提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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383話 鎮守府と提督 ③

巌は焦った。

何故って?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前の事だった。

 

 

 

『閣下!!閣下!?』

 

『どうした?大淀。騒がしいぞ?』

血相を変えてやって来た大淀がいきなりドアを乱暴に開けて叫んでいた。

 

大淀の後ろには……

 

 

『どういうことですか?元帥閣下?』

 

『君は確か…桜赤城と迅鯨だったかな?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まずはその包丁を仕舞おうか』

『話はそれからだ』

 

 

ヤベーヤツらが立っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怖えんだよ!アイツら!

来る!?普通…大本営に包丁片手に乗り込む?

無いよね?普通は!!

兵士達も兵士達で「いや、アレは無理ッスわ」とか言ってんじゃねえよ。何2人に制圧されてんだよ。

 

………いや

アイツら普通じゃなかったわ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      

 

 

 

「娘と結婚しないか?」

 

 

 

 

 

 

 

「け、結婚!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バカヤロォおおおお!!!

何言ってんだこのクソ野郎ッ!

 

 

 

ただでさえ…この俺を!

此奴の上司の俺を予定の日にパーティ開けないという理由で脅しに来た艦娘達の親玉だぞ!そんな奴らが控えてんだぞ!?

 

 

 

 

 

滅ぶぞ?!

日本滅ぶぞ!?

いや

 

世界が滅ぶぞ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(というか…こ、こいつ!そうまでして…海軍の力を己の手中に収めておきたいか!!)

 

(隣にいる娘の方も…顔色ひとつ変えてない。()()()()()()()と教えられてきたか)

 

確かに結婚をすれば…奴は義理とは言え、総理の子供となる。

周囲から見れば華やかなものだろう…海軍期待の次期元帥が確約されたようなものの奴と、今後も国家を担うであろう首相の娘の結婚は

しかし、その実は出る杭を打つ為だろう。

 

にしなみしま…今では、さいはとうと呼ばれるこの島の小さな鎮守府は揶揄されて、サイハテ鎮守府と呼ばれているが…今や弱小鎮守府ではない。

 

 

なんのカラクリか…因果かは知らないが、轟沈をした奴も居ない。

我々が束になっても勝てないであろう奴にも立ち向かい、クーデターだろうと何だろうと制圧して、人の心も掴んでいる。

 

 

艦娘…そしてKAN-SENと戦姫だったか?

御伽噺でも聞かないような、別の世界から神崎を追って来た連中もいるんだろ?

 

 

 

俺らが本気の束になってもきっと勝てない奴等なんだぞ。

 

 

 

 

つまりは…国家の軍事力に匹敵…いや

国家の軍事力そのもの…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…大和田達は恐れている。

 

艦娘達ではない…今や、国家軍事力に匹敵する程の力を持ったこの男を…だ。

 

 

 

だからこそ、全力で獲りに来ているんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうする?神崎!

基本的に国家はカネ以外は全て俺達に放り投げている。

 

しかしお前はこの褒章を受けた。

つまり、国家に帰属する集団だと…その上でこの話がでているのだ。

与えられる立場と与える立場を明確にした上で、後に退かせない部隊を作り上げていやがる!

 

 

 

 

 

お前は…この状況を「お断りします」

 

 

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

彼は笑顔で断った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですよねー!!!!!

うんー!知ってたー!!

平常運転はんざーい

 

 

 

 

 

「ちなみに何故だ?この娘は綺麗で、性格もいいぞ?」

 

なるほど、コイツが娘か…さっきからお酌しまくってるから誰だと思っていたが…

 

 

「総理大臣の息子を名乗れるんだぞ」

 

「要りません」

 

 

「そんなボロボロの軍服も着なくていいんだぞ!?」

 

「嫌です」

 

「苦労してるんだろ!?楽できるぞ?」

 

「そんなんじゃないんです」

 

 

 

「これは破れる度に鳳翔が縫い直してくれてます。私の宝物なんです」

 

 

「ほ、鳳翔…?」

「なんだ?女が居るのかね?」

 

 

彼は服を脱いで見せた。

 

「オイ…アレ」

 

彼の脱いだ上着の内側には補修の跡が目立っていた。

笑い声すら上がる場内。

 

 

 

 

盗聴器の向こう側では、鳳翔達が下を向いていた。

自分が恥をかかせたのではないかと思ったから。

 

 

 

 

 

「……この破れた箇所は突き飛ばされた時、…これは撃たれた時…」

つらつらとその破れ補修が何の時かを並べて行く救。

その度に鳳翔や皆が縫い直してくれたと言う。

裏側には御守りやハートのワッペン補修がされていた。

それも見て笑われる。

 

 

「そんな誰かもわからん娘より…ウチの娘の方が……

 

 

 

巌はゾクリとした。

その威圧を通り越して殺気を放つのはこの場に居る中で恐らく最年少の男が放ったものだった。

 

 

 

「知らない?」

「この国を…国民を身を挺して守るために戦う彼女達の事を知らない?」

 

ビリビリと何かが揺れる。

慌てた部下が耳打ちする。

 

 

「あぁ…軍艦の鳳翔ね」

 

「……あなたもこの国を担う1人なのですよね?」

「その人間が何でわからないのですか?」

 

 

 

 

 

 

