提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
海域外某所…
レッドアクシズ泊地。
セイレーンの用意したレッドアクシズ用の小規模の基地である。
「……ふう」
ビスマルクは入渠で傷を癒していた。
重桜のメンバーは赤城を弔っているらしい。
「…………」
1人の時間は貴重だ。しかし、その時間も終われば現実が目の前にやってくる。
指揮官も含めて皆、私を仲間殺しと呼ぶだろう。
だが…仕方ない。
これは私が受け入れなくてはならない事なのだから。
「……ビスマルク」
声をかけて来たのは加賀、三笠だった。
「なに?」
「……すまないが私はレッドアクシズを抜けさせてもらう」
「それは重桜として?個人として?」
「…私個人としてだ」
「………そう」
加賀と三笠がレッドアクシズを抜ける…と言う。
ビスマルクは淡々と答えた。
「私も抜けるわ」
「………オイゲン」
何と声の主はプリンツ・オイゲンだった。
ある意味1番の腹心である彼女が抜けるのはビスマルクにとっては痛手だろう。
「…………あなたも」
『…………』
結果として、彼女達の離反をビスマルクは許した。
「好きにしなさい…。でも、次に会う時は敵ね…」と。
彼女は夜風にあたる。
何を思うかは彼女のみぞ知る。
『アハ!アハハハハハハ!!ヤッタね!ヤッタねえ!ビスマルクぅう!』
『もう後戻りなんかできないねえ!仲間殺しは…重罪だものお!!』
「お前は…ピュリっち…」
そこに居たのはピュリファイヤーだった。
…とは言え、ここはセイレーンの基地でもある、何の珍しいことでは無い。
『はぁぁ!?ピュリちぃぃ?!!?』
『なぁに気安く言っちゃってくれてンの?アンタそんなキャラだっけ?ムカつくなぁ…』
「……そう言う気分だったのよ」
『まあ………うんまあいいか!君の頑張りに免じてボクは退こう。仲間も失って傷心気味そうだし?アズールレーンにも打撃を与えられた訳だしぃ?』
いちいち言い方が癪に障るな…と彼女は思った。
「…そうだねえ……」
奥から誰かがやって来たらしい。
とある男だった。
仮面をつけたその男は2人に向かって話しかけて来た。
「やあ…KAN-SENの…ビスマルクだっけ?私は……まあ名乗らなくて良いか…」
「縁があってね、君達の上司になるのかな?セイレーンの指揮官としてこの世界に着任したんだ」
「……指揮官…だと?」
『おや?不思議かい?』
ピュリファイヤーはニタリと笑う。
『まあ…利害の一致さあ…それに、指揮官の存在がどんなものかはよく知っている。向こうの世界でもねえ…』
「酷い言い草だな。誘ったのはお前らだろ?」
『そうだねえ…』
「まあいい……ビスマルクだったか?貴様らは轟沈者も脱走者も出したそうじゃないか」
「なんとも嘆かわしい…本当に役に立つのかね」
「………」
ビスマルクは黙り、ピュリファイヤーはニヤニヤと笑っている。
「まあいい。どちらにせよ…あの母港の壊滅を優先しろ。協力者から聞いた。あの忌々しい小僧があの母港の指揮官とか言うじゃないか」
「…しかし、セイレーンの猛攻で母港が壊滅となると…セイレーン作戦への刺激になるのではないでしょうか」
「そこら辺もうまくやれる。安心しろ」
「……わかったわ」
「あぁ…それが賢い選択さ…」
「さあ…本体指揮に戻るとするか…」
ペコリと頭を下げてピュリファイヤーと指揮官とやらを見送る。
「……だからあの入渠施設なのね………」
ビスマルクはポツリと呟いた。
自室に戻ろうとする彼女にとあるKAN-SENが話しかけてくる。
「……そろそろ大丈夫なはずよビスマルク…どうする?」
「……そうね、そろそろ行ってもらえる?」
「わかったわ…」
「頼んだわよ…フリードリヒ」
ところ変わって母港。
「なあ…」
「俺はそれでも桜ビスマルクを信じたい」
彼は集まったメンバーに向かって話をしていた。
正直に…そして今後を。
「あ、アンタ正気!?」
桜エリザベスが食ってかかる。
「アンタの事を誰よりも…愛してた桜赤城を殺して…桜フッドを殺して…それでも平然としてる奴よ!?」
「到底許される事じゃないわよ!?」
「…確かにあいつのしたことは許されない事だ…事実だ」
「でも…一緒に過ごした思い出も本物で事実だ」
「………その判断が仲間を更に死に追いやるかも知れないのよ」
「……」
「もし、その考えが変わらないってなら、このアズールレーンを抜けるって言う娘だって居るかも知れないわよ!それに…そいつらだって裏切らないとは言い切れないわ!?」
「………」
「………何よ、答えられないの?」
「なら信じるとか言ってんじゃないわよッ!そんな奴に指揮を預けられるもんですか!」
ツカツカと執務室を出て行ってしまう桜エリザベス。
「桜フッド様の事で思い詰めてるのもあるのです。悪気はありません…申し訳ありません」と、頭を下げるロイヤルメイド達。
「…桜エリザベスの言う事にも一理ある…。次にレッドアクシズと戦う時は…セイレーンとレッドアクシズを指揮官が指揮する訳だ」
桜加賀や桜三笠はそう言う。
「…戦う事にはなるのか」
「奴等からやって来たら応戦せねばなるまい」
「………嫌だろう」
「……ああ嫌だ……桜ビスマルクが言ったように…俺がこの世界から出て皆が傷つかないなら…俺は…」
「…指揮官」
「ヘーイ!ダーリン!何を悩んでるデース!?」
「ダーリンらしくないデース」
「いつものダーリンなら…それでも俺は信じたいって言うんでしょう!
だから俺に力を貸してくれって」
「真実を知りたく無いの?」
金剛がストレートに言う。
「帰ったら逃げになるよ、ダーリン。やらなくちゃいけない時って今だと思うよ」
「…桜エリザベスはダーリンが迷ってそうにするから怒るんですよ。堂々と…してなくちゃ!相手はジョーオーサマなんだからね」
「………」
「もう一度皆を集めてくれないか」
彼は言った。