提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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384話 鎮守府と提督 ④

「……」

 

 

 

 

 

 

「…認めろ、諦めろ」

「そうすれば…命は助けてやる」

ゾロゾロとゴツい奴らが入ってくる。

恐らく強化スーツとかそんなんだろう。

 

 

 

はあーっと大きなため息をついて彼らは言う。

「無理ですね」

 

「緊迫感のない奴だな…」

そこに関しては同意する…と、巌は思った。

何せこの男は動じてない。

 

「なら国家反逆罪で貴様を捕らえても良いんだぞ?」

 

「…艦娘達も反旗しますよ?」

 

「なら、纏めて始末するさ」

「仮に逃げられたとして、お尋ね者に変わりはない」

 

「………皆と居られるなら、追われても何でも良いや」

 

いや、これがこの男なのだ。

この国の為…もあるが、彼女達が居るから…戦うから自分もその熾烈な戦いに身を投じるのだ。

 

艦娘達が開墾、開拓が主な仕事なら喜んで鍬を片手に耕すだろう。

宇宙探索が仕事なら宇宙に行くだろう。

 

そんな奴なのだ。

そんな奴を相手にしたところで奴は動かない。

初めから奴等の負けは決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだね」

「僕達も…提督が居てくれるなら何でも良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前に…大広間の壁を突き破って彼女達が入ってきた。

大本営のあの時みたいに。

 

 

 

 

 

 

「何ぃ!?何で貴様らが!?本隊は!?」

 

「あー…やっぱりすれ違ったあのお船は君達なんだね」

「僕達を脅迫の材料にするためだったんだね」

 

「まあ……負けなかったし、擦り傷ひとつないけどね?僕達は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ?提督?」

 

「あなたと一緒なら、田んぼでも山の中でもどこでもよろこんで」

 

 

「…いくらでも側に居る」

「どんな時でもね」

 

「一緒に泣くし笑う」

 

「あなただけをずっと見てる」

 

「あなたを何が何でも守り切る」

 

「どんなにぼろぼろだって」

「どんなに泥臭くたって」

「どんなにカッコ悪かったって」

「何度服が破けようと」

「どれだけひもじい思いをしても」

 

「私達はこの世界にあなたがいる限り…」

 

 

「あなたと共に歩み続ける」

 

 

 

 

 

「それに」

と言いながら加賀が大和田の娘の方を見る。

 

 

 

 

 

 

「アンタの娘じゃあ…それはできないだろうね」

天龍が笑いながら言い放つ。

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 

「撃つぞッ」

 

「撃てば?」

「もしも…提督が死んだら私達は…一瞬でこの場を灰に帰してあげる」

 

「まあ…できたらの話だけど」

暁が言う。

 

「その弾はご主人様には届くことはありませんけど」

桜ベルファストが言う。

 

 

 

 

 

 

「覚悟はあるの?」

 

「訓練訓練ばかりのYOU達が…」

 

「海でひたすら死と隣り合わせで戦う私達に」

 

 

 

 

 

 

彼女達は彼の前に立つ。

それが彼女達の在り方だから。

 

 

 

兵器だと化け物だと罵られようと気にしない。

 

愛する彼が隣に居てくれるなら

例え追われる身になったって構わない。

不自由な生活でも構わない。

 

 

なによりも彼の笑顔が愛が無い方が辛いから。

 

 

 

「いくら艦娘達とはいえ、こちとら強化スーツに最新鋭の武装だぞ」

「負ける筈がない」

 

 

「確かに強そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも深海棲艦達程の圧はないし…」

「この中で誰かがやられたって……確実にお前だけは…獲る」

 

ニタリと笑う時雨に大和田を含めて数名がゾクリとした。

 

 

 

 

 

 

そして…銃を構える中の2人が銃のトリガーの指に力を込めた–––

 

瞬間に川内と桜霧島が抑え込む。

 

「「遅いッ」」

 

ズダァン!!という音と共に床に叩きつけられる兵士。

彼女達の膝は首に置かれ、いつでもその命を狩る事ができる位置にあった。

 

 

「貴様ッ!撃つz「撃ってみなよ」

兵士が銃口を川内に向けるが、彼女は口一つで奴らの動きを止めた。

そして、川内はその膝に体重をかるくかけた。

メキメキと首に圧が掛かって兵士が声にならない悲鳴をあげる。

 

「……ガッ…グッ………」

 

 

「僕達は本気だ」

「君達を敵に回す覚悟なんか…とっくの昔にできている」

 

「私達を馬鹿にするのも罵るのも構わない」

 

「でも」

 

「いつでも直向きに頑張る、私達の愛する人を笑って馬鹿にしたことは…許さない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの兵士が巌を殴りつける。

 

「ぐっ…」

「腰が入っとらんぞッ!!」

巌も負けじと殴り返した。

 

 

 

 

 

 

呑まれている。

数も立場も圧倒的に有利なはずの部隊が!

