださいね」
そう言って2人は店の準備へと向かっていった。
「……」
チラリと桜不知火がこちらをみた。
気に掛けてくれてるのかな?
「………」
「何かあったかな?」
「うーん…なかなか見つかりませんね」
「あ!見てください!この写真!私です!ほら!このバッジ!皆と一緒でしょ!?」
確かに言われてみればそうだった。
とある鎮守府の資料だった。
「へぇ…エースだったのか!?敷波は」
「えへん!これでもピカイチだったんですよ!?」
「……なるほどなあ」
「此処でもがんばりますからね!?」
「…選手層は厚いぞー?」
「任せてください!!」
「ちなみに踊りも得意だったんですよ?」
「へぇ?」
「お手を拝借?」
「また今度な」
「むむむ」
パタンと本を閉じて彼は言った。
「行ってみるか」
「大切なもの…見つけに行くか」
「え?」
そう言って彼は暫く空けると言って1人街へと旅立った。
提督が帰ってきて肩を落とした。
仕入れから鎮守府に帰ったら…指揮官さまが港に居た。
私は…「指揮官さま…お疲れ様でした……」と…声を掛けるしか出来なかった。
丸一日かけて移動した先での事だった。
海の見える小高い丘の上に着きました。
「司令官さん?随分と…遠くまで来ましたね」
「ん…」
「……ここだよ」
彼の案内してくれた先には…………
小さなお墓がありました。
「君の探し物は……
「……お…はか?」
「…君の提督はね、戦死してたんだ」
「……え」
そんな冗談を……と言おうとして見上げた彼の顔は…
行き場のない感情を噛み殺した貌だった。
「そんな……」
彼女はペタリとそのお墓の前にへたり込んだ。
刻まれている名前に触れて…
「確かに……うん…あの人の名前…」
「……待ってるよ…今でも君を」
「え?」
「だって……君は魂になっても此処を探し続けていたんだから」
「………」
「
彼女は誰にも見る事ができなかった。
彼を除いて。
「いつ…あなたは気付いたのですか?」
彼女はポツリとつぶやいた。
「資料室で…」
敷波は生きてはいなかった。
それに気付いたのは…資料室で彼女の艦隊の事を見つけた時だった。
そこに載っていたのは…かつて存在したとある仮の鎮守府の資料だった。
小さな小さな鎮守府の資料だった。
細々と頑張る鎮守府も…敵の攻撃を受けて………。
そこで思い出した。
誰も彼女と会話してないと言う事を…。
吹雪の1人より2人の方がいいってのも敷波1人より…ではなかったのだ。
俺1人より吹雪と2人の方がいいって意味だったんだ。
桜不知火達もよくよく考えたら会話はしていない。
でも…桜不知火は見えていたようだ。
桜明石が居た手前か黙っていたんだろう。
彼女の探し物は………提督だったんだな。
「……ありがとうございます」
「確かに小さな小さな…ほんっとーに小さな鎮守府でした」
「艦娘もそんなに居なくて……でも楽しかった」
「…私ね…帰られなかったんです」
「ああ……」
知ってるとも…。
「ここにいたんだ……」
「ここは…その鎮守府があった所らしい。今となっては…その影すら分からないがな」
「はい、私の…大切な場所なんです。…寂しかったですよね……提督」
「いや、そうではないかも知れないぞ」
彼は言いました。
「何で…?」
「好きな海を見ながら眠れるんだ」
「大好きな君と見た海を見ながら……そして、君は此処に帰ってきたんだから」
『君と海を見ながら踊るのが好きだな』
そう、提督が言ってくれた事を思い出した。
バルコニーに差し込む部屋からの光を背に星空の下で踊った事を…。
「あのあたりに…バルコニーがあったんですよ」
と、彼女はそこを指差した。
寂れた鉄骨がその虚しさを余計に大きくした。
「あそこで……よく社交ダンスしてたんですよ?」
「信じるとも」
それも…資料室で見たよ。
幸せそうな顔の2人を…ね。
「踊りませんか?」
彼女が涙混じりの笑顔で言った。
「社交ダンス?した事ねえよ?」
彼は戸惑った。
「そんな経験もないし、リードできる自信もないし…何よりお前の提督の墓の前…だぞ!?」
「私がおしえてあげますよ」
正直怖かった。
あの時…お手を拝借?を断ったのも…
もし触れられなかったら…と考えたから…。
「お手を…拝借?」
「だーいすきな提督に怒られるぞ?」
「そんな…心の狭い人じゃないですよ…提督は」
「ね?」
「あぁ」
でも、その手を掴まない理由はなかった。
目の前で艦娘が泣いているから。
笑顔で逝って欲しいから…。
彼が私の手を取った。
ふふ…いつもとは逆なんです。
はい、そうです。
手は此処に…
ステップは私について来てください。
はい
そうです。
お上手ですよ?
