提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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393話 離別と…

ガフッ…と言う声とビチャッと言う音と…

聞きたくもないものが耳に入ってくる。

 

 

 

彼女は…俺を包むように守っていた。

桜ビスマルクに背を向けて…俺に苦悶と笑顔を向けて。

 

 

 

 

 

ズッ…と言う音と共に桜赤城からその手は抜かれた。

その場に倒れ込む桜赤城から…右腕が真っ赤に染まった桜ビスマルクの姿が見えた。

 

 

 

 

 

 

「桜赤城ッ!あなた…裏切るの?!」

桜ビスマルクは狼狽えるように言った。

俺達から離反したはずの桜赤城が…俺を庇ったのだ。

 

 

 

「ごめんなさい…桜ビスマルク…ダメね」

「あなたの…愛してるわ…って言葉で…一気に考えが変わっちゃったわ」

 

「この気持ちは…想いは………愛は…やっぱり本物」

「偽物にだって……本物の愛はあるの」

 

 

 

 

 

「指揮官様…申し訳ありません…あなたへの想いを振り払い切れませんでしたわ」

「桜赤城は…あなたに冷徹に徹する事ができませんでした。…またあなたに辛い思いをさせてしまいます」

「どうか…泣かないで」

「私は…私の心に従ったのですから」

 

 

ニコリと笑った彼女……

 

「……ふふっ………あいし……て……

ゴトリ…とその手は地に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姉様ッ!!姉様ぁあ!!」

桜加賀達が叫ぶ。

重桜メンバーが彼女の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桜ビスマルクぅぅああああ!!!」

 

 

アークロイヤルが桜ビスマルク目掛けて主砲掃射を行った。

ズドォォン!!と言う音と共に吹っ飛ぶ彼女。

 

 

「ぐうっ……」

なんとか体勢を立て直して立とうとするが額付近からボタボタと血を流す彼女。

 

「おッ……貴様ァァァア!!」

アークロイヤルは彼女に掴みかかり、尚も激昂している。

そうだ、目の前で仲間を失ったから。

彼女は信じていた、誰よりも…例え血塗られた歴史でも、手を取り合って歩んで行けると。

だからこそ、彼女は桜ビスマルクの襟を掴んで叫び上げた。

「どうしてだ!!どうしてそんな事が…!!」

 

 

 

「ぐっ…!」

桜ヒッパー達が庇おうと、また反撃しようと構える…が、それを止める桜ビスマルク。

 

「答えろ!答えろッ!!貴様にとって…仲間とはそんなものか!!」

 

「……私は…ッ!!」

「私は…ッ!それでも前に進まなきゃならないの!!」

「皆に…皆の未来のために…ッ!桜赤城は私でなく、彼を選んだ!だその未来よッ!」

 

「あなただって……あなただってッ!!」

力無く彼女に訴えかけるアークロイヤル。

 

「そうだ…ッ」

「我らも守るべきものがある」

「進まねば…我らに未来は無いのだッ!!」

桜三笠達も立ち上がろうとする。

 

 

彼女達はまだ戦うつもりだ。

不安要素…未知の可能性(別の世界の来訪者)を…排斥するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ、桜赤城」

 

 

 

 

 

 

その声に…掠れるほどに小さな声に、ピタリ…と戦闘行動が止んだ。

 

彼は動かない彼女を揺さぶる。

 

 

 

 

 

「なあ…嘘だろ?なあ…いつもみたいに指揮官様って呼んでくれよ…なあ…なあ!!!」

呼べども返ってこない返事、それでも呼び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……もうやめよう。嫌だ、皆の傷付く姿を…見たくない」

彼は悲痛な叫びをあげた。

「わかった…俺が居なくなって皆が傷つかないなら…俺は去るから…もうやめてくれぇ…」

 

 

 

 

 

 

 

皆も視線を下げて黙っている。

しかし…

「…そう…あなたがこの世界から退去してくれるなら良いわ。それに…アズールレーンの奴らが戻って来ても面倒だし、退くわ」

「でもね?…神崎…。ここはあなたを愛した桜赤城に免じて…よ。変な真似はしないでね…」

 

坦々と言い放つ桜ビスマルク。

その言葉を皮切りに、レッドアクシズのメンバーは撤退の準備を始めた。

 

「…必ずこの世界から退去することね」

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

「……指揮官、姉様を連れて帰りたい」

同じく泣き腫らした桜加賀達が目の前に居た。

 

「…どこにだよ」

 

「重桜の桜の下へ…頼む…」

「……姉様もそこに還りたいはずだ」

 

頼む…と頭を下げる彼女。

こんな桜加賀を見た事があるだろうか。

 

 

 

 

 

