提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
『うん?艦娘は出て来てないんだね…まァいいか!ぶっ潰して引き摺り出してやるよぉお!!』
「させるか!!」
ピュリファイヤーと桜ウォースパイトがぶつかり合う。
『お前だよお前ぇぇ!痛かったなァ〜痛かったぞー?』
『同じように細切れにしてやるからなぁ!!』
「くそっ」
艦娘達は出られないのだ。
先だって、上層部から連絡が入った。
『所属不明の艦を所有しているとの情報が入った。故に近海域に監視を設ける』
『存在が確認、情報が正しいと判断された場合…貴君並びにKAN-SENに対する何らかの処罰が考えられる』
所謂脅しだ。
やっぱり繋がっているじゃないか…。
『ごめんねぇ…ハニー…。今迄はさ…私達で居ない指揮官を居るようにカバーしてたんだけど……少し前から異様にハニーの姿を見たがって…』と、ニュージャージーは言っていた。
つまり、俺の存在に気が付いたと見ていい。
なら…俺が前に艦娘達と出るのは悪手だろう……。
「こっちも行こうかしら……」
フリードリヒが前に出る……ところに飛び込んで来たのは桜ニュージャージーだった!
「行くわよぉ!!」
不意打ちに近い形で左頬を打ち抜かれたフリードリヒ。
「……いいわね…良い調べを奏でましょう?」
「援護するッ!!」
桜三笠や桜加賀がフリードリヒを狙う。
「………邪魔するのね、桜オイゲン」
「ええ、寝坊助のビスマルク達には起きてもらわないとね」
『アハハハハハハ!壊れろォ!壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろォ!』
「ぐっ…!」
ピュリファイヤーの砲撃を受け流しながら反撃の機会を窺う彼女。
猛攻は続いて行く。
「桜ウォースパイト!負けるんじゃないわよ!」
「はい!閣下!!」
桜エリザベスが叱咤する、少し元気が出た。
『あー…ウッザ…』
「あなたは…強いのね」
「そうよ!私は強いよ!」
桜ニュージャージーは最初以来、決定的な一撃をフリードリヒに与えられていない。
なんせ彼女の艤装はデカい。
艤装に阻まれ、攻撃され…の流れが桜ニュージャージーに攻撃の隙を与えず防戦へと流してしまう。
(強いって言ったけど…防戦一方なのよね…。このフリードリヒって娘…本当に強い)
「ビスマルクぅぅう!!」
アークロイヤルはいの一番にビスマルクへと向かう。
彼女は知りたかった、ビスマルクの真意を…。
「させないわ」
だが、ティルピッツに阻まれてしまう。
「退いて!」
アークロイヤルは彼女を目指す。
「ぐぅううう!」
セイレーン艦隊やピュリファイヤーに押される桜ウォースパイト。
ドゴォ!!
艤装に捕まれ壁へと打ち込まれる桜ニュージャージーや桜三笠達。
圧倒的火力に膝をつくロイヤル。
「…綾波ちゃん!!」
「………」
必死に話しかける桜ユニコーンや桜ジャベリン達に対して無言を貫く綾波や高雄達。
仲間同士で戦う。
傷付く仲間
大切な者達が傷付いては倒れて行く。
嘲笑うピュリファイヤー…。
監視の目を光らせる上層部…。
大和田はニヤリと笑う。
見えたのだ、彼の終わりが。
何もできないまま、仲間を失う彼の姿が…。
ダメだ、声を出して笑いそうだ…耐えろ…耐えろ…!
出さないよな、出せないわなあ!
この情報は各陣営に流している。
正体不明の力を持つお前は、艦娘の力を使う事は…この世界においては
セイレーンと同等の力を持つ事を世界に示すことになる。
そうすればどの陣営にも狙われる事になる。
そしてお前は…
艦娘の力もKAN-SENの力も引き出せて無い。
仮に出撃させても…世界はお前には応えない。
つまり…お前は最初から負け戦に挑んでいるんだ。
さあ沈め、死ね、絶望しろ!!
私に恥をかかさなければ…こうはならなかったのに…
馬鹿な男だ。
しかし…良いな。
この世界もアリだ…。
あの時に声を掛けてもらえて良かった。
この世界はお前でなく、私を選ぶんだ。
俺は馬鹿か?
俺は何を考えていた?
俺にとって何が重要なのか?
彼女達以外に何がある?
上層部に艦娘達が見つかる事が重要か?
画面の向こうで戦う皆以外に大切なものは俺にあるのか?
何で俺は…ここに居る?
彼女達を助けるため、共にもう一度手を取り合うためだろう?
なら何で俺はここに居る?
母港の執務室に居る?
違うだろう?
俺は
俺の居場所は
いつだって
彼は大声を張り上げる。
「金剛ッ!蒼オークランドッ!皆!出撃できるか!?」
皆の意外な顔は、すぐにニヤリ顔に変わる。
「いつでも!!」
期待した返事が返ってくる。
「上層部の事があるんじゃないの?」
瑞鶴が言う。
「…恐らくセイレーンと各陣営の上層部は繋がりがある。だから何だ」
「俺が馬鹿だった」
「皆より大切なものなんか無いのにな」
「例え何を敵に回したって…俺は皆と共に在りたい」
「ビスマルクぅぅううう!!」
「エンタープライズぅう!!」
ビスマルクと桜エンタープライズが武器を構えて放つ。
『さぁぁあ!!死ねよおおお!!』
ピュリファイヤーが艤装から一斉射を行う。
「綾波ちゃぁあん!!」
仲間が…剣を構え、振り下ろそうとする友達の名前を叫ぶ。
「さあ…眠りなさい?」
フリードリヒが桜ニュージャージーに手をかけようとする。
ズドォォン!!
