提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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378話 水面は青空に憧れて ⑥ 抜錨

「金剛さん達のバイタル!低下中です!!」

 

「くっ…」

 

「他の海域の深海棲艦!依然として数は変わりません!!」

 

突如として現れ、侵攻を開始した深海棲艦。

そう、まるで金剛達の方へ誰も行かせないようにする…ように。

 

「由良!もっと近付けるか!?」

 

「頑張ってみる!離さないでね!」

由良は救を乗せて金剛達の方へと向かうが…

 

 

 

 

 

 

 

「…な…」

救達が目にしたのは…変わり果てた4姉妹の姿だった。

最早、彼女が金剛型の1番艦だったことすらわからないだろう。

髪は真っ白に染まり上がり、艤装も禍々しく変化していた。

比叡、榛名、霧島も6〜7割は染まっているようだ。3人は膝をついて息も上がっているが…金剛だけは棲姫と殴り合っていた。

 

 

「コロス…オマエハ…コロス」

 

『うーん…本当にどっちが悪なんだろうね?』

 

奴の言う通り…と言えば癪だが、その通りとしか言えなかった。

「金剛ッ!!」「金剛さん!!」

 

2人の呼びかけに対して金剛は

「邪魔ヲスルナ!!」と、砲撃で牽制する。

もう…俺の声すら届かない…のか?

 

 

 

 

 

 

そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「に、にゃぁぁ!?」

西波島鎮守府の工廠では桜明石が腰を抜かしていた。

 

 

 

「これは?」

夕張達が騒ぎを聞きつけてやって来る。

目の前にあった光景は…

 

 

「き、キューブが…キューブが!光ってるにやぁあ」

 

工廠にあったキューブが光っていた。

呼応するように他のキューブも光る。

 

 

 

 

その様子も救に通信で伝わる。

「何?工廠のキューブが光ってる?」

「今はそれどころじゃ……うわっ!!」

救達に砲撃が飛んでくる。

 

「ダーリン…サン…ダメ…近寄らないで」

榛名達ですら意識が混濁しているのか、こちらを敵視する様子も見られる。

 

『あはは!!傑作だね!愛する提督すら見えない。なんて無様な奴らだあ…』

 

その様子をケラケラと笑う戦艦棲姫。

 

 

 

 

「いったい何なんだ…」

目の前では大切な人が深海化して、そして…憎い敵がいて…皆も大侵攻で戦っていて、工廠ではキューブが謎の発光…。

頭がパニックになりそうだ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご、ご主人様ッ!!」

桜ベルファストが救達に追いついた、その手には金剛がいつも持ち歩いていた砕けたキューブのカケラの首飾りがあった。

 

今回の命令無視の際に置いて行ったものだ。

そのキューブはかつて鏡の海域で散ったもう1人の金剛の残滓であった。

 

 

救も目の前の事に驚きを隠せなかった。

意思を持っているように、彼を呼ぶように…光続け、キューブがさらに光を強めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……お前達が…?」

その首飾りを手に取る救。

 

 

その時だった。

 

首飾りだったものは1つのキューブに変わった。

 

 

 

 

 

 

「「「「!?」」」」」

誰もがその光景に驚いた。

足りないものを他から補うように…数個のキューブが1つになったのだ。

 

そして–––––

 

 

 

そのキューブは更に光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

虹色に。

 

 

 

 

 

「虹色に光って…!?」

 

 

 

 

 

 

 

「お前が俺を呼んでいるのか?」

 

意思を持っているようだ…と表現したが

救は感じた。

意思を持って語りかけて来るのを

 

 

 

 

 

まるで今すぐ建造しろといわんばかりに主張するのを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

「奈々ッ!!奈々ぁあ!!」

うづきだ。

 

「なんで君がここに!?」

救は驚いた。無理もない、彼女は艦娘を退役している…。

艤装もなければ海の上を走ることなんか出来るはずがないのだから。

 

「借りたのよ!」

「金剛さん…みんなまで……」

 

「それより!今…奈々ちゃんの名前を…?」

 

 

 

「奈々が呼んでたの。私達を…あなたを」

「だから来たの」

「お願い…あなたも名前を呼んで」

 

「一体何のことだよ!うづき」

 

「きっともう一度…あの子は戻って来るから!!」

 

 

 

 

 

確信なんかなかった。

でも…強く感じたの…。

奈々が私を呼んでるって、あの海のあの場所で…もがいてもがいてもう一度…家族を救おうとしているって。

 

