提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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429話 いつか夜は明けるから ⑩ キラキラした夢

 

 

 

 

海に溶けた私達の想いはひたすらに漂う

 

暗くて冷たくて永遠を感じる中をずっと…

 

 

 

いつしかその中に芽生えた感情は

 

 

憎しみだった。

黒い

 暗い

     ドス黒い感情

 

私達の犠牲は忘れられたのか?

 

 私達はずっとこのままなのか?

 

 

 

 

 

お前達の安寧は

 

 私達の残骸の上に成り立って

 

 

   るの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その感情に呼応するように

私達には手足が現れた

 

 

体が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある者は安らぎを求めて旅立った

 

 

ある者は全てを壊す為に旅立った

 

 

 

 

 

 

 

 

私達も行こうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何この声は?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁぁぁあッ!!」

 

放つ–––

放つ放つ放つ––

 

 

迎え撃つ–

撃つ撃つ撃つ––

 

戦況は拮抗していた。

 

 

西鳳翔が、西大鳳、西最上がひたすらに発艦を行い、制空権争いを行う。

 

敵連合艦隊はソレを撃ち落とす為に更なる対空準備に取り掛かるが––

 

 

 

 

 

 

閃光のようにソレは一気に近付いた。

 

 

 

 

「オラァ!!!」

目の前には西天龍が刀を構えて突っ込んできたのだ。

 

『きゃっ!?ぐっ…うぅ…』

『あ、諦めが悪いんですね?……こっちはあなた達の3倍以上の戦力ですよ?!』

 

 

 

「数がなんだ!!やらせねえよ!」

 

『そこまでしてあの人を守る価値があるのですか?』

 

「当たり前だろォ!!」

 

『貴女も私も影…偽物でしかないのに?!』

 

「そんな事分かってる!!」

 

 

徐々に押され始める天龍達。

それも仕方ない。

相手は何倍もの数でこちらを押してくるのだから。

 

 

 

でも諦めない––––

 

 

『何ですか?あの人の為に命を捨てる覚悟があるとでも言うのですか?』

 

 

その気迫に圧された鹿島が問いかける。

 

 

 

 

 

「はい」

と、静かに彼女は言った。

 

 

『……退いてください』

 

『私達にも彼が必要なんですよ』

 

『あなた達と同じ…本物になる為にッ』

 

 

 

 

「退けません!!」

 

「あの人が…皆の所に帰る為に!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『は?』

 

鹿島は目を見開いた。

あり得ない言葉が聞こえたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

『何言ってるんです?あなた達は…本物になる為にあの人を匿ってるんじゃないんですか?特にあなたや西金剛さんは!!!』

 

 

 

 

 

 

 

まさかコイツらは本当に彼を…あの世界に送り出すために自らを犠牲にしてでも動くつもりなのか?

 

 

そんな輝かしい、甘ったれた理想を?

 

私達は………

 

 

 

 

 

 

 

 

『認めない…そんな美しい理想(綺麗事)私達は認めないッ』

 

『認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない』

 

 

 

 

 

『お前も私達も…見捨てられた存在なんだ!!』

 

『私だって…私達だって確かにここに居るのに!存在しているのに!!』

 

 

『そうじゃないからと言う理由で偽物なんだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『だから本物になりたいのッ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その為には彼が…私達を唯一認めてくれる彼が必要なのッ!!』

 

 

『変わらないッ!事実は変わらない!!神崎 救がこの世界に深海棲艦をもたらした事!お前達が…私達も存在しない筈の艦隊だと言う事も!!

 

 

 

 

『私たちが本物にならなきゃ…勝てないんだから!!!』

 

 

 

 

 

「…えぇ、そうね」

「でもね、それでも私達は……信じてるから。彼が勝つって」

 

 

 

「私達の存在にはきっと意味があるって」

 

 

 

『それなら…私達にもッ!!』

『たまたま先に……私達より先に出会っただけの奴のくせに!!』

『盗られてたまるかぁぁあ!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

許せない…

 

認めない

 

そんなことあってたまるか

 

 

 

 

 

もし本当に少しのズレがあれば、もしかしたら隣に居たのは私かもしれない。

 

偽物だと自覚することなく、あの箱から出なければ良かったと思わなくて良かったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

鳳翔…いや、永山 小春

 

彼女は平凡な人だった。

決して活発ではなく、いつも隅の方に居るタイプの…。

 

孤児院ではそのおっとりとした性格から慕われていた。

怒らず、騒がず、泣かず…

 

