提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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428話 いつか夜は明けるから ⑨ 逃避

 

ズキっと頬に痛みが走る。

それ以上に突き飛ばされた衝撃が凄い。

 

「アンタ…ッ!」

どうやら西金剛が俺を射線上から突き飛ばしてくれたようだ。

その西金剛は鹿島相手に睨み、艤装を向けている。

 

 

「え……?何で…?」

頬の痛みで頭が余計にこんがらがる。

目の前に立つ鹿島……の艤装から出る煙は砲撃したことを俺に伝えた。

俺は後ろ、周囲に敵は居ない。

 

 

つまりは俺を狙ったと言うことだ。

 

 

 

 

「うーーん…残念」

鹿島はニタリと笑いながら言った。

 

「な、何が…」

帰ってくる答えはある程度予想がつく。

だが…心当たりはない、故に

 

「今ので死ねたら、楽だったのに♡」

 

 

 

その言葉は俺に深く突き刺さった。

 

 

『あれ?何で?って顔をしてますねえ』

『もしかして、まだ言ってないんですね?流石は西波島艦隊さん♡』

 

何をだ?

 

『いいですかぁ?神崎 救さん?』ニコニコと笑顔を崩さない鹿島。

 

何だ?なんで俺の名前を…?

 

『あなたは…「撃てぇ!!」

その言葉を遮るように御蔵の号令が響くと共に鹿島めがけて砲撃が飛ぶ。

 

『きゃあ♡危ないですよ?』

笑いながら顔を上げる鹿島の前には艤装を構える西波島の艦隊の姿があった。

 

 

……鹿島から貼り付けたような笑顔が消えた。

救はその表情にゾクリと悪寒が走った。

 

『ふぅん…あなた達はあくまでその道を貫くんですね』

『逃げもできないのは分かってるくせに、真実から目を逸らして……』

 

 

『いいですよ』

 

 

 

 

 

 

「戦闘態s…「行ってください」

 

御蔵の声掛けを遮るように西鳳翔が言った。

 

「小春姉!?」

 

 

夏海…西金剛は西鳳翔に待てと言うが、彼女は答えない。

 

「……夏海?お願いね?私は分かってるし、信じてるからね」

 

「……ッ!!」

ボソリと何かをやりとりしたらしいが俺には聞こえなかった。

 

 

「行くよ!救ッ!!」

西金剛が俺の手を引いて海を駆ける。

御蔵や他のメンバーが周囲を守りながら…

 

『あら…逃げるんですね?……まぁいいです』

鹿島は救に向かってまた微笑みかけた。

『本当に信用できるなら…ですけどね?』

 

 

「え…」

 

どう言う意味だと聞きたかったが、もう彼女は西鳳翔で見えなくなった。

 

でも、最後に見た顔は少し寂しげな顔をしていた気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

行っちゃった。

 

私の運命の人。

 

ううん

私達の運命の人。

 

さようなら…

 

どうか

 どうか

 

生まれ変わったらもう一度…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

『ふふっ。貴重な戦力を割いて大丈夫なんですか?それにこの数…分かりますよね?』

 

ズラリと並ぶ敵艦隊。

見知った顔が沢山並ぶそれは、味方ならどれだけ心強い事かと思う。

 

「……えぇ、そうね。私達はここで終わる…」

 

「でも…彼を死なせるわけにはいかない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼がこの世界に深海棲艦をもたらした原因なのに?』

 

 

『自らが生み出した影が深海棲艦の提督として向こうの世界を踏み躙ってるのに?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分かってる。

知ってる。

理解している。

 

私が鳳翔だから分かる。

彼が…以前にここに……シスターに会った時に、境界はその役目を失った。

 

艦これの世界(二次元の世界)から私たちの世界(三次元の世界)へと、それは溢れ出したのだ。

 

 

世界を越えるというのはそういう事なのだ。

 

 

「でも!それは彼の意思とは関係ないでしょう!?」

 

『ええそうですね。でもだから何ですか?』

 

 

『意識してないから許されるのですか?』

『冷たい海の底から這い上げられ、また戦いという悲しみの中に放り込まれる事が許されるのですか?』

 

 

 

 

 

『私達は還りたいんです』

 

 

 

『沈んだ私達は海の底に……』

 

 

 

『だから…あるべきところに還さないといけないでしょう?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『例え彼を殺したとしても』

 

 

 

 

 

『貴方達は存在しない艦隊、鎮守府、艦娘』

 

 

『西波島?そんなものありませんよ?』

 

『彼の妄想なんですから』

 

 

 

 

 

 

 

『全て偽物なのですからね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鹿島の前に何かが飛んでくる。

 

『-----ッ!?』

間一髪でソレを躱す鹿島。

 

目の前には西波島艦隊(妄想の産物)がこちらを睨んでいる。

 

 

『ふふっ。本気なんですね?』

 

笑う鹿島。

しかしその顔に笑顔はない。

 

「……はい、全力で止めます」

「追わせません、殺させません」

 

「あの人を……否定させません!!」

 

西鳳翔は構える。

続いて残ったメンバーも構える。

 

 

数は圧倒的に不利なのも分かっている。

練度も何もかも……

でも負けないものが一つだけあった。

 

 

 

彼を助けたいという思いだ。

 

今の彼は知らない。

何故彼女達がそうするかを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリビリと頬を空気が割いてゆく。

こちらの鳳翔には無いプレッシャーだ。

 

 

 

『いいですかあ?皆さん?』

『アレは妄想の中に生まれた艦娘達が本m………いえ、決死の艦隊です』

 

 

『………私達が還る為に必要な犠牲です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………私もそっちに居たかったのに』

 

 

 

 

 

 

 

 

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