「ありがとうございます」
「手を…握ってくれて」
その手は…ひんやりとしていた。
「………」
気付いたらそこに居た。
でもどれだけ叫んでも…手を振っても誰も気付いてくれなかった。
私は…敷波
それだけは覚えていたのに
ある日、あなたに出会えた。
あなただけは私を見てくれた。
私は自分が幽霊だと言うことすら忘れて……その鎮守府の一部みたいになれた。
提督…見てくれてますか?
ヤキモチ…妬いて下さい。
でもね?
この司令官…わたしがエースだった事も、ダンスが得意だった事も疑うんですよ!?
だから……教えてやるんです!
私は出来る子だって!!
ごめんなさい。
帰ることができなくて
あなたを守ることが出来なくて
ごめんなさい
もうすぐあなたの元に……行けるかな
「行けるよ」
「え」
涙で滲む顔を上げると…優しい顔が私を見下ろして…いや、見つめていた。
「…此処が君の旅の終着駅だ」
踊りながら、ぎこちなく回りながら彼は言う。
「いや……第二の…始発駅か…?」
「たくさん甘えて…労ってもらって…話して……おいで」
「優しいですね」
「こんな僻地まで…休みを潰して……」
「こーんな幽霊の為に……あなたは馬鹿ですよ」
「そうだな…」
「でもそんな馬鹿だからこそ…」
彼は言った。
「君を此処に連れてくることができる。笑顔の君を見送る事ができる」
「………ッ」
「だからその目に焼き付けて逝って欲しい」
「こんな世界だけど…この景色は……こんなにも綺麗だって」
彼の背中越しに見えた夕焼けは……とてもとても綺麗で……
それを追うように私の背中から星が昇って行くのが見えた気がした。
「思ったより…グスッ…ギザですね」
「……かもね」
「……いきますね…もう」
涙を流して顔がぐちゃぐちゃになった彼女。
「あぁ」
きっと皆も待ってる…とからは言ってくれました。
「おせわになりました」
「こちらこそ…」
チュッ…と手の甲にキスをされた。
瞬きをしたら…彼女は居なくなっていた。
握っていたはずの…左手に黒いリボンが残されていた。
「逆…だよなー」
ありがとうございました、素敵な…司令官さん。
あなたの…あなたの人生に幸あらん事を……。
あ……。
ヤキモチ妬いてます?
えへへ
ただいま!!提督!!
「指揮官さま……」
「桜不知火か…大丈夫。俺は大丈夫」
「………不思議な経験も…辛い経験もたくさんあります」
「……落ち込むな…とは言いません」
「でも………きっとあなたを強くします」
「あぁ…そうだな」
「なあ?桜不知火」
「何ですか?」
「本……社交ダンスの本ないかな?」
ある日の事だった。
「…………」
意外と気になるもので社交ダンスの本とやらを買ってみた。
「あー!司令官!その本は…?社交ダンス?」
気がつくとそこには吹雪が居た。
「ん、あぁ。吹雪…社交ダンス知ってたのか」
「失礼な!!知ってますよ!!」
「……そうなの?」
「…えへん!……踊りませんか?」
その言葉が彼女と重なった。
言われるがままに手を取って一緒に踊った。
まさにあの時にやった動きと同じ動きだった。
「・…はい、お上手ですよ」
「昔ですね?別の艦隊の敷波ちゃんにほーんの少し教えてもらった事があったんですよ」
「………ッ!!」
思わず感極まってしまう。
「…はい、大丈夫ですよ」
「きっと彼女も見てくれてますから」
「なっ!?」
吹雪は彼女が見えなかったはずだ!なのに!?なのに?何で?
「…私も最初は信じがたかったです」
「なら何で」
「…夢に敷波ちゃんが出て来たんですよ」
「髪を解いた彼女が」
「妹みたいなものですから、信じますよ」
それに…と彼女は言う。
「司令官の持ってるそのリボン…敷波ちゃんのですよね?」
「ありがとう…って言ってましたよ」
目の前の吹雪が涙を溜めて言う。
「吹雪…」
「私からも言わせて下さい」
「…敷波ちゃんを救ってくれてありがとうございました…ッ」
『吹雪さん……いや、吹雪お姉さん』
『司令官さんに伝えて下さい』
『旅立つ終着駅…ううん、始発駅まで見送りにきてくれて嬉しかった。またあの人達に会えたからって……』
『あの日のぎこちない踊りと…綺麗な景色はぜーーったいに忘れません』
『ありがとう…って』
あれから数日経った。
「こんなもんでいいかな?」
「はい、喜ぶと思います」
あの丘の上に…新しく墓を建てた。
鎮守府の皆が安らかに眠られるように…と。
この景色を見ながら眠って…また生まれ変わって生きて欲しいから。
そして手をあわせる。
「帰ろっか…吹雪。来てくれてありがとうな」
「いえ!司令官とのデートですから♡」
「それに…妹…ですからね」
帰り際に後ろから
もっとダンス上手くなってねと聞こえた気がした。
時系列は…気にしないで
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!
感想などお待ちしてます!!