提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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406話 待ち望んだ日 鈴谷と1日夫婦 ①

待っていた。

 

ずっと…ずっとずーっとこの日を待っていた。

心の底からずっと…

 

1週間も前からドキドキしながら時間を過ごして待った。

1分1秒でも早くあなたに会いたくて…。

 

1時間も前から鏡の前に立って支度する。

先週に街に買いに行ったら新しい服。

 

 

 

「随分気合入ってますのね…鈴谷は」

熊野からそう声をかけられる。

 

「当たり前でしょ!?やっと来た順番なんだもん!気合い!入れて!鈴谷頑張る!」

 

「別の方が乗り移ってますけど…。そうね、提督大好きだものね」

熊野は笑いながら頑張れと言ってくれます。

あなたも好きなくせに!

 

そわそわと…まだかな?と時計をチラチラ見る私に…

「そんなに何度も時計を見ても時間は変わりませんわよ?」

と、また熊野は笑いながら落ち着きなさいな…と言う。

 

「う、うるさいなあ!分かってるよ…」

 

「ふふっ、1分1秒でも早く会いたい…のですねぇ?」

 

「うっ…そ、そうよ…」

そうだ、早く、早く会いたい。

 

「なら、それは言わないとね?」

「どんなに秘めた美しい言葉も言わないと伝わりませんわよ?」

 

 

 

………

……

 

 

 

なんてやり取りをしてたのがさっきのように思う…あの人の私室のドアの前の私。

もう既に5分が経過していた。

 

自分の心臓の音が嫌に大きくて…

震える手はドアノブに触れようとしては引っ込んで…

 

早く!早くしないと!

待ち望んでいた時間は刻一刻と過ぎて行くのに!!

 

なんて声をかければいいだろう?

提督!来たよ!かな?……他人行儀かな?

 

あなた♡来たよ!かなあ?…ぶっ込みすぎかな?

 

どうしよう!わかんない!

本音は今すぐドアを開けてあの人に飛びついて…したいのに…

何故だろう…怖くて仕方ない。

傷付くのが?1番じゃ無いから?何が…かは分からないけども、物凄い怖い。

 

 

 

 

何分経っただろう?

どれだけ手を出して引っ込めて…しただろう。

どれだけ最初にかける言葉を探しただろう。

 

 

何で私にはこんなに勇気がないの!?

ねえ私!お願い!

 

 

 

 

その時、ガチャっとドアが開いた。

 

「えっ…あっ…えと」

現れたその人を見て、私は固まってしまう。

言葉が出ない…。怪しいよね!引くよね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、鈴谷」

 

 

 

 

会ったら言いたい事は…言おうとした事は沢山あった。

呼び方も沢山考えた。

 

でも…その中に「ただいま」の言葉はなかったんだ。

提督からの意外な言葉に私は……嬉しくて…嬉しくて…恥ずかしくて

 

「うん、」としか言えなかった…。

入って、の言葉に頷いて靴を脱ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダメだろう!鈴谷!違うだろう!

私は立ち止まった。

廊下で振り返る彼は不思議そうに私を見る。

「鈴谷?」

 

 

 

 

 

『どれだけ美しい言葉を秘めていても…言わなきゃ伝わりませんわよ?』

熊野の言葉を思い出す。

 

 

伝えた想いは、言葉は…

伝えなきゃ…声に出さなきゃ伝わらない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだろう?(鈴谷)

私は何だ?

艦娘の鈴谷か?

 

 

 

––違う

 私は… 私は

 

 

 

 

神崎 救(愛する人)の奥さんじゃないか–––

 

 

言え!

不良の天龍達と戦った時みたいに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「た…ただいまぁ……ダーリン」

絞り出した…笑顔での言葉。そう、金剛さんや榛名さんと同じ…ダーリン呼び。

好きで好きでたまらない相手をそう呼びたくて…。

 

必死に…ううん、自然に笑顔を向ける。

大好きなあなたに…嬉しくて笑顔を向ける。

 

あなたは意外そうな顔をして…すぐにニコッ笑いかけてくれて「おいで」と言ってくれる。

 

言葉に対して考えるより体が先に動いた。私はすぐさまに飛びついたのだ。

あなたの胸に顔を埋めて…「待ってた」と言う。

そのまま彼にもたれかかるように押し倒して…私は言った。

 

 

「ずっと…ずーーーーっと今日を待ってた」

「鈴谷は…私は、あなたが大好きッ」

 

「何よりも、誰よりも…あなたが大好きなの」

「あなたが居るから…待っててくれるから、信じてくれるからここに帰って来られる」

 

 

「どれだけ戦闘で傷ついても…どれだけ悲しい思いをしても頑張れるのはあなたが居るから」

 

「見て?オシャレしてるでしょ?何時間も前から…ううん、何日も前から悩んで悩んで…でもね?それはダーリンに見て欲しいから!あなただけにこの私を見せたいから、考えるのは苦手だけど…この為なら頑張れるの」

