提督の鎮守府生活 〜最果てと呼ばれた西波島鎮守府での日々〜   作:ふかひれ

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439話 いつか夜は明けるから 20 夜の帳を超えて

 

 

ただの書き物。

脳内で作った世界を文字に起こして…それを見て彼が笑うだけの…創作物。

決して誰かに見てもらう為ではない。

ただ、世界の中(物語の中)なら彼は幸せになれていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、叫び声や心配する声の飛び交う中、彼の遺体は警察と救急車によって運び出された。事件性の調査ということでカメラと目撃情報から林なる者が逮捕された。

数日後に葬儀は静かに行われ、彼が居たであろう孤児院の者たちが泣きながら彼を見送った。

白も知る人物ではあるが、誰も彼の姿を見ることはできない。

彼自身も何の感情も無く、淡々とその様子を見ていた。

 

『呆気ないものだな』

ポツリと漏らした白の言葉は誰にも届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、白が今居るのは救が住んでいた家。

質素な部屋の中にあるテーブルの上には艦娘のフィギュアが置かれていた。その足元には救が書きしたためたであろうノートがある。

西波島という島の鎮守府を舞台とした提督の鎮守府での日常。

明日には業者が入りこの部屋のものは跡形もなく処分される。

フィギュアもノートも使えなくなったノートパソコンも…

 

何故そんなところに白は居るのか?

無論、センチになってる訳ではない。感傷に浸る訳でも…。

ただ、来なければならない気がした。自分の存在が役目を終えた後にも関わらず消えないことに疑問を待ち、その答えを探そうとしていた。

 

 

人の死とはどこからなのだろうか?

 

心臓や脳が止まった後か?

火葬された後か?埋められた後か?

誰かが言うように忘れ去られた時か?

 

 

 

 

形骸的な死はもう迎えてるはずだ

 なのに俺は消えていない!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フッ…と違和感を覚えた。

その違和感の正体は机の上にあった。

動かないはずの壊れたパソコンの画面が光っていたのだ。

暗くなり行く部屋の中で無音で光る画面の電源ボタンを白は押すが、それでも消えなかった。

 

バキィ!!!とパソコンは音と共に飛んで行く。

『…ッ!何だ!何だというんだ!!』

 

ゴン…と壁に当たった音とともに止まったパソコンは割れた画面がこちらを向いている。

『死んでもなお不気味な……ッ!?』

 

 

ヴン…ヴン…とその画面に何かが表示されている。割れた画面がいくつものそれを大小に表示する。

 

『これは……奴の…書いた話しか!?』

 

 

 

愛してます!ダーリン!二度と離さない!

 負けるもんか!お前の居ない明日なんか!!

私が勝つんだッ!!ここは通さないッ! もー!よそみー?

ある晴れた日のことだった。気合い!入れて!

愛するものが泣いている。理由なんかそれだけで十分だ。

俺が提督だ!悔しいなぁ…。ここだけは譲れません。頑張れえええ!提督ううう!! 絶対にお前達を守ってみせる!アノウミノムコウ…。何があっても世界を超えても駆けつけます!よく耐えました…誇らしきご主人様…。

 

私達があなたを守ります!何があっても…世界を敵に回しても!!!

 

 

目が止まらない。

見たくないのに目を逸らせない!!

自分の息と鼓動だけがやけに喧しく聞こえる!

 

 

 

 

そして–––

 

艦隊これくしょんのページと言葉が聞こえてくる。

『あり得ないッ!!!』とパソコンをまた殴り飛ばした。

 

あり得ないッ!あり得ないッ!!

 

 

 

 

 

 

そんなことが–––––

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

か ん こ れ はじまります!

 

 

 

慣れ親しんだ初期艦の声が頭の中に、世界の中に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何…だとおおおお!?』

その言葉と共にズアッと世界が変わる。 

 

 

 

何も無い真っ白な…世界。

 

ドクンドクンと何かが音を立てている。

『…ッ!?』

 

振り返るとそこにはモノクロの何かが居た。かろうじてこちらを見てることが分かる。

 

 

『……なんだ貴様はッ!金剛か?!鳳翔か!?加賀か!?大和か!?!』

確かに消えたはず…だからあの世界は終わったんだろう!?

 

それは書く者が居なくなった故の存在。

輪郭も存在もボヤけたかつて####と呼ばれた残滓。

 

『搾りかすのクセに』

白は僚艦の深海棲艦を呼び出し、自らも艤装を展開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、深海棲艦を召喚自らも艤装を展開したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

画面の向こうのあなたは優しげで…どこか触れるだけで壊れてしまいそうなほどに脆そうな…そんな人でした。

あなたが私に名前と役割をくれた。

 

どんな時も明るくて、戦場では常勝の…えーと艦娘の金剛。

提督の方がだーいすきな女の子。

姿は…ないけれども、ネット?とか言うあなたの使う不思議なものが私達に姿をくれた。

 

艦隊これくしょん

 

ゲームの中の登場人物を架空の人と架空の世界で描いたお話は私達をいきいきとさせてくれた。

 

そう…私達は二次創作(存在しない)

 

それでも、偽物の私達にとってこの世界は本物だったから。

 

だからこそ嬉しかった。

 

 

そう、私達はニセモノ–––

あの艦隊も鎮守府も何もかもが存在しない架空の存在。

 

でもその偽物にとっては…あの世界が本物(全て)だったから!

 

 

存在しない記憶すら愛おしくて。

 

その記憶すら私達は楔にした。

それが最後にはあんなことになった…皆を悲しませる事になった…

でも…まだやらなきゃならないことが残ってる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故お前たちが居る!俺の前に立ち塞がる!!!

消えたはずだ!

お前らは役割が終わって!運命によって!消えたはずだ!!

 

いや、…役割が終われば消えるはず。

しかし俺が消えていない。

神崎 救である俺が…消えていない?!

奴等も?

 

 

いや!確かにこの男は……俺は死んでいる!!

 

『……ッ!?!?』

 

 

 

 

 

だって奴らは…

目の前の存在は名前すらない、輪郭もボヤけ–––

 

 

いや

 

さっきより   バカな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故貴様がそこに居るッ!!!

 

金剛ッ!!!!

 

 

『たかが創作物が…出しゃばるな!!!』

 

『それは なた 同じです』

 

『消えたはずだッ!消えたはずだ!!』

 

『でも今 りと ここに居ま 』

 

–––よりはっきりとモノクロは淡く色を得た。

 

『私は…ここに居マース』

 

「私は…西波島鎮守府……金剛型一番艦の金剛デース!!!!!」

 

ズラッと俺の深海艦隊名前に奴等が並んだ。

 

 

 

 

 

 

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