あんな小娘如きにッ!!

 

大和田は指示を出した。

 

「くっ…!構わん!足手纏いごと撃てッ」

「何よりも先に提督の始末をしろォ」

 

 

 

 

 

 

 

 

殴り飛ばされた兵士が腰から拳銃を取り出した…

 

 

 

 

「くそっ」

構える巌…。

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボッコォォオン!!

 

 

大広間の壁がぶち抜かれた。

 

 

 

 

 

 

「「……え?」」

これに驚いたのは救と巌と西波島一同。

 

 

 

 

 

 

 

砂煙の上がる中から現れたのは…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウチの主人がお世話になってます」

「ご挨拶が遅くなりました…どうも…化け物(巌の妻)ですが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

大本営の大和(クソ強嫁さん)だった。

 

「ヒェッ…」

巌は思わずそんな声を漏らしてしまった。

 

固まる場内。

 

カツカツと巌の元へ一直線の巌大和。

本当に巌大和の足音以外聞こえないの。

 

 

 

 

「あら?」

「アナタ……」

 

 

巌大和の前には…殴られて口から血を少し流す巌の姿が…

 

「あらあら…誰がやったんですか?」

心配そうに巌の肩を掴む巌大和。

 

 

 

「いや…これh「誰ですか?」

巌の胃と肩からメキィ…と音がした気がした。

 

 

 

 

「…………アイツら」

巌はとりあえず2人を指差した。

 

 

「あら…」

 

 

「ウチの主人が失礼な事をしましたか?」

「でしたら、私にも責任がございます…」

 

「どうも…」

 

 

「申し訳ありませんッ!!」

巌大和はお辞儀という名のヘッドバッドを繰り出した。

ヘルメットが割れてブシュッ…と血が飛んだ気がしたが無視しよう。

バタリと1人が倒れた。

 

 

 

 

「そおおおりゃぉあああ!!」

巌大和の渾身の蹴りが強化スーツごと兵士を2蹴り飛ばした。

腹の強化スーツは足型に割れて壁まで吹き飛ばされた。

もちろん壁が人型に穴が開いたのは言うまでもない。

 

 

「ごめん、アイツらだったかも」

巌は流れで別の2人を指差した。

 

「あら…間違いは誰にでもありますわ?」

 

そいつらも同じように吹き飛ばされた。

少し何かがスッキリした巌だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でアイツ…クソッ…早く!早く奴等w…グブッ!?!?」

命令を下す前に顔面に鈍痛が走った大和田。

 

 

「……」

その男は誓っていた。

絶対に1発!顔面にぶち込んでやる…と。

 

愛する者をコケにされ、嘲笑った奴等を許さない…と。

 

「グバァァア!!」

鼻血を飛び散らせながら転がる大和田。

ボタボタと血を流しながら叫ぶ。

 

「ころひえ…!ほろひぇえええ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜大鳳ッ!!」

 

「はい!指揮官様あ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬で決着はついた。

 

 

 

桜大鳳が艤装をメンタルモデル化させたのだ。

大広間の中で。

 

 

 

 

 

 

 

「め、めちゃくちゃやりやがるッ!?」

 

一気にホテルは崩壊して行く。

従業員達は予め避難させていた。

 

故にそれ以外を飲み込んでゆく。

無論、兵士も何もかもを巻き添えにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ヒッ…」

 

倒れ込む大和田に長門と蒼オークランドが砲門を向ける。

 

「一応言っておくが…お仲間は無事だぞ?怪我はしてるかもしれんがな」

 

 

 

「この国は守る。でも、それは彼の下で一緒に戦うからだ!」

「我々のことも考えない奴の下で戦う気はないッ」

 

 

 

 

 

「…………くっ」

大和田はガクリ…と下を向いた。

 

 

 

「……帰りますね」

「彼女達と過ごしたいので…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして西波島艦隊は鎮守府へと帰って行く。

この話は一気に拡がった。

軍事力を拡大しようと暴挙に出た首相と権力に屈しない提督と艦娘達。

神崎艦隊の名は全国に拡がった……良くも悪くも…。

 

 

 

巌も巌大和に担がれて一緒に鎮守府へと向かう。

嫁には一生勝てないと思ったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……」

「皆で飯にするか」

 

 

鎮守府に帰ってきたのは夜になってしまった。

しかし、皆は笑顔だった。

 

 

遅めのお祝いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

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