提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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369話 この島から風になって ②

「トモダチ……」

 

 

 

なんかその言葉は私の胸をチクリと刺した。

 

––この海の向こう…島の向こうに連れて行って––

そう言いたかった。

 

でも……私にはそんな資格はない。

だから…答えを言えずに居た。

 

 

 

 

「お?」

救がいきなり変な声を上げた。

 

「な、なんですか!?」

 

「ナニ?!」

 

ゴソゴソと懐をまさぐる救。

その手には飴玉の包みが握られていた。

 

 

「ナニソレ?」

 

「え?飴玉知らない?」

 

はい、と渡されたソレを不思議そうに見る。

「こーやって…包みをひらいてー…中身を口に」

 

「ナニコレ…トテモ…キレイ」

初めて見たソレは…流れ着くガラスよりも綺麗で…

 

とてもとても甘くて…私の頭を…一瞬にして幸せにした。

 

「もっといろんなものがあるよ!この外には」

 

「服屋さんとか…コーヒー屋さんとか」

 

「フクヤ?コーヒーヤ?」

 

 

 

 

 

 

 

外…

私はここしか知らない。

あなた達だけが私に優しくしてくれた…

 

 

 

きっとあの利根は生きていないだろう。

奴らに利用されたんだろう…彼女達を誘き寄せる為に。

 

あなた達は馬鹿よ。

私を疑う事なく…こんな……

 

 

 

 

 

 

それ以上に私が……大馬鹿よね。

 

 

 

 

 

 

 

でも夢見てしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……

 

『…やっぱりここに居たのね』

 

「……ッ!!」

 

 

 

救を守るように古鷹が前に立ち、その2人を庇うように私が前に立った。

 

 

 

バレた。

 

『ここらへんの海流はね…独特なのよ…っても、あなたは知らないでしょうけどね?』

『なぁに?コイツらに絆されたのぉ?』

ケラケラと笑う空母棲姫。

そして後ろから顔を出した戦艦棲姫。

 

 

『む?貴様は……』

『そうか…貴様が隠していたのか…()()()

 

 

「失敗作?…どう言う事?」

 

『知らないのか?おめでたいな』

 

『ソイツは私達の側なんだよ』

『生まれつき上手く艤装(てあし)を動かせない失敗作だからな』

『この島に閉じ込めて、お前達にとどめを刺すように言ってたんだがな……まさか匿っているとはなあ…飛んだ裏切りじゃないか…ええ?』

 

 

「重巡ちゃん…君は…」

 

「…ゴメンナサイ」

 

『アハハハハハハ!いいわ?お前達もあの娘みたいに殺してあげるから』

 

 

「…はぐれの利根のことか?」

 

『ん?…そうそう、アイツは…()()()()

 

 

「なんでッ!!!」

殺したと言う言葉に激昂する救。

 

 

 

『おや?庇うの?』

『死にたくない為にお前達を売った奴だからだが。死にたくない為にお前達を攻撃したんだから』

 

『そーんな裏切り者…死んで当然じゃないか?』

 

 

 

 

やはり、俺達を攻撃したのは利根だった。

いや…利根は死にたくなかったのだ。

苦渋の決断の末に俺達に頼って………

 

『お前達を攻撃した後さあ……私達に楯突いてきたんだぜえ?』

『やっぱりそれじゃためなんじゃ!ってさあ?!』

 

『ごめんなさい…ゴメンナサイって言いながら沈んでいったよ』

 

 

後悔したのだろう。

せめても…ではないが、致命傷にならないように攻撃してから奴等に挑んだのだろう。

何で他の艦娘を頼ってくれなかったんだ…。

 

心にチクリその情景が浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で殺したぁあ!」

 

『ウルサイ』

突っ込もうとする古鷹を弾き飛ばす戦艦棲姫。

 

「あうっ」

 

 

「ヤメテ!!トモダチヲキズツケナイデ!!」

 

『何が友達だぁ!!』

『こんなカスどもをおおおおお!』

ゲシゲシと古鷹を蹴る戦艦棲姫から彼女を庇う重巡ちゃん。

 

「ぐっ……重巡ちゃん!?」

 

「アウッ…グッ…ヤメテ……ワタシノトモダチ…」

 

それは何度も何度も繰り返される。

ドゴッ…ゲシッ!ドカッ!

