提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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380話 水面は青空に憧れて ⑧ 青く澄み渡る

人は私をバカ…それも大馬鹿と呼ぶだろう。

人の身でありながら深海棲艦に勝てるはずなんか無いのに…

ううん…勝てるとか勝てないとか、そんなのはどうでもよくて…ただ、お姉ちゃん達を虐めるあの人が許せなかった。

 

結果として私は死んだ。

 

死にながら…海の底に沈みながら…私の人生は酷いものだと思い返してたら……暗闇の冷たい海が温かくて心地よく感じて…

気付いたら深海棲艦になってて…

 

また死んで…

 

あの時の金剛お姉ちゃん…本当に辛そうな顔してた。

 

 

 

 

救さん。

あなたが私を救ってくれたから…私は誰かを助けようと思えるくらいに前を向けたんだ。恋ってすごいね。

 

 

駿河さん…

私をもう一度暗い海から引き上げてくれてありがとう。

お陰で私は…大好きな家族を守ることが出来たよ。

だから……もう…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは夢

 

 

 

 

 

 

 

2度も海に命を落とした人間が見た…泡沫の夢

 

 

 

()は…暗い海の底から…もう一度青空を見る為に(大切な人に会う為に)暗い海の底から思いを馳せて上って行く。

 

 

水面の(泡沫)は同じくらい広い青空に憧れて…膨れて青空(あの人)に手を伸ばす。

 

そして…それは割れて…水面に溶けて行く。

あの空に憧れを抱いたままに…暗い、暗い底に。

 

 

暗い深い海の底に囚われた魂は…そこから再び明るい世界に行く事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は見た。

水中深くへと落ちてゆく…まだ生きている戦艦棲姫を

 

行かなくてはならない。

私は本来存在してはならない…存在しない者。

なら…私が…!

 

 

 

 

 

 

 

彼女はフッ…と力を抜く。

「お姉ちゃん…救さん。ありがとう」

「大好きだよ」

 

 

 

 

 

「待って!奈々!私も……ッ!

 

 

 

 

 

 

彼女の体は再び水中へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで終わりにするわ」

 

『クソッ!何だよ!何度も何度もしつこいなぁ!』

 

 

 

 

「……これくらいは…私だって最後までやるよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドパァン…!!

 

ひときわ大きな水柱が彼女達が潜った箇所から上がった。

 

 

 

 

「嘘…何で」

 

「3度も…あの子は海に…」

 

「奈々ぁ!!!」

潜ろうとした、それでも海は私達を拒むように水面へと押し戻してくる。

 

 

 

何度も呼んだ、力の限り叫んだ。

それでも…彼女は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃん達を救えてよかった。

あの人達に会えてよかった。

 

うん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぽひゅん…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや!終わりじゃないから!」

「え?何『この一瞬の為に戻ってきたから…私帰るね?』みたいな話し方してんの!?」

 

「居るから!あンたはここに居るの!このまま居ていいの!」

 

「死なせるもんか」

 

「死んでたまるものですかぁぁああ!!!」

 

化けの皮(建前)が剥がれた姿(本音)の駿河が表に出てくる。

 

 

 

 

 

死なせるもんか!

何勝手に私達の命を諦めようとしてんのよ!!

これくらい…昇ってみせるわよ!!

 

…駿河さん…

 

ほら!あなたも生きようとしなさい!!

生きる権利があるの!

 

 

 

 

 

––逃がさナイ

 

 

〜って!?嘘でしょ!?

アンタも大概しつこいわね!!そんなコールタールみたいなのになっても執着するの?!

 

…駿河さん!

 

任せなさいよ!これくらい…!!

 

 

 

 

––お前ダケハ…海の底ニ連れて行ク!!

 

 

嘘!!足を掴まれた!?

 

…駿河さん!私の魂が狙いなんです!私を切り離してください!

 

 

 

出来るかッ!!そんな事!!

いい?!私は…アンタの魂に惚れたようなものなの!

可哀想とか同情とかでアンタに力を貸した訳じゃない!!

 

 

アンタに生きて欲しいんだ!!

私は生まれることが無かった艦船だけど…生まれる意味をずっと自問してたけど…わかったんだ!

私は今この為に…生まれてよかったって思ったの!!

だから諦めない!

アンタを諦めない!!

 

好き勝手暴れさせたんだ!今回は私が好き勝手にアンタを生きさせてみせるのよッ!!

 

…駿河さん…うん!

生きたい!またもう一度!お姉ちゃん達に!!

 

 

 

 

 

 

 

 

必死に空へと…水面へと向かう泡沫と沈み行く闇。

深い闇はその泡沫すら覆って…

 

クソッ…あと少しなのに!

