提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
珍しく2話目の投稿!370話の続き
ご注意下さい!
この島から風になってのエピローグとなります。
前話をご覧になってない方はぜひそちらからで
「……到着…と」
ここが…私達のよく来る街…小々波市だよ。
ほら、こんな大きな建物もあって……。
「あれが服屋さん。服を売ってるんだよ」
「ほら、この服…きっと似合うだろうなあ…」
あの子と2人でこうやって服屋さんを廻るのを想像する。
『この服似合うよ!』
『エェ…ニアウカナァ…?』
なんて想像の幻が目の前で楽しそうに会話をしている。
独り言を言う私にきっと周りは奇怪な目を向けるだろう。
だって彼らは知らないから。
私の事も…彼女の事も……。
じわりと涙が溢れてきた。
慌てたように店員が話しかけてきた。
「ご気分が優れませんか?!大丈夫ですか?」
「いえ…大丈夫です」
「後は俺が…すみません」
そんな店員の横から現れたのは提督だった。
彼は私達の手を取って言った。
「この服…どう思いますか?」
「…2人に似合うと思う」
「えへへ…本当ですか?」
「プレゼントするから着替えておいで」
店員に了承を得て、購入してから着替えた。
あの子に似合いそうな早めのワンピース。
と、ヒール。
「似合いますか?」
「うん、似合ってる」
「もう一着…買って良いですか?!私から…あの子に」
「もちろん」
「行こうか…おふたりさん」
変わらず周りの人は奇怪な目を向ける。
同じ服をもう一着買うのだから?
誰も居ないのに喋っていたから?
1人で泣いていたから?
誰も知らない、知らなくて良い。
でも…その中で彼だけは、私に何も変わらない優しい目で語りかけてくれた。
誰か1人でも良い…。こうやって知ってくれている人が居ればいい。
「…あ…救君」
「本当だ、まも君…」
「と…古鷹…ちゃん?デートかな?」
麗が古鷹を見る。
「え?私には…気のせいかな。別の誰かが見えたような…』
幸には彼女に重なってもう1人見えたようだった。
「これがコーヒー屋さん!ムーンバックス!!」
もちろん…コーヒーを3つ頼む。
3人掛けの席に移動してからコーヒーとお菓子を並べる。
「これが…おすすめのコーヒーだよ」
「古鷹が飲んであげないと」
「あ、そうですね」
「……あまぁい…」
「ホットサンドは……ん…おいひぃです」
それからもたくさんまわった。
オススメの雑貨屋さん、見晴らしの良い橋、農場の展望台で食べるソフトクリーム。
そして…
私達の住む鎮守府。
見てますか?
ここが鎮守府だよ。
連れてきたかった…場所。
色んな子が入り混じって過ごす場所。
あなたが望んだ…皆が手を取り合う場所…。
ベンチに座って星空を見上げる。
重桜組の育てる…どこから用意したのかわからないけど立派な桜が月夜に照らされて綺麗だった。
「…あなた」
姫ちゃんが話しかけてきた。
ジッと私を見つめてニコリと微笑んだ。
「うん、幸せそうね」
「……え?」
「あなたの中の…娘よ」
「わかるの?」
私は思わず彼女に詰め寄った。
「ねえ!教えて!私…!あの子が見てるかなって思って、行きたがってた街に出たの!たくさん色んなところ回って…それで!それで!!」
「彼女は満足してくれた?って?」
「うん!わかるなら教えて!お願い」
「それはあなたが一番よくわかってるんじゃないの?」
「…ッ!!!」
「わかんない…わかんないの!!」
私は思わず語気を強めた。
それでも変わらず彼女は…優しく言う。
「ここ」
そう言って彼女は私の胸に触れた。
「ここは…冷たい?」
思い出す。
服屋もコーヒー屋も…景色の良いあの街並みも何もかも
心に温かい何かを感じていた事。
鎮守府での皆の様子を見てきた時に見えた彼女の幻。
優しく微笑みかけてくれるような感覚の。
「どう?」
彼女がもう一度問いかけた。
「冷たく……ない」
「…温かいよぉ………」
私は胸の前で手を握り締めて泣いた。
背中に…肩に誰かが手を置いてくれているような感覚になった。
きっと彼女が居るんだ。
「うわぁぁああああん!!」
膝を折って泣き崩れた。
姫ちゃんは優しくそっと抱き締めてくれた。
「生きていて欲しかった!!友達だから!」
「一緒に過ごしたかった!」
「もっとありがとうって言いたかった!!」
「私なんかの為にごめんねって言いたかった」
「友達になってくれてありがとうって言いたかった」
「あの人を守る為の力をくれてありがとうって言いたかった」
止めどなく言葉が涙と共に溢れてくる。
それを聴きながら…うんうんと頷いて優しく頭を撫でてくれる姫ちゃん。
「悲しい顔しないで」
「笑って」
「ほら」
思わず振り返って見上げた。
そこには涙目で笑う重巡ちゃんが居た気がした。
『ナカナイデ…』
『笑って』
夢幻でも良かった。
面と向かってお礼を言いたかったから。
「う…ぐっ…グスッ…ゔわぁぁあん!!」
暖かくて懐かしくて悲しくて…彼女にしがみついた。
「ありがどぉ」
「本当にありがどぉぉぉ」
声にならない声をあげて泣いた。哭いた。
『イッタデショ?』
『ズットアナタノナカデ…イキツヅケルノッテ…』
『マタ…イロイロツレテイッテネ』
「やだ!行かないでよ!ねえ!ねえ!!」
『ダイジョウブ…ズーットイツマデモソバニイルカラ…』
––泣かないで
笑って…
私の友達–––
彼女は私の中に消えた。
夢幻でも構わない。
もう一度会えたことに私は……嬉しくて悲しくて切なくて泣いた。
ずっと姫ちゃんが居てくれた。
「…幸せだったと思うわ…あの子は」
「そうかな…」
「まあ…それを証明するのは…あなたの今後よ」
「笑って生きなさい」
「その目で色んなものを見なさい」
「それがきっと…彼女への良い手向けになるから」
「そうすればいつかまた…会いにきてくれるわ」
「ありがとう」
「提督ー!!ランチいきましょー!」
「ん?お、おぉ…行くか」
2人で歩く鎮守府の町。
あなたに一番見て欲しい景色…。
あなたの友達で……私の1番大好きな人……。
あなたのくれた…力できっとあなたの望んだ…
平和で美しい世界を…できるなら…
分かり合える世界にしてみせるから!
「何食べる?」
『…オムライス』
「え?」
救が聞き返す。
「え?何ですか?」
「今、オムライスって言った?」
「いえ、言ってないですが…」
「でも良いですね!オムライス!なんだか私も食べたくなってきました」
ビュウッと風が優しく私達を撫でた気がした。
今も彼女の部屋には、台に掛けられた服と指輪のネックレスが置かれている。
切ないお話ですが、お楽しみ頂けたなら幸いです。
感想などお待ちしてます!
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