提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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427話 いつか夜は明けるから ⑧ 急転

 

忘れた者には彼が単なる敵に、

忘れぬ者は彼が絶望に見えた–––

 

 

 

「ね、ねぇ?指揮官様?何の冗談ですか?」

桜赤城は強張った表情で尋ねる。

 

 

「姉様ッ!!馬鹿なこと言うなッ!指揮官なはずがない!指揮官が…皆を攻撃するはずが無い!!」

桜加賀が激昂する。

当然だ、指揮官が皆を傷つけるはずなど無いのだから…と皆が分かってるのだから。

 

「馬鹿な事は分かってるわよッ!!でもね…」

 

「あの感覚は…何があっても覚えてるわ…あの感じは…紛れもなく指揮官様なのよ」

 

 

白髪頭の彼は笑って言う。

「……なら、桜赤城?その俺を攻撃できるのかい?」

 

「……ッ!!!」

 

彼はフウッと溜息を吐いて言う。

「…忘れてれば幸せだったのにな」

 

 

 

 

「俺は神崎 救!!深海棲艦の提督だ!!世界を超える貴様らを潰して…現実世界も貴様らの世界も俺が貰う」

 

 

「やめて!!その名前を使わないでッ!」

神崎 救

その名前は彼女達にとって大切な意味を持つ…のに…

 

 

 

 

 

 

あぁ…

その名前が彼女達に刻まれてゆく。

 

「きゃぁあ!!」

榛名が被弾した。

 

「榛名っ!?大丈夫デース!?」

 

「は、は、い。榛名は、まだ大丈夫です」

 

 

 

 

「よくも榛名を……!神崎?覚えましたからネー!!ここはやらせまセン!」

その最中でも忘れて行く者は彼の名前を悪の一員としてその心に刻んで行く。

 

 

 

「アハハハハハハ!!沈めッ!沈めぇえええええ!!」

 

 

轟音は鳴り響く。

圧倒的な戦力ではないが、今の彼女達にとっては大きな脅威には間違いなかった。

 

 

 

 

–仲間を傷つける者として––

–深海棲艦の提督として––

 

 

 

 

その様子を迅鯨はへたり込みながら眺めていた…。

身体が動かなかった。

 

あの人は…

何故だろう?

私にとって…凄く大切な"何か"な気がするのに…

 

 

バタバタと横を仲間が駆けて行く…

その何かに向かって、敵意を向けながら…

 

 

ふと、横を見ると…金剛達が誰かに対峙していた。

 

 

 

 

 

 

そう、その姿は白い…かつての仲間。

忘却は全てを塗り替えて行く。

彼の愛した深海棲艦でさえ–––

 

 

 

 

「居たぞ!!ここにも姫クラスが!!」

「後方ラインは何をしていた!!」

 

 

艤装を構える先には姫ちゃん、鬼ちゃんが居る。

2人は涙ながらに訴える。

 

 

「ねえ…みんなあ…思い出してよお…私達だよ!!」

 

「深海棲艦が随分と馴れ馴れしいな…」

 

そう、それは姫ちゃん達ですら例外ではない。

彼の愛した深海棲艦に関する記憶も抜け落ちて…かつての仲間は単なる敵として認識される。

 

「…ッ!お願い…」

 

「……」

金剛は艤装を向けながらも疑問に思ってしまう。

 

何故この2人は私たちに敵意を向けないのか?

後ろに居る深海棲艦達と何が違うと言うのか?と。

 

「金剛!!何をもたついてる!!後ろの神崎達が迫ってるんだぞ!!」

長門が金剛に声をかけながら神崎深海提督の元へと走って行く。

 

 

「……長門!行って下さサイ!!この2人は私1人で処分しマース」

 

そう声をかけた金剛は1人考えた。

 

 

頭が痛い。

 

 

 

 

「ねえ!!金剛さん!!ねえ!お願いッ!!」

 

その声が…頭が痛くなる。

 

「私は死んでもいいから…思い出して」

 

何でそこまで言う?

 

 

 

 

頭が…

頭が…

頭が……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砲撃音が響いた––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

––救サイド––

 

平和な時間は簡単に消え去る、たった1発の砲弾で。

揺れは彼に非現実を現実として叩きつける。

 

「敵襲だー!!」

轟音と建物が揺れる中に声が響いた。

 

窓から海を見ると、遠くで何かが光った。

 

次の瞬間、また轟音と共に天井が目に入った。

一瞬の間を置いて隣の部屋が砲撃されたと気付く。

顔面から壁に叩きつけられ俺は仰向けに倒れていたのだと…

 

「救!?救!?!?」

青褪めた様子で西金剛…夏海が飛び込んできた。

 

 

「大丈夫…。敵襲?」

 

「血が出てるじゃない!これ使って…救、逃げるよ」

タオルを額に当ててもらいながら手を取られて行く。

 

 

 

夏海が「早すぎる…」と呟いたが何のことかも分からなかった。

 

 

 

 

後ろでダァン!という砲撃音と揺れを感じながら走る。

 

 

 

 

揺れる鎮守府から抜け出して出撃ゲートへとやって来た。

御蔵が「来たか…」と言いながら一歩下がるように言う。

 

 

 

 

 

ゲートの窓から外を見る…

 

 

「相手が見えるわね」

 

「え?どこ?見えない」

 

「救君には見えないかもね…まぁ、見えない方がいいわ」

救は目を凝らすが敵の姿は見えない。

ドォンと言う音がして、ひどい揺れが起こった。さっきまで居た鎮守府が爆発したらしい。

 

「あぁ……住む家が…」

 

「………」

御蔵が俺を見つめた。

いや、そこに居る全員が俺を見ていた。

 

「…え、なに?」

 

 

「何があっても…絶対に守るから」

誰かがポツリと言った。

新人にここまでする必要があるのか?と思った。

 

 

 

 

ダァン!!と言う音と共に出撃ゲートが破られ、鹿島と他数名が煙の中から現れた。

 

「良かった…救え––––

言い終わる前に「見つけた…」と言う言葉と共に鹿島から副砲が放たれた。

 

タン…と乾いた音が響いた

 

 

 




あけましておめでとうございます!

遅くなりましたが!!
すみません(´;ω;`)
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