提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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379話 水面は青空に憧れて ⑦ 何度でも立ち上がる

霧島は何が起こったか分かってないようだった。

ハッとすると暴れようとする、しかし…次第に大人しくなって行く。

榛名はふらふらとうめき声を上げながら駿河に近寄って行く…まるで助けを求めるように彼女に手を伸ばして。

 

尚も駿河は榛名をも抱き締める。

「榛名お姉ちゃん…うん、大丈夫」

 

救には見えた。

榛名や霧島から流れた…ひとすじの涙。

 

 

「…あ…れ」

 

「私達は……って、あなたは?」

 

 

正気を取り戻したらしい彼女達は目の前の少女を見つめる。

そして…

「…奈々…ちゃん?」

と、信じられない言葉を発した。

「うん、馬鹿なことを言ってるのはわかる。でも…この感じは…奈々ちゃんしかない」

 

 

奈々と呼ばれた…その視線の先の少女は……ニコリと笑って言う。

 

「うん!お姉ちゃん!奈々だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「再会を喜ぶのは後で!今は…2人のお姉ちゃんを呼び戻さなきゃ!」

 

 

 

 

 

 

「金剛お姉ちゃん!比叡お姉ちゃん!」

 

 

「「ウグァァア!邪魔ヲスルナ!!!」」

2人が飛びかかり殴りつけて来る。

 

「…ッ!!」

身構える奈々。

 

「大丈夫だ!!」

後ろから聞こえた声。

「奈々ちゃんなら…できる!今の君は戦艦なんだから!」

 

彼が指揮官だからだろうか?

それとも私にとっても大切な人だからだろうか?

いつもより…スッと深くまで声が届いた。

 

「うん!見てて…絶対に取り戻してみせるから」

 

 

2人の拳を受け止め、流して榛名達と同様に抱き締める。

彼女達は深くまで潜りすぎた。

何度も何度も奈々を殴る。

殴りつけて噛みついて…「奈々ノ仇ヲ」と言う、目の前にいるのにも関わらず。

 

だが、彼女は表情を変えなかった。

大切なものを慈しむように2人をジッと見つめていた。

その表情に2人は戸惑いを覚える、何だこいつ?何でコイツは私達を攻撃しない?何だこの気持ちは…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『比叡、私達は…深く堕ち過ぎました』

 

『はい…もう周りも見えませんね』

 

『……ごめんなさい』

 

『…お姉様と一緒なら私はどこへとも行きますよ』

 

 

 

 

『お姉ちゃん!!』

 

『金剛お姉様…私達に迎えが来たようですよ』

 

『奈々に謝らなくちゃネ』

 

 

 

『目を覚ませぇえ!!』

声のする方を見ると、奈々がいた。

 

『奈々!?本物なの!?』

 

『でも…奈々は…私が……』

金剛達は目を逸らす。

自らが妹と呼ぶ子の2度の死に関わった、その声も顔も何もかもが肩にのしかかるからだ。

 

 

 

 

 

そう、この怒りも憎しみも…ほぼ自分に向いているものだ。

巻き込んだこと、助けられなかったこと全てを。

この復讐が何かになる訳ではないのはよく知っている。

でも…この内から湧き上がるモノを奴に命懸けでぶつけるしか残されていないと思えるのだから。

 

 

 

『ごめんなさい…ごめんなさい』

2人はただひたすら謝ることしかできなかった。

 

 

 

 

『私を見てッ!!』

そんな2人の顔を自分の方へ向けて彼女は言う。

 

 

『やっと見てくれた…お姉ちゃん!起きて!!私は居るから!目の前にいるから!もう…自分を責めて呑まれないで!!』

 

 

『私はここに居る』

 

 

『あり得ないかも知れないけれど…確かにここに居る!』

 

『お姉ちゃん達を助けて…もう一度笑顔で歩む為に私はここに居るの!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからお願い––

 

目を覚まして––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は……」

金剛達の髪の色が戻って行く。

呻くような声は鳴き声に変わって…強く強く自らを包み込む相手にしがみつく。

 

「おかえりなさい…お姉ちゃん」

 

『ううっ…うあぁ…奈々…ななぁ」

 

「奈々ぁぁあ」

 

榛名と霧島も3人の方へと駆け寄って、その輪に入って行く。

「うわぁあん!!お姉様ぁ!奈々ぁ!!」

 

敵陣の真ん中で5人で抱き合い泣く様子はなんとも言えない光景だった。

 

 

 

 

 

 

『馬鹿なッ!?呑まれて戻ってこられる筈が…!!』

その様子を戦艦棲姫は驚愕した表情で見つめた。

あり得ない!