それは放たれた。
砲撃や艦載機が空を切り、今まさに振り下ろされんとする凶刃を跳ね飛ばした。
「何だ!?」
ピュリファイヤーもビスマルクも綾波もフリードリヒも…
桜ニュージャージーも皆がその音のする方角を見た。
それらは母港から現れた。
それはこの世界の人々は見たこともない存在。
世界は違えど、海を守らんとする艦の名前を受け継いだ同じ存在。
「西波島艦隊ッ!!出るぞぉ!!」
「「「「おお!!」」」」
「セイレーン艦隊をぶっ叩けッ!!」
『アイツ…神崎ィィ!!!出しやがった!出しやがったぁあ!てか戦場に出て来やがった!!!』
『馬鹿だろバカだろ莫迦だろおお!!お前!狂ってる!狂ってるぞ!指揮官んんんん』
「俺はいつだって、どこだって皆と共にある」
皆が命を懸けて戦うなら、その隣に俺は居る
その声を、思いを届ける為に俺は前へと出る
「だから俺はここに居る」
カチリ…と音がした。
歪な音でなく、しっかひと最後のピースがはまったかのような音が。
ブワッ…と何かが変わった。
雰囲気?空気?
ピュリファイヤーはなんとも言えない何かを感じた。
「この感じ…」
内から湧き上がる高揚感ー。
鉛のように重かった脚は軽くなった。
「「「うおおおお!!」」」
桜ウォースパイトと蒼赤城はピュリファイヤーを弾き飛ばし、桜ニュージャージーと桜三笠はフリードリヒの艤装を押し退けて。
桜ジャベリン達は綾波達の攻撃を躱して…。
ビスマルク達の前にはアークロイヤルや金剛達が立ちはだかった。
男は狼狽えた。
「馬鹿な?世界が認めたというのか?奴を…指揮官として!この世界に居ることを認めたというのか!?!?」
アイツだ!
アイツが何かをしたんだ!
神崎 救!
やっぱりお前かッ!!
『だから何だってんだっ!!ぶっ殺してやるよぉお!!』
ピュリファイヤーが救目掛けて走り始めた。
「させるものですか!」
「主様には指一本触れさせませんよ」
蒼赤城が、桜三笠が…その前に立ちはだかる。
力が…戻った!
「ティルピッツ!!」
「ええ」
ビスマルクとティルピッツ、ドイッチェラントに対するは桜アークロイヤル改、桜エンタープライズ金剛達だ。
「ハーイ!ビスマルクぅ」
「ユー達を止めに来ました」
「力を取り戻したのね?厄介ね」
何だ!?
何なんだ?!この力はッ!?
指揮官の存在はこうも…コイツらに影響を与えるのか!?
「はぁぁあッ!!」
桜ベルファストの蹴りがピュリファイヤーを捉える。
『死ねぇぇええええ!!』
ピュリファイヤーが右腕を伸ばす。
「もう一度…帰れ!帰れえぇエエエエエエエエ!!」
ズダン!と桜ウォースパイトが右腕を斬り落とす。
クソッと…左腕を伸ばす。意地でも救を殺したいようだ。
「そこ!」
さらに蒼赤城が左腕を斬り落とす。
『ぐぅう!!やってくれるなぁ!いい女が台無しじゃないか」
「黙ってる方がもっと良いかもよ?」
『え?マジ?ってか何それ?ウザいって事?』
「そこです!!」
ドスッ…と桜ウォースパイトの剣がピュリファイヤーを貫いた。
『スペアの損傷が甚大じゃないか…クソがッ!!』
『チッ!でも良いさ!スペアなら幾らでもある!』
『お前達は永遠と追いかけごっこに付き合ってもらうヨ!』
「くそっ!」
確かにそうだ。
彼女達は本体からスペアに情報を写した存在。
本体を叩ければ…こんな追いかけごっこすぐにでも…
「だとしても…何回でも打ち破ってみせる!!」
桜三笠の右拳がピュリファイヤーの顔面をぶち抜いた。
ガズン!!と頭の中に何かがぶち込まれた。
もうこの体はもたないだろう。
「早く!本体に切り替えを!」
『分かってるよ!』
『ビスマルクゥ!すぐに他のスペアに切り替えてコイツら……を………殺す……
いや待て–––––
ピュリファイヤーはこの日のこの瞬間の事を未来永劫忘れないだろう。
ピュリファイヤーは見た。
ビスマルクの目を
そして…その声を
「………今よ!!開いてッ!!」
『何?』
フリードリヒは応える。
「任せて……行きますよ」
『なに…を……まさか』
桜ビスマルクはニヤリと笑った。
「ずっと待ってた…この時を」
ゲートは開かれた。