その彼女が静かに激昂していたのだ。

 

 

 

彼女達の語らんとしている意味は分かっている。

 

神崎 救という男の存在の意味

私達…存在しない艦娘、艦隊という存在の意味を…

 

 

あぁ、そうだ。

鹿島の言う通りなのだ。

 

そうしなければ…きっと勝てないのだ。

世界を蝕むモノには勝てないのだ。

 

 

ここに正義も悪もない。

ただ……彼女達もまた、守りたいものがあるのだから

 

でも、その為に悲しむのは私達でいいと…思っている。

 

 

だから

 

「させない!!絶対にさせないッ」–––––と

 

 

 

 

 

 

 

あの人の居ない世界は灰色だった。

それでもあの人の生きた世界(生きた証)を守りたかった。

だから彼女はこの世界で艦娘になったのだ。

 

 

「……」

 

 

『全艦隊ッ!!撃てぇえええええ!!!!』

 

鹿島の号令と共に覆うような弾幕がコチラに飛んでくる。

 

 

 

『アンタ達の理想も、正義も私達が潰してやる!!私達が…本物なんだからぁあ!!!』

 

 

 

 

「やらせないッ!!」

西麻耶が、西天龍が、させないと彼女を守る。

 

 

ドパン…

西天龍の右腕が吹き飛んだ。

彼女は刀を咥えて「西鳳翔サン…行くよ」と言って敵陣へと突き進んで行った。

 

 

「ッ!!…っぅぅううう!!!」

 

西麻耶は西鳳翔を降り注ぐ弾幕から守る。

弾幕を撃ち落とし、取りこぼした分は自らの体を以って守り抜こうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『煙で見えないじゃない!!』

 

撃った、撃って撃ちまくった。

海に立ち昇る煙と炎は視界すら覆うほどに…

 

 

生きている筈がない。

アレだけの…砲撃を前n ––––––––

 

 

 

 

 

 

 

『え』

 

 

 

 

 

 

腹部に激しい痛みが…

 

 

え?

西天龍…?

 

 

 

 

「…すまんな、鹿島ァ」

「お前の気持ちも分かる……でもそれじゃあダメなんだ」

 

 

 

「付き合ってもらうぜ?あの世まで」

 

 

『このッ!!』

ズドンと言う音と共に頭を撃ち抜かれた西天龍が水面へと倒れ込む。

 

 

千切れ飛んだ腕の代わりに口に咥えた刀で私を…刺しただなんて

生き絶えつつもその歯を離さない西天龍を蹴り……

 

手に着いた血を見る。

 

『…早く治療しないと……コイツ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギリギリ…と弦を絞る。

ただひたすらに、一矢報いる為に。

 

 

 

 

 

 

西麻耶も斃れた。

向こうに見えるのは西天龍だろう。

 

 

楽しい思い出もあった。

一緒に笑い合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「西鳳翔さん…先に逝きます」

そう言って西大鳳が最期の矢を放ち海へと帰った。

 

次々と倒れ込む仲間達。

 

ニコリと笑って皆は言う。

 

「あの人に会えて良かった」

 

 

 

 

 

 

 

西鳳翔から放たれた矢はその姿を変えて鹿島の元へと飛ぶ。

 

 

 

西鳳翔はポツリと言った。

 

「…………ごめんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬鹿な、馬鹿な!!

何で?何でそこまで綺麗事を、実現させようとする!?

嫌だ!

嫌だ嫌だ!!

 

 

 

ズドン!!と届いた爆撃で仲間が吹き飛んだ。

『……っ!!』

 

 

 

逃げなくちゃ!!

 

逃げ…

 

 

 

 

 

 

 

『は?』

 

 

 

 

動かない。

 

 

 

『この…!!!』

彼女の見下ろした先には、彼女の足を掴んで離さない…艦娘が居た。

既に生き絶えた彼女は最後の力を振り絞って前に進み、鹿島の足を掴んでいたのだ。

 

 

 

『あ”あ"ぁ"あ"!!邪魔ッ!離せッ!!』

彼女は西雲龍に蹴りを入れるが、彼女の手は足から離れない。

 

嫌だ!

死にたくないッ!

 

私は

まだ笑ってない。

心の底から…あの…との……なり…笑………

 

私達が…アイ…ちから………ま…るんだ……ら

 

 

 

 

 

 

 

 

キラキラした…私の夢

 

あぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドォォオォオオオオオン!!!!!

 

 

 

 

 

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