提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
とある日の昼下がり、うづきの店にとある者達が乱入…もとい訪れた。
「やほー!な〜な〜ちゃん!」
「お手伝いに来たよ!」
「え!?金剛お姉ちゃん!?麗さん!?幸さん?!」
そう、女子会(笑)メンバーである。
「えへへ、休みで遊びに来たでーす」
「む!奈々ちゃん!さん付けはダメだよ!同じちゃん付けでお願いだよ!」
「あ……うん…ありがとう」
「あれ?!金剛さん!?」
奥から出てきたのはうづき。
「オー!うづきー!今日は遊びに…兼手伝いにきたねー!」
「ええ!?本当ですか!?」
「色々と忙しくなったと聞いたよー!」
元々は花屋だったうづきのお店。
だが、ここ最近で事業拡大…というより、元艦娘としての繋がりを利用して物資も扱うようになった。
専ら西波島関係ではあるが、海路の関係もあって重宝されている。
「良いんですか?せっかくのお休みなのに…」
「友達とイモートは大切にするものでーす!」
「そう?なら嬉しいです!なら…奈々ちゃんのお手伝いお願いしますね」
「「「はーい!」」」
ガラガラと台車を引きながら街への納入に回る奈々を手伝う。
「おやあ?今日は美人さん揃いでの仕事かい?」
「美人さんだなんて…ありがとうデース!」
美人さんが笑顔で納入に来ると言うと言うことで人気が出たらしく、行く先々でお菓子やら何やらをたくさん貰った。
正直行く時より荷物が増えた気がする。
「いやぁ〜。金剛さん達…美人さんて評判で、また来て欲しいってたくさん注文貰いましたよー!」
「ならまた手伝いに来るでーす!」
ある日は、
「行きますよー!」
「金剛型1番艦金剛!!ダーリンラァブデース!」
「金剛型2番艦!比叡気合い入れて!行きます!」
「金剛型3番艦!榛名は大丈夫です!」
「金剛型4番艦!霧島、マイクは手放しません!」
「…えと…末っ子!奈々です!が、がんばります!」
「「「「我ら!金剛型5姉妹ッ!」」」」「しまい!」
「ほいよ」
カチッと青葉がスイッチを押すと後ろで大爆発。
紙吹雪が舞って歓声が沸き起こる。
「おー…奈々〜。まだ恥ずかしさが残ってるねー」
「もっと…ガツガツ行くべきでーす!」
「そうですよ?見てくださいお姉様を。カタコトキャラを脱却しようと頑張ってるんですよ?そのくらいのガッツが必要ですよ!」
「あう……」
「キャラ確立はなかなか難しいデース…」
特に金剛の奈々への可愛がりは凄かった。
わざに小々波の街まで迎えに行く程だった。
だが、彼女も喜んでるようで姉妹揃って楽しそうにしていた。
救が近寄って来て話しかける。
「楽しくやってるようだね」
「はい!こんなによくされて…嬉しいです」
「私も艦娘だったらな…って思います…あはは」
「艦娘だとか人間だとか関係ないよ」
「でも、一緒に戦えたら…って思います」
「物資の運搬も大事なものだよ!奈々ちゃんも立派なウチのメンバーだよ」
「…わ、わたし…救さんの力になれてますか?」
「もちろんだよ?どしたの?」
「……あなたの力にもなりたいんです」
彼女は顔を赤らめて言う。
「ありがとう」
「ムー!!ダーリンは私のダーリンよー!」
「違いますー!榛名のダーリンさんですっ!」
「比叡と霧島も忘れて貰っては困ります!」
他のメンバーも入り乱れてのワーキャー具合になるいつもの感じ…それが奈々のお気に入りだった。
しかしだった。
そんなある日の事だった。
大規模侵攻が行われ、西波島のメンバーは防衛ラインを敷いて殲滅に当たっていた。
住民達への避難指示を出し、誘導を行う。
「うづきさんも早く!」
「ダメよ!まだ奈々が戻ってないの!」
「奈々ちゃんが!?今どこに!?」
「離島に納品に…小船で!!」
『呆気ないな…金剛とやら!』
金剛を片手で持ち上げて主砲を金剛に当てる。
