提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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363話 大和と1日夫婦 ③

 

 

 

「私は…その指輪をお受けできません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は固まった。

 

初めてだった。

初めて断られた。

 

混乱した。

 

「や、大和…?」

「俺のこと…好き…なんだよな?」

 

「はい、愛しています」

 

「ほ、本当なんだな?」

 

「はい!本当です!嘘偽りありません!この私全てを懸けてあなたを愛しています!」

 

「なら何で!!?」

 

慢心があった。

必ず受け取ってくれると言う心が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたが居なくなるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は確かにそう言った。

 

「居なくなる?」

 

「夢に見るんです。あなたが居なくなる夢を」

「敵にあなたが倒されて消える夢」

「笑顔で帰るって…あなたの世界に帰ってしまう夢」

 

「どっちの夢も…私達は何もできずに泣くだけです」

 

「それが…指輪にどんな関係が…」

 

「私が指輪を受け取った次の日なんです」

だから!だから!と彼女は懇願する。

 

「あなたが消えてしまうくらいなら…私は指輪を受け取りたくないです」

 

 

 

俺はそれ以上…

強く何かを言うことはなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

指輪を貰ってウキウキな次の日のデート。

街に現れた深海棲艦の攻撃から市民を庇ってあなたは………

 

守りきれなかった無能な提督と艦娘と言うレッテルを貼られるようになる…。

 

その悲しみが…何よりリアルで…

 

 

だから私はいい…

例え指輪を貰えなくても……あなたが生きていてくれるなら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのに……

今目の前に深海棲艦が居る。

 

 

 

彼が住民に避難を促す声が遠くのように聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

気を取り直して…デートに来たはずなのに…

 

指輪も受け取らなかったのに…

 

何で?

 

どうして?

 

 

 

 

 

どうして夢に見た未来が目の前にあるの?

 

 

 

 

 

立ち尽くす私に彼が大声で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大和ッ!!皆を守れ!!」

 

 

 

 

 

それが正しい指揮だ。

大切なものを守る為の正しい指揮。

自らの命よりも大切な人達を守る為の……

 

 

 

 

 

なのに体が動かない。

何発も攻撃を喰らってフラフラする。

 

震えるのは…痛いからじゃない…。

あなたを失うのが怖いから。

 

 

 

 

 

あまりにも夢に見た光景と重なりすぎて…私は動かなかった。

 

格好の的になって愛する人の声すらも遠くに聴こえるほどに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウフフ…デクノボウなのかしら?……あの人間の方がよっぽど守ってるわね……』

 

『でも…逃がさない』

 

 

ズドンと撃ち出された1発の砲弾。

 

 

私が避ければ街は…愛する人は…死んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だめぇ!おねえちゃん」

 

1人の少女が私の目の前に立った。

 

「あなた…何して……」

 

「いっつもお姉ちゃんが街を守ってくれてるの!」

「だからわたしが…まもるのぉ!!」

 

「逃げなさい!あなたじゃ…」

 

 

「だからって…やめたくないのぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に頭をガツンと殴られたような気分だった。

 

 

ハッとすると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女の子は居なかった…。

代わりに彼が目の前に居た。

 

私に背を向けて両手を広げて…

 

 

 

 

 

人間なんかひとたまりもないはずなのに

 

 

 

 

 

 彼が言った

 

 

 

 

「…守るって言ったんだ」

 

 

「それに俺は…お前を信じている!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちがう…

 

 

 

 

 

私も言ったじゃないか…

でも彼を失いたくない…

 

大好きな小々波の人達も失いたくない…

 

 

 

 

でも

 

 

 

 

 

でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嫌だッ!!

 

 

 

 

守れないのも…

失うのも嫌だッ!!

 

 

 

 

 

 

私は誰だ?

 

私は大和だ。

 

 

この国最強の戦艦!

この国の名前を冠した世界最強の戦艦大和!!

