提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
–––私の絶望…
つまりはお前達にとっての希望–––
それは目の前に立っていた。
虫ケラと思っていた奴等が…嘲笑いの対象だった奴等が実は私を壊し得る可能性を秘めた毒蜂だなんて…。
……面白えじゃん
やってやるよ
やってやんよぉぉおおお
彼女はその拳に渾身の力を込める。
向かい合う彼女も同じくその拳に力を込める。
「行けぇぇ!!桜ビスマルクぅぅ!!」
「うぉおおおおおッ!!」
「これが…私達の答えだぁぁあああッ」
桜ビスマルクの拳はピュリファイヤーの顔面を捉える。
ガキン!と音がする。
『この……ッ!負けるかよぉ!私がアンタらみたいな雑魚にィィィイ!!』
負けじと顔面を殴り返すピュリファイヤー、互いが互いの顔面を拳で…
桜ビスマルクは仲間の未来の為にその思いを…
ピュリファイヤーも自分達の未来の為に…
「『うぉおおおおお!!』」
バキバキと音を立てる艤装。
ミシミシと音を立てる私の身、私の骨、私の心。
–––それでも
私は折れない–––
勝敗を分けたのは…たった一つのシンプルなものだった。
「行けぇぇ!!桜ビスマルク!!」
「やっちゃえええ!!」
「負けるなぁあ!!」
「もう一踏ん張りだぁ!!」
「行けッ!行けぇぇッ!!…いや、一緒に行くぞぉおおお!!」
彼女の腕に手を寄り添わせる
その手が、腕が何を出来ようか?
ピュリファイヤーは鼻で笑う。
たかが人間…と。
そうだ、ニンゲンとは脆い。
私達が一息で直ぐに楽に簡単に呆れるほどに壊れる。
身も心もガラスのように脆い。
–––と思っていたのに。
何故こいつは…コイツの手が加わった瞬間に…この女の力が増した!?
魔法か?!手品か!?それとも手を抜いていたとでも言うのか?!
いや…
人が起こす奇跡こそ…我等の求める進化…
奴等は基本的に運命に引っ張られる…。
その運命の糸すらぶち切って
だが…それだけじゃないはずだッ!!
「…不思議そうな顔をしているな…ピュリファイヤー」
不敵そうに笑う桜ビスマルク。
あぁ…気になる。
何でそうなった?教えてくれ。
私達の求める…進化が、意外性があるのか!?
彼女はニヤリと笑って言う。
「周りを見てみろ」
『なに?』
ピュリファイヤーは目を動かして周りを見た。
KAN-SENと艦娘と戦姫が居た。
私の艦隊はとうにやられたらしい。
そして…今になってその声が私達を叩いた事に気付いた。
「負けるなぁ!!」
「いけえええ!!」
その声援ひとつひとつが私の背中を…肩を…頬を打って行く。
「
私に声援を送る者は居ない。
フン……
なんだ…そんなものか…
『あぁクソ…意外…やっぱり…神崎、お前が来たから狂っちまったなぁ』
『…覚えてやがれ』
「うぉおおぉ…り…ゃああああああぁあ!!」
グン!と力を増した桜ビスマルクがピュリファイヤーを殴り抜いた!
後方に吹き飛ばされるピュリファイヤーに更に主砲掃射の追い討ちをかける!