対する深海棲艦はいつでも金剛を殺すことができる態勢だ。
戦艦棲姫…今回の大侵攻の首謀者である彼女は一際強かった。
霧島や陸奥は中破に追い込まれ、撤退戦と消耗戦を余儀なくされる部隊も少なくなかった。
「こんごおお!」
「お姉様ァァ!!」
「ぐっ…この」
ジタバタと暴れる金剛
そしてー
『死ね』
救に緊急通信が入る、かつてない程に慌てるベルだった。
「ベルッ!今はそれどころじ「ご主人様ッ!!奈々様が!奈々がそちらに!!」
「なにぃ!?」
パァン…と乾いた音がした。
カキン
戦艦棲姫の艤装に弾があたった。
『む?』
棲姫の目線の先に居たのは…小舟から銃を構えた奈々だった。
「お姉ちゃん…」
カチカチと震えながら涙目で呼び掛ける。
『今、その近海で大規模な戦闘が行われてるらしい!みんな今避難してる!今すぐ仕事をやめて帰って来て!もしくは西波島の皆が来るまで島にいて!!!』
奈々は舵を切る。
進路は小々波の方へと向きを変えた。
『うん……危ないからね………って!?奈々!?』
そう思った束の間、進路は…金剛達の方に向かう。
『お姉ちゃんがピンチなんです!!』
彼女はうづきを振り払って行く。
いつも守って貰ったんだ。
だから…私が守るんだ!!
『奈々ッ!!ダメだ!帰れ!帰ってこい!!』
『ごめんなさい…うづきさん。できません。胸騒ぎがするんです!行かせてください』
『ダメだッ!絶対にダメだ』
『貯金は家の箪笥にあります、保険も掛けてます……うづきお姉ちゃん…ごめんなさい』
その言葉を最後にプツリと通信は途絶えた。
「奈々!?何してるの!!」
金剛達が慌てて退くように叫ぶ。
少女は小さな銃を両手で握りしめていた。
「お姉ちゃんを…離せぇッ」
「馬鹿ッ!!」
急いで駆け寄る救と榛名。
片手で持ち上げた金剛を見た後に視線を奈々の方へ移しニタァと笑う棲姫。
「やめろぉおおおおお」
彼女はソレを悟る。
「お姉ちゃん…救さん…大好きだよ」
「私が守るから」
誰もが目を覆った。
彼女が乗る小舟は大爆発を起こした、榛名と背に乗った救は爆風で吹き飛ばされる。
それ程の爆発だった…そのかけらも残さない程に。
彼女は納品に向かう途中だった。
でも彼女は我慢できなかった。うづきの静止を振り切って銃を手に向かってきたのだ。
『アハハハハハハ!死んだ!死んだ!!跡形も無く消し飛んだ!!ほら!見てこいよ!!』
金剛を乱暴に爆発し、今も燃え上がる海に投げつけた。
「奈々ッ!!奈々ァァ!ななぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
「ドコッ!?返事を…返事をしてえええ!!」
「榛名!大丈夫……か……」
「は、榛名は…大丈夫…です……奈々ちゃんは」
「ッ!?奈々ちゃん!!」
「戦艦棲姫を牽制しながら探すぞ!!」
しかし、既にそこに深海棲姫達の姿は無く…
水面に跪いて必死に戻らぬ彼女を探す金剛の姿だけがあった。
何日も捜索が行われた。
望みは全くも言って良いほどでは無かったが、それでも探した。
その悲痛な金剛を誰も止める事が出来なかった。
「奈々!お願い…お願い!出てきてよおおお!!」
「金剛さん!奈々は!奈々は!」
「うづき!止めないで!きっと奈々は…」
「金剛さん!」
「あの子は私のイモートなんです!!この悲しみがわかりますか!止めるなァァア!!」
鬼のような形相でうづきに突っ掛かる金剛。
だが、うづきは負けずに言い返す。
「金剛さんッ!!私だって辛い!!!」
「私だって…信じたくない…!でも!でも!!」
「あなただってボロボロなんだ!!こんなの奈々は望んでない!!」
「…うっ……うわぁぁぁあああああ!!!」
ぽろぽろと泣き崩れる金剛。
2人はひたすら泣き明かした。
大切な家族を、友人を亡くした悲しみは…深く傷となって…
どれほどに傷を癒そうとそれは消えることはなかった。
「オネェチャン…」