提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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364話 続 大和と1日夫婦 ④

あの声は…

あの子は一体誰だったんだろう?

 

そう思いながら彼女は彼等の方を向く。

 

 

怖い思いをさせた…

それを小々波の皆に謝らなければ…と思った。

 

 

 

 

「あ、あの…ご「ありがとお!!」

 

頭を下げても…批判の一つくらい覚悟していた。しかし、彼等の口から出た言葉は想像とは真逆の言葉ばかりだった。

 

「カッコよかった!!」

「強い!すごい!」

「いつもありがとう!」

「ラブパワーすごーい!」

 

 

「艦娘さんも怖かったんだよね」

「なのにあんなに踏ん張って立ち上がってくれて……ありがとう」

 

 

「…そんな」

途端に恥ずかしくなる。

怖かったのは怖かったけど…うん、敵が怖いとかじゃなかったのよね……。

言いづらいなぁ……

 

救の方を見る大和。

救は黙って首を横に振った。

 

 

「皆さんも…私達がきっと守りますから!」

彼女はニコリと微笑んで言った。

大和は世間を知った…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「大和?」

 

 

俺の呼びかけに大和はこちらを見てニコリと笑う。

そして…俺の手を握って言う。

 

「…私は夢に悩まされていました」

「あなたを失うくらいなら…指輪なんて貰わない方がいいって」

 

「でも……その未来を…形作るのは他でも無い私なんだって気付いたんです」

 

 

「金剛さんほど…桜三笠さんほどの強さはありませんが…それでも…私もあなたを愛する事は誰にも負けませんよ」

 

彼女は更にニコリと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタンガタン……

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタン…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そうか…でも今言うことじゃ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぅおおおおお!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛の言葉は…

 

 

 

 

 

ジェットコースターの上で言うことでは無い––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「おほほほあぁぁぁあ!!!」」

2人の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

市民達の粋な計らい…と言うか、何というか…

遊園地に招待された俺と大和。

 

まあ、デートが潰れた分の補填と考えれば有難いんだけど…さ?

 

 

 

 

 

 

初手ジェットコースターは凄まじい。

入園の瞬間に手を引かれてごーとぅージェットコースター。

 

 

 

 

ガタンガタンと音を立てながらゆっくりと頂上に向かう悪夢…。

 

「見てください!すごい高いですよ!うわぁー!綺麗なけしきーーーーーーーーーー」

 

何で周りを見る余裕があるんですかね?

 

 

 

 

そして一気に加速して滑り出すジェットコースター!!

 

「あはは…私の速度より速いですよ!」

 

 

冷静な見解ありがとうございます。

 

 

「私もこれくらい早く動けたら……」

 

 

時速が100km近い戦艦って最早バケモンですよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、早かった…島風もマジ無理!とか言うレベルだな…ありや」

  

 

 

「む!他の子の話はダメですよ!提督…ううん、あなた!こっち!次はアレに乗りましょう!」

 

大和に手を引かれて走る。

今の彼女は艦娘の大和では無い。

1人の…女性だ。

 

 

あんなに笑顔を見せながらはしゃぐ彼女を見るのは久しぶり…いや、初めてじゃないか?

 

 

「さあ!並びますよー!」

 

「…コレは……また…」

 

フリーフォール……だとぉ………

 

 

 

 

「ぁぁぁぁ…

 

「ああああ

 

「あああおああ

 

「ああああぁ

 

「ああああああぁ

 

「ぉおおおおお!!!!!」

 

 

「たーのしーーですねえええ!!」

 

 

ヒュン…ってした!

ヒュンってなったぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

んで

 

 

 

 

「思い切り行きますよ?」

 

「や…やめーッ––––––––

 

高速回転するコーヒーカップ。

 

「あはははは!たーのしいいいいい!!」

 

「あばばば!飛ぶッ!飛んじゃうっててええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

んで

 

 

 

「さあ!飛びますよ?」

 

「待て!俺は飛ばな––––––––あぁぁぁぁぁぁあああ…

 

バンジージャンプする大和に抱えられてのバンジージャンプという名の心中もどき。

 

 

「たっのしーですねえ!」

 

「お前…俺のこと恨んでたりしない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しい時間というのは飛躍過ぎ去るものだ。

空はオレンジ色に染まり、その日の終わりを儚く告げ始めた。

 

少し寂しそうな表情の大和と帰路に着く。

 

 

 

 

大和は思い返した。

 

 

 

 

 

とにかく気を張っていた。

腑抜ける時の事は武蔵しか知らない。

それが大切だと思ってたから。

いつだって私が冷静に居なければと思っていたから…。

 

 

あなたを失うのが何よりも怖かった…。

それは、私が死ぬ事よりも怖いから…

 

指輪を断ったあの日…1人で泣いた。

 

 

それでも…この鋼鉄の意志は…あなたを守る為……だった。

 

 

なのに

私は弱い。

 

その愛が欲しくて欲しくて仕方ない。

 

たった数グラムの銀細工が

欲しくて欲しくて堪らなかった。

 

 

 

挫けそうな心をあなたが晴らしてくれた…。

その体全てで私達を守ろうとしてくれた…。

 

なら、あなたの声に応えない私(最弱の思いに応えない最強)は…最弱じゃないか。

 

だからこの身を以てあなたを守ると決めた。

 

 

 

私の内側から聞こえた声は…

私に全ての覚悟を決める後押しをしてくれた。

 

馬鹿なのは分かっていた。

でもあの場で貰いたかった。

あなたの思いを…。

 

 

 

あなたがくれたこの指輪…。

私の限界を超える力を貸してくれた…。

あなたがより隣に感じられて……

 

こうして今も隣に居られる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…えへへ」

 

大和は左手を天に仰ぎながら表情を綻ばせる。

 

「ど…どしたあ……」

絶叫マシンやらお化け屋敷やらを連れ回されて満身創痍ながらも彼女に問いかける。

 

 

 

 

 

「幸せたなあ…って思います」

 

「そうか……」

 

 

「あなたを守り切ります。どんな悪夢が私を惑わそうとも…きっと必ず」

「この指輪はその覚悟の証です!」

 

「一緒に分かち合う為だろ?」

 

「…ッ!はい!」

 

 

 

 

 

 

「ポンコツでも良いじゃないか」

彼はポツリと言った。

 

「え?」

 

「君の弱いところも含めて全てを見られるなら幸せだ」

「その分俺がカバーする。俺に足りないところを君がカバーする」

 

 

「夫婦ってそんなもんだろ?」

 

「はい…」

 

「でも片付けはしっかりとや「それ以上は言わないでください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛しています…あなた様」

 

「俺も愛してるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が背負われて無ければとてもいい会話なんだろうけどな」

 

「ですね」

 

 

散々連れ回された救は3度目のバンジージャンプで大和が一瞬手を離すなどの悪ノリで膝が笑い始めた。

その後もひたすらと絶叫マシンでコテンパンにされて、現在帰路を大和に背負われて移動中なのだ。

 

 

 

 

「情けねえ……」

 

いや、ほんとに恥ずかしい…

 

 

「いいじゃないですか」

大和が言った。

 

 

「夫婦は支え合うものですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自立する足を折ったのは君だけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え!?!?大和さんが…ジャージ!?」

 

「い、意外…」

 

数日後、鎮守府では、かなりラフな大和が見られるようになった。

 

「この私も本当の私ですよ」

 

「まあ…今の方がいいかなあ……?」

 

「そうねえ、親しみやすそうよね」

 

 

少しだけ砕けた大和が皆に囲まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダーリン!遊園地いきましょーー?」

 

「バンジーは嫌だぞう!絶対に嫌だぞうううう!!」

 

同時に大和はバンジーの恐怖を救に植え付けたのだった…。

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