提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
「くっ…」
考えたくないが、最近敵の襲撃が多い気がする。
「反撃…撃ち方……始めぇぇええ!!」
母港へのセイレーンの襲撃は増えた。
聴きなれない提督の名前を皆が発し始めてから…
長門は考える、神崎 救と言う名の者と関係があるのだろうか…?と。
何より大切なあの人…
例え血は繋がってなくたって…こんなに大切な人は居ない。
小春姉さんも、夏海も、未冬んも…4人で大好きだったあの人。
彼が死んで4人で泣いたのに
あぁ
ナンデ頭から ココロから剥がれて行くの?
お願い 消えないデ
忘れたく…ないの
「………」
桜ビスマルクはため息を吐く。
母港での皆は元気が無い。
いや、日に日に弱くなっている。
「面倒だな…その、提督という存在が居ないと力が出ないというのは」
頭を抱えるのはアズールレーンやブルーオースのメンバー達。
鎮守府にて、神崎 救と言う提督が居たからこそ彼女達はどんな敵にも負けなかった。
この世界では母港を鎮守府として見ていたからこそ活動にも問題はなかったが、今ではそれも叶いそうに無い。
居ない筈の大石と言う名の人物に怯えながら日々を過ごす彼女達…。
日に日に彼の事を忘れて行く者が増えると言う異常事態もさることながら、対セイレーン作戦における重要戦力の損失は大きな問題であった。
ましてや…自分達のメンバーの中からも同じ状況に陥る者が出てくるとは夢にも思わなかった。
「…もし、このまま元に戻らなかったら?」
「嫌…私嫌!!あの人の事忘れたく無いッ」
日に日に蝕むように…それは私達の中に広がって行く。
本当に神崎 救という人物は存在したのか?
まやかしの記憶ではないだろうか?
姉妹の姿にそう思い始めながらも己と葛藤する者も少なくなかった。
その中に他の艦娘とは少し違う路線を歩む者が居た。
「お、お姉ちゃん…?これは?」
そう声をかけるのは長鯨、迅鯨の妹である。
長鯨は目の前の光景に驚きを隠さずに居た。
壁
壁
壁
天井
床
神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救 神崎 救
ありとあらゆる所に張り出された 神崎 救と言う名前が書かれた写真。
もはや狂気にも近いその状況にただ声を失うだけだった。
「長鯨…」
声をかけられた迅鯨は言う。
「あなたは覚えてる?大好きな…大切な人の事を」
彼女は涙を流しながら問いかける…が、長鯨は難しい顔をする。
「…ごめんお姉ちゃん」
ううん、と首を横に振って彼女はその写真を愛おしそうに見つめる。
「…お姉ちゃんにとっても私にとっても…みんなにとっても大切な人なんだよね?」
「うん」
「私ね…どんどん忘れていっちゃってるの」
「好きなのに…こんなにも大切なのに少しずつ…少しずつ忘れていっちゃってるの!!」
忘れたくないのに
しかし、長鯨にはその気持ちを理解できない。
忘れ去ってしまった彼女にはそれを理解することはできない。
「……ッ」
ただ、目の前で大切な姉が悲しんでいる事しかわからない。
「……ジンゲー…」
金剛や榛名、霧島が入ってくる。
「凄いですね…迅鯨さん…」
霧島が声を掛ける、彼女は四姉妹の中で唯一彼を覚えている艦娘である。
「えぇ、日に日に忘れて行くの…だから、忘れたくなくて……」
「本当にそんな人居たの?」
金剛が訝しげに迅鯨に問いかける。
「……は?」
迅鯨は鋭い目で彼女を睨みつける。
「ちょ…金剛お姉様!!」
「だって!霧島も…迅鯨も蒼オークランド達もおかしいデース!!在りもしない人の名をずっと呼び続けて…日々攻撃も激しくなってるのに…」
「やめてよ」
迅鯨は涙目で彼女を睨む。
「
「…〜〜〜ッ!!!」
迅鯨は金剛から飛び掛かった。
ガタン!!と言う音と共に金剛に馬乗りになる迅鯨。
「ジンゲー!何するんデース!」
目を見開いて怒る金剛。
「迅鯨さん!お姉様を離して下さい!!」
榛名が止めに入る。
「退いて下さ––––
2人の言葉は途中で止まる。
ポタポタと彼女の目から止めどなく溢れる涙が金剛に落ちて行くから。
「何であなたが……あなたが忘れてるのよ…」
「何で…何で忘れ去って平気な顔してんのよっ!!1番…近くで…ひぐっ…あんなに愛してたくせにッ!!」
『ダーリン!バーニング…ラ〜ブ!』って
毎日毎日あんなに愛を囁いてた…叫んでたくせに!!
羨ましかったのに!!
ウラヤマシカッタノニ!!!!
グッ…と掴みかかった手に力が入る。
「お姉ちゃんッ!!ダメだよ!!」
「……わかりまセン!私には…わからないデース!!」
金剛も最早彼の事を思い出せない。
彼女達からすれば、ありもしない記憶を必死に追いかけて行く迅鯨達の方が異常なのだから…。
「くそおお!!」
迅鯨は彼女らしくない声をあげて掴んだ手を離す。
「…」
金剛は改めて部屋を見渡す。
幾つもの写真が、名前が嫌でも目に入る。
「…知らないのに……何でこんなに胸が苦しいのでショウ」
「うわぁぁぁぁあん!!!」
ポツリと呟いた金剛の言葉に迅鯨は大きな声を上げて泣いた。
ドカァァァアン!!
大きな音とともに部屋が揺れる。
[敵襲ッ!直ちに戦闘態勢に入れッ!!]
長門や桜ビスマルクの放送を聴き母港の守りに入る面々。
「こんな時でも敵は待ってくれないんだな…」
「哨戒中の奴らは一体何をしてるんだ」
そう、母港の周辺だろうと哨戒は怠っていないはずだ。
「桜綾波と川内に神通に蒼オイゲン達のはずだろう!!」
敵を絶対に倒すマン筆頭の神通達が敵を見落とすなど考え難いが–––––と思った時だった、彼女達が目の前に戻ってきた……ボロボロで。
「どうしたの!?みんなッ」
その姿に驚愕する陸奥と大淀。
その陸奥達に向かって神通達は言う–––
「…撃てません………神崎提督を撃つなんてできませんッ」
「…は?提督??一体何を––––––「居たぞ!あそこだッ!!」
長門が敵の姿を捉える。
「深海棲艦と……人…?軍服だと!?相手側の指揮官かッ」
「深海棲艦も…?この世界に?!」
陸奥は長門の指す方向を見る…。
そこに迅鯨や金剛達も到着した。
そして嫌でもその姿を見てしまう。
「…救君?」
「指揮官…と…金剛さん?!」
「お、お姉様…?」
「わ、私デース!?」
白髪のその男は…髪の色こそ違えども私たちのよく知る人だった。
そしてその隣に居るのも…
『……』
白い神崎は寄り添う白い金剛に『やれ』と一言だけ言う。
無数の砲撃が母港に向いて放たれた。
「敵襲ッ!敵襲ーー!」
西大淀が大声で放送を入れる。
「…何?敵襲!?」
救はベッドから飛び起きる。
「お兄ちゃん!!起きて–––るね!!」
「西吹…未冬!私は何をしたらいい!?」
「司令室に行って!!」
少しでもお楽しみ頂けたなら幸いです!!
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