『…!…!!…!!!』
ズドンと言う轟音、立ち昇る煙、砂煙。
『そ、損失…90%………直ちに…休眠態勢に入らなければ……』
「させるかぁあ!!」
トドメを刺そうとする彼女の前が強く光った。
彼女は動かなかった…いや、動かなくて正解だった。
なぜなら彼女の目の前がばっくりと消えていたから。
謎の光は全てを消し去っていた。
『…この小娘は必要…連れて帰る』
『今回はアナタ達の勝ち…』
最早死に体の彼女を抱えてゲートを潜る謎のセイレーン。
「お前は!?」
「やってくれたな……」
「アンタは…大和田さん?」
「そうだとも」
謎のセイレーンと現れたのは…上層部の人間であるはずの大和田だった。
「やっぱり通通なのね?」
救は皮肉を交えて言う。
「フン!元からこっち側なのだよ」
「まあいい、暫くは小さな勝利に酔いしれるがいい!いずれは貴様も消してやるッ!!」
「………そこまで恨まれる理由あったか!?俺」
「私の下に付かなかったろ?」
「え?」
「理由なんぞそれだけで構わん」
そう言って大和田もゲートに帰って行く。
『……またいつか会う日が来るでしょう。その時に……ね、運命に抗う者達さん』
「何なの?あの人…」
「…指揮官?アレは大和田首相かと思われます」
「え…若返ってるから何となく面影あるなーくらいだったけど…あの人…首相さん!?」
「え!?ズルくない?!何で向こう側に!?」
「…あなたへの恨みが強いのですね」
「淡々と言わないでよTBちゃん」
「でも…まぁ」
「勝った…」
「やったぁ!!」
へたり込む者、泣き喜ぶ者、枝分かれした者との再会に抱き合う者…
母港は、一旦喜びに包まれた。
「てぇ〜ことれぇ〜!しきかんのぉ…母港ちゃくにんをぉぉ…おいわーいしてえ」
「かんぱぁあい」
「「「「かんぱぁい」」」」
「俺思うんだけどさ…何で乾杯の音頭取りが既に酔っぱらってんの?」
「…すまない…指揮官……桜オイゲンったら……もう…」
「あらー?こまかいことわあ〜いいのよ〜?ねえ?し・き・か・ぁ・ん♡」
「うわ…どれだけ飲んでんの?」
「ええとお〜ビールがあ…たくさんとぉ…じゅーおーのお酒が…一樽?」
「おい、誰かコイツの口にガムテープ貼っとけ」
「吐けないじゃない」
「吐かないで済むように飲むな」
「むーーりーー!!!」
集まる指揮官、桜ビスマルク、桜エンタープライズ、桜赤城、桜フッドに桜エリザベス。
「……辛かった選択だろう…桜ビスマルク…桜フッド、桜赤城」
桜エンタープライズがグラスを各々と交わしながら言う。
「……いいえ?私は信じてたから」
桜ビスマルクが
「私もですわ」
桜赤城が
「…同じです」
桜フッドが続けて言う。
「ほーんと良くやったわ…。私も知らなかったんですものね!」
ブスーとしてるのは桜エリザベスだ、彼女はおろか誰もその作戦を知らなかったのだから…。
「まあまあ…閣下が知ったら止めるでしょうから……ね?」
「……まあ…本当生きててよかったわ」
「指揮官は気付いて居たから信じたいと言ってたのか?」
「うんにゃ、ただ信じたかったんだ。あの時間は何があっても本物だから…ってな」
「とことん付き合うつもりだったよ。例え俺が1人になっても…」
「で?桜加賀!例のものは?」
「……姉様…あまり………まあいいか…ここにあるぞ」
桜加賀がある物を桜赤城に渡す。
「うふふ…指揮官様?私…少し失礼しますね?」
「桜加賀?」
「私は何も知らん」
「桜加賀ちゃん?」
「やめろ!」
「…………」
「そんな目で見るな!怖いだろう!?」
「…赤城姉様が死んだ時の指揮官の表情とか…の詰め合わせのDV……もう行ってしまったか…」
「早かったな……」
「そうね…」
ドンドンドンドン!がんがんがんがん!!
「開けろぉおお!桜赤城ィィィイ!!!」
「くっそあかねぇ!!ブチ破るしかねえええ!!」
ドゴォン!!
