提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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437話 いつか…

 

何でこんなに好かれるのだろう?

そう思ったことがあった。

命懸けで守られるんだろう?って。

 

何でこんなに危ない目にあうのだろう?

そう思ったこともあった。

命懸けの戦いばかりなのだろう?って。

 

 

 

ああ

俺は…俺は

 

「…ダーリン」

 

『健気だねぇ…いや…悪意の無い悪なのだろうなあ』

 

『お前の愛する…お前を愛してるとお前がそう思わせている奴らは、お前が何か気付いていた。その上でお前の魂をこの世界に繋ぎ止めていたんだ』

 

『人の妄想の力も凄えけど…その妄想の中のニセモノがここまでやるのは思わなくてな』

 

「…俺が全て…の原因…」

 

『そうだ!この世界で不幸に見舞われた艦娘も、別の世界で不幸に見舞われた奴も!貴様がこの世界を生まなければ!望まなければ!!こうはならなかったんだ』

『あの娘の不幸も、あの家族の悲しみも全て!!貴様が望んだからそうなったんだ』

『だから壊そう。全てを壊して…本来あるべき平和のない世界を取り戻して!お前はまた現実に戻って死ぬんだ』

『それが運命なんだ』

 

『お前である俺がそう戻してやるから』

 

 

 

「でも!俺はここに居る!確かにここに居る!!この感情も痛みも本物だ」

 

 

 

 

『ならそれをどうやって証明できる?お前が本物であることの証明は?』

 

『俺は証明できる!貴様らがニセモノだと』

 

 

()()()()()

そう言い切った。自信に満ち、こちらを見下す目で言った。

自分が自分であることの証明は自分にしかわからない。

それは曖昧なものだ。記憶だとか痛みだとか感じるものは自分にしかわからない。

 

なんだと言うんだ?と救が聞く前に白は言葉を続けた。

『周りの奴等を見てみろぉ。それが全ての…確固たる証明になるから』

 

周りを見渡すと…苦虫を噛み潰したような顔、視線を下げる者、眼を塞ぐ者が多く居た。誰1人として「違います」とは言わなかった。

 

「こ、こんごう?」

 

「……」

 

「俺は…間違ってたのか?居てはいけないやつなのか?」

 

「……私達が悪いデース」

 

「…ッ!?」

肯定も否定もなかった。

そこにあったのは自分たちが悪いという言葉だった。

 

「……いつからわかってたんだ?」

 

「…鉄底海峡で思い出した時から…デース」

「……ダーリンの死に触れてからダーリンは私達を望んでこの世界をくれたこと、戻ってしまえばもう2度と会えなくなることも」

 

「だから…私達はダーリンの魂を…のぞみをこの世界に何としてでも繋ぎ止めておきたかったんデース」

 

「ダメだってわかってました。私達が悪い事も、深海棲艦も怨念も何もかもが全てを正そうとあなたを狙ってる事も…。それでも…私達はあなたと居たかった!」

 

「死に瀕する度にその繋ぎ止めた魂の楔は綻んだ。だからあなたの望んだ他の世界から…また繋ぎ止める為にKAN-SENや戦姫を呼んだの」

 

「ご、ごめんない」

泣きながら彼女達はぽつりぽつりと漏らした。

 

 

 

本当の俺は…まだあそこに居る?

後悔と塊根の狭間で、生死の狭間で確実に死に向かいながらそこに居る。

この動く手も、思考も何もかも…愛した彼女達でさえ…俺が生み出した妄想なのか?

 

皆が辛い目にあったのも

   御蔵さんや幸や…あの神通や…桜赤城達や…蒼オークランド達も…偽物なのか?俺が生きることを望んでしまったから?

 

俺の願いを彼女達は叶えてくれようとしたから…この世に不幸が?

