提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
386話 いつもの明日
提督の居る執務室…の奥、救の私室のさらに奥にそれはある。
ほんの少し広めのバルコニーである。
なんだかベランダやバルコニーでのお楽しみを街で耳にしたらしく、妖精さんを買収説得して作ってもらったそうだ。
通気性の良さそうなリクライニングも可能な椅子とテーブル、ランタン等が置かれており、春の日には日向ぼっこと言う名の昼寝等が楽しめ、七輪もどきも常備されているので晩酌にも持ってこい!な場所となっている。
では、艦娘達の溜まり場となっているか?というとそうではない。
彼女達も渋々了承した彼のプライバシーを尊重する姿勢は持っている。
と言うのも…彼女達は互いに仲間であり、ライバルである。……恋のであるが。
こう言った彼にとっての特別な所に招待される日を心待ちにしながら日々を過ごしている。
「…提督?いいの?私が行っても」
ドキドキしながら彼の私室のドアをノックするのはアークロイヤル。
鎮守府の島に流れ着いたというアウトローな出会い方をした彼女であるが、何気に西波島初の海外艦であった……あったの!!
どうぞ…と言う声に反応してドアを開けると、桜ビスマルクが居た。
彼女達はお互いに顔にこそ出さなかったが、「え?2人きりじゃないの?」と割と思っていた。
「あら?2人きりだと思ってたのだけれど…」
口を開いたのは桜ビスマルク。
「私もそう思ってたのだけれど」
負けじと言い足したのはアークロイヤル。
2人は事実でもバチバチにやり合ってた仲という事を失念していた。
ヤベェ…と少し内心思いつつ、それでも…わがままが通るなら仲良くして欲しいと思う。
「え?いや、今日は2人に、と思ったんだけれども…別の日にする?」
「「いいえ!!今日にするわ!!」」
「ぉ…ぉぅ…」
気圧された救だった。
バルコニーは静寂そのものだった。
厳密に言うと、七輪の炭がパチパチと焼ける音が嫌に大きく聞こえる。
その間が物凄く気まずい。
「あのぉ…」
「なに?」
「どうしましたか?」
「こんなこと聞くのはアレだけど…やっぱり2人は仲悪い?」
「どうして?」
「いや…無言だし…」
「ほら、2人って大戦時はバチバチにやりあったじゃないか」
「やっぱり思うところはあるのかなあ…とか」
「別にそう言う意味で呼んだわけではないんだぞ!?ただ、2人とこーやって過ごしたかったから…って訳でだな?」
「……フッ」
「フフフ」
救が焦ったように喋る中で2人が笑い始めた。
「大丈夫よ。指揮官」
「そうだ、アドミラル」
「……え?」
「私はあの追撃戦の事は今は気にしてないわ」
「私もだ」
「今は大切な仲間だもの…」
「なら…何で険悪な雰囲気に?」
「あなたと2人きりだと思い込んでいたからよ」
「そうそう、この場所もそうだけど…アドミラルが招待してくれるまで入れない場所ってあるのよね」
「そんな場所に2人きりで居られる事が私達の中ではトクベツなのよ」
「だから2人きりって思い込んじゃってね。少し妬いたのよ」
「私は…一番乗りじゃなかったことに」
「私は…私だけじゃなかったことにね」
「まあ…あれだ」
「今度は…2人きりだといいわ」
焼き上がったじゃこてんやら…魚を出してみる。
箸の使い方も大分慣れたみたいで、はふはふ言いながら食べる姿は可愛らしい。
「にしても…」
「同じアークロイヤルでも違うもんなんだな」
「確かにね、もっと……こう……ええと」
「やばいヤツって言いたいんでしょ?」
「アドミラルもそういう意味で言ったんでしょ?」
「「まあね」」
俺達の中ではアークロイヤル=駆逐艦大好き!が成り立っているのだ。
「…あなた達の所の桜アークロイヤルのお陰でアークロイヤル=駆逐艦大好きのロリコンだと思われてるのよね」
「…何というか……お気の毒に?」
「桜長門も同じような扱い受けてたと思うわ」
「アイツは…存在そのものがロリだろう?」
この前、長門と桜長門が並んでいたが…アレは親子だったぞ。
とはいえ、イメージとは怖いもので…桜長門も見た目がロリなのにロリコン疑惑がかけられている。
談笑しながら過ごす時間は尊いもので、アークロイヤルと桜ビスマルクが良い仲間である事が見られて良かったと思う。
「これからも皆でがんばろうな」
その言葉にほんの一瞬、桜ビスマルクは寂しげな顔をした気がした。
「えぇ、頑張りましょう」
「アドミラル、私に任せて」
3人で片付けをしながら明日のことを考える。
明日も同じように楽しくて騒がしい明日が来るんだ…と。
「どうだった?」
「ん?桜エンタープライズか。…えぇ、やはり指揮官は…変わらないな」
声をかけてきたのは桜エンタープライズだったようだ。
「あぁ…私達が愛したただ1人の指揮官」
「そして…この世界が呼んだ…提督」
「紛い物の私達でなく…彼女達の願いに世界が呼応したんだ」
「……いいの?本当に」
「あぁ…皆で決めた事だ」
「〜〜〜。………ごめんなさい」
「承りました」
「ありがとう、それといい?確認よ」
「…コードは……………………」
「畏まりました」
桜赤城と桜ベルファストが誰かと話をしているようだった。
「桜赤城?桜ベルファスト?行くぞ」
「ええ、いま行くわ」
「かしこまりました」
寝付けなくて風にあたりにきた救。
鎮守府はシン…と静まり返り、遠くに夜警の川内の探照灯がみえるだけだった。
「指揮官」
「ん?なんだ?」
いきなりの声に少し驚く。その先に居たのは…桜ビスマルクだった。
彼女はニコリと笑って…儚げに言った。
「これだけは伝えておきたい」
「どれだけ…離れていようと、心は変わらない」
「何があっても…我々アズールレーンは指揮官と共にある」
「?………俺だってそうさ?」
「ふふっ…そうだな。おやすみ…指揮官」
「ああ、おやすみ」
翌日、アズールレーンは鎮守府から姿を消した。
新章開始です
訂正
この話までの部を1部として今話から第2部開始とさせていただきます。
何卒よろしくお願いします!