「おい!桜あ……かぎ………
桜赤城の部屋、大型スクリーンに映し出される俺、しかも泣いてら。
『桜赤城ッ!なあ!なぁ!!嘘だろ!?なあ!…なあ!!」
泣きじゃくりながら彼女を必死で揺さぶる俺。
「はぁぁぁあ!!指揮官様ぁ♡桜赤城はぁ!桜赤城はあ!!幸せですわぁぁあ!!」
「いやぁぁぁあああああああッ!!!!」
「うわー…指揮官ガチ泣きじゃん…」
「愛されてるねえ…羨ましい」
みんな居た。
「本当にやめてええええええええええ!!!」
その肩にガッと手が置かれた。
「指揮官様?私の時は?」
「私の時は?」ニッコリ
始まる上映会。
何で映像があるか?
んなもん、青葉がハッキングしたからに決まってるだろ!!
「おぉ…指揮官の粛々と泣く姿…」
「ダーリンさん……抱きしめてあげたい!」
「殺せよぉ…殺せよおお……」
「指揮官?改めて…ありがとう」
「ん?もう変な映像ないよね」
「えぇ、私は私で[指揮官の決意編]をしっかり見たから」
「もうやだ…帰りたひ……」
「フフッ……隣、いい?」
「もう好きにして…」
失礼するわね、とストンと横に座る桜ビスマルク。
「あなたが信じてくれて良かったわ」
「ええ、あの言葉で私は折れる事なく頑張れたわ」
救の肩に頭を預けて語りかける彼女。
桜ビスマルクだけではないが…少なくとも、1番と順位付けをしてしまえば彼女にのしかかった責任や重圧はとてつもない物だっただろう。
全ては仲間の為、俺の為。
味方すら欺いたその計略は…賞賛の言葉だけでは足りないであろう。
今の彼女の顔は、鉄血のトップのそれではない。
ただ1人の…男の横に座る穏やかな女性の顔だった。
決して全てが解決した訳ではない。
それでも…今は、今くらいは……いいでしょう?
彼女は頬を赤らめて…
彼を見つめながら目を閉じる。
「お願い…指揮官……キスして」
彼女らしくない…いや、これが本来の彼女なのだろうか。
彼女にできる最大限の甘え。
彼は勿論応える。
重なる唇は……お酒の味がした。
「愛してるわ…指揮官」
「俺も愛してるよ……」
そして平和な時間が………………
「あー!ずるいー!あたしもおおお」
そうは問屋が卸さないのがこのメンバー。
雰囲気?空気?知らない子ですね…?なんてどこぞの赤い方の一航戦が言う。
「指揮官様ぁ!?おかえりのちゅうは!?キスは!?桜赤城…待ち続けてるのですがぁー!?」
「やっぱり私へのリアクションが少し足りないと思うのですが?指揮官様?ねえ?ねえ?指揮官様?」
「……好きって言ったのに」
場所は違えど彼女達と彼の場所。
それが母港。
例えどんな困難が待ち受けても…きっと。
「「「待ってよおおお」」」
多分なんとかなるんじゃないかな?
「DVD焼き増ししまーす!1枚5000円からー!」
「ポスターは3000円にゃー」
「一枚下さる!?」
「指揮官のサインは別料金にゃー」
「セットで買うと握手券つけるよー!」
明石と桜明石は逞しかった。
「ブッ……明石sめえええええ!!ぶっ飛ばしてやるううううう!!」
「「ヒェッ…逃げるんだよおおお!!」」
「ふむ…1セット貰えるかしら?」
「「ま、まま毎度ありー(にゃ)」
「桜ビスマルクぅぅう!?!?」
「家宝にさせて頂く…」
「あ!桜ビスマルクさんー…プラス6000円で…告白とキスシーンのDVDもセッt「言い値で買うわ」
「嘘やん?!」
「「毎度ありー!」」
ニコリと笑う桜ビスマルク。
あの笑顔はきっと悪魔の顔よっ!!恐ろしい子!!
そんないつもと変わらない騒がしい母港でした。
セイレーン作戦母港戦 終わり!
まだ暫くはアズレン世界…かな?
場所が変わってもヤベーヤツらは変わらないのでセーフ!…アウトかな?
ヤバくないやつが逆に居るのか!?
コメントなどお待ちしてます!