 

 

「あの温かみが忘れられなくて」

「あなたが居ることが…私達を愛してくれることが嬉しくて嬉しくて」

 

『だからと言って全てを捻じ曲げて良い訳はないだろう?』

『何人の人が不幸になった?艦娘が、深海棲艦が、死ななくて良い者が死んだ?妄想だから良いのか?偽物だから良いのか?』

 

 

「…ぐっ……それは…」

 

 

『それはエゴなんだよ』

 

「あなただって分かるでしょう!?あなただって救なのだから!!!」

誰かが叫んだ。白も俺なんだからその気持ちはわかるだろう?と。

しかし、白は鼻で笑う。

 

『はん!!俺はコイツから切り離された存在なんだよ。コイツだけ楽しく生き返りやがった。俺は海底に囚われて!!憎悪の念と理の役目を押し付けられて!!!』

『最初は…まぁ仕方ないと思い込むようにしたさ…俺なんだからな奴も』

 

『しかし、本来の運命も忘れてのうのうと生きて!貴様ら艦娘もそれを助長させた!!!許せる訳ないだろう!!』

 

 

『まぁ…思い出したなら…理解したなら運命が引き合うだろうて』

 

「…運命が引き合う…??」

その言葉と同時に「ッ!!××ッ!!……!?!?何故!?いや!それより!その傷は!?

彼女達に言われて何とことかと思った瞬間に目の前が真っ赤に染まった。

額から血が流れ出ているらしい。

膝を折る救に彼女達が駆け寄る。

「大丈夫ですか!?提督「…何で言えないの?」

本来言えるはずの…さっきまで言えてた言葉が話せない。

 

 

ゆっくりと、ゆっくりと彼に傷が増えてゆく。

 

『本来のお前は死に瀕している。いや、死に向かう途中なのだ。だからお前のその魂も同じようになるだけだ』

 

『提督』

『お前らが言いたい言葉だろ?言えないだろ?』

 

『さっきの声が聞こえなかったか?この世界はもう、神崎 救を提督とは認めてない!貴様らも鎮守府所属の艦娘とは認められてないのだ』

 

「いや!!私達は西波島鎮守府の…あれ?」

 

『フン!西波島とも言えなくなったか?当たり前だ!!そんな存在しない鎮守府がある訳…認められる訳ないだろう!なぁ…神崎 救!』

 

「いや…俺は確かに…艦これで…西波島サーバーで」

 

 

『それはお前が描いていた御伽話だろう?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パソコンなんてなかった。

毎日、毎日忙しく働く俺は遊びなんてできなかった。

雑誌やテレビで取り上げられるゲームなんて到底…。

寝る前の目を閉じた後の頭の中で作る話が拠り所だった。

 

想像の中なら何でもできる。

あの嫌な会社を辞めてお金持ちになることも、幸せな家庭で育つことも、贅沢することも何もかも。

ゲームをやることも…愛されることも。

それだけが俺に許された…日々への自由だった。

 

 

 

 

 

「…あ……ぁあ」

 

ベキィ!とどこかの骨が折れた。

視界が霞む。

ごめんなさいと聞こえる。もはや提督ですらない俺を彼女達は労わってくれる。それが役目だから。

 

「ダーリン!!」

 

「ダーリンさn……––––

 

「…ッ!?榛n%58$!?!?!?」

榛名が消えた。

榛名という言葉すら金剛は発することができない。

本来、存在しないものが消える…彼がそれを、運命を少しずつ受け入れさせられる度に1人、また1人と消えて行く。

 

「…ダーリン!しっかりして!私達は居る!!ここにいる!あなたも!いるカラ!!」

涙ながらに彼を抱き抱える金剛。

 

「わがままかもしれ…いが……おれ…いきて……たい…の…」

 

「はい!生きましょう!私達と生き『それは無理だ』

 

『どうしてもというなら…また退けてみるか?ただの死にかけと艦娘モドキ達と…で俺たちを』

 

ズラリと並ぶ深海棲艦。

そのどれもが冷ややかで悲しい目をしていた。

 

「…ッ!!やりまス!!どんな相手だって」

 

『そろそろ楽にしてやれよ』

『愛するなら!!受け入れて!眠らせろォ!!貴様らも…無に還れ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

 

どしゃりと崩れ落ちた男に少女が駆け寄った。

フンと鼻で笑い消えた深海棲艦と一緒に消えゆく白がチラリとこちらを一瞥した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周りには誰も居なくなった。金剛と呼ばれた少女と提督と呼ばれた男が死の際でその時を迎えようとしていた。

 

「……#/_&_」

もはやダーリンとも呼ばなくなっていた。

男はもう何も見えない、聞こえないほどに弱っていた。

その男が少女の手を握りか細い声で言った。

「ありがとう」

 

「私たちこそでーす!私を望んでくれて…うんでくr

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これで良い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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