提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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421話 いつか夜は明けるから ② 壊れた日常

…なんだ?

「………」

 

何だろう…。

このぽっかりと穴の空いたような感覚は?

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その感覚がまるで熱帯夜の汗まみれのシャツのように不快に纏わりつく。

 

 

夢…?

 

 

 

 

 

 

 

テレビを点ける。

この何だかモヤモヤした気分を少しでも紛らわせたかった。

 

 

 

「謎の集団!深海棲艦について!!」

夜中のテレビはワイドショーの討論の最中だった。

テレビの声は続く。

「千葉のテーマパークが深海棲艦によって攻撃されたのはまだ皆さんの記憶にも……………………昨日は横須賀で…………提督らしき……深海側……

 

 

ぼうっとそれを見聞きする。

 

人は食物連鎖の頂点だ!…と誰かが言ったのを覚えている。

しかし、それは…かくも脆いものだと知った。

 

人には知恵がある、技術がある…それは力となるからだと。

 

でもそれを上回る何かが現れたら?

 

 

 

馬鹿馬鹿しい!そんな事は地球外生命体が侵略してない限りあり得ない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事はあり得たのだ。

 

 

ひとつだけ…さっきの話と違う事があるとすれば…

 

 

 

 

 

 

彼女達は海から現れた…と言うことだけだ。

 

 

そうだ。

突如として現れた謎の生き物、深海棲艦。

瞬く間に人々は海から追いやられた。

 

 

 

え?

世界も軍事力はもってるだろう?って?

 

 

結論から言おう、無理だった。

 

武力行使に和平交渉、様々な手段を用いて人々は海の奪還を試みたが全ては失敗に終わった。

 

平和と言う脆い砂上の城を崩された人は、日々怯えながら生きて行く事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿みたいな話だが、奴らは海の上や中を…空を自由に動き回る。

 

多くの艦や戦闘機が、潜水艦が、人が守る為に戦って……いや、なすすべもなく散った。

 

 

 

 

 

 

人々は軍を非難した。

何故勝てないのかと

何故罪もない人々を死なせてしまったのかと

 

歯が立たない相手には何を向けるわけにも行かず、やりどころの無い怒りは内側へと向かう。

 

 

 

 

ある人は言う、これは終末だと。

人々の傍若無人ぶりがついに世界を怒らせてしまったのだと。

 

 

 

 

 

そんな時だ、艦娘が現れたのは…。

 

 

1人の少女が現れたらしい。

 

その少女も海に立っていた。

人々に仇なす深海棲艦を打ち倒して…。

 

その先の大戦の艦の名前を名乗った。

 

 

 

やがてぽつぽつと、艦娘は増えて行き…噂では民間人もスカウトによって艦娘として戦いに従事してるらしい。

 

彼女達は兵器なのか人なのかと言う議論も上がったが、大人の事情なのかあまり騒がれなくなった。

そうだろう…下手にヘイトを稼いで見捨てられたら人に待つ未来は滅びしかない…。

 

 

 

 

 

でも何故だろう?

彼女達を見ると切なくなるのは…。

 

 

 

 

 

 

「次のニュースです、深海棲艦の攻撃でOO商事がビル倒壊の……「は?俺の職場じゃん」

 

「またそれを受けて△△市では避難命令が…「は?ここじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ…アンタ…救……」

 

「会社が吹き飛ばされてさ…これってもう出勤しなくていいよね」

 

「本当にアンタかい!?」

 

「家にも帰れないし」

 

「と、とにかく入りな!」

 

救の姿は彼のいた孤児院にあった。

避難命令の出た市から離れ、更に街から離れた山間にある唯一の拠り所に。

 

 

 

 

 

 

職場も吹き飛ばされた。

住む家も避難命令で追いやられて……

 

 

 

 

「……」

 

「まあ、アンタが戻った時はビックリしたけど…まあ前回ので慣れたよ」

 

「??前回?」

 

「おや?覚えてないのかい?」

 

「まさか海の深海棲艦とやらが陸に来るなんてねえ」

 

「そうさね」

 

 

「いつから奴らは海に現れたんだっけ」

 

「数ヶ月前さね、前にアンタがひょっこり戻ってきた後くらいさね」

 

「そうかあ…」

 

「そいや、あの子達は元気なのかい?」

 

「あの子…?あぁ、会社の仲間?元気だよ」

 

「会社……」

なっちゃんは怪訝な顔をした。

 

「ん?」

 

「い、いや、何でもないよ」

 

 

 

「いや、救?アンタ…やらなきゃならない事があるんじゃないのかい?」

 

 

「ん?()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに会社も無くなったしねえ」

 

「……ッ!?」

 

「どうしたの?シスター?」

 

「……まあいいさ。荷物を取っておいで。その間に部屋を用意しておくから」

 

「ありがとう」

 

「アンタの家だからね…。それにアンタは…アタシにとって……」

そう言ってシスターは黙り込む。

 

「ん?」

 

「何でもないさね」

 

「え?気になるんだけど」

 

「いいから早く取っておいで!!」

 

何かを言おうとした彼女に急かされて彼は孤児院を出て行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を門から見送り、その背中を見つめる彼女。

「……この胸騒ぎは何だろうね。目の前にアンタが居るのがとても嬉しいのにねぇ…。何でアンタはあのままなんだい?」

 

 

「あの時の艦娘の子達の事は何で話題に出さないんだい」

 

 

彼女は言えなかった。

言ってしまったら救がまた居なくなりそうで。

 

途端に救は踵を返しこちらに走ってきた。

 

「おや?忘れ物かい?全く…せっかちな子だ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の家か…

と思いながら振り返り孤児院を見ていた俺を影が追い越した。

 

 

体が思うより先に動いた。

 

 

上空から迫る一粒の絶望

簡単に人を死に追いやるそれ

孤児院にはチビ達やシスターも…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!!隠れ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは俺の全てをぶち壊した。

 

 

 

 

 

 

 

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