提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
朝から手を繋いで街へ行く。
ぼちぼちと店が開いて行く街を行く。
朝の徐々に人々が行き交う喧騒の中を行く。
あなたの左手を右手で握りしめて隣を行く。
私より少しだけ高い目線のあなたを横の特等席から見つめる。
作戦時のオンのあなたも素敵だけど…こっちの方が好き。
ねえダーリン?
私が初めてなんだよ?
母港から出て2人で初めての街にデートに行くの…。
そんな意味を込めて握る手の力をほんの少しだけ強めてみる。
きっと誰にも分からないくらい…
意味を感じさせないくらいのほんの少し強い思いで。
その力を感じ取ったのか…あなたは同じくらいの力で握り返す。
意外そうにあなたを見る私に…あなたは優しく微笑みかける。
「この世界に来て…デートは初めてだな」
「君とが…最初だな」
金剛さんでもない、鳳翔さんでも加賀さんでも間宮さんでも吹雪でもない。
私が……。
何であなたは欲しい言葉を察したように言ってくれるの?
私はえへへ…と、そうだねと笑って答える。
あなたは移動販売のアイスクリーム屋を見つける。
暑いせいか長めの列が出来上がっている。
「ソフトクリーム食べる?買ってくるよ」
「え?私も並ぶよ?」
「暑いからさ、そこの陰で待っててね」
「……ありがと」
嬉しい…な、そう言う気遣い。
並ぶあなたを見つめる、時々手を振る。
するとあなたは笑顔で手を振りかえす。
「お姉さ〜ん!お茶しない?」
また私をナンパする男が来た。
「……」
でも私は無視をする。
「えっ無視?傷つくなー」
やれ、可愛いだとか、遊ぼうだとか…
全く心に響かない。でも、しつこくてウザいから…
「私はアンタらに興味もないの!」
「私が待つのも好きなのも1人だけ!」と言う。
「そいつよりカッコいい自信あるけど?」
「そう言ってる時点で中身がダメね」
「無理よ!この先の一生…何があってもあなた達に微塵の好きと言う感情を持つ事はないわ」
「はぁ!?なにい「命を賭けても良いわ」
だって本当に命懸けの恋だもん。
明日とも言えぬ戦いに私は身を投じているのだから…。
だから、だから後悔しない生き方をするって誓ったんだ。
そう力強く言う私の元にソフトクリームを持った彼が戻ってきた!
あの人の腕にしがみつく。
「おっかえりー!ダーリン!!」
「おっ!お待たせ!……ん?ナンパ?」
「え?何?こんなやつが良いの?」
「ハン!ビッチそうだしお似合いなカップ––––
馬鹿にされても気にしないで居た彼は私を馬鹿にする言葉に一気に顔色を変える。
私にソフトクリームを渡してその男の顔面を掴んでギリギリと力を加えて行く。
「いっでぇええ!!」
彼らは知らない。
この人だって私達の隣で前線に立とうとする提督だって事を。
どの世界でも平和を守る為に必死に戦う人だって事を…。
何より嬉しかった。
私の為だけに…ここまで怒ってくれて…。
また手を繋いで歩く。
さっきよりも強く手を握って歩く。
街を行き交う人なんか目にまとまらない。
だって私の目には…ずっと前からあなたしか映ってないのだから。
綺麗で可愛い洋服より、食べきれない程の美味しいスイーツより、あなたとの時間が何よりも幸せで…幸せで。
こんな時間が永遠に続きますように…と思いながら、また2人でデートが出来るように平和を守らなくちゃ…って思う。
「お昼にしようか」
「うん」
「…あ、ここ…」
通りすがりに見たお店は最近、雑誌で見て興味を持ったお店。
ほら、別のとこってワクワクするでしょ?
とか思いながら通り過ぎようとして、ダーリンに止められる。
「ここだよ」
「え!?」
一瞬戸惑った。
声に出てた!?どうしてわかったの?!