何も言えなかった。

ただ、あぁ…わかった…と、首を縦に振るしかなかった。

桜赤城を丁重に抱えて彼女達は母港を後にした。

得るものはなく、ただただ失うものしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かねてからずっと来たかった母港。

画面の中ではカッコいいBGMや軽快なBGMで楽しんだ記憶のある母港、アズールレーンの世界。

なのに今は…アレほど来たかった世界はこんなにも重く冷たい世界だった。

確かに戦争だ。

仲間が死ぬのも仕方ない。

自分が戦いに身を置く以上、死ぬのは仕方ない。

でも…それでも、こんな…こんな思いをしなくてはならないなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

あれからまた数日の時間が経った。

受け入れるには重すぎる全てが手の中に残る。

 

俺はそれでも桜ビスマルクを信じたい。

それでも…一瞬でも彼女に敵意を感じた事は事実だ。

信じると言いながら…その感情を持ってしまった。

 

 

 

「俺が無責任に来なかったら…こうはならなかったんじゃないか」

 

「俺にもっと力があれば」

 

「俺にもっと…」

 

「俺に………」

「俺はいない方がいいな」

 

 

「ダーリン……」

誰も何も言えずにいた。

 

そして、退去の準備に掛ろうかとした時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……指揮官は居るか!!」

 

母港のドアは叩かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は…桜加賀に桜オイゲン…?!」

 

目の前に桜オイゲンと桜加賀が立っていた。

川内達が数名で俺を取り囲む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達は戦いに来た訳では無い!本当だ!」

 

 

 

「指揮官の下につきたいの」

 

「……あんな事があったんですよ!?信じられると思いますか?!」

俺の後ろから来たアークロイヤルが目を見開いて言う。

 

「だから…だ!!姉様をやられたのに…奴等に加担する理由があるか!?」

桜加賀は歯を食いしばって言う、あの事とは…桜赤城が救を庇って沈んだ事だ。

 

「……だとしても…」

大淀達は難色を示す。

 

「いや、信じるよ」

俺の言葉に来訪者を除くその場の全員が驚愕した。

 

 

 

「…しかし、どうやってここまで辿り着けた?」

 

「……」

 

「というか何故手を後ろに回してるんだ?」

見れば、彼女達は手を後ろに回していた、全員が。

敵意がないなら手は前に置くべきだと思うが…

 

「それは私から説明するよ、指揮官」

彼女達の向こうからやってきたのは桜エンタープライズ達だった。

見れば彼女達もボロボロだ、恐らく桜ビスマルク達と戦闘状態から回復できていないのだろう。

 

「解いてあげてくれ」

そして、その言葉と共に手の位置の理由が分かった。

桜加賀達は後ろ手に縛られていたのだ。

 

「……すまない、指揮官…指揮官の前でこんな事はしたくなかったが……桜フッドのことがあったから……」

 

「いいえ…私達も信用されてるとは思ってない」

「ただ…どうあれ、姉様は死んだ訳だ。そう…指揮官…お前を守って…ッ」

 

「ならそれは…姉様の意思だと思う、だから私はお前を…桜赤城が命懸けで守った(お前)を守りたい」

 

 

 

「……わかった」

「…で?お前は?桜オイゲン」

 

「…つまらない」

 

「「「は?」」」

つまらない。

そう彼女は言った。

 

「………もちろん、桜ビスマルク達のことは仲間として大切で好きよ。それ以上に指揮官…あなたの事が好きよ」

「だから…私は仲間の為なら命懸けで戦えるわ。でも…鉄血の未来が見えないの」

 

「ジリジリと未来のために命を削るような戦いは好きよ」

「でも…あの子のしようとしてるのは……前進ではないの、ただただ今でない終わりを待つだけのその場足踏み。そんなの…つまらない」

 

 

 

「……アイツの目的は?」

 

「変わらないわ」

「セイレーンの技術よ」

 

「奴らの上級個体は私達が束になってやっと勝てるかって所なの」

「そんな奴等がもし…私達を攻めてきたら…私達はひとたまりもないわ?」

 

「だからこそあの子はその技術をさらに取り入れてレッドアクシズの未来を守ろうとしている」

「何を犠牲にしようとも」

 

「でも、あなたが来るとは思ってなかったのよ」

 

「あなたは予想外の塊よ…。だからセイレーンの邪魔になる。あなたが居れば、桜ビスマルクの立場も危うくなる」

「だから切り捨てる必要があったの」

 

「思い出も…好きと言う感情も…なにもかも、未来のために」

 

 

 

 

「…でだ、何故お前達は合流できたんだ?」

 

 

「あぁ…この数日の事を指揮官には話さなくてはな…」

 

 

「私達は母港を奪われ…屈辱的な敗北の後…海を彷徨って居たんだ」

 

 

 

 




もうすぐ400?
早いもので…


鬱展開中ですが、メンタル補充は………
少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。

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