提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
意識を取り戻しつつある頭に響いた声はTBちゃんのものだった。
「TBちゃん」
「…ようやく繋がりました、サポートできず申し訳ありません」
スマホから聞こえて来たTBちゃんの声。
そうだ、確か…ゲートをくぐる前に会話したのが最後だったか?
「…皆は」
何とか振り返るとそこには膝をついている者も、倒れ込んでいる者も居た。
桜ウォースパイトは剣を地面に立てて俺の前で片膝をついて気絶していた。
「皆さんのバイタルが低下していますね」
「そして…見事に母港は壊滅ですね…」
「せやな…」
「…まずは、饅頭さん達に任せて皆様は傷を癒す事を推奨します」
饅頭さんにお願いをして仮の修復用施設を作る。
艦これ風に温泉にしてもらう。
アズレン風に宿舎で飯を食うのでもいいんだけど…風呂にしといた。
高速修復材をセットして…
ひと段落ついた時のことだった。
「ん…ここが君の管轄の母港かね……ぼろぼろみたいだが?」
「ふむ…修復用の入渠施設か…まあそれが限界か…」
見知らぬ男が立っていた。
「えと……」
「神崎君…大変だったね」
確かに男は俺の名前を呼んだ。
「あ、ありがとうございます。何で私の名前をご存知で?」
そう、俺は自己紹介をしていないのに…だ。
「フフフ…私のネットワークは広いんだよ」
にこやかにその男は言った。
立とうとする俺に「構わない」と言い、「困った事があったら言いなさい」と言ってくれた。
「(なぁTBちゃん、この人は誰だ?)」
救はTBに小声で話しかけるが、返答はない。
「(……TBちゃん?)」
「む?どうしたのかな?」
「い、いえ…」
まあ…恐らくアズールレーンの上層部の人間だろう?
瓦礫の山と化した母港を見て溜息を吐いていた。
セイレーンの猛攻とレッドアクシズメンバーの裏切りを話してもあまり動じてない気がしたのと、「所詮はそんなものさ」と言う言葉には引っかかったが…。
「……疲れてるのだろう、ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」
「だが…セイレーンへの反攻作戦や深追いはやめておきたまえ」
「これは命令に近いものと思いなさい」
「…作戦の概要は追ってウチのインターフェースを通して君に伝える」
「え?」
「ん?どうしたのかね?」
「い、いえ…」
「それはセイレーン作戦用のインターフェースですか?」
「あぁ、そうだ。まだ実戦投入はしていないがね…。最終調整に入ってるところだ」
「そうですか」
「…で、あなたの名前は?申し訳ありません、存じ上げないもので」
「ふむ……私は君の上司になるのかな?大和田と言うものだよ」
大和田を見送った後に考え込んだ。
TBちゃんはセイレーン作戦用にアズールレーンの上層部から送られてきた筈のインターフェースのはずだ。
通信も意図的に遮断してたとしたら辻褄があってしまう。
「……指揮官様」
「君は何者なんだ?TBちゃん」
「……」
「…アズールレーンの上層部が送り込んだセイレーン作戦用のインターフェースです」
「でもあの人はまだ…」
「はい、現時点では出来上がっていません」
「……君も何か目的があって動いてるのか?」
「……遠くにいっちゃうのか?」
裏切るのか?とは言えなかった。
だから遠くに行くのか?としか聞けなかった。
TBちゃんは一瞬ハッとした顔をして
「…私の事を信用してください。お願いします」とだけ言って…画面上の彼女はペコリと頭を下げた。
「私達にも…話があるんでしょ?」
桜エリザベス達が入渠を終えて戻ってきた。
更地になった母港を見渡すと、艦これの世界に来た時を思い出した。
と言うより、コレがデフォなの?と思う。
「俺は……」
「もう一度桜ビスマルク達と手を繋ぎたいと思う」
集まってくれた皆に正直に考えをぶつけてみた。
「……ッ!あ、アンタねぇ…あんな事があったばかりなのに!?」
声を張り上げる桜エリザベスを桜ベルファストが止めに入る。
「ご主人様のお話を最後まで聞きましょう…」
「桜フッドや桜赤城の事を忘れろと言う訳じゃ無い。ロハにしろって事じゃあない」
「これは俺の責任なんだ」
「俺がお前達だけで行動させてしまったから」
「はぁ!?何言ってんの!?馬鹿なの!?私達がアンタを連れてこなかったのよ」
「だからだッ」
「俺がもっと頼れる指揮官なら」
「お前達だけで抱え込んでしまわなくていいような指揮官なら」
「もっと他の道があったんじゃ無いかって思う」
「そんなタラレバ…傲慢じゃないかしら?」
「だとしてもだ!!」
「俺はお前達の指揮官だ」
「今までも…これからもずっと…。だから…俺に指揮を執らせてくれるというのなら……俺はこの考えを曲げたく無い」
「………」
「俺は、あの今までの思い出が偽物だった…だなんて思いたくない!!もう一度!もう一度!!「わかったわよ」
「アンタがそこまでの覚悟を持ってるのね?」
「あぁ…この世界で…この命をお前達に預ける」
「もしまた裏切られたら?」
「…その時は俺の命を差し出してくれ」
「…馬鹿なの?」
「え?」
「もう二度とそんな事にはさせないわよ…」
「いい!?皆!クイーン・エリザベスの名において宣言するわ」
「私達は指揮官とこの問題を解決するわ」
「そして…あのアホ達にキツイ一発を見舞って目を覚まさせてやりましょう」
「だから堂々と指揮を執りなさい。どんなことも私達が全力でやるわ」
彼女達はニヤリと笑って答えてくれた。
んでんで
目下はあのクソ強いお姉さん達への対抗策を考える事が重要だ。
「フリードリヒってのは何者だよ、出鱈目に強かったけど」
「確かに…」
「全く歯が立たなかったと言うより…別格な気がしたわ」
「ピュリファイヤーにも苦戦したものね…」
「皆様は気づいてないのですか?」
TBちゃんは意外そうに言った。
「なにが?」
「何が気づいてない?」
「指揮官が指揮官として機能してないのを…」
「えぇ!?」
彼女曰く、俺はこの世界で指揮官としても提督としても世界に認められていないらしい。故にKAN-SENも艦娘もフルパワーを発揮できない…とか?
「あちらの世界でも同じような事はありませんでしたか?」
と、言われれば納得がいく。確かに艦これの世界でも俺が居ないと同様に力が発揮できないと言ってたな…。
「ま、待って?なら私は?私は何故?」
桜ウォースパイトが狼狽ように言う。
そうだ、なら何故彼女は改状態になれたのか?
「…それ以上の繋がりが2人の間に生じたからだと思います」
「心当たりはありませんか?」
「私は…」
「私は心から誓ったの、あなたに忠も愛も全てを尽くすこと…何があっても信じて守り抜くことを」
「それですね」
「宣言はしたんだけどなあ…さっき」
「まだ、何かが足りないのかも知れませんね」
「うーーん…」
「まあ…アレだな。大和田さんも言ってたけど今は休もうか…」
「TBちゃんは大和田さんの情報を集めといてくれる?」
「かしこまりました、ちなみに何故ですか?」
「何か……うーん、なんとも言えないけど、なんか引っかかるんだよね」
「なるほど、かしこまりました」
「まあ…まずは休むか…」
「………プレハブも慣れたもんだなあ…」
ひよこがせっせとやってるのは何だか新鮮だけど…妖精さんを酷使してる身からすると…慣れって怖いなと思う。
こうして、母港での活動が、再スタートを切ろうとしていた…。