提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
セイレーン…
突如として現れたソレは世界を瞬く間に混乱に陥れた。
私達KAN-SENの誕生にも深く関わっているとされるそれは…
奴らは今を犠牲にして…奴らにとって大切な未来の破滅を防ぐ事を目的としているようだ。
その鍵を握るのが「進化」
そう…その破滅を防ぐ為に必要な進化をもとめている。
アズールレーンから枝分かれした鉄血、重桜はセイレーンの技術を取り入れる事でセイレーンへの対抗を目的とした。
だが…今のビスマルク達は完全にセイレーンの横に立っている。
「ありゃー?やっぱりナカヨシゴッコは飽きたあ?」
ビスマルクの横からぬっと顔を出したのはピュリファイヤー。
セイレーンの中でも好戦的な奴である、ピュリファイヤーは舐め回すようにビスマルクとエンタープライズを交互に見る。
「……ピュリファイヤー…茶々は入れないで」
「ふーん…まぁいいや」
「君もわかってるだろうしねぇ…」
「君達の技術は僕達には勝てないって事を…」
「そうね。なら運命を受け入れるしかないものね…普通は」
「うんうん。アイツらは馬鹿なんだね」
「だからせめて仲間をより良い未来へと連れて行きたいのよ」
「くっ…ビスマルク…!何で!どうしてだ!!」
エンタープライズの叫びを他所に、赤城達が攻撃を開始する。
迫り来る爆撃機…。
「…ッ!!」
「応戦なんか……クソッ」
西波島での楽しい思い出が邪魔をする。
あの笑顔も…想いも全て嘘だったのか!?
「お前の…仲間という言葉は…嘘だったのか…?」
「嘘じゃないわ…ただ…仲間の定義があなた達と違うのよ!!」
「レッドアクシズ…前進」
その一言でさっきのさっきまで頼もしい仲間と信じて…いや
微塵も立ちはだかるとすら思ってなかった者達がこちらに目を向けて進んでくる。
そして、その頼もしさが一気に牙を剥いた。
「…赤城、加賀…翔鶴、瑞鶴ッ!!」
その掛け声と共に一気に艦載機が発着された。
空を覆い尽くすようなそれはまるで押し寄せる波のように私達に向かって来る!
「くっ」
もはや言葉は届かない。
必要なのは…仲間を守ること!!
「ホーネット!!皆ッ!!迎え撃つッ!!対空用意!」
「本気でかかるぞ!!奴等も本気だッ」
爆音が、轟音が鳴り響く。
飛んで進んでは壊して…
飛んで進んでは壊されて…
ある意味手の内を知り尽くした彼女達の戦いは平行線を辿った。
「ありゃあ…殺意が凄いねえ…。こりゃ僕達も巻き込まれそうだあ」
「後は任せるね?ビスマルクちゃん」
ビスマルクの肩をポンと叩いて彼女は笑いながら後退して行く。
「セイレーンが引き上げて行く?」
「まさかその為の時間稼ぎ…か?」
そう、セイレーンを母港から遠ざける為の作戦。
幸い…こちらには鉄血達からの攻撃で甚大なダメージを負った者は居ない。即ち、体勢を立て直す為の時間稼ぎ……
と淡い期待を抱いたアズールレーンのメンバー。
しかし、その期待は勢いを増す攻撃の波に飲まれて掻き消された。
「一気に押し切るわよ」
「…わかったわ」
オイゲン達を先頭に主力部隊がコチラヘと向かってくる。
全員、まさに鉄のような眼差しをこちらに向ける、もはや先程までの関係では居られない事は誰でも理解できた。
「迎え撃ちます!!」
「…酷いよね」
ニュージャージーが三笠と対峙する。
「小娘には…わからぬ事だ」
いつもの甘い感じは一切無く、そこに居たのは冷徹な戦艦三笠だった。
ガスッ…
ニュージャージーの拳が三笠の左頬を捉えた。
三笠の口から血が出、それを拭う。
「………」
ドスッ…!!
ニュージャージーは腹部に一撃を貰った。
痛みが一気にやって来て、もんどりうつ彼女。
「がはッ……」
ニュージャージーを見下ろす彼女の目は…氷よりも冷たいと言えるようだった。
「………」
「ねえ!綾波ちゃん!!嫌だよッ!!」
「……仕方のない事なのです」
「綾波達は…歴史の駒なのです」
ジャベリンやクリーブランドを相手に綾波とZ23が対峙する。
分かってる。
昨日の昨日まであんなに仲良くしてたのに…。
「それが戦争なのですッ!!」
綾波の放った魚雷が近くで爆発し、クリーブランド達は吹き飛ばされる。
「打開を狙いますッ!ロイヤルネイビー行きます!!」
フッドやベルファストが出陣する。
「あなたは私が貰うわ!」
オイゲンがベルファストに仕掛ける。
「そうはいきません!」
ベルファストも主砲を放って牽制する。
シリアスはシュペーと、エリザベスはドイッチェラントや金剛達と…
フッドだけが1人になった。
いや、1人になるように仕向けられた。
フッドの目の前にはビスマルクが立っていた。
エンタープライズの目にそれが入った。
冷や汗が流れた。
まさか…
「ビスマルク…お願い。元に戻って?」
傷つく仲間を横目に必死に懇願するフッド。
「…運命とは……あなたの命も雁字搦めにするの」
「やっぱり私はあなたが嫌いだわ」
ズドン…
「え…」
ドシャッ…という音と共にフッドの艤装が海へと落ちた。
と、同時にフッドも膝から崩れ落ちて行く。
フッドは辛々ビスマルクの腰に縋り付くように掴みかかる。
「あ、あなた……そん…な…」
「ねえ……あのと…き……………
「…すまないと思ってるわフッド…」
「でもこれも必要な…レールだから」
昔に…
ビスマルク達鉄血がアズールレーンから枝分かれした時…
彼女はフッドを撃った。
それが…その時以上に皆の脳裏に重なった。
エンタープライズ達に見えたのは…立ち上る水柱の中、水面へと消えて行くフッドの姿だった。
「嘘だッ…嘘だぁぁぁあ!!!」