 

「やめて!重巡ちゃん!私が…たたかうからぁあ!」

何とか歯を食いしばって立ち上がろうとする古鷹を空母棲姫が蹴り飛ばした。

『うーん?この腕でえ?』

 

グリグリと折れた右腕を踏み躙る。

 

「きゃあぁあ!!ぐっううううううっ」

 

「やめろぉ!!」

救が体当たりに行くが簡単に弾き飛ばされる。

 

「ぐうっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やめてよ

私の友達に…

初めてできた友達に…

 

 

 

酷いことしないでよおおお!!

 

 

 

 

 

 

重巡棲姫は戦艦棲姫を弾き飛ばして空母棲姫に体当たりした。

 

『チィッ!!コイツ!こんなに動けたなんて…』

 

『あったまきたァ!ぶっ殺してやるッ!』

 

 

 

「サセルモンカァァァア!!」

彼女は鬼の形相で友達に仇なす者に単身で突っ込んで行く。

 

 

 

 

 

 

「重巡ちゃん!」の声も耳に入らなくてそれでも…

生まれて初めて体が軽く動いた気がした。

 

ほんとは…

ずっと知ってた。

 

私は…生まれた時から憎しみが薄かったから…

失敗作だとして、偽装を剥がされてこの島に閉じ込めて居た。

ずっとそう言い聞かされてきたから。

 

毎日毎日同じ景色を眺めるだけの日々。

知らない事だらけで、当たり前の毎日に…突如として敵と教えられたあなた達がきた。

 

殺しちゃいけないって気がした。

私の…この退屈な毎日を壊してくれる気がしたから。

 

 

でも…

あなた達は友達を教えてくれた。

優しさを教えてくれた。

私に居場所を…この小さな島の外に居場所をくれた。

 

 

 

…夢が……叶いそうな気がした。

 

 

「ウァァアアアアアア!!」

強引に右腕を戦艦棲姫に叩き込んだ。

バキャン!!という音と共に彼女は吹き飛ばされた。

そのまま左腕で空母棲姫の腕を掴んで地面に叩きつけながら放り投げた。

 

 

 

『なっ!?こ、こんな力が…?』

ゾクリとした。どこにこんな力があったと言うのか?

 

 

 

「オマエタチヲタオセバ…ワタシハ!トモダチト、ユメミタソトニユケルンダ!!』

 

 

 

 

しかし、重巡ちゃんがいくら強いとは言え、丸腰。

艤装を持たぬ身では…彼女達には…勝てない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢は…見続けるから夢。

 

突っ込む彼女に向けられた艤装。

 

 

 

 

爆発する体。

飛び散る血飛沫。

 

私だったものが…私から離れて行く。

 

 

それでも彼女は駆けた。

そして、空母棲姫に飛びついて首に…歯を立てた。

嫌な音が響いた。

 

『うぎゃぉぁあ!!き、貴様ァァア!!ヤメロ!!』

『貴様みたいな失敗作にぃぃ!!』

 

「オオオオオ!!」

『ぐううううううう!!』

 

 

 

 

 

 

 

バツン––

 

 

 

 

 

彼女はその首を噛み砕いた。

主人の無い胴体はピクンと跳ねて動かなくなった。

 

 

『ひっ……』

戦艦棲姫は恐怖した。

 

「何で…何でそこまで』

 

「トモダチを…マモルンダ」

「イッショニユクンダ」

 

 

重巡ちゃんは駆け出した。

その手はもう動かないけれども。

 

 

 

『クソが!!貴様なんぞおお!!!』

 

 

突っ込む彼女に砲口を向けながら戦艦棲姫はいかに生き残るかを考えた。

 

 

考えた末に…彼女は古鷹や救に砲口を向けた。

 

『アハハ!!奴等ガラ空きだぁぁぁあ!!!』

 

そう、彼らは自衛の手段がない、よしんば防いだとしても攻撃の手段もない。きっと重巡は奴らを庇う!!そして死ぬ!そうなれば残された奴を殺せばいいだけだ!!と。

 

 

 

 

砲撃が放たれた。

古鷹は前に出て救を守ろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フタリトモ」

重巡ちゃんは戦艦の読み通りに彼女達を庇う。

 

 

 

「マモルカラ」

 

 

彼女は振り返ってニコリと微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

「重巡ちゃ––––––

 

 

ズドオオオオン!!

 

 

古鷹が見た光景は……彼女が爆風に飲まれる光景だった。

 

 

 

 

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