「予約してる神崎です」
彼がそう言うと店員はニコッと笑って席へと通してくれる。
「予約してあったんだ!?」
ランチは前に熊野に行きたいと言っていたお店だった。
通りすがった提督が覚えてくれていて…それで予約してくれたらしい。
パスタを頼んで食べる。
味なんかしない。
美味しいんだろう。
でもそれ以上に幸せで嬉しくて…味がわからない。
だから怖い。
この幸せを失うのが…怖い。
「……や」
「…ずや」
「鈴谷!」
「え!?ぁ!ぅ!うん!?なに!?」
どうやらボーッとしてたらしい。
「気分じゃなかった?」
言わせてしまった。
違う。あなたはあり得ない程やってくれている。
「違う」
「最ッ高に幸せなの」
「ずっと私が欲しい言葉とか…行きたいところに連れて行ってくれて……幸せなの」
「幸せすぎて怖いよ」
その本音に彼は頭に手を置いてポンポンとしてくれた。
そして…「はい、あーん」
と、彼の食べる料理を私に食べさせてくれた。
一気に口の中に味が拡がった。
美味しい!美味しい!!
幸せな味が広がる。
あなたの作るもの程じゃないけど…それでもめちゃくちゃ美味しかった。
もっと幸せ噛み締めていいのかな?
楽しい時間も終わって夜。
目の前に好きな人が居る。
何の隔たりも無い…布団の中と言う同じ空間の中に居る。
息がかかりそうな距離に…
その瞳に吸い込まれそうな程の距離に…
「美味しかったよ、鈴谷の手料理」
「うん…えへへ。嬉しいな♪」
『今日の夕飯は私が作ったよ!』
『お!?マジ!?楽しみ!!』
『と言っても鳳翔さんに習ったんだけどね?』
『頑張ったんだよ!?愛情は嫌と言うほど詰め込んでるからね!?』
ご飯に卵焼きにお味噌汁に肉じゃがに焼き魚
シンプルに和食で出した料理を幸せそうに食べてくれたダーリン。
思わず嬉しくて泣き笑いしてしまったなぁ…。
鳳翔さんに習った和食。
鳳翔さんは教えて欲しいと言うと必ず教えてくれる。
誰も鳳翔さんには敵わないのは知っている…。
でも彼女は違う。そうは思ってない。
『ただ、料理が好きで…沢山してきたから…かな?』と言う。
『それに…食べてくれる人への想いの込め方は…測れないでしょ?』
あの人が喜んでくれるのが好きだから…。
だから彼女は教えを拒まない。
そして必ず…『愛情をたっぷり込めて下さいね』と言う。
鳳翔さん…。
美味しいって言ってくれたよ!
なんて思い出しながら布団の中で笑う。
「ねぇ?ダーリン」
呼んでみる。
「ん?何だ?」
答えてくれるあなた。
「愛してるよ」
だから精一杯の持てる限りの想いをあなたに捧げたい。
「俺もだよ」
そう返してくれるあなた。
だから少しだけ意地悪をするんだ。
「ちゃんと言って?」
少しムスッとした私にあなたはアハハと笑いながら応えてくれます。
「鈴谷」
彼は真剣な目で私に話しかけます。
「ん?何?」
「愛してる」
「うん」
「他の誰にも負けない程に君を思ってるよ」
「ずっと……この命が果てるまで君と居る」
「死ぬときは…お年寄りになってからね」
もぞもぞと近寄ってみる。
ぎゅっと抱き寄せられる。
「まだ怖いか?」
「ん…。でも死なないよ。私は」
「あなたと…ダーリンとずっと一緒に居たいからね」
「ん、なら俺も頑張る」
「…ねぇ?ダーリン?」
「何?鈴谷」
「………あのね?…えとね?……………良いよ?」
ボソボソと言ってみる。
「………ん?」
「………ね?」
恥ずかしさと何もかもですごい顔してるだろなあ…。
「………ん」
夜中に目が覚めた。
隣にあなたが居る。
それだけで幸せ。
この眠さも、感じる痛みも何もかも…
あなたと共に…なら、私はそれだけで幸せ。
あなたの幸せは私の幸せ。
あなたも…少しでも良いからそう思ってくれたら……幸せだな。
思い返してみる。
母港に帰りたくないな
今日が終わってほしくないなってかなり思った。
でもその分また来年を楽しみに頑張れる。
「絶対にダーリンを遺して逝ったりしないから」
「あなたを絶対に守るから」
「愛してるよ…ダーリン」
そう言ってキスして私は彼の腕の中でまた眠りについた。