提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「やべえ…全然思いつかん」
勢いよく啖呵を切ったものの、向こうへの行き方がわかんない。
祈りも捧げてみたし、時雨が昔に用意したエロ本も燃やしてみた。
はてまた、黒魔術的なものもしたし、生贄も捧げた。
「半年分の給料無しでいいから!!」
………
「い、一年んんんんん!!」
「いや、無理に決まってんでしょ」
必死の祈りも虚しく…何も進まなかった。
「…指揮官はほーんとに暑苦しい人だねぇ」
「あら!?ピュリっち!?居たのぉ?!」
ピュリファイヤーが声をかけて来た。
ごめん、ぶっちゃけ居たことに…あれ?アズレン勢だよね!?
「居たさ!居たら悪いかよっ!」
「てかなんだい!
「ごめん…」
「や、やめろょお!そんなに落ち込むなよお!コッチが悪者みたいじゃんかよー!」
「せやな」
「テンション一気に戻すなよお!」
「ってもさぁ…アタシにはな〜んも出来ないけどねえ」
「いやいや、居てくれるだけで心強いよ」
「まあよお…アタシは行けたとしても行かないけどな」
「何でよー!」
金剛達もブーブー言う、俺も同感だ!
「だってさ、アタシはイレギュラーなんだぜ?」
「本体に見つかったら……どうなることか…さ」
「まあ…そーだよなあ…ピュリっちにはこれからも居て欲しいもんなあ…。まあ…留守番は頼んだよ」
「あのさあ」
「ん?」
「何で疑わないの?」
ピュリっちが半分呆れた様な目で、声で俺に問いかけた。
「アタシはセイレーンだよ!?何でアンタとKAN-SENを何度もピンチに陥れた相手を…そんなに普通に接することができるの?!」
「今回だってそーじゃん!アタシが…裏で実は糸ひいてるかもしんないじゃん!?母校襲撃も…ビスッちの裏切りも…指揮官だけが取り残されたのも!!!」
「それはないだろ」
「だから何でさ!!」
「信じてるから」
「はぁぁ!?!?」
「なッ…何それッ…馬鹿じゃないの!?」
「信じてるから?!何?ビスっちの裏切りも?アタシがセイレーンと繋がってないってのも?信じてるっての!?」
「うん」
「何でさ!?」
「・…何でだろうな?分かんねえや」
「好きな相手だからかな?」
「それで痛い目見たらどーすんだよ!!」
「あー…それは悲しいな」
「まあ……うん、でもそれも含めて好きなんじゃないか?」
「それに…それも受け止められるのも、受け止めるのも指揮官だろ」
目の前のこの人間は馬鹿だ…
予測不可能だ。
私にとっても…イレギュラー過ぎる…。
でも……
「……っはぁ!!アタシの負け負け!!」
「ビスっちの事は分かんないけど…アタシは…うん、アンタの味方だよ。命賭けてもいい」
「ちぇっ!わかってるよ!みたいな顔しちゃってさあ!!ほーーんとアンタは馬鹿だよ……でも」
「アンタが好かれる理由…よく分かるよ」
「ピュリっちもその1人?」
「あーーハイハイ、スキスキアイシテルー…」
くそっ!言ってて恥ずかしくなった!
「まあ……そんな指揮官サマだ、ご褒美じゃないけど…ヒントをあげるよ」
「映像…もう一回よーーく見てみな…」
「その上で…アイツらをよーく思い出してみな」
アズールレーンの宿舎に来た。
もぬけの殻…と言うわけでなく、妙に生活感の残るその場所に余計に寂しさを感じる。
本当に誰も居ないんだな…と呟きながら歩く。
そして違和感を覚えた。
映像で見た広さの部屋は存在しなかったのだ。
各個人や姉妹の部屋もあんなに広くないし、暗くない。
窓もなければ…………
窓?