 

 

それでも彼は真剣に聞いてくれます。

 

「…好き、好きなの!あなたが好きで好きで仕方ないの」

 

 

 

 

「………」

 

言った。

言えた…。

言っちゃった。

 

「重いよね、気持ちも私も……ごめん」

 

「そんな事ないぞ」

 

「ううん、無理しないで…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もだッ!」

彼は力強く言った。

 

「ほえ!?!?」

 

その言葉にビクッとした、意外過ぎる言葉だったからだ。

 

「俺だって鈴谷の事大好きだぞ!!」

 

「え!?え!?」

 

「ギャルっぽい感じとは裏腹に…意外と大人しめな所も!俺のことを好きで居てくれるとこも!飯の時とか…俺の事をじーっと見つめてくる可愛いところも!」

 

「ぁぅ…ぇと……」

 

「クッキー焼いてくれて持ってくる前にドアの前でぐるぐる回ってるところも」

 

「ぇぅ!?何で知ってるのよぉ!?」

 

 

「俺の為に1週間もかけてオシャレしてくれるところも」

 

「………恥ずかしい…やめてぇ」

 

「……俺の為に泣いてくれる所も、俺と一緒に笑ってくれる所も、馬鹿にされた俺の為に怒ってくれる所も…」

 

「…ッ」

 

「何もかも大好きだ」

「何時間でも話せるぞ!!」

 

 

いちおう…この人は私が馬乗りになってる状態…なのに

私から一切目を逸らす事なく…恥ずかしげもなく、と言うか私の方が恥ずかしい事をスラスラと言い切った。

 

 

 

 

 

何が怖かったか分かった…

愛されてなければ…どうしよう?だ。

 

周りにはライバルが多い。

私より可愛くて、良い子も沢山居る…。

そんな中じゃ私は埋もれちゃう…。

 

駆逐艦や軽巡より速くない。

戦艦より華はない。

空母より空を制せない。

潜水艦より…………

 

 

 

 

不安なんだ。

不安で不安で仕方ないんだ。

 

 

 

 

 

 

「え、ぇ、え…そ、そんなに?そんなに私の事好きなの?」

 

俯く私は泣きながらその言葉を絞り出す。

バクンバクンと大きな鼓動を聴きながら…

 

 

 

 

「当たり前だろう?」

「俺以上に鈴谷の事を愛してる人は居ない!」

 

「皆にそれを言ってなければなあ…完璧なのに…」

「ううん…でも…私も皆の事大好きだからそれでいいの」

 

 

好き…

愛してる…彼が言ったその言葉を何度も何度も頭の中に繰り返す。

 

「ダーリン?な、なら……き、キスしていい?……違う!キスしてよ」

 

精一杯の言葉…。

あなたから得られる愛は全て欲しいから…

お願い…

あなたからの愛を下さい。

 

 

 

「……ん」

ちぅ…

唇が重なる。

 

嬉しい…幸せ………え?

 

 

「ん……ん!?」

ちょ!?提督…!?

 

「んんんん!?!?」

えぇぇ!?そ、そこまで!?嘘…え!?

 

ボッと顔が熱くなる。

え!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…美味しくいただきました」

 

「……はぅ……ぁぅ……こ、こちらこそ…」

 

 

 

 

 

 

 

あ、あんなキス…初めて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!座っててね?私が夕飯作っちゃうから」

 

「はーい」

 

この母港は凄い…

提督の私室にキッチンがある…というか1DKくらいのアパート?って言った方が良いんじゃない?コレ…

 

トントンと小気味良い音が響いて行き、

 

 

 

「エプロン似合ってるな、鈴谷」

 

「えぇ〜?本当ぉ?」

 

「うん、本当」

 

「えへへ…嬉しいなあ♪ニヤけちゃう」

一度やってみたかったんだよねえ〜!エプロン着て好きな人の前で料理!

鳳翔サン達には勝てないけど…愛情は負けてないよ?

 

 

 

 

 

 

それでね?

後ろから…抱き締められて…きゃあ♡

 

 

 

「え!?」

え?!?背中にあったかい感触が…ほ、本当に?本当に抱き締められてる!?

 

「……何となく……抱き締めたくなって…」

どうやら本当に抱き締められていたらしい…。

こ、こんなに嬉しい事は…嬉し過ぎるよ…

 

 

「嬉しいなあ…。でも待っててね?もう少しでご飯できるからね?」

気持ちをグッと堪えて待ってもらう。

だって…料理は美味しく食べてもらいたいから…ね?

ちゃんと作らないとね。

 

 

 

「はい!完成〜!」

 

提督…ダーリンの待つテーブルに夕飯を並べてゆく…。

 

 

 

 




鈴谷回!

久しぶりの夫婦回!

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ぜひこれからもよろしくお願いします!



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