深海の光すら届かない闇に囚われた者は、這い上がる事は叶わない。

不可能だ!

 

ましてや…あの未確認の艦娘…奴からはヒトの気配…私に楯突いたアイツの気配すらする!そんな空想物語は…あってはならない!

 

『クッ…フフフ!また死にに来たのか?!もう一度殺されて…また深海棲艦になるか?大切なカゾクはもう一度深い深い闇の底に行くかぁ?』

 

 

 

「…もうそんな事にはならないよ」

金剛が言い放つ。

 

「うん!ならない!!」

 

 

「なぜなら…」

 

 

「「「「「私達はお前なんかに負けないッ!!」」」」」

 

 

 

『…はん!1人増えたからって何なんだ!!深海化した4人でさえ私に勝てなかっただろう!』

 

 

「確かにそうだけど…」

 

 

 

「NEW!金剛5姉妹デース!!」

 

「そして…愛するダーリンを加えた金剛5姉妹は最強!無敵デース!」

 

 

「行くよ!!!皆ぁあ!!後ろは私達に任せろぉお!」

由良達は迫り来る深海棲艦を相手にする。

「はい!ここは私達に任せてください!」

 

「ご主人様は金剛様達と…!」

 

 

救は金剛の背中に乗って指揮を執る。

「行くぞ!!5人共!!」

 

 

「いっくよー!!」

 

「「「「「おー!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霧島と比叡が構えて主砲掃射を行う!

 

『そんなの…あたるか!』

ヒラリと後方に避ける棲姫…そこに榛名が副砲と主砲を絡めながら狙い撃ちをする。

 

『くっ!!』

流石にかわしきれないと判断した棲姫は飛び上がって回避に徹する。

 

 

(さっきまでと動きが違う!!…しかし…やれない事はない!……)

(待て……クソッ!やられた!)

 

 

棲姫は気付く、避けた訳ではない。そう避けさせられたのだ…と。

比叡と霧島の主砲掃射は2人で私を挟むように放った。

榛名の掃射はその間…私を直に狙うように超低空に放たれた。

 

つまり…この時点で上に逃げるしかないように追い込まれた!

 

 

 

そして

 

 

 

 

目の前には金剛と駿河…こと奈々が拳を構えていた。

2人共が飛び上がって居たのだろう。

 

「「くらぇえええええッ!!」」

 

ドゴオオオ!!

 

その拳が棲姫の腹に突き刺さり……一気に殴り抜いた!!

 

『ゴッ…がぁっ!!』

先程よりも強い力で海に叩きつけられて転がる棲姫。

『クソがぁ!!調子に乗んなァァア!!』

 

 

ガバっと立ち上がる棲姫–––

 

 

 

 

 

そこには主砲を構えた5人の姿があった。

「これが私達の絆の強さ!」

 

「例え闇に沈んでも」

 

「きっと私達が呼び戻してみせる!」

 

「私達は…負けない!」

 

「くらえッ!!」

 

 

 

 

 

「「「「「バーニング…」」」」」

 

「「「「「ラァブ!!」」」」」

 

 

 

ズドォォン!!

耳をつん裂くような砲撃音と共に放たれた砲弾は…

一直線に棲姫へと向かう!!

 

『クソッ!クソッ!!』

棲姫も負けじと応戦するが…

 

バチっ!と棲姫の放った主砲は金剛達の放った主砲に弾かれる!

 

 

 

 

『…なんだ………強いじゃないか…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォン!!!!

 

 

 

 

 

 

盛大な轟音と爆炎と水飛沫が上がった。

 





次回!エピローグ!
主人公はほぼ活躍してない珍しいシリアス!


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