 

 

大切なものも

愛する人も守れなくて何が最強か

 

迫り来る悪夢も打ち破れなくて…何が最強か

 

 

「私は…大和」

 

彼女は目を見開く。

見ろ

突破口が必ずある。

 

 

 

 

 

 

敵から放たれた砲弾は彼と彼が庇う人に向かう。

 

 

 

 

やれる。

いや!やる!

 

大和はその射線上に入る。

 

 

「大和!?」

 

何歩も彼の前に私は出て行った。

 

 

そして––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

その砲撃を受け止める。

 

 

ガリガリガリィ!!と足の艤装が地面を抉る音が響く。

 

「んぐぅううぅぅあぁぁあああッ!!!」

 

手が痛い。

足も摩擦で痛い熱い。

 

 

んなもん

どうでもいいッ!!!

 

 

 

 

 

 

負けられないッ!!

失いたくないッ!!

 

「ぉああぁぁぁあああっ!」

 

 

 

後退する大和のスピードが落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『止めた…だと!?』

 

騒つく周辺。

でも最早、音も聞こえない。

 

 

 

 

「…ッだらぁああああ!!」

 

大和はその砲弾を敵に投げ返した。

 

 

『!?』

 

ボカァン!!!!

敵に着弾した砲弾が爆発を起こして周囲を巻き込んで行く。

 

 

『な…う、撃てっ!うてえええ!!』

脅威。

まさに自分達を脅かす脅威だった。

 

 

全員が大和に砲撃を行う。

大和は艤装で庇いながら撃ち返す。

 

撃ち出された三式弾が敵を屠る。

 

何発も!何発も何発も撃ち込んだ。

 

 

 

壮絶な撃ち合いが続く。

最早敵は大和だけを狙う。

 

 

 

 

バカァン!!

左の艤装が爆発した。

 

 

 

 

膝が笑っている。

今にも折れそうだ…

膝をついたら楽になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

だから何だ。

 

私は…

私は!!

 

 

 

 

 

 

 

 

全部…守り切るんだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【そうだよ…守り切るんだよ】

 

誰かの声が聞こえる。

どこかで聞いた…声がする。

 

 

その声は言った。

 

【私達が…そんな悲しい未来にさせないから】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッと目を見開く。

 

 

 

 

グンと背中を押された気がした。

 

震えて折れかけた膝がシャンとした。

 

周りが全てスローに見えた。

 

 

 

 

いつもより頭がクリアになった––––

 

 

「うおおおおおおぉおッ」

 

残った右側の砲身から一気に放つ。

 

 

ズドドドドォォォン!!!

 

横一閃に爆発が起こる。

その光は…反撃の光は敵陣を薙ぎ払う。

 

 

『ぬぅううう!?!?』

 

敵が大和の思わぬ反撃に尻込みする深海棲艦。

 

 

 

 

 

はあ…はぁ…ッ!

はぁ

 

息を整える。

 

はー……スー…

 

 

「…大和?」

 

 

 

 

大和がくるりとこちらを向いた。

 

「どうした?!」

 

救が彼女に呼びかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「下さい」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を…?修理剤か!?待て…今連絡を…」

 

「いえ、指輪です」

 

「え?こ、こんな時に!?」

 

「こんな時だからこそ……」

 

 

 

「こんな悪夢にあなたを…大切なものを奪わせません!!」

 

「あなたが私達を庇った時に…思い出したんです」

 

 

 

「守り切るって言ったことを…!!」

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

あなたの愛の証を下さい(指輪を…下さい)

 

一生変わらない愛の結晶を(覚悟を分かち合う指輪を)

 

「私に下さいッ」

 

 

 

 

 

 

 

彼女は今までのどんな時よりも真っ直ぐな目を彼に向けた。

 

 

 

 

 

彼は笑った。

 

「ああっ!!」

そして彼は頷いた。

 

 

 

 

「不安だったぞ…断られた時は」

 

「すみません…でももう大丈夫です」

 

 

 

 

互いに歩み寄る。

共に同じ歩幅で同じ歩数。

 

彼が指輪を差し出した。

私が左手を差し出した。

 

私の左手を取って…彼が持つそれが左手の指に通される。

 

 

硝煙と…焦げた匂いが海風に流される中で…

 

誓いの指輪と口づけが交わされた…。

 

 

ほろりと滲む涙をキュッと目を瞑って親指で跳ね除ける。

 

 

「心から愛しています」

「私はどんな悪夢にも負けません」

 

 

 

 

 

行くよって声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に諦めない。

 

この覚悟は……

何があっても折れないっ!!!

