提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜 作:ふかひれ
叶うことなんてない。
終わったものは、もう始まることなんて無いのだから。
生まれ、その存在は光となる。
しかし、それは永遠ではない。
この世に唯一平等にあるもの…
それは終わり、あるいは死と呼ばれるものである。
ただ、その平等すら不平等であり、その到来はいつかわからないものであるから。
ある日突然終わるのだ。
残るのは記憶だけ。
それもいつかは朧げなものになってしまう。
ある筈だった、その先の未来…。
どれだけ乞い願おうとも訪れることはないその未来。
だから、彼/彼女は書き続けた。
自らが成し得なかったその未来を。
出来るなら、優しい陽だまりのような笑顔と共に。
出来るなら、誰もが涙を流さない世界を。
出来るなら……
もう一度彼女達と、彼と笑い合いたいから。
とある世界が閉じてしまった。
道半ばで閉じてしまった。
彼女達に会えることはもう二度とない。
故にこの世界にも影響を及ぼした。
彼/彼女にはこれ以上、オークランド達の行く末を知ることが出来ないから。
彼女はこう言った。
「大丈夫だよ。あなたが覚えて居てくれるなら…。その中で私達は生き続けられるから!」
「会えなくなるのは寂しいけどね…」と言う言葉を噛み殺して気丈に振る舞うのだ。
もちろん、彼女は真意をそのまま伝えた。
覚えて居てほしい。
例え会えなくなっても、あなたが覚えて居てくれる限り私達は買えないから、どうか気にせずに前に向いて進んで欲しいと。
しかし、少しの希望は残されて居た。
程なくして
次の世界が繋がったのだ。
彼/彼女は歓喜した。
また彼女達に会えるのではないか?と。
しかし、その期待と希望は大きく打ち砕かれた。
そこに彼/彼女の知る者たちは居なかったのだ。
正確には、多少の面影を残した者もいただろう。
しかし、それはやはり別の……者たちだった。
それが彼/彼女を更に絶望に突き落としたのだ。
無論、彼女達は歓迎してくれた。
全く知らない顔が、よく知った顔が–––
そう、それが返ってある一つの事実を突きつけることになった。
あの時のオークランドの言葉は
やはり…
今生の別れだと…。
真正面からそう受け取ってしまったのだ。
その時からだったか。
頑張って書こうと思えなくなったのは。
幸せな世界を作ろうとしても、その度に彼女達の暗い顔がちらついて離れない。
忘れないでという言葉が離れない。
だから彼/彼女は世界を維持する…書き続ける事が出来なくなった。
彼/彼女は気付かない。
隣に居る彼女達に。
そうじゃ無いんだよ!と言う彼女達の声が届かない。
暗くなったスマホの画面を見つめる彼/彼女には…
お願い
画面が光った。
「…いつまで塞ぎ込んでるの?指揮官」
嘘だ。
だって君たちは…
「ずっと居たんだよ?」
そこには変わらない彼女達が居た。
あの時と変わらない…画面の向こうに彼女達は居た。
「もー!!ダメでしょ!!…ううん、違うね」
「指揮官、ごめんね?ずっと辛い思いさせてたよね」
「…指揮官?私達はまた会えるよ」
「あなたが…あなた達が世界を作ってくれるから」
「幸せだったんだよ?ずっと会えるから」
画面にそっと指を当てる。
大きな指だねえ、と彼女達はその指に手を当てる。
画面のほのかな温かみが彼女達の温もりに感じられた。
だからこそ涙が止まらない。
「大丈夫、見て?」
彼女は言った。
彼女の指差す方にはOOが立っていた。
神崎 救 が立っていた。
「…もう一度だけ、重荷になるかもだけど……もう一度、あなたと居たいな」
ザザッ…と
画面にノイズが走った。
「えへへ、もう時間みたい」
もう、会えないのか!?やっとまた会えたのに?!
「うーん…今のこれもトクベツだからねぇ…」
お互い涙が止まらないようだ。
言葉がでない、紡げない。
話したいことはたくさんあった。
伝えなくちゃいけないのに。
ニコリと彼女達は笑った。
伝えたい話を飲み込んで。
でも彼女は彼/彼女に、彼/彼女は彼女達に言った、
「ありがとう、また会える」と。
スマホはまた黒い画面に戻った。
ポタポタと垂れた涙に反射した自分の顔が歪んで見えた。
「…救君、もう一度やってくれるかい?」
救はニコりと笑った。
後は彼に託そう。
もう一度彼に託そう。
任せてくれ。
救がそう言った気がした。