あと少しで…私もこの子も

 

 

 

––フフフ沈みマショ?1人は寂シイカラぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グン…と引っ張られる。

ああ……なんて事…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水面に引っ張られるなんて!!

 

 

 

 

目の前には救の金剛…その後ろに比叡、榛名、霧島が居た。

霧島が榛名を、榛名が比叡を…比叡が金剛と救を水中へと押して行く。

…彼女達は強引に潜ってきたのだ。

 

その後ろに由良が…桜ベルファストが…皆が!!

 

 

 

 

2人の手が駿河を掴んだ。

ズルリ…と駿河の足から戦艦棲姫の成れの果てが離れた。

グン!と駿河を寄せてくる…が、奴も諦めない。それでも光を沈めようともがいてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ほんの少し前のこと…。

 

「…お姉様…」

 

泣く泣くその場を立ち去ろうとする彼女達。

その中で金剛の艤装からまだ海を見つめる人が居た。

 

 

「いや…」

「この感じ…」

 

 

「ダーリン…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は海へと飛び込んだ。

 

 

「ダーリン!?」

金剛達には分からなかった。何故救が飛び込んだのか。

 

「……まさか」

金剛も半信半疑で海に飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

目の前にあるのは…またまた信じがたい光景。

海の上を行く彼女達は…仲間を追って水面の下へと行く。

 

『……キレイジャナイ』

 

 

 

「…本当にこれで最後よ!!」

 

金剛の艤装から砲撃が放たれた–––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザパァ!!!

 

 

 

「ヒュー!ひゅーーッ!ガハッ…ゼーハー…ゼーハー……」

 

「ぶはぁ!!死ぬかと思ったぁあ!」

皆が口々にそう漏らすのも無理もない。深くまで前の仲間を押しながら潜ってたのだから…。

 

 

 

 

 

 

 

「どうだぁ!!全部は私の力じゃないけども…!上がってやったぞ!」

「私だって…アンタを守り切ったぞ!!」

 

 

そう吠えるのはたぬき耳に尻尾の駿河。

「…目立っちゃうのは嫌よ」

 

 

「でも……見なさい。奈々」

「この光景が…あなたを待つ人達よ。こんなに美しいモノ…どこだって見られる訳じゃないわよ」

 

 

行きなさい…と言いぽひゅん…と変わる駿河。

 

呆然とへたり込んでいるのは奈々。

 

 

 

 

 

 

「…お姉ちゃん…救さん……皆……」

私は還るつもりだった。

2度目も3度目も人生があるなんかあり得ないから…。

でも…どうにかお姉ちゃんを助けたかった一心のロスタイムみたいなものだと思ってたから。

 

 

 

ガバっと金剛達が彼女を抱きしめる。

 

「…おかえり…おかえりぃ」

「ありがとう…するがぁ……」

 

 

怒ることもなく、ただただ私に向けられたのは温かい抱擁と嬉しい言葉。

 

4姉妹に抱き締められながら…私は皆の待つ鎮守府へと帰るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!奈々!これ配達よろしくー!」

 

「はいー!行ってきますー!」

 

「金剛さんー!これは…舞鶴ぅ!?遠いけど行けますか!?」

 

「おー…遠いねーダーリンにあえないのがさみしーねー…」

 

うづきの店…というより会社レベルになったモノは、大忙しだった。

 

西波島鎮守府の委託企業という民間企業…という形になった。

うづき的にも面倒な計算は任せられるから楽♡とのことで…その内に花屋をメインにして行こうかとか言ってたりする。

 

 

駿河は相変わらず奈々と交代交代で表に出てくる感じだ。

パフェとか…いい思いのする時にひょっこり出てきたりするらしい。

でも奈々曰く、目立つのは嫌だからあまり出ない!らしいけど…。

 

奈々も相変わらずで、金剛達といつも一緒に居るようだ。

迅鯨が妬んだような目で見てた気がするが、これは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そんなに目立たなかったな…俺」

 

「それもたまには良いことですよ?ご主人様?」

 

「うーん…」

 

「ほら?今日は金剛五姉妹とランチですよね?待たせると拗ねられますよ?」

 

 

「へーい…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ」

 

 

「ヘーイ!!!長女!金剛!!バーニングラブ!」

 

「次女!比叡!気合い!入れて!行きます!」

 

「三女!榛名!大丈夫です!」

 

「四女!霧島!マイクも完璧です!」

 

「五女!奈々&駿河!愛してます♡」

 

 

「5人揃ってぇー?」

 

 

 

 

 

「「「「「金剛五姉妹ー!」」」」」

ちゅどーーーん!!

 

 

 

 

 

金剛達の騒がしさが倍になったらしい。

 

 





少しでもお楽しみいただけたなら幸いです!

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