 

 

 

 

大和の体が光る。

 

 

 

 

 

 

大和 改

 

 

 

 

 

 

 

大和 改 超高揚状態

 

 

 

 

 

 

 

『…改?改ニにもなれない…出来損ないがぁぁッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。大和には改ニが無い

 

 

だが、次の瞬間…大和の雰囲気が変わった。

その大和に対峙する…敵である彼女は見た。

 

大和に数多の何かが力を貸すのを。

後ろの男が彼女を変えたのだと!!

 

…今の彼女からは改ニにも匹敵するほどの力を感じる。

 

 

 

 

大和から一斉射が放たれ、大半の深海棲艦がその姿を消した。

 

慌てふためき逃げる者も現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

彼女…

南方棲戦姫だけは彼女に向かってくる。

 

『ぬぁぁあああ!!シズメッ!皆底に…水底にィ!!沈めええええええ!!!!!!』

 

 

がむしゃら…と言う言葉が似合うだろうか?

手当たり次第艤装から発砲してくる。

 

大口径の主砲は受け止めて投げ返した。

何体もの深海棲艦を海へと堕とした。

 

大和は其れを悉く撃ち落としながらこちらに全速力で向かう彼女にその拳を叩き込む為に構えた。

 

 

 

 

『沈め…沈めよおおお!!』

 

 

「私は負けない。あの子達が教えてくれた…」

「幸せも…この手で掴み取って離さないっ!!向かってくる不幸も…この手で払い除けるッ!!」

 

 

「私はもう二度と…後ろに退かないッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『沈め…ッ!!暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い暗い水底に沈めぇええええええええええ』

 

 

 

「沈まないッ!この手は…その為の………一歩だぁぁぁああああッ」

 

 

 

 

大和の魂の叫びと右拳がゴシャリと言う音と共に南方棲艦姫に突き刺さった。

 

 

『沈め…沈めッ!うがぁああああッ!』

大和の渾身を受けながらも彼女も右拳を大和に向ける。

大和の左頬にその右拳がガツンと言う音と共に突き刺さる。

 

 

踏ん張る地面が割れる。

それでもその足腰も、右腕もまだ前に突き出す。

 

その手で暗闇に引き摺り込むと言うのなら…私はその暗闇を払い除ける。

 

ミシミシと音が聞こえた。

左頬と歯が痛い。血の滲む味がする。

でもそんなのどっでもよかった。

 

私の意地を…覚悟を貫き通す方が大事だったから!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行けって声が聞こえた。

 

誰かが背中を押してくれた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ッ!ッぉおおおおおおおおッ!」

 

グッと体が前に動く。

南方棲艦姫の体が少し後ろに退がる。

 

 

『負けるか…負けるがぁぁぁあ!!』

 

 

 

 

 

彼女も負け時と力を込めて前に進む–––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の力で大和は拳を振り抜いた。

 

 

「私だって…負けないぃぃあぁああああああッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボロボロと崩れる体…

その薄れ行く満足気な意識の中で見た。

 

 

 

輝く大和は…美しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ペタンとへたり込む。

息を切らして…

駆け寄る彼に笑顔で親指を立てる。

 

 

 

 

 

「少しは…見直しましたか?」

 

 

 

 




お気に入りが770!!ありがとうございます(´;ω;`)


珍しくバトル回?

大和編は次回で終わります!


少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!


感想などお待ちしています!!
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