たかだか小僧1人。

たかだか自分よりも下の奴。

なのに馬鹿にされた。

大和田がキレるには十分な言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙れ!あんな人の形をした兵器の化け物達の事なんか…!」

若造に言われてイラッとしてのだろう。

しかし……それが墓穴となった。

奴は言ってはならない本音を…言葉を発してしまった。

 

「何…?」

 

「貴様もその化け物と触れ合って結婚しようだと!?馬鹿馬鹿しい!!」

 

「いいか!この国を支えているのは私だっ!その私の指揮下に貴様達も入らねばならない!!」

「娘をくれてやるのはそう言うためだ!じゃなければ誰が好き好んで貴様のような奴に…」

 

 

「訂正してください」

 

「はん?」

 

「化け物だとか…そう言うの全部」

「化け物とか言う奴に守られてんのはアンタもなんだよ」

 

 

「人知の及ばぬモノはみなそう呼ばれるんだッ!!」

「貴様とて同じだろう!?奴等化け物を利用したからこそ!それを手にしているんだ!!」

指差す先には…ニコニコしながらつけてくれた勲章が……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神崎は勲章を外して投げ返し、賞状を破り捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

そして今にも殴りかかりそうな彼を差し置いて前に出たのは巌だった。

 

 

そして首相とやらを殴りつけた。

「ガハッ!?」

顔面を屈強な漢に殴られてのたうち回る首相。

巌は、その手をハンカチで拭きながら言う。

 

「……私の嫁も艦娘なのですが」

 

 

 

 

「このクソがッ!!」

「やっぱり海軍は化け物集団か!!国家の安寧が見えないのかッ!」

大和田の合図と共に黒服達が銃をこちらに構えた。

もはやなりふり構わないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!マズい!」

「提督が!!」

 

盗聴先では彼女達が慌てる。

行こうが、声を上げようが、彼のピンチがどうにかなるわけではないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

「貴様は黙って俺達の下に付けば良い!」

「貴様らの力はいずれ…この国が世界の中で昇り詰めるのに役に立つ!」

 

「無論…タダでとは言わん!」

「今回のこの無礼も不問にしてやろう!」

「甘い汁もたくさん吸えるぞ!?」

 

「愛など抜かさぬ…強力な軍事国家を築いてみせるんだ」

 

 

 

「何故?」

 

「下らん!兵器に愛なぞ要らぬ!」

「ましてや…その指揮を執る貴様が現を抜かすなど言語道断だろう!」

 

「貴様らのような先陣に立つ者には愛だのなんだのは不要なんだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「愛するのが悪いのですか」

 

「なに?」

 

「彼女達に想われて、彼女達を想って何が悪いんですか」

 

「馬鹿を言うな!!奴等は兵器だぞ!軍艦の名前を冠してるんだろう!?なら兵器じゃあないか!」

 

「兵器は涙を…血を流すんですか?」

「私は………俺は、アイツらのためなら命を投げ捨てる事もできます」

 

「アンタの娘とを貰って、息子になって得られる甘い汁よりも」

「アイツらと舐める苦い汁の方が何倍も価値があるし、嬉しい事なんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ポロリポロリと涙が出た。

化け物と呼ばれたから、兵器と言われたからではない。

それに対して彼ならこう言うなんて事は誰もがわかる事ではあるが、それでも涙が止まらなかった。

思えば出会った頃から変わらないあなたの優しさ。

 

 

傷ついて帰ってくる度に心配して

居なくなったあなたを想って涙を皆で流して…

 

あなたとの思い出…とその服を恥ずかしいかな?と思いながら直して…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌だ…」

 

誰かが言った。

 

「何があってもあの人と離れたくない」

 

 

 

 

「私達の意味は…ダーリンがくれたんだもの」

「愛することも、笑顔も何もかも」

 

 

 

 

 

その声は…その機械の先から聞こえた。

 

 

『この世界で独りぼっちの俺に愛をくれたのは…アイツらなんです』

『俺にこの世界にいる意味をくれたのも、アイツらなんです』

 

 

 

「…ッ!!」

彼女達は言葉に詰まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたの娘さんは意味を俺にくれますか?」

 

ーダーリン!あなたが居てくれるから私達は頑張れるの!

 

 

 

「破れた服を夜なべして直してくれますか?」

 

ーふふっ、制服、直しておきましたよ。

この御守りがきっとあなたを守ってくれます。

 

 

「遅くまで起きて、帰った俺にご飯を一緒に食べましょう?って温かいご飯を用意して迎えてくれますか?」

 

ーあなた?甘味じゃありません!ご飯です。

一緒に…食べましょう?

え?起きてたのか…ですか?当たり前です。いくらでも待ちます。

…お帰りなさい。

 

 

「悲しくて、悔しくて仕方ない時に…一緒に泣いてくれますか?」

 

ー泣いていいんだよ。

私達も…一緒に泣くからさ…。

頑張ろう…?次は一緒に笑うために。

 

 

「俺が心底ピンチの時にどんな壁も乗り越えて来てくれますか?」

 

ーよく耐えられました…誇らしきご主人様。

ーあなたが指揮官ね?お待たせ。

 

 

どうなんだ?と言う声に、大和田の娘は黙り込む。

 

 

 

 

「そんな事に何の意味があるというのか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから俺は俺で居られるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから言います、何度でも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は皆を心から愛してる』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「例え脅されても…殺されてもっ」

 

「俺の心は変わらない」

 

 

 

 

 

 

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