提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
あれから数日、母港も何とか復旧が終わった。
その数日は平和に過ごす事ができている。
とは言え、物資や店の商品と言ったものはまだ足りない状況であり、皆のケアも少しずつ…と言ったところだ。
アズールレーンの上層部らしき人が何回かやって来たが、そもそも建物が無いので帰って行った。
だが、金剛達曰く…何だか嫌な感じがする人達との事だった。
無論、金剛達の存在はひた隠しにしているが…
『所属不明のKAN-SENが確認されたと連絡があったが?』
と、聞かれたのにはドキッとした。
「彼等には注意した方がいいです」
と、TBちゃんが言うのは何となく分かった気はした。
「…そうだな」
ハッキリと言うと、TBちゃんへの疑惑は晴れてはいない。
彼女は信用してくれと言うが…その真意は分からずだからだ。
彼女は意図的に連絡を遮断していた……としたら、誰かにその存在を知られるとマズいから…となる。
①セイレーンやレッドアクシズメンバー
セイレーン作戦へのサポートは必ずどこかで彼女達の障害となるから…とすると納得は行くか…
②アズールレーン上層部の大和田さん
セイレーン作戦用のインターフェースがまだ完成していないとすると…彼女の存在はかなり不明瞭なものになる。
そうなると、彼等には存在を知られたくないというのは納得が行く。
だが…ここ数日の上層部の動きと大和田さんの登場にも疑問が残る。
頑なにセイレーン作戦への介入を行う事と、この世界に来たばかりの俺の存在を知っている事だ。
この世界で俺に会ったのはレッドアクシズとピュリファイヤーだけの筈…。
なら、まさか上層部とセイレーンは繋がりが…?
だと仮定すれば、彼等に注意してくださいと言うTBちゃんの言葉にも納得が行く……TBちゃんを信用すると決めたからその方向で動くつもりでは居るが…。
と言う息も詰まる状況を打破すべく、俺は街へと繰り出した。
考えなければならない事は多いが…頭がパンクしてしまうとアレなので…ね?たまにはね?許して?
実際には物資等々の入荷も考えなくてはならないし…ね?
小洒落たお店を見つけて入ってみた。
テラス席に案内されたが…うん、街並みを観察しながら軽食がとれるのはポイントが高い。
メニューは悩んだが…コーラとスコーンと言う組み合わせになった。
コーラはよくビスマルク達が出してくれたし、スコーンはロイヤルメンバーが出してくれた。
指揮官は紅茶とコーラどっちが好きか?で言い合いをしていたのを思い出した。
実際、甲乙は付け難いが……
「ビスマルク…」
ふと、彼女の名前を口にしてしまった。
「あ……」
声のする方を見ると彼女が居た。
さて問題です。ばったりと意中の者に遭ってしまった時は?
「………」
気まずそうに逃げ出そうとする彼女の腕を掴んだ。
流石に街中でドンパチ始める奴ではないだろ?
「………わかった」
「何でここに?」
「……美味しいって聞いたから…」
意外と少女な答えが帰ってきた。
「母港の建て直しは順調かしら?」
「お陰様でな」
「余計なものが無くなって良かったんじゃない?」
「何が無くなったかもさっぱりさ…」
「なあ…何でだ?」
「…それは何故裏切ったのかってこと?」
「色々あるけど…そうだ」
「………私は……」
彼女は少し悲しげな顔で言った気がした。
「私は私の仲間の未来を良くしたい…その為に戦うの」
「だから私の死がより良い未来を掴む礎になるのなら…あなたに討たれてもなんの悔いもないわ」
「そんなの…「間違いじゃないわ」
「それが…鉄血のビスマルクとしての意志よ」
「俺の艦隊としてのビスマルクとしては…?」
「………」
彼女はニコリとだけ笑って…
「……数日後には全力であなた達を叩くわ」
「攻撃してこなかったおかげで準備は整ったわ。深追いするなって命令でも来てたの?」
「ピュリファイヤーも全力でウォースパイトを潰すつもりらしいわ」
「もちろん、フリードリヒや私も出るしね…。圧倒的な技術と火力とピュリファイヤーのスペアで…飲み込むわ」
「………もう戻れないのか?俺は信じてるんだが………」
「言ったでしょう?私の在り方は変わってないって…」
側から見れば他愛もない会話をする男女ペアにしか映らないだろう。
注文したものを分け合う姿は微笑ましくも平和に感じるのだろうが、当人達は悲しげな目をしているのだから。
「……それでも俺は…お前達ともう一度手を取りたい」
「いや」
「この手を離したくない」
母港に帰ってから作戦を立てる。
ビスマルクは『お人好しね…。一つだけ…スコーンのお礼に』
『上層部には気をつけなさい』と…そして、俺に何かの入った小袋を渡して帰って行った。
小袋の中にあったのはキューブだった。
どう言う意味か…考えるのも重要だが、まずは侵攻への対策を立てなければ。
「……という事で大規模な侵攻が予測される」
「向こうさんは全力でこちらを叩きに来るだろう」
「厄介なのはフリードリヒやピュリファイヤーだ」
「フリードリヒは言わずもがな超火力、ピュリファイヤーは…スペアだろう、本体を叩けたら手痛いダメージを与えられるのだがそれは叶わないだろう」
「とかく、死なない事優先だ」
「けーっきょく…戦うんじゃない」
「そうだな…。でも、何が打開策があるはずだ」
「そして…上層部には応援は要請しない」
この言葉に驚いた者と、ふんふん…と落ち着いて聞く者が居た。
「な、何言ってんの!?少しでも応援がいるところでしょ!?」
「いや…正直、上層部は信用ならない」
「故に様子見…と言ったところで、今回は要請しない」
「…私達だけでやるのね?」
「……指揮官…」
「桜加賀達にも勿論作戦には参加してもらう」
「でも……上層部達の事も考えて金剛達は暫くは待機だ」
「何で!?」
「少し疑問が残ってるんだ」
「それが解決するまで……」
「……余裕よ!ロイヤルのユニオンの力を見せつけてやるわ」
「まだ少し微妙だけど…万全なら良い戦いはできるわ!」
上層部が繋がってた場合、欲しがるのは艦娘のデータと力だろう。
無理矢理にでも手に入れようとするか、俺との交渉材料にされかねない。
戦力的には居てくれる方が何倍も楽だが…様子見だ。
「ふーむ…運が良いのか………情報が入って来ないな」
「…奴らは失敗したか…」
「さあ…ビスマルク、行ってください。あの母港を潰しなさい」
「…はい」
「ピュリファイヤーも行くのでしょう?」
『調整終わったしね?あの神崎を潰してくるよ……大和田指揮官』
「クククク…あぁ…やって来い」
「………レッドアクシズ…出るわよ」
「私達の敵を…全力で潰すわ」
「…伝令ッ!!」
「近海域に反応有りッ!」
「セイレーン艦隊及び…レッドアクシズのものと思われます」
「第一次戦闘配備!!」
アズールレーン…母港とセイレーン組の戦いが始まってしまう。