 

「応えて…あげて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…よし」

 

救も全てを把握した訳ではない。

しかし…彼も同じようにキューブに呼ばれている気がしたのだ。

 

だから彼は言う。

 

 

 

 

「頼む」

 

「もう一度…力を貸してくれ」

 

「大切な仲間を家族を誇りを!!守る為に」

 

 

 

「俺に…俺達にもう一度力を貸してくれえええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…指揮官。力を貸すよ」

そんな声が響いた気がした。

 

 

 

 

 

バチバチと音を立てて何かが組み上がって行く。

 

「……?」

 

『なに?面白いことが起きるのかな?』

 

 

 

 

 

 

ひときわ強い光が周囲を覆った後…

 

 

現れたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スラッとした出立ち。

ヤギのようなツノ、腰に下げた軍刀。

将官の上着を羽織った堂々とした姿。

戦艦を思い浮かべることができそうな重厚感のある連装主砲。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は戦艦駿河…私に…任せて」

 

 

「する…が?」

 

 

 

 

 

 

「………」

ぽひゅん!という音と共に凛々しい角は耳に変わり、尻尾が現れた。

ヒラリ…と、救の前に葉っぱが1枚落ちた。

 

「ん?葉っぱ?」

するとどうだ。

彼女がいきなり、人が変わったかのように焦り出した。

 

「はぁ!?何で!?ちゃんと渡したはずなのに!?」

 

「ん?」

 

「え!?何で私が出てるの!?」

 

 

「君は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は戦艦駿河。かの大戦時に竣工…されなかった戦艦です」

「さっきまでの姿は…もう一つの私の姿と思って欲しい」

 

コホンと咳払いをして駿河は喋る。

「あなたが…指揮官ね」

 

「ああ」

 

 

「お願い。あの子を起こしてください」

 

「ん?どゆこと?あの子?」

 

「……私はとある気高い魂に呼応しました。決して幸せとは言えない人生を歩んだ彼女は…それでも最後まで戦いました」

「それを馬鹿という人もいるでしょう」

 

「諦めの悪い指揮官。鏡の為に泣くあなたを…壊れたキューブや他のキューブを通して見ていました

 

「皆もあなたを馬鹿と言いますね…。でも…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はそんな馬鹿が大好きなんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と言う事は」

 

「ええ、さっきの私の姿は奈々と呼ばれる子です」

「彼女の魂と…うまく説明できないんですが、私を一緒に建造してもらったと思ってもらえたら…」

 

「でも彼女は眠ったままだと…?」

 

「そうです」

 

 

そう言う駿河にうづきは泣き縋るように語りかけた。

 

 

「起きてよ…ねえ!奈々ぁ!」

 

「アンタが居ないと…寂しくて仕方ないんだよお」

 

 

「大好きな金剛お姉ちゃんを助けなきゃ!!ねえ!」

「起きろぉ!!馬鹿やろー!!」

 

 

 

「………」

 

「大事な家族なんだろう…お姉ちゃんなんだろう!」

「大好きな人なんだろう!!」

 

「なら…ぼーっと寝てんじゃねえよぉ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメね…」

それでも彼女が目覚める事はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『期待はずれかな?でもいいや…目障りな気配がするから…殺すね』

 

「ウッ…ウアアア!!」

 

戦艦棲姫と霧島が駿河に向かって襲いかかって来る。

 

 

 

 

 

「駿河!!避けろ!」

咄嗟に出た言葉を頭が否定した。

違う。

そうじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

救は叫んだ。

 

「奈々ぁ!!お前が家族を守るんだぁぁぁあ!!」

 

 

『無理無理』

 

 

「……あ、」その一文字だけ…駿河は発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛びかからながら棲姫は違和感を感じた…

『…むっ!?この気配は…まさ…ガハァ!!」

戦艦棲姫は駿河の回し蹴りで吹き飛ばされる。

ドン…バチィ!バチィ!と音を立てて海の上を跳ねて行く。

『ガッ…グッ…ぐぅう…何て力なの…』

 

 

 

 

 

 

「奈々!!まだだ!霧島が!!」

 

 

 

「ウァアアアア!!!」

霧島は駿河に飛びついて…

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霧島お姉ちゃん…もう大丈夫だよ」

 

 

 

 

 

駿河……いや、奈々は優しく霧島を抱きしめていた。





反撃開始だ






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