まさかと思いながら周りを見渡す。
今は共用スペースに居る。
そう、あの映像と同じくらいの広さの………
その部屋には、小広いスペースと何やら機械が設置されていた。
アズールレーンの四陣営の唯一の公共のスペースの地下にそれはあった。
「来ちゃいましたか」
ヴン…と言う音と共にTBちゃんが立体映像で映し出された。
「ここはアズールレーンの秘密基地か?」
「……何故お分かりに?」
「俺は皆の指揮官だぞ?皆の部屋にしては見たことのない場所だったからな。窓もないってことは…地下かなあとね」
「そうですか」
「ってのは半分嘘…。ピュリっちにヒントをもらってね…。よーーく映像を見てみなって」
「そうですか…」
「怒らないんだ?…何故君は止めるんだ?」
「そう言う情報も含めて…それがあなた様の指揮官としての力ですから。……止めるのはそれが皆様のご意志だからです」
「
「世界か違うと言うことには大きな意味があります」
「意味?」
「はい、仮に指揮官様が
「理から外れた人?」
「はい、この世界での過去のデータを見させて頂きましたが…思い当たる節もあるかと思います」
「例えば誰かに命を貰ったり…未来から誰かを呼んだり、世界を変えたり…
「何が…言いたいんだ?」
「御蔵様は世界を超えた結果…あちらの世界に侵略という形で深海棲艦を発生させるスタートラインを作ってしまいました」
「……あなた様が世界を渡るということは…何かしらの厄災を持ち込む可能性もございます」
「それに、ビスマルク様達の裏切りやセイレーンの侵攻の中であなた様が生き残れる確率も非常に低いと思われます」
「仮に仲間が助けてくれる、誰かが助けてくれるとしても…それはこの世界の理の外側での事なので、全てに確証がある訳ではありません」
「ですかr「それでも行きたい」
その目は…真っ直ぐとコチラを向いていた、
「どんな困難が待ってても…俺は…俺達は行く」
「そうですか……」
「でしたら…最後の壁で御座います」
「ええ、確かに行く方法を預かっております」
「それは不確かなもので…確実にこちらへと戻られるとは限りません、あなた様をお待ちになられている麗様や幸様をどれほどの時間待たせるかも分かりません。どこぞの艦娘様みたいに一世紀以上かも知れません」
「それでも行きますか?」
「おう」
「即答ですね…。でしたら…フッド様から指定された言葉があります」
「ヒントはありません。一回切りのチャレンジです。それを見事に言い当てて見てください」
「……」
ヒラケゴマとかではないだろう
いや…わかってる
きっとこれだと分かってる
「俺は…神崎 救は皆の提督であり、司令官であり…指揮官だ」
「だから行く!例え世界を越えようと、何が待ってようと!それが俺だから……俺は皆と共にあるッ」
「………例え世界が違おうとも?」
「当たり前だ」
「自らにどんな危険が待ってようとも?」
「私達が守ってみせる」
「抗い難い…受け入れ難い運命が待っていようと?」
「それをいつも乗り越えて来た」
「………」
「準備はお済みですか?」
「開きます……」
「正解…なんだな?」
「……はい」
本当はそこには正解なんてなかった。
ただ、覚悟が知りたかった。
過酷な未来が待ってるのは想像できる、そして指揮官がその運命を乗り越える力を持っているのも…。
でもここから先はその理の向こう側。
だから…彼女達は来ないでと言った。
方法を隠した。
だけど私は………指揮官様と皆が笑って一緒に居る姿を忘れたくない。
それを思い出のままにしたくない。
だから生半可な覚悟を許さない。
でも…彼も、艦娘も……覚悟がある。
十二分に覚悟がある。
なら私はナビゲーターとしての責務を全うする。
ぐにゅん…とゲートが開く。
「さあ!どうぞ…」
「皆!覚悟はできてんな?」
「聞くまでもないよ!ダーリン!!」
金剛達が答える。
確かに聞くまでもなかったようだ。
「気を付けてね?待ってるから…ずっと待ってるから!ビスマルクさん達を…皆をお願いね」
麗が寂しそうな声で言う。
行ってきます…と行こうとする俺を引き止めて「キスもしてくれないの?」と言う。
「待て待て待て!ずるいぞ!僕も手伝うんだからね!?まも君!?忘れないでね!?」と、幸がキスをする。
「あぁあ!!幸ちゃん!!………むう……行ってらっしゃい」
麗が飛びついてキスをする。
「行ってくる」
私には上着を、幸には軍帽を預けて彼は行く。
こうして皆は旅立った。
世界を超えて…救君のために会いに来た娘達を助けるために世界を超えて…。
「寂しいなあ!!早く帰ってきてね…うっ…ぐす」
私達は少しだけ…それを抱いて泣いた。
でも…約束だから…。
守り通してみせるよ!!!
俺達は世界を超えた。